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『これからもよろしくね♪ 』
チカ・ニシムラ(ea1128)&クレア・クリストファ(ea0941)&エルシュナーヴ・メーベルナッハ(ea2638)

 まさか、と思った。
 チカ・ニシムラは偶然立ち寄っていたとある家屋からひょっこりと出て来たところで、『その姿』がこちらに向かって歩いて来ている事に気付く。
 見覚えのある銀髪のツインテールに、ピンクのリボンを緩く巻き付けた髪型。
 人間ならばまだ十程の外見に見えるエルフの女の子。
 エルシュナーヴ・メーベルナッハ。
 …そう思う。
 だが、ここはアトランティスのウィルにある一村、ホープ村。
 エルが――エルシュナーヴ・メーベルナッハが居るとは思わない。それは、以前――もうかなり前の事になるが――別れる時に今度遊びに行くからねと言ってはくれたが、それが今とは聞いていない。
 エルシュナーヴ――に見える少女はチカの姿を認めると、思い切りぶんぶんと手を振って来る。
「チカちゃーん!!!」
 声も届いた。
 確かに、聞き覚えのあるエルシュナーヴの声。
 直接自分の名前を呼ばれたチカはびっくり、瞠目する。
「…エルさん? ホントにエルさんにゃの!?」
 と、問いながらもチカはエルシュナーヴに慌てて駆け寄って行く。
 エルシュナーヴの方でもチカに向かって駆けて来た。
 間違いない。
 間近で確かめると、喜びのままチカは殆どぶつかるような勢いでエルシュナーヴに思い切りひしっと抱き付いた。
「エルさんにゃエルさんにゃエルさんにゃ! 久し振りにゃ! ホントに久し振りなのなのにゃ!!」
 抱き付かれたエルシュナーヴもエルシュナーヴで、チカを思いっきり抱き返す。
「チカちゃんもホントに元気そうで良かったの〜! ホントに久し振りだね♪」
「うにゃ。クレアお姉ちゃんも元気にゃよ♪」
「ん。そっか。エルも元気だよ♪ でもホント、チカちゃん変わってないんだね〜、相変わらず可愛いのっ♪」
「にゃ〜、やっぱりエルさんなのにゃ、エルさんも変わってないのにゃ、可愛いのにゃっ♪」
 チカは喜びのあまり、そのまま、エルシュナーヴをぎゅー。
 と、こらこら、と二人の頭上からこれまた聞き覚えのある声が降ってきた。
「私は仲間外れか? 二人とも」
 何処か笑いを含んだ声で言われ、エルシュナーヴとチカは抱き合ったまま頭上を見上げつつ、あっ、と声を上げる。
「クレアおねーちゃん!!」
「にゃ! クレアお姉ちゃん!」
 二人が気付いた時点で声の主――チカに遅れて同じ家屋から出て来、その場まで来ていたクレア・クリストファは、二人纏めてわしわしと頭を撫でている。
 二人を見下ろすその顔には、満面の笑み。
「良く来たわねエル〜。随分と久し振りだわ」
「うん。久し振りなの! 今度遊びに行くって約束してたからね! …ちょっと遅くなっちゃったけど」
「そんな事無いわよ。エルにも都合があるでしょうしね。でも本当に、元気そうで良かったわ〜」
「クレアおねーちゃんも!」
 勢い良く頷き、エルシュナーヴもまたクレアに向けて満面の笑み。
 チカは抱き付いたそのまま、にゃ〜、とばかりにすりすりとエルシュナーヴに頬ずりまでし始めている。



 …それから。
 久々の再会を果たした三人は、こんなところで立ち話も何だろう、と言う事で、すぐ近くにある喫茶にまで足を運んでいた。
 自然と、自分は今何をしているか、の話になる。

「…――うんうん。へー、エルさんはバードとして相変わらず愉しくやってるのにゃね♪」
「うん。いっぱい歌って、いっぱいイイコトして、いっぱい旅してるよ。…チカちゃんは?」
「あたしにゃ? …あたしは今クレアお姉ちゃんのところで子供たちに勉強教えてるにゃ♪」
 にこりと笑い、チカ。
 そんなチカに頷き、クレアが補足する。
「ええ。少しずつだけど、村の子供たちに生きる為の知識を与える事を…基礎教育を始めてくれてるの」
「へぇー、チカちゃん先生なんだね。すごいな☆」
「にゃ、照れるにゃ。そんな大した事じゃないのにゃ。あたしに出来る事してるだけなのにゃ」
「あら、本当に助かってるわよ? ここにチカが居てくれて」
「にゃ〜。おだてないで欲しいにゃ。…とにかくあたしは先生してるのにゃ。子供たち、みんな可愛くて楽しいにゃよ♪」
 照れまくりながらチカは言い切る。
 その様子をにこにこと見守りつつ、エルシュナーヴは今度はクレアに振る。
「クレアおねーちゃんは? 確か領主さんになったって…」
「そう。今はここの領主をしているわ。…色々大変よ。背負うものが格段に重くなった。領主は領内の全てを…数多の人の命を背負わなきゃならないからね…。でもやり甲斐はあるわよ。私を頼ってくれる人たちが居るからね」
 それに、チカも居てくれるし。
 と、クレアはチカを見て、にこり。
 チカはそんなクレアに力強く頷く。
「あたしで力になれるにゃら力になるにゃ。領主のクレアお姉ちゃん支えなきゃならないにゃ!」
「…ふふ。ありがとね」
 言いながら、クレアはチカの頭をぽむ。
 と、そのタイミングで新しくお茶菓子をテーブルにまで持ってきた給仕さんも、そうです、私たちでも微力ながら領主様を支えていかなければと思っていますよ、とさりげなく口添える。
 思わぬところから口添えられ、クレアは一瞬きょとん。直後、誰から何を言われたのかを理解すると、ゆったりと微笑んだ。
 そして、有難う、とその給仕さんに心からの礼。
 …それをやっぱりエルシュナーヴがにこにこと見守っている。



 久し振りで話も弾む。
 そんな中、誰からともなく、これからどうするのか、の話になった。
 うーん、と考えつつ、何となくお互い目を見交わす。
 さて、誰から話す。
「今後ねぇ」
「今後かぁ…」
「…今後にゃ? うーん…今後は…あたしはそのまま先生続けたいかにゃ?」
 と、チカがまず、考えながらも一番先に話し出す。
「先生続けて…出来れば、お金のない子…子供に限らないにゃね。勉強をしたい人なら誰でも勉強出来る学校を作りたいにゃ♪」
 うん、と自分の考えている事を話しながら纏めつつ、チカは頷く。
 ちょっと驚いたようにクレアがそんなチカを見た。
「あら。チカはそんな事を考えていたのね」
「…うん。勿論、難しいかもしれないにゃ。でもそうするのがあたしの夢なのにゃ」
「そうね。…私もそれは必要な事だと思うわ。望む者が望んだ通りに学べる環境があるのと無いのではかなりの差があるものね。実際に教鞭を取ってるチカから言って貰えるなんて心強い限りだわ」
「あたしの方でも領主のクレアお姉ちゃんにそう言って貰えると心強いにゃ」
「…ふふ。設備面や環境面では私の問題にもなるものね。…ま、私の方の『今後』も、そういう事よ。これからは、より多くの弱き人たちを救う為に、今まで以上に頑張らなきゃならないわ」
 チカの言うように学校の建設も。それ以外の事も。
 私で出来る事を。出来る限り。
 理想に向かって着実に、一歩一歩歩み続ける事を。
 クレアはそう続け、決意を籠めた力強い笑みを見せる。
 と、はー、とエルシュナーヴが感嘆を吐いた。
「二人とも凄いなぁ。…あ、ねえねえ、チカちゃんとクレアおねーちゃんのコトも歌にしていいかな?」
「え、あたしたちをにゃ!?」
「うん♪」
「ちょっとちょっと、エル?」
「だって二人とも凄い頑張ってるんだもん。今の話もだし、さっきの…ここの給仕さんの様子とか見てればすぐわかるよ。だったらエルのこれからは、まず初めに二人のコト歌にして歌いたいなーって思うの。あのね、エルは今までの冒険で見聞きしたコトを歌にして皆に聞かせて回ったり、新しい歌の素材を求めてあちこち旅したいなーって考えてるから」
 …今まで通り、と言えば今まで通りだけど。
 エルだって頑張るの! とエルシュナーヴは態度でそう言っている。



 更に話は尽きず時だけがあっという間に過ぎ。
 気付いた時には、結構経っていた。
 喫茶の勘定を払い、さて今日はこれからどうするか、となった時、そうそういい温泉があるのよ、とクレアが思い付く。言われた時点でチカもクレアの言う温泉は何処の事かにすぐ気付き、行こう行こうと思い切り同意。二人から促されたエルには勿論否やは無い。それどころか、大好きな二人にとっておきの温泉に誘われたとなれば、否やどころか大喜びな訳で。
 そんな訳で三人は、意気揚々と目的の温泉に向かう。
 アトランティス来訪。そんな旅で疲れているだろうエルシュナーヴの慰労も兼ねて。



 温泉。
 滾々と湧き出ている湯の中に、三人はまったりと浸かっている。
「にゃ〜」
 蕩けそうな…と言うかもう既にお湯の気持ちよさに蕩けてしまっているチカは、すぐ傍らで湯に浸かっているエルシュナーヴに抱きつき、すりすりと頬ずり。久し振りの、大好きなエルシュナーヴ。くっついているのもまた気持ちいい訳で。エルシュナーヴの方でもチカ同様、わーい、とばかりにすりすりとそのまま頬ずりし返している。エルシュナーヴの方もエルシュナーヴの方で、チカとこうしていられる事が嬉しい訳で。
 そんな仲睦まじい二人の様子を、少し離れた場所で湯に浸かりつつ微笑ましげに見守るクレア。
 と、今度はチカはそんなクレアの様子に気が付き、一人じゃ駄目にゃ、とばかりに今度はクレアに抱きついた。で、つい今さっきまでエルシュナーヴにしていたように、すりすり。
 クレアは、おいおい、と宥めるように――けれどその言葉とは裏腹に、態度の方では嬉しそうにチカの頭を撫で、思う存分甘えたいだけ甘えさせている。
 それを見て、ずるいー、エルもー、と、エルシュナーヴもまた二人に抱きついてきた。クレアは来い来いとばかりにそれを受け止め、チカ同様、エルシュナーヴの頭も一緒に纏めて撫でている。
 その感触に気持ち良さそうに目を細めつつ、エルシュナーヴは、チカとクレアの両方を、ぎゅー。
 ぺったり抱きついたところで、二人に顔を寄せて囁いた。

「これからもよろしくね♪」

 とっておきの、一言を。

【了】
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2010年02月16日

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