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『優雅な旅行の筈がどうしてこうなった。 』
幸臼・小鳥(ga0067)

 幸臼・小鳥(ga0067)
 ロッテ・ヴァステル(ga0066)
 月影・透夜(ga1806)
 アロンソ・ビエル(gz0061)

 この4名は『突撃機動小隊・魔弾』で共に戦う仲間だった。普段は血生臭い戦場に身を置く傭兵という立場の彼らだが、今回は普段の疲れを癒す為、そして息抜きの為に4人で旅行に行って遊ぼうと言う事になった。
 ホテルなどの予約は幸臼に任してあり、予約が取れたと彼女から他の3名に連絡もあったので安心しきっていた。後から思えば何で再確認をしなかったのかと悔やまれてならない。
「あの‥‥申し訳ありませんが、ご予約は入っておりません‥‥」
 幸臼が予約したのは世界に名だたる高級ホテル。至れり尽くせりの超セレブ待遇を味わえると聞いており全員が楽しみにしていた――がホテルのフロント係があまり聞きたくない言葉を4名に返してきた。
「え、で、でもちゃんと予約したようなぁ‥‥」
 幸臼が他の3名から浴びせられる威圧感たっぷりの冷たい視線に耐えながらフロント係に言葉を返す。
「あの、ちなみにいつご予約をされましたか? 半年前から満室でして‥‥もし半年からこっちでご予約のお電話を頂いているのでしたら、きちんとお断り申し上げているはずなのですが‥‥」
 フロント係も申し訳なさそうに言葉を返す。

〜 真相 〜

 旅行出発数日前。
「あのぉ‥‥4名で予約したいんですけどぉ‥‥あっ(ゴトン)」
「ご予約ですか? 申し訳ありませんが満室でして‥‥もしもし? お客様?」
「あ、すみません‥‥受話器を落としてしまってぇ‥‥」
「いえいえ、よろしいでしょうか?」
「あ、お願いしますぅ」

〜 真相終了 〜

 つまりフロント係にも不備がなかったわけではないが、幸臼も受話器を落としてしまっていたせいで肝心な所を聞き逃すと言う事をしてしまっていた。
 その為に予約がされていなかったのだ。満室なのだから予約が取れる筈も無かったのだけれど。
「‥‥どういう事なのかしらね」
 幸臼のこめかみを拳骨でぐりぐりと攻撃しながら静かに呟くのはロッテ。彼女が怒るのも無理はない。高級ホテルに泊まれると楽しみにして来たのに、何故か今夜の寝る場所も確保できていないと言う事態に陥っているのだから。
「ま、まぁまぁ‥‥此処でこうしてても仕方ないだろ? とりあえず寝る所を確保しなくちゃ‥‥」
 月影がロッテを宥めながら言葉を投げかけ、4名は高級ホテルを名残惜しそうに出て、泊まれる場所がないかを探す――のだが、何故かどこも満室と言う事態。
「‥‥何で俺はテントなんか持ってきているんだろうな」
 ごそごそと自分の荷物を探りながらアロンソが呟く。確かに何故高級ホテルに泊まるはずだったのにテントを持参してきているのかは謎なのだが、とりあえずテントを張る場所さえ見つければ外でごろ寝という事態だけは避ける事が出来そうだ。
「キャンプ場なら、此処から6キロほど下ればあるよ」
 テントを張る場所がないかを近くの民家で聞くと6キロ徒歩を要求され、身体を休める為に来た筈の旅行で何故か余計に疲れているような気がしないでもない4名だった。
 それから6キロほど歩いた所でようやくキャンプ場が見えてきて、アロンソと月影がテントを張って、寝る場所だけは確保する事が出来た。
「今頃セレブ気分のはずだったのに、何でこんな健康的な事になってるのかしらね」
 再びロッテが拳骨でぐりぐりと幸臼を攻撃しながら問いかけると「ご、ごめんなさいぃ」と幸臼の涙混じりの声が響き渡る。
「で、でも料理だけでも豪華にぃ‥‥」
 勿論食材などは持ってきていないので探してくる事になりそうなのだが、食材探しは男性陣に任せて、女性陣は料理の準備を始める事になる。
「それじゃ、私が作りま――いたぁい!」
 幸臼が呟きかけたのだがロッテの拳骨ぐりぐりが三度炸裂し、幸臼は言葉を途中で止める。
「私も作るわよ」
 ロッテが不敵に笑む。アロンソが居るという事もあり、幸臼もロッテも妙に気合が入っている。
(「‥‥嫌な予感しかしないのはきっと気のせいだよな」)
 そんな女性陣を横目に見ながら月影は悪寒を感じ、自分の料理は自分で作ろうと決意する。恐らくそれが被害を避ける唯一の手段だと本能的に感じ取ったからだろう。
(「料理なら出来るもの‥‥頑張るわよ」)
 食材を探しに行くアロンソを見て、ロッテは燃える何かを感じ、幸臼もおどおどとしながらだったが「私だってぇ‥‥」とロッテに負けないように頑張ろうと小さいながらも決意を露にした。

 一方、食材を探している男性達はと言えば‥‥。
 近くに綺麗な川があり、夕飯用の魚をアロンソが網で取り、月影は山菜などを取っている。勿論人体に有害な物もそこらに生えているので間違ってもそれらは籠に入れないように十二分に気をつける。
「高級ホテルでの旅行も捨てがたいが、こういう旅行も意外と嫌いじゃないかな」
 アロンソが「よっと」と魚を取りながら魚用の籠に入れて呟く。その言葉を聞いて「確かに。でも‥‥何も起こらなければいいけど」と小さな声で月影が言葉を返す。
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何でもない」
 聞き返してくるアロンソに月影は苦笑しながら言葉を返し、山菜取りを再開する。日がとっぷりと暮れる頃には4人で食べるには十分すぎる程の食材が取れ、幸臼とロッテの所へと食材を持って行き、その後のアロンソと月影はテントが倒れないように確りと張られているかなど野宿の準備をしていた――が月影だけはこっそりと自分の夕飯を作り始めている事にアロンソは気づいていない。
 そして、此処から女性2名の戦い(?)は幕を開けるのだった‥‥。

「ちょっと、この材料をあんまり取らないでくれる? 後から使うんだから」
「え、でもぉ‥‥これがないと私の料理も作れませんしぃ‥‥」
「別のを作ればいいでしょ」
 料理開始早々、食材の取り合いバトルが勃発しており、ロッテの威圧感に負けた幸臼は「うぅ‥‥」と涙声になりながら食材を奪われる。
「‥‥あの、何を作っているんですかぁ‥‥?」
 ぐつぐつとまるで地獄に存在すると言われている血の池のように煮えたぎる物体を見て幸臼が素朴な疑問を投げかける。
「決まってるでしょ、トマトスープよ」
 ロッテから言葉を返され、幸臼は勢いよく鍋の中の物体X(幸臼命名)を見る。どう見てもトマトの色ではなく、明らかに人体に有害なものにしか見えない。
「そ、そっちのは‥‥?」
「刺身よ」
 既に何の魚だったのかすら分からない物体α(幸臼命名)を幸臼は見なかった事にした。こうしてみればロッテの料理才能が疑われてしまうのだが、彼女は普通の料理はともかくサバイバル料理なら普通に出来る――筈なのだが今回はアロンソが同行している事もあり、気合を入れすぎて異次元料理になっているだけなのだ。大事な事なのでもう1度言うが、普段のロッテの料理が異次元な訳ではなく、今回が特別なのだ。
(「やっぱりか‥‥何となく悪い予感がするとは思ったんだよ‥‥」)
 水を飲みに来た月影がロッテの料理を見て苦笑を通り越して青ざめる。あの料理を食べさせられるのは恐らく――というか確実にアロンソなのだろう。あの物体を食べさせられるアロンソを想像すると、月影は少しだけ涙が出てきた。
「‥‥ある意味、大規模作戦だな‥‥」
 ぼそり、と月影は呟くが料理に夢中な女性2人は気づく事は無かった。もし気づいたとしても今は料理優先で何かを言われる事は無かったかもしれないけれど。
 そして――決戦の時間(アロンソ限定)はやってくる。

「‥‥‥‥なぁ、明らかに料理以外も混じっていないか?」
 並べられていく料理を少し離れた所で見ながらアロンソが月影に問いかける。
「いや、俺には何も見えん」
 余計なことを言うと確実に自分も巻き込まれるのを分かっているので月影はあえてロッテの作った異次元料理が視界に入ってきても見えない振りをした。異次元料理は何やら有害そうな黒い煙を吐き出しながら明らかに異臭を放っている。
「腕によりをかけて作ったわ。さぁ、食べてちょうだい」
「私も頑張りました‥‥食べてくださいね」
「透夜も‥‥「俺のことは気にしなくていいから先に食べてくれ」‥‥そうか」
 アロンソは助けを求めるように月影に言葉を投げかけるのだが、それを月影はいとも簡単に見捨てて、密かに自分用として作っていた料理を食べ始める。
「さぁ、今日は疲れたからお腹が空いてるでしょ」
 食べて、とロッテ異次元料理が盛られた皿をアロンソに差し出す。それを見た幸臼は食べ終わった後にどうか彼が無事でありますように、と祈らずはいられなかった。
「そ、それじゃあ‥‥イタダキマス」
 意を決してアロンソがロッテ作の異次元料理を食べ始める。もしかしたら見た目はアレもんでコレもんな感じの料理だが、もしかしたら味は奇跡的に美味しいかもしれない――という微かな希望がアロンソの中にあったのだが‥‥。
「ぐふ‥‥」
 もはやこの世のものとは思えない味にアロンソは眩暈、嘔吐などが一気に押し寄せてきた。
「どう? 結構気合いれて作ったつもりだけど」
 ロッテの言葉に(「そりゃそうだろう」)とロッテ以外の3名は心の中で呟く。気合を入れなければここまでの異次元料理は生み出せないだろう。
「どう? 美味しい?」
(「明らかに顔色悪くなってますぅ‥‥っていうか、物凄く震えてますぅ‥‥」)
 幸臼はどんどん顔色が青くなっていくアロンソが本気で心配になってきたのか「だ、大丈夫ですかぁ‥‥?」と言葉を投げかける。
「だ、い‥‥げふ‥‥じょうぶだ‥‥」
 アロンソは「大丈夫だ」と言葉を返してくるのだが、明らかに途中で嘔吐感を堪えているのが丸分かりだったりする。
「あ、あの‥‥と、とりあえず‥‥これを‥‥」
 幸臼が水を差し出しながら、自分の作った料理も一緒に差し出す。アロンソはそれも食べる。ロッテの異次元料理とは違って、普通に美味しい料理なのだが異次元料理の味が強烈過ぎてもはやアロンソが味を理解できる状態ではなかった。
「ほらほら、沢山作ったんだからちゃんと食べてよね」
 ロッテがこんもりと皿に盛られた料理をアロンソの前に差し出し、アロンソは治まったはずの眩暈が再び襲い掛かってくるのを感じていた。

 それから、アロンソは用意された料理を全て平らげてそのまま次の日の昼まで寝込む事となった。
 しかし此処で終わることは許されず、昼食と称して異次元料理が再びアロンソの前に並ぶことを今の時点のアロンソが知る由はなかった。
(「‥‥まぁ、料理は自分で作ってよかったな‥‥アレを食ったら、流石に無事じゃいられないもんな‥‥」)
 ラストホープに帰った時、ラストホープに在住する能力者達はげっそりと何故かやつれたアロンソの姿が見受けられたらしい‥‥。
 その哀れな姿に「一体何があった」と聞く勇気を持つ能力者は居なかったらしい。




―― 登場人物 ――

ga0067/幸臼・小鳥/11歳/女性/スナイパー

ga0066/ロッテ・ヴァステル/22歳/女性/グラップラー

ga1806/月影・透夜/21歳/男性/ファイター

gz0061/アロンソ・ビエル/28歳/男性/スナイパー

――――――――――

皆様>
こんにちは、今回執筆させていただきました水貴透子です。
今回は「連休…そうだ、旅行へ行こう」ノベルのご発注を頂きまして、本当にありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
面白いものに仕上がっていればいいのですが‥‥。
もしリテイクなどありましたら遠慮なく仰ってくださいませ!

追記・今回は此方のミスでご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした!

それでは、今回は書かせて頂き、ありがとうございました!


2010/5/12


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CATCH THE SKY 地球SOS
2010年05月13日

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