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『 コガ〜ムダドロなき戦場〜 』
古河 甚五郎(ga6412)

●プロローグ
 その日、天爪は新発売のKV・TCG(トレーディングカードゲーム)の件でイタリア・カプロイア社の宣伝部、アレッシオ・ジュリアーノと会談を進めていた。
 場の余興として取引相手はカードゲームを提案。

「アマツメ、賭けねえか? シチリアの人間は賭けなきゃ本気が出せねえ」
「‥‥幾らでしょうか?」
「オイオイ、アンタの国じゃカネを賭けるのは御法度だろ? そうだな‥‥シュテルンでどうだ?」
 アレッシオは天爪のデッキのシュテルンのカードを一枚指差す。
「トレーディングですか。成程、健全です。では私が勝ったらヘルヘブンを」

 この時‥‥天爪が気付いていたならっ‥‥!!

●Kカード
「‥‥8ターン‥‥オーバーキル‥‥だと‥‥!?」
 一方的っ‥‥!
 勝利したのは‥‥アレッシオ‥‥!
「クク‥‥悪いな‥‥では渡してもらおうか‥‥」
(「仕方ないな。私物じゃないんだけど、取引先だし‥‥」)
 苦笑いと共に天爪はシュテルンのカードを差し出す。
 だが‥‥、

「なんだ‥‥これは‥‥?」
「? 賭けていたシュテルンですが‥‥?」
 アレッシオの表情が一変した。
「ぶち殺すぞ‥‥ゴミめが‥‥!
 誰が紙の玩具など欲しがった‥‥?
 オレは言った筈だ‥‥『シュテルン』を寄越せと‥‥!」
「な‥‥ま、まさか‥‥」
 それはつまり‥‥、
「馬鹿なっ‥‥!」
 目が『><』の字になり泣く様に叫ぶ天爪。一市民にシュテルン一台は高過ぎる。
「いい度胸してるじゃねーか‥‥シシリアン相手に鉄砲で挑むとはなァ!!」
「そんな‥‥酷過ぎるっ‥‥!」
 今度は目がアメーバの様に泳いでいる。涙目だった。


「お困りのようですね‥‥天爪さん‥‥。
 シュテルンの代金‥‥立て替えましょうか‥‥?」

「あ、貴方はっ‥‥!」
 現れたのは黒髪の長髪を後ろで縛った痩身の男。赤い瞳が爬虫類の様にギラついていた。
「ジンゴロー・フルカワ‥‥」
「『コガ』で結構です、侵略者殿」
「クク‥‥合意の勝負に勝っただけで侵略者とは随分――」
「猿芝居は地球人の専売特許ですよ、バグアと言わねば御不満ですか?」
「な‥‥!?」
 カプロイアの社員であるはずの男に振り返る天爪。
「流石は伝説のデュエリスト・コガ‥‥お見通しか‥‥カプロイア伯爵の首を狙っていたが、貴様の首も悪くない‥‥」
「レート・シュテルンの次はレート・コガか‥‥構いませんよ、そんなチンケなレートで貴方が満足するのでしたら‥‥」
 コガの笑みには明らかな挑発が。
「面白え‥‥なら何を賭けるっていうんだ‥‥?」
 挑発に乗るアレッシオ‥‥。
 コガが晒う‥‥。
 悪魔的笑みっ‥‥!

「スチムソン博士‥‥」

 ざわ‥‥

「は‥‥?」
 間の抜けた声を上げたのは天爪。

「トマス・スチムソン博士というのはどうです‥‥?」

 ざわ‥‥ざわ‥‥

「レ、レート・スチムソンっ‥‥!!」

 ギロリと睨むアレッシオ。だが口元にはコガ以上の悪魔の笑みが‥‥。
「飛んだぞっ‥‥眠気が‥‥!」

●萌えの国・ニッポン
「オレのターン! ドロー! ステアー出撃! 攻撃力2800!」
 アレッシオはバグア側仕様のオリジナルカードを選択。勿論、内容は天爪がチェック済み。
「岩龍で防御」
 だが撃墜っ‥‥!
「コガさんっ‥‥!」
「落ち着いて、天爪さん‥‥」
「人類の命運がかかっているんですよっ‥‥!」
 両手を掲げてオーバージェスチャーで訴える。しかし、敵のカード内容を言えば反則負けっ‥‥。

 コガのターン‥‥ドロー‥‥!
「XF‐08D‥‥雷電‥‥出撃‥‥!」
(「やったっ‥‥これなら‥‥!」)
「クク‥‥微温いな‥‥コガ‥‥」
 アレッシオは晒う‥‥。
「強いカードが回ったから勝てるだろうという安易な考え‥‥楽天的思考っ‥‥そのような行動が‥‥最も危険なのだ‥‥TCGではっ‥‥!」
 アレッシオのリバースカード‥‥オープン‥‥!
 トラップカード‥‥マインドイリュージョナー‥‥!
「雷電の攻撃はお前自身に向かう‥‥壊滅せよっ‥‥メトロポリタン・リバースっ‥‥!!」

 コガのライフ残り100‥‥!
「コガさんっ‥‥!」

 アレッシオのターン‥‥ワームカード‥‥ラインホールド出撃っ‥‥!

 ざわ‥‥ざわ‥‥

「死ねっ‥‥コガっ‥‥!」

 だが‥‥コガ‥‥
 笑うっ‥‥。
「見誤りましたよ‥‥あんた‥‥」

 ざわ‥‥

「貴方は言った‥‥強いカードで押し潰すのが最も危険な行動だと‥‥!」
 唯一残っていたリバースカードをオープンする。
「受け取れっ‥‥これが自分の‥‥回生の一手ですっ‥‥!」
 めくられたカードには青髪の少女。
「トラップカード‥‥ロッタ・シルフスっ‥‥!」
 効果はこのターンの攻撃中止っ‥‥!

「ぐっ‥‥だが‥‥手前ェのライフは残り僅か‥‥敗北は変わらねえっ‥‥!」
「そういえば‥‥
 まだ言ってませんでしたよね‥‥自分が勝ったら何を望むか‥‥」

 ざわ‥‥

「こっちはレート・スチムソン‥‥ならば相応のものでないとね‥‥」
「何を‥‥望む‥‥?」
 コガの赤眼が輝いた気がした。
「レート‥‥ディエア・ブライトン‥‥!」

 ざわ‥‥!

「手前ェ‥‥!」
「連れてきて貰いますよ‥‥」
(「知っているっ‥‥! アレッシオのこの反応‥‥ブライトン博士の居場所を知っているっ‥‥!
 だが話せばおそらく命はない‥‥裏切り者は消されてしまうというわけか‥‥!」)
「自分はこのドローに全てをかけます」
(「そこまでやるからには勝てるんでしょうね‥‥コガさん‥‥そのドローカードは強いんでしょうね‥‥!?」)
「さあ、コールかドロップか宣言してもらいましょうか、アレッシオ!!」
(「い、言ってやる‥‥! オレはバグア最強のデュエリストだ! コールというぞぉ〜!
 それにもうヤツに手持ちのカードはない。ドローだと? バカめ。
 デュエルというのは運否天賦で決まるものじゃあない‥‥冷静に『勝ち』への道筋を見つけた者のみが勝利するっ‥‥!
 特攻などギャンブルにおいては最も愚かな行為っ‥‥オレの勝ちだっ‥‥死ねっ‥‥コガっ‥‥!」)
 アレッシオのコールを受け、コガは山札に手を伸ばす。

「‥‥自分が‥‥特攻に見えましたか‥‥? アレッシオ‥‥」
「特攻だろうがっ‥‥!」
 アレッシオは勝利を確信していた。
 次ターンで確実に殺すっ‥‥!

「なら‥‥楽天的思考は貴方の方です‥‥!」
「あ‥‥?」
「貴方のそれは読みではない‥‥『こうあったらいい』という己の希望を反映させているだけ‥‥自分の都合のいい‥‥安易な解釈‥‥」
「黙れっ‥‥もういい喋るな‥‥死に際に愚図愚図と‥‥負け惜しみを‥‥」

「負け惜しみではありません‥‥礼ですよ‥‥」
 コガ‥‥再び‥‥笑う‥‥。
「ラインホールドを出していてくれてありがとう‥‥!
 勘違いしてくれて‥‥ありがとう‥‥」
「? ?」

 コガ、ドロー‥‥!
「トラップカード‥‥『マウルのプレゼント』っ‥‥!」
 効果は‥‥爆破‥‥!
 対象ワームの攻撃力分のダメージをプレイヤーに‥‥!
 ラインホールドの攻撃力‥‥5000っ‥‥!!

「受け取りなさい‥‥マウルたんのクリスマスプレゼント・ドローっ‥‥!」

「‥‥‥‥!」
 アレッシオ、言葉にならず‥‥。
 視界が歪むっ‥‥歪むっ‥‥!

「ライフ0‥‥決着ですね‥‥」
「馬鹿なっ‥‥こんな局面で‥‥都合よく‥‥」
 その時、アレッシオ、カードから発する匂いを嗅ぎ付ける。
「シンナー‥‥? インクの匂い‥‥。
 !? まさか‥‥!
 描いたのかっ‥‥! マウルのイラストを‥‥カードの上から‥‥! い、いや‥‥ロッタからも‥‥馬鹿な‥‥あの一瞬で‥‥!?」


「帰りますよ、天爪さん」
 ジャケットの袖に仕込んだ複数本のペンを仕舞い、コガは戦場を後にする。
「あ、ありがとうございました、コガさん。なんとお礼を言えばいいやら‥‥」

「気にする必要はありません。

 少々指が疲れただけです」


   コガ〜ムダドロなき戦場〜


●B級職人・甚五郎
「‥‥‥‥」
「とまあこんなところですね。いかがですか? 天爪さん」
「いや、私がいつも通りヘタレなのは突っ込みませんがね‥‥いくらなんでも無茶苦茶じゃないですか? そもそもこれ対象層どこなんです?」
「大きなお友達に決まってるじゃないですか。KVTCG『CTS』は幅広い年齢層をカバーせねば」
「はぁ‥‥これ、売れるんでしょうね‥‥?」
「嫌ですねえ、天爪さん」
 映写室の明かりをつけて青白い表情を無駄に明るく、古河は言う。

「自分の手掛けた作品が売れる訳ないでしょう」

――――――――――
発注ありがとうございます。
センス溢れる古河さんに一言。
『混ぜるな危険』
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2010年04月30日

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