『白薔薇の夢 』

ロジー・ビィ（ga1031）

　夢を描いて、そして来たこの日に。
　ありがとうを伝えたい。


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　夢見てたんです、この日を。
　あたしの、カノン‥‥。あたしだけの、カノン‥‥。


◇
　白いドレスに身を包むと、如実に緊張感が湧き出てきた。
　もうすぐ、もうすぐだと。
　ロジー・ビーは静かに椅子に座った。
　胸を強く打つ早鐘を、ドレスの上から押さえる。
　すらりとした手も、今は長い白の手袋によって覆われている。
　ベアトップのドレスは、細いロジーの肢体を柔らかく包み込み、ふんわりと幾重にも布を凝らされたＡラインの裾にはたっぷりのレースがあしらわれていた。
　切り返しのポイントには、白薔薇のコサージュ。
　同じく、彼女の艶やかな銀色の髪を飾り立てるのも、白薔薇のコサージュである。
　緩やかに、しかし高く結い上げられた銀の髪をそっと押さえるように。
　優しく咲いている。
　窓から覗いたのは、はるか遠くで交わる海と空だった。



「ロジーさん‥‥」
　扉のほうで音がする。
　すでに開かれた扉には、対になるような白いタキシードに身を包んだカノンが立っていた。どうやら、存在を気づかせるのに叩いたようである。
　彼の立ち姿は、いつもとは違って大人びて見える。
　少し長めの黒髪は、掻き揚げるように整えてあり。魅力的な紅い瞳には、暖かな色を帯びていた。
　黒を基調とする彼が白の衣装に身を包むその姿は、彼女の胸をよりいっそう高鳴らせていた。
　カノンはロジーの様子を見て身支度が整ったのを確認すると、手袋を脱いで手を差し出した。
「カノン‥‥」
　ふわりと笑いながら、その手に重ね、立ち上がる。
「行きましょうか」
　その言葉に頷くと、大事なものを確かめるように、そっと抱きついた。


◇
　青い空がゆっくりと午後の日差し変わっていく中、白い建物は静寂に包まれていた。
　この建物の中には、波の音も届かない。
　時折聞こえる鳥のさえずりだけが、緩やかな時が流れていることを告げている。
　高い天井から差す窓の光が、やさしい光のシャワーを二人に注いでいた。
　入り口から、祭壇へと続く赤い敷布。
　寄り添うように、支え合うようにゆっくりと歩き出す二人。
「夢の‥‥ようですわ」
　曇りのない、晴れやかな笑顔のロジーに、カノンは微笑み返す。
　確かめるように繋いだ手に力を入れると、返ってくる強さ。そこに、またひとつ幸せを感じた。
　繋いだ手を、そっと腕へと移し変え。
　胸を張って立つカノンに、ロジーは逞しさすら見出していた。


　一歩、一歩。
　踏みしめるように進みながら。
　この、白い教会の中には誰もいない。
　いるのは、ロジーとカノン‥‥そして神父だけ。
　問われるのは、一つの言葉だけ。
　誓いの言葉は、想った以上に簡単に流れ出、返される相手の言葉に安心を覚える。
　苦楽を共にした、親類もいない。ブーケを受け取ってくれる、友人もいない。
　二人だけの、誓いの場。二人だけの――結婚式。
　自分と同じ気持ちを持つ、あの友人もいない。存在を許せるはずの、あの金すらも。
　ふとよぎる、その金の残像を掻き消しながら。
　今、ロジーのベールはあげられた。
　気持ちの高ぶりは最頂点、早鐘も振り子を振り切ったように今は穏やかである。
　視界の隅を掠め取るのは細い指先に宿った、新しい鎖。
　目に見える鎖で、互いを縛り上げた。銀色の、誓いの鎖。
　そして‥‥。


「誓いのキスを‥‥」


　緑の瞳が、ゆっくりと閉じられる。
　脳裏には、先程までの紅い瞳の持ち主がしっかりと映っている。
　もうすぐ帳の時間を感じさせる、夕闇に映った、あの姿を。
　そして。
　優しく訪れる、暖かな感触を夢見て‥‥。



◇◆

「‥‥カノン」
　口から零れ落ちた名前を確かめるように、目が開いた。
「？　‥‥カノン？」
　辺りを見回すと、そこはいつもの自分の部屋。
　白い教会も、あのカノンの姿もそこにはない。
　夢にまで見た、あの白いドレスすらもだ。
　ロジーの身を包んでいるのは、いつものワンピース。薔薇の刺繍を施した、白地のワンピースだった。
「―――」
　誓い合ったのに、鎖で新たに縛ったのに‥‥。
　どうして、彼はその続きをくれないのだろう。
　瞳から落ちる雫を、そっと自らの手で拭い取ろうとした。
　かちりと、冷たい感触が頬に当たる。

　それは、暖色の色を紡いだ、手作りの鎖。
　愛おしい彼の作った、彼女を捕らえる鎖。
　ふと見た左の手の指には、新たに繋いだはずの銀色の鎖は見えなかった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ga1031　／　ロジー・ビィ　／　女　／　22　／　ファイター】
【gz0095　／　カノン・ダンピール　／男　／　18　／　NPC：一般人】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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　この度は発注ありがとうございました。
　夢落ち発注文でやってしまいました、すみませんっ！

　いつになったらこの二人、結果が見えるんだろうか。
　まぁ、カノン君が問題なのが間違いないのだけは確かです。
　そんな思いすら抱く発注文に、ちょっとだけエッセンスを加えさせていただきました。
　彼女の想い、うん、綺麗ですよね。
　ここまで綺麗でいれるのだろうかと、少し羨ましく思います。

　こんな、悲哀を滲ませたジューンブライドでしたが、いかがでしたでしょうか。


　それでは、またお会いすることを願いまして。

　雨龍　一

HappyWedding・ドリームノベル

雨龍　一

CATCH THE SKY 地球SOS

2010年05月27日