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『究極任務 暴走一直線ナ思イヲ軌道修正セヨ! 』
マミエル・ランキパ8317)&アリス・御堂(NPC4209)


悩みなんてものは千差万別。
なまじ店をやってると、様々な客とふれ合うもの。
時には人生相談めいたものを聞いたり、時には少々世間に疎い方々からごくごくたまに少しばかり高めの料金でぼった――失礼、お売りする。
が、これはどうかとアリスはカウンター台に景気よく額をぶつけながら沈没した。
「いかがされた?! アリス様。どこかお悪いのですか?」
「悪いとか……って、そうじゃないから」
心の底から気遣う声を上げて、慌てふためくスーツ姿の男・マミエル・ランキパ。
黙って立っていれば、ほぼ八割の女性が振り返る色男――いわゆる『イケメン』なんだろうが、如何せん、あまりにもご立派すぎる筋肉がせっかくの魅力を著しく減少させてくれるのだから、世の中は侮れない。
けれども、アリスがテーブルと派手な語り合いをするハメになったのは、間違いなくこのマミエルだ。
しかも自分が元凶だと一ミクロンも思っていない。
それでもアリスは商売人。ものすご〜く微妙なところで堪えて愛想笑いを一瞬にして創り上げる。
「あ〜っと……い〜え。ご注文頂きました品が『すごく』突飛というか、オリジナリティに溢れたユニークなものでしたから」
かなり頬を引き攣らせかけながら、完璧なセールススマイルでマミエルに依頼の軌道修正を期待して微笑む。
が、アリスの思いとは裏腹に男はやや頬を赤らめて不自然な咳払いをしてくれた。
「う……うむ、なんと言うのかな?私にはお仕え申し上げる主――王女殿下が居られ、その御身を常にお守りするのが我が役目。殿下はご聡明であられ、慎み深くあらせられる上に大層慈悲深い」
恥ずかしがりながら、マミエルは(本人曰く)控えめに主人自慢を語りだす。


遠く故郷を離れ、ただ一筋に主にお仕えするために日夜孤軍奮闘するマミエルを学園に通う王女は常に心にかけてくれ、護衛は無用だと仰られるその優しさに思わず感涙してしまう。
それだけに一層の忠勤に励むのだが、どういうわけか不審者扱いされた挙句、公的機関に通報されてしまう始末。
このままでは王女殿下に顔向けができぬと考えたマミエルは富士の樹海にある住まいに引きこもり、思案にふけり――たどり着いた答えが『見た目』だ。
現代世界においてマミエルの姿はやや浮世場慣れした面妖なもの。
ならば、この世界に適応した姿――所謂、『ゐけめん』と呼ばれる男やらになれば、敬愛する殿下のお心をわずらわせなくて済むと思い至ったのである。
「思い立ったら吉日という言葉に従い、久々にこちらに来て……衝撃を受けた。うら若き乙女達が常日頃からチュニックを纏い、戦に備えているなど……私もまだまだであった」
嬉々として語るマミエルを目の当たりにし、思わずアリスは意識がどこか遠いところへと旅立ちかけた。
――チュニック? それ、ただのミニスカだし…ってか、そんな物騒な話ないですから! あああああ、なんという異世界同士の弊害……じゃなくって、ズレてる、この男! 自分がズレてるって気付いていないのね、マミエル・ランキパ君!
どこぞの宣伝のように一人でツッコミ漫才するアリスにマミエルはさらに熱を込めて語りあげてくれた。
「恥いぬような立派な『ゐけめん』になるよう、そして殿下にふさわしきお品を求め、アリス様の店を訪ねてまいったのです。ここならば素晴らしき装具を手に入れることができると思った次第なのです」
「だからって、華も恥らう可愛い女子高生に『おっきな』お兄さん達が趣味に走りそうなファンタジー全開の品を渡せるかぁぁぁっ!!」
恍惚とした表情でのたまうマミエルの顔面目掛けて、アリスはかけていたスツールをぶん投げた。
が、マミエルに当たることなく虚しくも派手な音を立てて床の上でスツールが砕け散る。


「な、なんということを! あのように精緻で素晴らしいご自身の作品を壊すとは……アリス様、何を」
「何をじゃないわぁぁぁぁぁぁぁっ!! 彫金師として……いえ、全世界のうら若き乙女たちの代わって成敗してくれるわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
悪鬼形相、憤怒の顔でアリスは食って掛かるマミエルの抗議を聞き流し、手近にある商品を猛然と投げつける。
銀細工の食器セットに鋭い凶器なアクセサリー。ちょっぴし危ない模造剣やら槍やらを寸前でかわしまくるマミエルの姿にアリスはきっちし殺意を覚えていた。
――これは義務。そう、崇高なる天の意思……今をときめく女子高生たちのための『聖戦』なのよ!!
瞳を血走らせ、普段なら絶対に卒倒間違いなしの高価な品を投げまくるアリスの顔はどこか狂気じみた悦楽の色に染まっていた。
もはやこのズレまくり男を生きて、店の外に出すわけにいかない。完膚なきまでに叩きのめし、地獄の底まで踏み潰した後に、この『依頼』を撤回させるのだ。
――それは私に与えられた使命よ!!
と、もう何だか完全にイッちゃった凶悪人物と化したアリスは容赦しない。
――これが一般的な『キレる』という行為なのか。
対して、妙にしみじみと思いながらも、その猛攻をかわしていたマミエルだったが、アリスがローマ神話を模した――高さ2メートルほどの青銅像を片手で振り回されるに至って、顔面蒼白に陥った。
「あ……危ないではないですか! アリス様。彫金師と名高い貴女がこのような蛮行に及ぶとは……見損ないました」
「やかましいぃぃぃぃぃっっ!! 反論は無用、即却下。アンタはいいわよ?私が思う……いえ、世間一般的に通用する装身具を作ればいいわ」
青銅像を息も切らすことなくぶん回し、その凄まじい破壊力で吹っ飛ぶ品々を気にも止めず、店内を破壊しつしてマミエルを片隅へと追い詰める。
手にした彫像でできる攻撃はあと1・2回が限度。
だが、アリスは狙い済ました狙撃手のごとき鋭い眼で、致し方ないとばかりに覚悟を決めて立ち会うマミエルを見据えた。
次の攻撃で全てが決着する。
それは双方ともに分かりきっていた。

アリスとマミエルの命がけの鬼ごっこで少々立て付けが悪くなったシンプルな飾り棚の上に置かれた銀製の天使像がゆるりと落下し、鈍い音を立て床を転がる。
ふっと大きく息を吸い込みアリスが青銅像をマミエルの脳天目掛けて振り下ろす。
無駄な動きは一切なく滑るように打ち下ろされた一撃をマミエルは瞬時に唱えた風の魔法によって打ち砕く。
けれども、そこにマミエルの隙が生じた。
絶え間なく繰り出されたアリスの正面突破を読んで、最後も正面からの攻撃と読んだのだ。
だからこそ、風による防御魔法を展開させたマミエルだったが、打ち下ろされ、砕け散る青銅像の破片の中でアリスは確かに笑っていた。
それを不思議に思う間もなくマミエルは真下から噴き出した水をまともに喰らい――数秒後、美しさからやや遠のいた生ける氷柱と化していた。

「なぜです? なぜこのような、ありふれた品になるのですか!! 姫様に相応しき鎧を、とお願いしてあったのに」
不服とばかりに文句を並び立てるマミエルの言葉をアリスはそれはそれは綺麗に聞き流す。
全ての乙女の敵――もとい、ちょっぴし世間ズレなマミエルを叩きのめして、アリスは周りの惨状を目の当たりにして、絶望した。
自分でやらかしたことなので文句も言えず、現実拒否しまくりたい。
だが、氷柱にしたままの美形だけどマッチョなお兄さん・マミエルを放って置く訳にもいかず、アリスは騒ぎが収まると同時に顔を出した使用人に簡単な掃除を命じて、ほぼ脅しに近い説得を開始した。
「そちらのご依頼は充分に理解した上で却下させていただきます。ですが(常連になりそうなんで)王女様のお品は私自らデザインさせていただきますね?」
でなければ引き受けませんよ、と氷の微笑でマミエルに告げる。
一拍、息を飲むマミエルをとどめとばかりにアリスは輝かんばかりの声で優雅に宣言する。
「ご承諾してもらえなければ、今回のことを王女様にお教えさせていただきますのでよろしくお願いしますね?」
内密にして驚かせたい王女にばらす、という絶対的な一言にマミエルは渋々と頷くことしかできなかった。
そうして内装修理が終わるとともに渡された品を見て、マミエルは冒頭の台詞を呟いた。
「あら、素敵じゃないですか。赤のアーガイルチェックのコートに自然な白のニットドレス。首元にあしらったアゲハチョウの銀細工チョーカーが引き立てるし、これでレギンスにロングブーツかハーフブーツを履けばイマドキの女子高生じゃない」
素敵よね、とのんびりと言ってくれるアリスだが、その目は有無を言わせないとばかり凶悪な光に満ちている。
これ以上は無駄かと思い、がくりと膝をつくマミエル。
なぜ駄目なのかが分からない。
けれども、これ以上の品はないわよとすげなくされ、マミエルは仕方なく王女が待つ学園へと足を向けた。
好みの品を作ってくれるというから、尋ねたのに。
お代きっちり払っているのに……なぜ頑なに拒否されるのだろう、とマミエルはさんざんに悩みまくることとなる。
しかし、お会いした王女は妙に引きながらも、送られた品を見て――心の底から安堵したように喜ばれたため、文句は言えなかった。

奥にある作業台に広げられたデザインをアリスはしばし眺めた後、ぐちゃりと握りつぶすが早いか耐熱ガラスの上で燃やし尽くす。
一握の灰になったのを見届けてアリスはようやくひと心地付けた。
灰と化したそれに書かれていたもの――史上最大のズレ男・マミエルが愛しの王女殿下の為にデザインした鎧。
それがまともなものなら、アリスはいつもの通りに引き受けて――かなりの請求書を出していた。
だが、危険度ギリギリ、正直貰ったら完全に引くか嫌がるか、そのどちらかが確実に見えるようなドピンクのビキニアーマー。
センスの悪さはさることながら、こんなものを作った日には確実に客が減り、あまつさえ、せっかく軌道に乗った店が情熱的な閑古鳥のフラメンコに見舞われる。
なによりも貰った人間が嫌がるのが目に見えてるような品を彫金師の誇りにかけて作れない。
「今月の被害額と依頼料で差し引きゼロか」
不況にきついな〜と涙しながらも、次に来る時はまともな依頼を願うばかりだが、マミエルのセンスが良くなるという道のりは果てしなく遠いなと思ってしまうアリスだった。


FIN

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■   登場人物
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【8317:マミエル・ランキパ:男性:25歳:宮廷魔導師】

【NPC:アリス・御堂】


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■         ライター通信          ■
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はじめまして、こんにちは、緒方智です。
ご依頼頂きありがとうございます。お待たせして申し訳ありません。
さて今回のお話はいかがでしたでしょうか?

思い切り暴走ということなので店内で命がけの鬼ごっこを展開させました。
さすがに、乙女の気持ちから作れるか!とアリスは拒否。
途中で像をぶん回している時点で、変な方向に走ってしまいました。
アリスの怒っている意図を察してくれれば、と思いますが、マミエルにしてみれば災難でしかありません。

本当にご依頼頂きましてありがとうございます。
また機会がありましたら、よろしくお願いいたします
PCシチュエーションノベル(シングル) -
緒方 智 クリエイターズルームへ
東京怪談
2010年02月25日

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