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『男二人ぶらり旅 』
白翼寺 涼哉(ea9502)

 昔々あるところに甥と伯父がいました。

 甥の名前は白翼寺 涼哉といい医者を生業とするジャパンの僧侶です。

 伯父の名前は烏 哭蓮といい学者を生業とする華仙教大国の僧侶です。

 甥の涼哉は着流しなどの崩した格好を好み、伯父の烏は肌を見せるのを嫌うという変わった二人でした。

 正反対とも言える二人の家族はある一つの目的のために一緒に旅をしています。

 『常世』という普遍的世界……死後の世界とも言われるジャパンや華国の僧侶にとっては重要な世界を探しているのです。

 今日も二人は見知らぬ土地を歩きながら目的の常世への入り口を探し続けていました……。


〜常世を探して三時間〜
 白い肌に細い体、黒くて長い髪の美男子二人が人里は慣れた土地を歩く。
 年かさは同じくらいだが、露出を極端に嫌うように死装束を纏っている方は耳の先がやや尖っていた。
 人間とエルフの合いの子といわれるハーフエルフの特徴である。
「ふふっ、桃源郷が俺を待っている」
「貴方の煩悩に付き合ってる暇はないのですよ?」
 胸元を緩めてラフな格好であるく涼哉の顔は緩んでいた。
 華国に伝わる理想郷で仙人になれるともいわれる場所なのである。
「うるさい伯父だな、煩悩を持って何が悪い。人間の根源は煩悩だろ?」
 まったくもって僧侶がいう言葉ではなかった。
「私としてはそんなきらびやかな物より死人研究に役立つ黄泉の国へ足を踏み込みたいのですがね?」
「死人なんて埋めとけばいいだろ、埋めとけば」
 供養のくの字も出さない涼哉だが、別に破戒僧というわけではない。
 面倒なことが嫌いなだけなのだ。
「もっと僧侶として自覚を持ち人々のためにですね‥‥」
「人々のために医者をやっているだろ? あんたに説教されることはないね」
 クドクドと説教をはじめようとする烏を涼哉は鼻で笑っていなす。
 人間なのだから求める先は同じでも手段が違うのは当然だからだ。
 そんなやり取りを歩きながら三時間ほど続けていると、二人の行く先に建物がみえる。
「地図にはあんな建物のってないよな?」
「ええ、野山ばかりとなっていますが‥‥」
 二人は顔を見合わせると頷き、言い争いをやめて建物へ駆け出した。
 
〜廃屋温泉にようこそ〜
 近づいてみるとそこは古い旅館のような佇まいをしている。
 看板などははずされていて、繁盛しているようには見えなかった。
「怪しいな‥‥」
「そうですね」
 二人は警戒しながら旅館の中へ進んでいく。
 ギシギシと床がなって老朽化が酷いことがわかった。
 中も薄暗く、人っ子一人見当たらない。
「完全に廃墟ですね」
「そうだな‥‥」
 涼哉と烏は背後から襲われないように背中合わせで進んだ。
 長らく冒険者として諸国の荒事を解決して来た二人は自然と周囲に気を配りいつでも攻撃などができるように準備もしている。
 明かりのある方へゆっくりと進むと甘い香りとせせらぎが聞こえてきた。
「なんだこいつは」
 涼哉が警戒しながら除くと、湯気が立ち込める天然温泉が目の前に広がっている。
 せせらぎはどこからから、水が流れ込んでいる音だった。
 乳白色の湯船をぽかんと眺めていた二人だが、涼哉がおもむろに自らの着物に手を駆ける。
「何だこの温泉? 一緒に入るか?」
「いきなり脱ぎだす変態と風呂に入る趣味はありません」
 烏は涼哉にツッコミを入れると家屋の調査のために戻っていった。
「湯加減はよしか。掘り出しものだな」
 涼哉は一向に気にしたようすもなく服を脱ぎ、細いながらも均整の取れた肉体をあらわにさせる。
 温泉に足を入れるとつま先からジワジワと熱がしみこんできて体中を満たした。
「そういえば、ここ最近ちゃんとした風呂に入っていなかったな」
 長旅の代償として沐浴ばかりだったことを思い出した涼哉は全身を湯につけて一息つく。
 乳白色の湯船の上には湯気が立ち込めていて景色を楽しむことはできないが、湯加減などはよかった。
「ふぅ〜、生き返る」
 腕を伸ばして言葉を漏らすと湯気の中に人影がみえる。
(「先客? 先ほどまで気配がなかったが‥‥」)
 内心気にしつつも涼哉は声をかけるのだった。
 
〜迫る気配〜
 旅館の中に戻った烏は薄暗い中を歩く。
 カビと埃にまみれた旅館は烏にとってはどこかホッとする気がした。
 ギシギシとなる廊下を歩いていると音が一つ増える。
「誰かいるようですね」
 術符を取り出し烏は足をゆっくりと踏み出す。
 ギシと背後から音がした。
「そこですか!」
 シュっと術符を投げつけると「うっ」という声がする。
「誰ですか? 大人しくでてきなさい」
 足音の聞こえていた方に烏は近づいていった。
「うふふん、強烈ね。でもそこがす・て・き☆」
 野太いが妙にアクセントをかけた声が聞こえてくる。
 ぬっと影が動いて立ち上がった。
 烏が見上げなければならないくらいのそれは筋骨隆々な男である。
 術符によって切られた胸板から流れる血を舐めると男はニヤリと笑った。
「アタシの名前は紗矛損(さむそん)よ。よろしくね」
 語尾にハートをつけてウィンクをしてきた男に烏は直感的に感じる。
「これは‥‥甥以上の変態だ」
「やぁねぇん、変態じゃないわよ。漢女(おとめ)っていうのよ」
 烏のツッコミに体をクネクネと揺らしながら紗矛損は答えるのだった。
 
〜ウホッ、漢女(おとめ)だらけの露天風呂〜
 人影が近づいてくると逆三角形で日焼けした肌が見えてくる。
 筋骨隆々な上にスキンヘッドな頭が日光を反射してきらりと光った。
「はぁい、お兄さん。細くて好みね。私の名前は阿呑(あどん)っていうの」
 名前を聞いてもいないのに男はサイドチェストのポーズと共に白い歯を光らせる。
 ボディビルダーをやっているような鍛え抜かれた体だった。
 それだけで涼哉は背筋に寒い物を感じる。
 これは近づいてはいけない相手だと本能が警告していた。
「さぁ、これも何かの縁だからお背中流してあげるわ」
 ワキワキと手を動かして阿呑が涼哉に近づいてくる。
 一歩、さらに一歩と涼哉は下がった。
 阿呑が湯をかき分けて素早く迫る。
「結構だ。俺はもうでる!」
 ざばざばと湯を分けて涼哉は逃げ出した。
 それでも水の抵抗が涼哉の進路を阻み阿呑との距離が迫る。
 腕を延ばして阿呑が涼哉を掴もうとしたとき、涼哉ははっと思い出して高速詠唱で呪文を唱えた。
 目に見えない結界が阿呑の手をはじく。
「な、なんなの?」
 何が起きたか判らないという阿呑を無視して涼哉は温泉から上がった。
「涼哉、早く逃げましょう。変態がい‥‥」
 丁度そのとき烏がやってきて涼哉の隠されてない物をみる。
 自分より大きい‥‥とどうでもいいことが烏の頭をよぎった。
「何をモロだししているのですか。早く着替えて」
「何ってナニとしか答えられんが同意だ。いい湯だったが、流石にいろいろと危険を感じる」
 濡れた体も気にせず急いで服をきると涼哉は杖で古くなった壁を壊しながら旅館から外に出る。
 出て行くときに草むらに転がっている看板を烏が見つけた。

『堀窯旅館』

「ほりかまりょかん‥‥」
 その嫌な響きに涼哉は顔をしかめる。
「世界は広いですね」
「まったくだな」
 二人は大きくため息をつくと、その場から急いで立ち去るのだった。
 
 その後、この廃屋が見つかったことはない‥‥。
 
 
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名  / 性別 / 外見年齢 / 職業 】
 ea9502  /白翼寺 涼哉/ 男  / 34   / 僧侶
 ec0312  /烏 哭蓮  / 男  / 32   / 僧侶

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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発注ありがとうございます。橘真斗です。
以前にゲスト投稿させていただいた以来ですがお変わりなかったでしょうか?

かなりお任せの部分が多かったのでアレンジを加えてみましたが楽しんでいただけたなら幸いです。
また、どさいべ等のイベントでお話できればと思います。

それでは、次の運命が交錯するときまでごきげんよう。
■「連休…そうだ、旅行へ行こう」ノベル■ -
橘真斗 クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2010年06月08日

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