▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『そうだ、チューブトレインに乗ろう 』
シーヴ・王(ga5638)

〜朝の思いつき〜

『チューブトレインの旅に出かけたいです』

 シーヴ・フェルセンの突然の思いつきからライディ・王との二人旅は始まった。
 着替えて駅へ行き、飲み物を買ってチューブトレインへ乗り込む。
 移動は高速移動艇や車の多いシーヴにとっては中々無い体験だった。
「一日乗車券なんてあったんですね……知らなかったです」
「結構乗り換えたりしてラストホープの各地へいけるからね。交通渋滞もあるから、チューブトレインのほうが早い時もあるんだ。それでね、この乗車券も……」
 乗り込んで数分、席について出発する前からライディはシーヴに向かって饒舌に説明を始める。
 シーヴが目をぱちくりさせてしまうほどに生き生きとしたライディがそこにいた。
 プルルルと出発のアラームが鳴り、チューブトレインは出発する。
 人工島ラストホープを周回し、さらに内部のいたるところまで走る筒はさながらウォータースライダーのようにも見えた。
 もちろん、あれほど曲がっているわけでもないのだが……。
 静かに走るチューブトレインの中からシーヴは海を見ていた。
「高速移動艇から見る景色とはまた違ってやがるですね」
「うん、走っている高さにもよるけど……俺はこの高さの方がなじみあるかな? 海も綺麗だけど、ビル街も綺麗に見えるよ。もう少し待っててね」
 窓際の席で向かい合って座る二人は話をしながら、景色を楽しむ。
 ライディが時計を見ながらタイミングを計っていると、チューブトレインは一つのビルの中に入り、一度停車した後走りだした。
「わぁ……」
 トンネルを抜けた後のような状態だったが目の前に広がっていたのはキラキラと光り続けるカーテンである。
 その正体は太陽の光りを受けたビルのガラスであり、角度が丁度良く当たってキラキラと長いカーテンのように続いているのだ。
「どう? すごいでしょ……偶然の産物だと思うけどだからすごく綺麗に見えるんだ。自然を美しいって思えるように人工物同士も偶然の重なり合いでこんなに綺麗な物ができるんだ」
 驚くシーヴにライディは楽しそうに説明を続けた。
 弾む声が本当に楽しんでいることをシーヴに感じさせ、楽しんでいるライディを見るシーヴも嬉しくなってくる。
「この後はどうするですか?」
「そうだね、お昼は駅のホームで美味しいところがあるからそこで食べようか。駅弁は晩御飯で」
「突然なのにすごく計画が立ってるですね」
「あ……うん……シ−ヴと合うまでは結構このコースで休みの一日を潰したりしてたからね」
 照れながら頬を掻くライディに思わずシーヴは笑ってしまった。
 
〜オススメの場所〜
 箸で持ち上げようとすると白くて平たい麺が滑って汁の海へ落ちる。
 二度、三度と繰り返してようやく熱い麺をシーヴは口に入れた。
「多少箸が上手といっても、こういう麺は苦手でやがるです」
「キシメンはちょっと早かったかな? でも、ここのキシメンって美味しいんだよ」
 駅の構内にある立ち食いのキシメン屋にライディとシーヴは隣り合って座ってキシメンをすすっている。
 キシメンとは日本の名古屋で良く食べられる平たい形の麺を使ったヌードルの一種だ。
 カツオブシにネギ、アブラアゲの乗ったシンプルな物を二人は食べている。
「熱いけど美味しいです」
「値段も安いからあんまりお金が無いときなんかに通っていたらいつの間にか嵌っちゃってね」
「分かる気がするです。暖かいですし‥‥」
 目の前で麺を茹でて客に振舞うぶっちょう面の親父さんが二人を微笑ましそうに眺めていた。
 サラリーマンや、学生などいろんな人々が入れ替わるホームにある立ち食いキシメン屋はそのまま回転率が早い。
「じっくり人間観察もしたいけど、次に行こうか」
「はいです」
 せかされるように出て行った二人は丁度ホームについたチューブトレインに乗って次の場所までゆらりゆられていくのだった。

〜ゆったりとした時間を過ごして〜
 再びチューブトレインを乗り継ぎながら、ラストホープの町並みをいろんな角度から二人は眺める。
 太陽の角度が変わって日のあたる場所が変わると町並みは別の表情を見せていた。
 その度にライディはシーヴに場所の説明を付け加える。
「ラストホープって意外と広いでやがるですね。車では行ったこと無い場所とかまだまだいっぱいありやがるです」
 説明を聞いていたシーヴは関心と共にこの時間を楽しんでいた。
 互いに顔を見合わせながらの小旅行はまた別の楽しさがある。
「さっきの駅で買ったこのポテトフライもおいしいです」
「駅の名物なんだよね。味付けがいろいろと選べたりして好きなんだ」
 パリパリと皮付きのジャガイモをカットしてあげた上にいろいろなパウダーをかけて食べるものだ。
 手軽なジャンクフードとして構内で売られていたものを待ち時間の間に買っていたのである。
「もう夕方だね‥‥」
「そうでありやがるですね」
 外周を回って家路につく路線を走っていると夕日が沈むのが窓から見えた。
 海がキラキラと光り少し眩しいが暖かい光りが差し込んでくる。
 そして、一つの駅に止まった。
 そこは海が見える丘とそこにある喫茶店へ行くための駅。
「ここで一度降りようか?」
 シーヴが何かを言い出す前にライディの方から手を引っ張って駅へ向かった。
 バレンタインや月見をしたりと二人の思い出が一杯ある駅。
 プシュウというドアの閉まる音を後ろに聞きながらライディとシーヴは手を繋いだままホームから外へ出た。
「夕日が綺麗でやがるですね」
「本当に綺麗だけど、やっぱりシーヴの方が綺麗かな?」
 夕日を全身に浴びながら広い海の見える丘へたどり着いたシーヴが呟くとライディはシーヴに微笑を見せる。
 シーヴは夕日以上に顔を赤くして俯いた。
「今日のライディは口が上手です‥‥」
 ぼそぼそとした調子でシーヴは今日のライディをチラリと上目で見る。
 いつもよりも積極的で饒舌な夫の一面に少しだけ惚れ直していた。
「普段からこんな調子であればいいと思うです」
「う‥‥や、ちょっと鉄道マニアっぽいのはシーヴ嫌かなって思ってさ」
 照れくさそうにライディは頬を掻く。
「シーヴはそんなこと気にしないです。隠している模型も出していいです」
 ライディの照れた姿にくすりと笑うとシーヴは一歩先に進むと振り返った。
「え、それいつの間に!?」
 ライディの驚きにシーヴは答えない。
 
 思いつきで始めた一日はとっても充実した一日として終わりを迎えるのだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【整理番号 / PC名      / 性別 / 年齢 / クラス  】
 ga5638  / シーヴ・フェルセン/ 女  / 18 / ファイター

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
どうも毎度ありがとうございます。橘真斗です。
ライディの鉄道マニアぶりを出してみましたがいかがでしょうか?
普段は出せない一面を重視してみました。

これからはもっとオタク分をオープンにやって生きたいと思います(何)

それでは、次の運命が交錯するときまでごきげんよう。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
橘真斗 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2010年06月10日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.