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『春の宴〜桜華放心〜 』
葵 宙華(ga4067)

 もう人へは戻れない
 
 心通う事もない
 
 ただお互いの世界の為に命を削りあい、闘う事でしか語りあえない
 
 今の自分では喰われるのは判っている
 
 頭で理解していても挑まずにいられない
 
 自分が活きるのは生と死の狭間だと自覚してしまったから
 
 何も持たない自分が唯一活きる時間
 
 それを共有できる人間……
 
 魂を切磋琢磨する時間を有する相手が欲しい
 
 それを求めて彼を求めた
 
 その彼が、今、桜の木の上にいる……
 
〜出会いは突然に〜
「あんた何やってんのよ?」
 私が桜とは違う甘い匂いを感じて見上げた先にはアスレードがいる。
 バグアの精鋭部隊ゾディアックのリーダー”魚座”であり、数々の傭兵を窮地に陥らせ、畏怖される存在だ。
 でも、私にとってはそれ以上に惹かれるものを持つ男。
 桜の木に登ってココアで一杯やっているアスレードの元へ近づいた。
 白い巫女服をアレンジした衣装にミニスカート、髪を白薔薇の意匠の髪留めでとめている私の姿は彼にはどう見えるのだろう?
「ハンッ、見てわからねぇのか? 花見だ……」
 私を一瞥すると興味なさげに視線を上に向けて缶ココアを口につける。
 その行動に私の胸がチクリと痛む。
 私の存在は缶ココア以下なのだ。
 どれほど彼の強さに憧れようと戦場でしか生を見出せない彼と自分は理解しあうのもお互いが喰うか食われるかの闘いをするときだけと……。
 でも、そうでない気持ちが私の胸の奥からでてきた。
「花見は分かっている……でもね、スキなのよ」
 微笑みを浮かべて同じ缶ココアを取り出して軽く当てる。
「ククク、てめぇは変わってるな」
「あんたに言われたくはないわね」
 私の眼を見てアスレードはニヤリと笑った。
 舐められまいと口から戯言を吐きながらも、このやりとりでさえ充実した”何か”を私は感じている。
 甘いココアが喉を潤すと、私はそのまま向き合いながらアスレードの目の前に座りながら話を続けた。
「あんたに桜のよさなんて判るの? アタシ達の事さえ理解できないのに」
「理解? する必要がどこにある。てめぇらの歴史を見れば十分だ。同種同士で戦い合い、弱者は排除してのし上がり、そして驕って滅んでを繰り返す生き物だってのはな」
 アスレードの答えは単純明快だった。
「じゃあ、あんたらバグアはもっと利口だとでもいうの?」
「利口か馬鹿かなんてのは関係ねぇ。ブライトンのクソジジィは人類の進歩がどうのといっているが俺様には関係のねぇ話だ。必要なのはてめぇらがどこまで強くなって俺を止めれるかだな」
 余裕そうな口ぶりだが、最後の方はどこか寂しさがあるように感じた。
 何故だろう?
 でも、そういうところも含めて、私は彼に惹かれている。
「アタシもあんたも、血の匂いがする……この世界から抜け出せない」
 身体は既に動いていた。
 
 魂を燃やせる相手が目の前にいるのだから……
 
 手の届くところにいるのだから……
 
 求めた……
 
 缶ココアがアスレードの口につく前にアスレードの首に手を回し抱き寄せるようにキスする。
 恋人同士の甘いものではなく、獣のようなキスを私は彼にしていた。
 このまま相手の舌を噛み切ることだってできるが、私もアスレードもしなかった。
 互いに舌を傷つけあい、流れる血を舐め合いながらキスを続け、離れる。
「アタシもあんたも、血の匂いがする……この世界から抜け出せない」
「抜けるつもりははなっからねぇよ……てめぇもそうだろ? 同じ、血の味がするぜ」
 ぺろりと舌なめずりをしたアスレードが鮫のような笑みを浮かべた。
 同種の存在と認めたのか彼の瞳が射抜くように私の瞳を睨んでくる。
「そうね……私は……」
 答えを言おうとしたとき、私の意識は白く薄れていった。
 
〜別れは夢として〜
 目を開けるといつもの部屋だった。
 桜の木も甘いココアの香りもない部屋。
 ただ、乾燥した部屋のせいか唇が乾いていたため、きっている。
 流れる血を舐めると夢の中と同じ味がした。
 これが彼の味……。
「次あったときは殺愛[やりあい]ましょう……お互いの武器を持って」
 春に見た夢は私の心を満たすに十分なひと時だった。
 
 
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 /外見年齢 / クラス】
 ga4067  /葵 宙華 /  女 / 18歳 /スナイパー

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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はじめてのノベル注文ありがとうございます。
橘真斗です。

エイプリルフールの兵舎イベントから懇意にしていただいたようで嬉しく思います。
今回はいちゃつきということで、言葉遊びをしつつ求める感じをだしてみましたがいかがでしたでしょうか?
リテイク等がありましたら遠慮なくおっしゃってください。

それでは、次の運命が交錯するときまでごきげんよう。
春花の宴・フラワードリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2010年05月06日

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