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『『カルディア側の日常』 』
アーク・ローラン(ha0721)

●薬師と護衛と
 気温にさほど違いはないのに、カルディアの太陽の光には柔らかな温かさを感じた。
 ヘイタロスの太陽の光は、もっと熱いくて眩しい。
 だから、顔付きさえ変わってしまう。
 いや、本当はそんな理由ではないが――。
 取り巻く環境も、空気も。心構えも、そこで成さねばならないことも、違うから。

「こっちが資料で、こっちはお土産」
 アーク・ローランは大きな箱を2つ、玄関に下ろした。
「アークさん、今日も宅配業者の格好なのですね」
 対応に出て不思議そうな顔をしているのは、ルサナ・ラルソウド。この家の主だ。
「以前とは違う業者の服装真似てみたんだ。どう、似合う?」
 軽い笑みを浮かべながら、そう尋ねるアークに、ルサナは首を縦に振ってこう答える。
「似合います。そういうの『こすぷれ』って言うんですよねっ、めいど服とか、なーす服が流行っているらしいですよ! 今度用意しておきますね」
 笑みを浮かべて真面目にそう言うルサナに、アークは苦笑する。
「いや、そういう服は着ないかな、うん」
「でも、ブレンスさんがアークさんの為に用意しておけって、言ってましたし」
「ほほー、ブレちゃんがそんなことを。……で、いるの?」
 アークはにこにこと笑みを浮かべる。
「ブレンスさんですか? はい、研究室にいますよ」
「じゃ、ちょっとお邪魔するよ」
 ぽんとルサナの頭に手を置いて、箱を一つ持ちアークはルサナの家へ入った。

 ブレンス・デアルヌは、隅のソファーに腰掛けて黒表紙の本を読んでいた。
「よっ、ブレちゃん」
 アークの顔を見た途端、ブレンスは凄く嫌そうな顔をする。
「……何のようだ。ルサナの研究に特に進展はない」
「土産があるんだ」
「不要だ」
 なんだか警戒されてしまっている。
「そんなこと言うなって、今回はちゃんと好物を選んだし」
 言って、アークは箱の中から土産の酒テキーラ、キュラソー。それからレモンジュースを取り出した。
 訝しげな顔をしているブレンスの前において、によによと笑いながらこういう。
「マルガリータ好きなんだよな?」
「……!?」
 ブレンスは一瞬ぎょっとした表情を見せる。が、すぐに目を逸らす。
「このままでも十分だ。悪くはない土産だ」
 そして冷静にそう言った。
「ふーん、あともれも」
 保冷庫からアークが取り出したのは、ピッツァだ。
「マルゲリータ。美味しいよ?」
 アークはブレンスの隣に座って、ぐいっと首に手を回して悪戯気な笑みで囁く。
「食いたいんじゃないかと思って」
「何 が 言 い た い」
 ブレンスの眉間に深い深ーい皺が刻まれていく。
「いや、別に? 以前飲みに言ったとき、好物だって聞いたような気がしたから買ってきただけ」
「そんなこと言った覚えはない。用が済んだら帰れ!」
「お2人とも、また喧嘩してるんですか……」
 声を荒げるブレンスを見て、戻ってきたルサナが悲しげな表情を見せる。
「いや、喧嘩じゃないよ。遊んでただけ」
「俺で遊ぶなッ」
 ブレンスの抵抗に、アークは笑い声を上げる。
「んじゃ、今日はこれで帰るよ。他にも仕入れや宅配に行かなきゃならないからね」
「今度はもっとゆっくりしていって下さいね。ブレンスさんと仲良くなるためにも、泊まっていって下さい! 皆さんも呼びますから」
「いいね、それ。でも邪魔しちゃ悪いかな」
 ちらりとブレンスを見ると、不機嫌全開な顔で腕を組んでいる。
「ブレンスさん、いいですよね?」
 ルサナが尋ねると、ブレンスはぶっきらぼうな口調で言い放つ。
「まず、あの呼び方はよせ。余計な土産はいらん。寧ろ俺に話しかけるな。それを守るのなら顔を出しても構わん」
「りょーかい。泊まる時はな」
 ブレンスの言葉に、アークは笑いを含ませながらそう答えて、ルサナの家を後にする。
 新たなあだ名と、次の土産……ではなく差し入れは何にしようかと、そして話しかけずに弄ぶ方法を考えながら!

●義妹と相棒達と
 夕方から夜にかけて。アークは落ち合った少女と一緒に買い物に出ていた。
「可愛い。どうしよう、可愛いっ。ねえ、うちの子にならない、ね、ね?」
 黒髪の少女が小さなエレメントに手を差し出すが、エレメントはちょろちょろっと走ってアークの足の後ろに隠れた。
 顔だけちょこんと出して、様子を窺っている姿に、少女――フュラ・パンナリナの心がきゅんっとした。ますます気に入ってしまう。
「こらこら。まだ人にあまり慣れてないから。ゆっくりと、な」
 アークはその小さなエレメント――新たなパートナーを両手で包み込んで抱き上げた。
「慣れたら貰っていいってことね、よろしくね、イリマ」
 イリマはそのエレメントの名前だ。
 種は分からないけれど、小さなリスのようだった。体毛は橙色。ちょっと目立つ。
「それにしてもフュラ、買い物セエレのものばかりだね。自分の物はいいの?」
「いいのいいの」
 フュラは並んで歩いていたセエレの背や頭部を、微笑みながら撫でていく。
「セエレのものは全部兄貴もちだし!」
「いや、そうだけどさ……」
 アークは軽く笑った後、衣料品店を指差した。
「洋服なんて如何? プレゼントするよ」
 フリルのついたワンピースに、ドレス。花柄のスカートといった、可愛らしい女性服を扱った店だった。
 フュラは戸惑いの目を見せた後、くすりと笑みを浮かべる。
「……義理の姉貴とペアルックなら欲しい。並んで歩こうか」
「他の店の方が良さそうだね、うん」
 アークはそう言葉を返して、笑い合った。
 それから互いに荷物を抱えて、フュラの宿泊先であるジェイリー・ベイガーの家へと向う。
 アレハンドロ近くの貸家で暮らしているフュラだが、最近は仕事ついでにジェイリーの家に泊まって掃除を手伝っていくことが増えたらしい。
「そうだ、アークも鍵貸してよ」
「ん?」
「家の鍵。留守にしてること多いんでしょ? こっち来た時、掃除してあげるから」
「いや、いいよ。結構頻繁に来てるし、いないときは埃出ないしね」
「使ってないと老朽化が進むわよ。蜘蛛の巣とかも増えるしね」
 言って、フュラはぽんとアークの肩を叩いた。
「大丈夫」
 そして、フュラは声を低める。
「如何わしい本とか投写絵とか沢山飾ってあるんでしょうけど、お姉ちゃん達には黙っててあげるから」
 びしっと手を出して、鍵を要求する。
「うっ」
「健全な青少年の家には必ずあるものだそうだから……。怒らないから大丈夫。あなたの家には普通の人の10倍くらいはあるんだろうけど」
「フュラ、俺のことそんな目で見てるんだっ。というか、ジェイリーの家にそういう本でもあった?」
「あの家は、書斎には誰も入れないようになってるから。寝室のベッドの下には何も無かったわ。でも、枕の下には……皆で撮った投写絵の写真があったわね」
「随分とチェックしてるんだね」
 アークは苦笑に似た笑みを見せる。
「鍵ね……やっぱりうちの掃除は必要ないかな。キミには刺激の強すぎるものが、あるかもしれないしね」
 くすりと笑うと、途端フュラは不機嫌そうな顔になり、コツンと足でアークの足を蹴ってきた。
「軟派師最低ー」
「キミが期待しているモノじゃないとは思うけど」
 アークは声を上げて笑いながら、フュラの頭をぽふっと叩いて、見えてきた派手な家へと歩いていく。

●金色兄弟の密談
 派手な家では、いつものようにシフールのティニナ・レイソナリが留守番をしており、ジェイリーは戻ってはいなかった。
 夕食は外で済ませてあったので、フュラは待たせていたエレメントのユナカイトの世話と、荷物整理の為に借りている2階の客間へと向っていった。
「これはティニにお土産っ。ヘイタロスの専門店で選んだんだ」
 アークは鞄の中から小さな箱を取り出す。
「開けていい!?」
 ティニナは両手で抱えて受け取って、目を輝かせながらアークに尋ねる。
「もちろん。着てみてくれる?」
「うん!」
 一緒に大部屋に向って、テーブルの上に箱の中身を広げていく。
「おようふく、おりぼん、ペンダントもあるー! このお花のかばんかわいいーっ」
 可愛らしいワンピースに、桃色のリボン、小鳥のペンダント、そして花柄の鞄。全てシフールサイズの小さな品物だった。
 ティニナは早速それらをまとって、くるくると回転してみせる。
「ありがとー、ティニナ可愛い?」
「可愛いよ。とっても可愛い」
「えへへっ」
 ひらひらと飛んで、ティニナはアークの髪に絡み付いていく。愛情表現らしい。
「ただいまー♪」
 玄関から陽気な声が響いてきた。
「ジェイリー!」
 ティニナはびゅーんと玄関に飛んでいく。引っ張られたアークの髪が数本ぱらぱら落ちる。
「毎日この調子だとしたら、ジェイリーの髪がちょっと心配かな」
 乱れた髪を片手で直しながら、アークは小さく笑みを浮かべる。
「悪い、遅くなった」
「アークお兄ちゃんにもらったんだよ!」
 ティニナと一緒に、ジェイリーが大部屋に顔を出す。
「ティニナへの土産サンキューな。ヘイタロスにも連れていってやりたいんだけどな……」
「それはもう少ししてから、な」
 アークがそう言うと、ジェイリーは首を縦に振り、片手で持っていたボトルを2本テーブルに置いた。
「飲もうぜっ♪ っと、ティニナはもうお休みの時間だ」
「そだね〜。アークお兄ちゃん、ありがと!」
 ティニナはもう一度くるりと回った後、自分の部屋の方へと飛んでいった。

「……さて」
 互いの状況報告や、友人達についての話を終えた後。
 アークのグラスにワインを注ぎながら、ジェイリーが尋ねていく。
「お前に、聞きたいことがある」
「何?」
 飲みすぎないよう注意しつつ……とはいえ、部屋には2人しかいないので、酒癖が悪いとはいえ問題が発生することはないだろうが。
 アークは軽くグラスを振ってワインを眺めながら、ジェイリーの言葉を待つ。
「前から聞きたかったことだ。俺らの仲だ、そろそろ話してくれてもいいんじゃねぇか?」
「…………」
 ワインをぐいっと飲んだ後、真剣な目、真剣な表情でジェイリーはアークを見据える。
「嘘はつかない約束だよな」
 慎重に、アークは頷く。
「お前、ヘイタロスで何をしてる?」
「知り合いと、仕事をね」
「中心街に行くこともあるよな」
「時々」
「首都の北にある『楽園』、知ってるよな」
「……まあな」
「最近どうだ?」
 真剣な問いに、瞳を煌かせてアークが答える。
「新人も随分入ったよ」
「サユリちゃんとルルリちゃん、ミカちゃん、リファちゃん、レイミちゃん、看板娘達は全員元気か!?」
「うん、皆元気すぎるくらい元気」
「くそぅ、行きたいぜ……」
 がくりとテーブルに手をつくジェイリー。
「我慢我慢。俺が代わりに差し入れ持っていってあげようか?」
「お前に靡くだろうがー」
「そうなるかもな!」
「連れていけーっ。他店の女の子達も元気か〜!?」
 声を上げて笑いあう青年2人。
 こうして男達の夜は更けていくのだった。

 ……ツマミの差し入れようと、キッチンから大部屋に向いかけた少女の耳にうっかりこの会話が入ってしまったとか。
 拳を握り締めて「サイテー」という言葉を残して2階に駆け上がっていったらしい。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢(実年齢) / クラス】

【ha0721 / アーク・ローラン / 男性 / 19歳(38歳) / 狙撃手】

NPC
ジェイリー・ベイガー(hz0011)
ティニナ・レイソナリ(hz0019)
ルサナ・ラルソウド(hz0027)
ブレンス・デアルヌ(hz0056)
フュラ・パンナリナ(hz0057)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、ライターの川岸満里亜(マスター名:沢渡 心)です。
ノベルのご発注ありがとうございました!
ほのぼのとした日常、描かせていただきたいと思っておりましたので、本当に嬉しいです。
新たなパートナーまで描かせていただけて、とても光栄に思っております。

またお目に留まった時に、過去のことでも未来のことでも。何かお話に残したいと思う出来事がありましたら、ご参加をご検討いただけたら幸いです。
いつかまた、お会いできることを楽しみにしております。
春花の宴・フラワードリームノベル -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
The Soul Partner 〜next asura fantasy online〜
2010年05月28日

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