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『『暗殺指令(2)』 』
水嶋・琴美8036)&鬼鮫(NPCA018)



 水嶋・琴美(みずしま・ことみ)は、超常能力者を殺す事を楽しんでいる敵組織の危険人物・鬼鮫と呼ばれる男、霧嶋・徳治の暗殺という指令を受けて、単独でこの組織があるとされる廃ビルへと侵入した。
 鬼鮫との遭遇はあっけないものであった。廃ビルの地下で鬼鮫と出会った琴美は、任務を遂行する為鬼鮫と激しい戦いを繰り広げる。この男が、普通の人間にはない強力な能力を備えている事は、琴美も予測していた。
 だが、鬼鮫の想像以上の激しい攻撃と、わずかな、一瞬の油断が形勢逆転させ琴美は連続の蹴りを食らい、ついには意識が途切れ始め、腹への攻撃のダメージが蓄積し、戦いの最中に膝をついてしまっていた。
「一人で乗り込んでくるなんて、相当な度胸だな」
 鬼鮫は嘲笑った。
「俺が暗殺のターゲットか。腹の立つ話だ。お前がどこから来たのかは知らないが」
 そう言って、鬼鮫は琴美に近付いた。
「俺は男だろうと女だろうと、特殊な能力を持ったやつなら差別しないんだ。そういう奴を、容赦なく殺害するのが、俺の楽しみだからな」
 何故、鬼鮫がここまで冷酷なってしまったのかはわからない。ただ、調査員の話によれば、この男にも過去は家族がいたことがあるらしい。
 ところが、その家族は何者かに殺害されたという話もある。その出来事が、鬼鮫の異常なまでの能力者への殺戮につながっているのかもしれないと、琴美は調査員から聞いていた。
 この指令を受ける上で、情を入れてはいけないことは、琴美にもわかっていた。感情的になれば負けは確実だ。
 情に流されず、受けた指令を忠実にこなす事が出来るからこそ、琴美はこの仕事をしているのだ。ただの女の子であれば、琴美は今ここにはいない。鬼鮫が、すでに息が上がっている琴美の頬を殴りつけた。
「うぅっ」
 すかさず、鬼鮫の拳をかわそうとしたが、彼のリーチは太く長く、琴美が避けるよりも前に拳をまともに受けてしまった。口の中に血の味が滲み、涙が吹き出してきた。
 鬼鮫は、自分を暗殺に来たとはいえ、若い女の子の、しかも顔をためらいもせずに殴ったのだ。女性というものは、顔を傷つけられたりするのは、とても嫌がるものである。それをまったくおかまいなしに殴るということは、もはや琴美を女性でなく、サンドバックとでも思っているのかもしれない。
「痛めつけてやるよ。俺の気が晴れるまでな」
 鬼鮫は、おだんごにまとめていた琴美の髪の毛を掴んで、むしりとるように引っ張った。
「痛っ!」
 思わず、琴美は声を漏らした。おだんごにまとめていたリボンが外れ、くせのない艶やかな黒髪が、琴美の肩や背中に音もなく落ちていく。鬼鮫はその髪の毛を掴むと、そのまま琴美の胸や腹を5回も6回も膝蹴りをかました。
 胸と腹の攻撃で、琴美はその瞬間息が出来なくなり、うめき声を上げることしか出来なくなっていた。
 何とか体を捻り、攻撃を避けようとしたが、何しろ体格差は歴然としている。相手は2メートル近くもある巨人の様な筋肉質の大男であり、琴美は体格としては平均的である。グラマラスな体をしていると言われる事があるが、人間の体格として見れば平均的だろう。
 琴美には、代々から伝わる忍者としての術があるが、ここまで追い詰められると、その技術も追いつかなくなってきてしまう。直接の肉弾戦で勝てないことは目に見えてわかっていた。
「くっ」
 歯を食い縛ろうとするも、痛みで口にすら力が入らない。鬼鮫はすでにかなりのダメージを受けている琴美に、決して攻撃の手は止めなかった。再び顔に強烈なパンチを繰り出す。
 が、今度の攻撃はうまく手で受け止めることが出来た。必死に抵抗し、琴美はクナイを鬼鮫の首目掛けて突き出した。
「おっと!」
 かすりはしたが、早さが足りず避けられてしまった。先ほど琴美が、クナイで腹につけた傷は、いつの間にか完治してしまったようであった。
 服がクナイで破れたままになっているが、血が滲んだ場所は乾いてしまっており、新しく血が流れたあとは見受けられない、つまりは、鬼鮫はほんの数分の間に、自分の傷を治してしまう能力を持っているのだ。現に、今さっき琴美が鬼鮫の首筋につけたかすり傷も、もうなくなってしまっていた。驚くべき治癒能力である。
 どこでそんな力を身に着けたのかはわからないが、だからこそこの男はこれまで様々な殺人を行ってきたのだろう。犠牲となった超常能力者も、それなり力をもっていたはずである。それでもこの男が狙った全ての超常能力者達を葬り去ることが出来たのは、この驚異的な治癒能力があったからこそ、なのかもしれない。
「何て、人なのかしら」
 琴美は汗をぬぐおうと。すかさず後ろへ下がり額に手を当てた。その瞬間頭の中がぐるぐると回転したようなめまいに襲われた。体が悲鳴を上げている事はわかっていた。
 もはや、琴美がこの鬼鮫を倒すか、それとも鬼鮫に倒されるか。琴美の選択肢はこのどちらかしかなかった。
「まだだ。俺の腹はまだ煮えたぎっているんでな」
 鬼鮫は、琴美の頭部を腕で挟み込み、捻るように絞り上げた。
「あぁっ!」
 顔と首が締め付けられる。その締め付けから逃れようとするが、強靭な太腕は簡単には外れない。さらに両腕を羽交絞めにされ、琴美の後頭部を鬼鮫が押し極めた。
「うっ!」
 首の関節技と呼ばれるものだろう。格闘技を会得しているからこそ、こんなことが出来るに違いない。
 琴美は技を決められるたびにうめき声を上げた。早くこの技から抜け出さないと、大変な事になる。
 ここが格闘技、スポーツの世界なら敗北を認めればそれで終わりだが、今琴美が負けを認めれば、最後は命を取られるに決まっている。
 どうにかして、この状況から脱出しようと試みるが、鬼鮫の技は見事というほどに綺麗に決まり、琴美は動くことすら困難になり始めていた。
「お前も可哀想な娘だな。上司からこんな事命令されなきゃ、こんな恥をかかずに済んだのにな」
「私は、命令されたから、ではなく、自分の使命として、ここへ来たのです」
 あざ笑う鬼鮫に、ようやく言葉を浴びせた。せめて言葉だけでも、この男に抵抗をしたかった。
「そうかい。じゃ、その上司は関係ないってことだな。ま、どっちだって俺はいいんだが」
 鬼鮫は琴美の上着を両手で掴み、そして引き裂いた。
「あっ!何をっ!」
「恥をかかしてやるって言っただろ?」
 下着がむき出しになり、豊満な胸の形が現れた。鬼鮫は、獣の様に琴美を押し倒したと思うと、今度は腕挫十字固を琴美にかけた。頭部と腕を締め上げられ、しかもそのまま技をかけ続けられた為、ヒジからバリバリ音がし、腱が痛み出した。このままだと、腕の筋が避けてしまうかもしれない。
「うぅ、やめて」
 やめてと言って、やめてくれるような相手でないことはわかっていた。さらに鬼鮫は足にも関節技をかける。足を急激に反対方向へと伸ばされ、足に激しい痛みが走った。
 防御をする隙すらなかった。琴美は、鬼鮫にされるがままに首や頭、手足に関節技をかけられて、立ち上がる力すらなくなってしまった。目がかすみ、酷い耳鳴りがし、耳が遠くなってしまっているようであった。
 鬼鮫は、その必要もないのに、恥をかかせようと琴美の忍者衣装を破り、彼女は傷だらけの上に、ふくよかな胸をさらけだし、細くて白い手足をさらしてしまっていた。その白い肌にはところどころに血の滲んだあとや、赤黒い痣が生々しく残っている。
「そんな姿で、俺にいじめられるなんて、思ってもいなかったか?それとも、ちょっとは予測してたか」
 鬼鮫は琴美の髪の毛を再び掴み、物を放り投げるように床へ叩き付けた。すでに立ち上がる力もほとんど残っていない琴美には、敗北の文字が浮かび上がっていた。
 それでも、琴美は必死で鬼鮫の暗殺を考えていた。どの方法でこの窮地から脱出しようか。
 最後まで任務を全うする事だけを考えている琴美に、鬼鮫はさらに激しい攻撃を繰り出そうとしていた。(終)
PCシチュエーションノベル(シングル) -
朝霧 青海 クリエイターズルームへ
東京怪談
2010年03月15日

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