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『二人が作る物語 』
オルテンシア・ロペス(ea0729)

 香月・那智が店主を務める謎の店『幽玄堂』。

『幽玄堂』は店主となるべき人間、客を自らの意思で選ぶ。
 客と呼ぶに相応しいのは、結婚に憧れるある人物。
 今日もまたどこからか、客の訪れと同時にどこからともなく店が姿を現す。

「結婚したい……」

 ショーウィンドウに飾ってあるウェディングドレスを見た客は、深いため息をついた。
 思いを寄せるあの人に自分の気持ちを打ち明けられない。
 一緒になりたいと言えない。
 そんな時、店主の那智が客を招き入れ、美味しいハーブティーをご馳走してくれた。
 一口飲んだ瞬間、客の意識は少しずつ遠のいていった。

 気がつくと、客は結婚式場の控え室に。
 ドアがノックされたかと思うと、誰かが入ってきた。介添人と、客が思いを寄せるあの人が。
 どうやら、客は思い人と結婚式を挙げるようだ。

 ここから先は、幸福な二人の物語。どのような話を紡ぎだすかは客次第……。

●来店
 イスパニア王国出身のジプシーで踊り手のオルテンシア・ロペスは、ペット達との小旅行中に偶然通りがかった幽玄堂のシューウィンドウに飾ってあるウェディングドレスを見つけ、過去を思い出した。
 彼女は冒険者になる18歳頃に結婚したが、その当時は貧しかったので式を挙げられなかったのだ。
(結婚したあの頃に、こんなドレスを着て教会であの人と式を挙げたかったわね)
 故郷の小さい教会でささやかな式を、という夢を見つつ、オルテンシアは幽玄堂を通り過ぎようとした時。
「そのドレス、気になりますか?」
 店主の香月・那智が声をかけ、時間がおありなようでしたら店内でじっくりとそのドレスをご覧になってくださいと招き入れた。
「お飲み物をご用意する間、そのドレスをごゆっくりご覧ください」

 那智が席を外している間、オルテンシアはドレスをじっと見つめ、あの人はあたしがこれを着たらどう思うかしら?などと考えていた。
「摘みたてのラベンダーとマロウで作ったハーブティーに冷たいカルピスを混ぜて作った『ラベンダーカルピス』をどうぞ。外は蒸し暑かったので、冷たい飲み物をご用意しました」
「ありがとう」
 ラベンダーカルピスを一口飲んだ瞬間、オルテンシアは頭がクラクラした。
「そのドレス、気に入ったようですね。よろしければ、ご試着してみますか?」
 いいの? と言いたかったが、それと裏腹に意識が遠のいていった。

●願い
 気がつくと、オルテンシアは小さな部屋にある椅子に腰かけていた。
 辺りを見渡している時に鐘の音が聞こえたので、ここは教会の一室のようだ。
「ここは……」
 部屋の周囲を見渡していると、部屋の隅に置いてある姿見に映った自分の姿を見て驚いた。彼女が身に纏っているのは、幽玄堂のショーウィンドウに飾られていたやや露出の多い白のマーメイドラインのウェディングドレスだった。サイズだが、オルテンシアのために作られたかのように身体にフィットしている。
「な、何故あのドレスをあたしが?」
 このドレスを着て結婚式を挙げたいとは思ったが、本当にこれを着ることになったのだから驚かずにはいれられない。

 どうなっているの!?と混乱中、ドアがノックされた。
「ど、どうぞ」
 ドアを開いたのは、白いタキシードをぎこちなく着こなしている姿の顔中に髭を生やした逞しい男性だった。
「あ、あんたは……!」
 いきなりのドレス姿に加え、流行り病で亡くなった夫が目の前に現れたのでオルテンシアは更に驚いた。
「そろそろ、式のお時間です。準備はよろしいですか?」
 那智に似た神父が、夫にオルテンシアの手をとり教会にエスコートするようにと促す。
(あの人の大きな手……あの頃と変わらないわね)
 二度と会えない夫の手に、懐かしさがこみ上げ自然に涙が頬を伝う。
「今日は良いお天気ですね、おめでたい日にはちょうど良いです」
 涙を拭う夫とオルテンシアを穏やかな瞳で見つめながら、神父は二人の幸福を願った。

●挙式
 教会に着くと、二人は足並み揃えてバージンロードを歩き、神父が待つ祭壇の前へ。
 その間、故郷を偲んで作られた真紅のカーネーションのブーケを持つオルテンシアの手が微かに震えていた。
 それに気づいたのか、夫は自分がついているから大丈夫と耳元で囁く。
 祭壇前に着くと神父の誓約。それに誓います……と照れながら低い声で夫は答えた。
「オルテンシア・ロペス、あなたはこの男性を愛し、敬い、慰め、助け、病める時も、健やかなる時も命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
 誓約を終えると、二人は互いを見つめあった。

 続いては指輪交換。
 神父の指輪についての説明を聞き、オルテンシアは手袋をはずし祭壇に置いた。
 夫は神父の言葉を復唱し、オルテンシアの指に愛と忠実を誓う印である結婚指輪をはめた。褐色の肌のスラリとした長い指に、白銀の指輪が良く映える。
「このお二人は、生涯を共にするという誓約を明らかにされました。それは両手を取り合い、愛を誓い、指輪を交換したことにより象徴されています。それ故に、お二人を正式に夫婦としてここに宣言致します」
 神父は宣言後、暖かい拍手を送った。
「それでは、誓いのキスを」
 マリアベールなのでベールをめくらなくて良いので、夫はオルテンシアの肩に手をかけ、目を閉じて顔を近づけるとそっと唇を重ねた。
 短い時間であったが、オルテンシアにとってキスの時間はとても長いものに思えた。
(この時間が、永遠に続けばいいのに……)

●想い
 一通りの式を終えた後は、普段着に着替えて夫、神父と共に屋外で簡単なお茶会を。
 木製のテーブルには白いテーブルクロスがかけられ、白磁の花瓶には、少しでも長く咲き続けさせたいという神父の心遣いからブーケが活けられた。
 淹れたての良い香りがするお茶、美味しいお茶菓子と簡単な料理を味わいながら二人の楽しい時間が続いた。
「神父さん、お茶のおかわりいいかしら?」
「ええ、どうぞ」
 おかわりのお茶を一口飲むと、突然立ちくらみが。
(あのお店と同じね。意識が無くなったらどうなるのかしら?)
 そう考えながら倒れそうになった時、夫が自分を支えてくれた。
 オルテンシアを心配する夫の声は、意識と共に次第に遠のいていった。

 意識が戻った時には、先ほどまでいた幽玄堂の店内の奥にある一室だった。そこにあるソファに寝ていたようだ。
「気がついたようですね、急に倒れられたので心配しました。具合はいかがですか?」
「ありがとう、もう大丈夫よ」
 あの人との結婚式は夢だったのね……と微妙に悲しくなったが、夢でも夫に再会することができ、作れるはずのない思い出を新たに作れたのだからと思い直すと晴れやかな気分に。
「ごめんなさい、ご迷惑をおかけして。あのドレス、素敵だったわ」
「お気になさらずに。またのご来店、お待ちしております」
 那智に見送られ、オルテンシアは幽玄堂を去った。
「雲が空に抱かれているように、あたしは今もこれからも、あんたの腕に抱かれて、守られてる……」
 そうよね? あんた、とオルテンシアは雲ひとつ無い青空を見上げながら呟くと、それに応えるかのように夫の声が聞こえてくるような気がした。

 新たに作られた二人の物語のタイトル『ささやかな幸福』


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【ea0729 / オルテンシア・ロペス / 女性 / 外見年齢29歳 / ジプシー】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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オルテンシア・ロペス様

はじめまして、ライターの氷邑 凍矢です。
このたびは『HappyWeddingドリームノベル』のご発注、ありがとうございました。
AFOのキャラクター様からのご発注は初めてでしたので「自分でいいんですか!?」と驚きました。
至らない点が多々あることとと思いますがご容赦ください。

OPの趣旨から外れているとご心配されていたようですが大丈夫です。
夢オチ的な話になりましたが、亡きご主人様と新たな思い出を作るお手伝いをさせていただきました。
幸福な時間は、情熱的で一途なオルテンシア様の心の中で永遠に続くことでしょう。

オルテンシア様ならびご主人のイメージが違うと感じられましたら、遠慮なくリテイクをお願いします。

あなたの今後の物語が、今後も良いものでありますように……。

氷邑 凍矢 拝
HappyWedding・ドリームノベル -
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Asura Fantasy Online
2010年06月30日

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