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『激闘必至?!ご近所迷惑な盗賊団を征伐せよ! 』
ガイ3547)&(登場しない)

『個人じゃ怖いけど団体なら平気です』な根性では世間を渡るのは難しいな。
ふと浮かんだ極当たり前なことを考えながら、いきり立って襲い掛かる武装集団に小さなため息をこぼす。
例えて言うならアリの群れ。
道端に落ちたあま〜い砂糖菓子に我も我も群がる黒い集団。
見るからに一般人に迷惑かけてますな男たち……いや、盗賊団の手下たちを、軽々とふっ飛ばしながらガイは遠くから成り行きを見守っている依頼人たるご老人の姿を見とめ、まさにそうだな、苦笑をこぼした。

「すまんが、次の街まで護衛を引き受けてくださらんかな?」
日々これ修行なりと町の力自慢大会に出たガイに声を掛けてきたのは長く伸ばした白いあごひげを撫でながら頼み込んできた老人は交易商人を束ねる頭領。
大会を主催した商人とも馴染みの深い老人はは一目見てガイを気に入り、直々に頭を下げてきた。
「街道で大きな顔をしとる傭兵崩れどもがおってのう。他の隊商も襲われたりと被害が出ておってな……こちらも自衛しとるが、皆不安がっとる。お前さんみたいな御仁がおればワシらも安心できる」
この通りと懇願されて、ガイは断るはずもない。
おまけに提示された報酬額も相当な破格。
これも修行の一環だと引き受けたガイに頭領はさらに深々と頭を下げてぼやいた。
「もうちっと身を入れて働くとかお前さんみたいに修行とか思わんかの。まぁ人様に迷惑かけとることが分かっておらんのは当たり前か…情けないのう」
やれやれと肩をすくめた頭領の言葉が今更ながら身に染みた。

気心のしれた人ばかりで待遇その他は全く問題はなかった。
が、町を出発して数分も立たないうちに襲ってきた盗賊団に頭を抱えたくなった。
ダガーや三日月刀で切りかかってくる連中もいれば、弓矢や爆弾などといった遠距離攻撃。
さらに加えてかなり腕のいい魔導師がいるのか、突如、地中から火柱が噴き出すわ、透き通るような青空から氷のつぶてが落ちてくる。
最も炎と氷が一片にきたので、威力は相殺。
全く被害はなく、すぐ近くで互いを罵りあう魔導師二人の姿が丸見え。
問答無用にガイが殴り飛ばしたのは言うまでもない。
その直後に駆け出しらしき暗殺者が襲ってきたり、と、たかだか3日の護衛がものすごく忙しかった訳である。

で、総仕上げが冒頭に至る。
ことごとくガイに邪魔立てされたとこに苛立ったのか、盗賊団は数に物を言わせて襲ってきた。
さすがに隊商の護衛たちもこれにはうんざりしながら戦っているのが良く分かる。
なにせ場所が両側を高い絶壁に挟まれた谷間。
後退しようにも大量の物資を積んだ荷車を反転させるもの一苦労な上、ご丁寧に崖の上から狙い済まして大岩を落としてくる。
頭領たちの素早い指示で混乱に陥っていないが状況が不利であるのは変わりない。
「ここで食事なんて取ってるお前らが悪いんだよ!!」
「大人しく積荷を置いていけやぁぁぁぁぁぁっ!!」
手前勝手な叫びを上げて襲い掛かる連中に正直うんざりだ。
大体、この崖の上に登るには真反対にある―これまた険しい山道を踏破しなくてはならない。
それだけの努力をしてまで来るなら、まともな仕事をしろと怒鳴りたくなる。
怒りを押さえ込みながら、ガイは精神を限界ギリギリまで高めていくと同時に青白いオーラが両手両足を覆う。
淡い光が頭上で膨れ上がり、両腕で抱えるほどの球体が出現する。
「離れろ!!ガイさんの邪魔になるなぁぁぁぁぁっ」
「おうっ!!」
瞬時に気付いた護衛隊長の怒号に護衛たちは異口同音に叫ぶと隊商に被害が及ばぬよう盾を造る。
商人たちも身体を屈め、衝撃に備えた。
「煉獄気爆弾!!」
気合充分なガイの絶叫とともに間抜けた顔でそれを見ていた盗賊団に直撃し――きれいさっぱり吹き飛んでいた。
極限まで練り上げられたオーラの塊を受けて無事で済む連中は皆無。
あっさりと護衛たちに捕縛され、空の荷車に放り込まれて町まで連行されていく。
「やれやれ、一段落かの」
どこか疲れた目で呟く頭領の言葉がやけに深くガイの耳に染み込む。
そして、その言葉どおり事態はさらに厄介さを絡めて待ち構えていた。

目的地の町にたどり着いたのは昼を過ぎたころ。
役所に盗賊を突き出したが、頭領たちはその足で取引先へ向かうこととなった。
「すまないの、皆さん。ワシの知り合いがやっておる食堂に話を付けておいた。皆で好きなだけ飲み食いしてくだされ」
無論、報酬とは別件じゃと言い置いていくところはこの頭領の懐の大きさだろう。
歓声を上げ、意気揚々と食堂に向かい―大乱闘に勃発した。

「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「覚悟しやがれっっ」
「どぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」
「ちぃっ、さっさと囲みやがれ。つかまった奴らのあだ討ちだ……気合入れていくぞっ、野郎ども!!」
無駄に雄叫びをあげて、気合充分に掛かってくる盗賊に心の底から呆れ果てながら、ガイは器用に料理を片手に乗せ、オーラを纏わせた右腕を軽く振る。
群がっていた盗賊たちは食堂の壁に直撃し、バラバラと落ちていく。
異様に目を血走らせた盗賊たちは怯むこともなくガイに群がる。
先の闘いを見てきた結果、どうやらガイが護衛団のまとめ役と判断したらしく、他の護衛よりも戦力を注いでいく。
「おいおい、飯ぐらいゆっくり食わせろよ」
「やかましいぃっ!!テメーみたいな妙な奴に言われたくないわ!!」
盗賊たちを仕切っていた幹部らしき男は長刀を振りかざし、ガイに切って掛かる。
だが単純明快な攻撃を滑るようにかわし、男の足を軽く引っ掛けてやる。
大げさに踏鞴を踏んで倒れかける幹部の真横へ回り込み、がら空きになった腹へ強烈な膝蹴りをお見舞いした。
その反動を利用し、後ろから振り下ろされた棍棒を左腕で払うと男の顎に鋭いカウンターを喰らわせる。
ばたりと床に崩れ落ちた二人とは対照的にゆっくりと食事をしているガイの姿は言いようのしれない恐怖を引き起こさせる。
しかも倒されたのが幹部と知るやいなや、我先とばかりに逃げ出していく始末。
いきなり仕掛けられた大乱闘はこうして唐突に終結した。
後には無残に壊された椅子やテーブルに食器類。あちこちに飛び散った数々の料理の残骸と酒瓶。
当面営業などできない状況に追い込まれ、さめざめと泣き出す店主をなんとか励ます店員たちだが、どの顔も一様に青ざめている。
店が盗賊に目をつけられた―という噂は瞬く間に広がるだろう。
あっという間客も寄り付かないのは明白だ。
「困ったもんだな、これじゃゆっくり飯も食えない」
「だったら、アンタがなんとかしてくれないか?」
綺麗に食べ終わった皿をわずかに無事だったカウンターの上に置きながら、後頭部を掻くガイを咎めるような色を含んだ声が響く。
ゆっくりと辺りを見回すと、ガイから3席ほど離れた無傷のスツールに腰掛けた鋭い目つきをした青年が向き合うように座っていた。
「ここいらの街道を荒らし放題にしていた連中だ。見事に返り討ちにしてくれたアンタを痛い目にあわせないと気がすまないんだよ」
スツールから立ち上がると、青年はガイの前に右手を突き出し、臆面もなく問いかける。
「どうする?あいつらを叩く自信があるってんなら、俺の情報を買ってくれ」
なるほど情報屋か、と思いながら、随分と素直な交渉を仕掛けてくるもんだ、とガイは感じ、思わず苦笑を浮かべながら考えを巡らす。
このまま護衛を辞めてしまえば、さすがにちょっかいはかけてこないだろう。
だが、被害が変わらないというのは少々胸を痛める。
何よりあの様子からでは襲撃がまたあるのは目に見えていた。
「この店には恩がある。多少ばかり色をつけてくれないか?そうしたら言い値でかまわないぜ」
「……いいだろう。お前の知っている情報を全て買おう。詳しく話してくれ」
ガイは腰に付けた革袋から、やや大目の金貨を取り出し、それを握らせると静かに青年の情報に耳を傾けた。

街道からやや山脈沿いに踏み込んだかつての採掘場跡地の岩場が盗賊団のアジトだ、と聞かされた通り、そこには見張り役の数人の男たちがほっかりと空いた洞窟の入り口で焚き火を起こしながら、ゲラゲラとカード遊びに興じていた。
周囲を包む漆黒の闇に身をうずめ、気配を立ちながら近づくガイに全く気付かず、カードにのめり込み、盛り上がっていく。
「やりぃ、大勝だぜ」
「ハッほざいてろ。どうせ明日の襲撃ですぐ稼いでやるさ」
身勝手な発言にガイはこの日何度目か分からないため息をつく。
あれだけやられたにも関わらず、襲撃を考えるとはやってられない。
ガイは意を決するとゆらりと見張りたちの背後へ近づいた。

大地を揺るがす激しい波動に混乱し、右往左往する盗賊たちを片っ端から殴り倒し―あるいは蹴り飛ばす。
夜襲をかけるのはお家芸だが、受けるのは苦手だなと冷静な分析をしながら、ガイは思う存分に力を振るう。
先刻の『大地の衝撃』と気の力の複合技で唯一の出入り口を塞ぎ、盗賊たちから逃げ場を奪いっておいた。
朝になれば役人達が駆けつけて、一網打尽にすると情報屋に手を打たせておいたが、ここまで散々迷惑をかけられた分のお返しはきっちりしておいた方がよいだろう。
鍛え上げた筋肉のみを行使し、次々と盗賊たちを気絶させて、最奥の間に足を踏み入れた瞬間。
目の前に落とされたのは円錐状の岩。
その奥にはどす黒い怒りに目を光らせた盗賊団の頭らしき細身の男が射殺さんばかりに睨みつけていた。
とっさに後方に飛び去ったお陰でさしたる被害はないが、不意打ちとはやってくれる。
「どうにもやるもんだな、呆れて物が言えないぜ」
「黙れ!雇われものがっ……俺が創り上げた組をコケにしやがってっ!!ただですむと思うなよ」
喚き散らすがいなや、頭は手近かにあった組紐をに引いていく。
天上から隙間なく打ち落とされる弓矢をガイは先に落とされた岩を引き抜くと、槍のように頭上で軽々と振り回し、弓矢全てを跳ね返す。
あまりの力技に唖然とする頭のすぐ目の前に投げ飛ばされたのは、ほんの少し前までガイが手にしていた大岩。
眼前に落ちてきたその恐怖に凍りつき、身動きがとれなくなったところを狙って、ガイは思い切り助走をつけて大岩を砕け散らしながら、その情けない顔面に強烈な鉄拳を食らわせていた。

大勢の兵士に取り囲まれて連行されていく盗賊団の馬鹿馬鹿しいまでの数に町の誰もが呆れると共にその壊滅に胸を撫で下ろす。
やりたい放題に隊商を襲われて物資不足が生活を直撃する一歩手前だったのだ。
町の人々の怒りは相当なもので、連中も相応の罰を受けることになるのは確定していた。
「ガイさん、お前さんのお陰ですじゃ。なんとお礼を言ってよいものやら」
もう一度最初の町へ戻る護衛を依頼され、今度は何事もなく帰ってこられたことを喜び、頭領はガイの手を取り、改めて感謝を述べた。
たった一人で盗賊団と立ち向かい、見事壊滅させたという話にいたく感激した者が大勢いる。
被害を受けなかったものは皆無だっただけに喜びが大きいのだ。
「気にすることはない。これも修行だ」
にっと人好きのする笑みを浮かべるガイを頭領はすっかり気に入ってしまった。
これほどの腕前、気持ちのよさ。何より気難しい護衛団の連中がガイを尊敬している。
もうすこしいてもらえれば、護衛団にとって学ぶべきことが多いだろう。
瞬時に判断した頭領は飛び切りの笑顔を浮かべて、ガイに再び頭を下げた。
「ガイさん、良ければワシの店で短くても構わんから警備を手伝ってくれんのう?お前さんがいてくれたら、警備の連中もいい刺激になるなぁ」
無論報酬に糸目はつけんよ、と笑う頭領にガイもすっかり気に入り、快諾したのは言うまでもない。
透き通るような青空に二人の笑い声がいつまでも響き渡っていった。

FIN
PCシチュエーションノベル(シングル) -
緒方 智 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2010年04月15日

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