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『星河の見る夢〜逢瀬に咲く愛〜 』
エルディン・アトワイト(ec0290)

●起
「わぁ‥‥」
 朝から見渡す限りの快晴であった。秋霜夜は、その空の下、キツネーランドの門に飾ってある大きな笹の木へと駆けて行く。
「せ〜んせっ。見て下さい。ランド全体が色とりどりですよ〜」
 愛弟子の言葉に、エルディン・アトワイトは目を細めて門の奥を見透かした。
「あ。色は5色の短冊になぞらえてます? えへ。あたし、勉強してきました。短冊の5色は、青、黄、赤、白、黒なんですよ? ほら‥‥」
 笹の下を通り過ぎて中に入り、霜夜はぐるりと辺りを見回す。夏を表す青と白を基調に、七夕の夜空を表す黒。そして、笹の色の緑。それらの色で彩られた園内は、どちらかと言えば涼しげに見えた。
「青と白と黒‥‥と緑? あれ? 一色足りない‥‥?」
「最後の一色は、どこかに隠してあるのかもしれませんね、霜夜君」
「はっ‥‥そうですか、分かりました! それを探すのが今回の使命なのですねっ!?」
 霜夜が張り切った様子で言うと、エルディンは微笑しながら軽く頷いてみせる。
 園内のメイン通路を真っ直ぐ歩くと、そこはいつもの如くアーケードになっていて、土産物屋がずらりと並んでいた。
「それにしても‥‥さすがにこの人だかりでは、暑いですね」
 軽く手で自分を扇ぐエルディンの格好は、全身真っ黒だ。
「せんせの神父服は格好良いのです〜」
「お褒めに預かり光栄ですが、この格好ではさすがの私もバテてしまいますね‥‥」
 そう言いながらも見回した先に、涼しげな風鈴がぶら下がっている店が目に入った。台の上に茣蓙が敷かれてあって、そこにはずらりと浴衣が並んでいる。浴衣も布面積から考えると涼しいとは言い難いが、少なくとも詰襟までついている神父服よりはマシだろうと思わせた。
「あ、浴衣借りられるんです?」
 とことことついてきた霜夜が、白から紺まで見た目も涼しい柄も含めて並ぶ浴衣を眺める。
「えぇ。そうですね‥‥霜夜君はどれがいいですか? どうせならペアも良いですね」
「せんせとお揃い‥‥。あ、この朝顔柄二つ貸してください〜」
 貸浴衣屋で霜夜が真っ先に目にしたのは、その柄であった。大きく開く朝顔の大輪。霜夜は生成りの生地に、淡い桃色の朝顔。エルディンは紺色の生地に、淡い青色の朝顔の入った浴衣を選んだ。朝顔と同じ色の紐の下駄をそれぞれ履き、水色の団扇を借りて2人は店を離れた。
「いつもの霜夜君も可愛らしいですが‥‥浴衣姿というのもいいですね。黒髪を結い上げるとまた、愛らしいというか‥‥」
「えへへ〜。せんせも格好良いのです〜」
 勿論友人の大切な娘であるから、そもそも恋愛対象となるにはまだ幼いし、あくまで娘を見る目線のはずである。霜夜だって自分を父のように尊敬して慕ってくれている。決して怪しい目線ではない。はずである。
「あ、せ〜んせっ。あそこっ!」
 横を歩いていた霜夜が、前方の広場を目にして声を上げた。
「大きな笹があります! せんせ。短冊に願い事を書いて笹に吊るすと叶うって言われてるんですよっ」
 小走りにそちらへと走り出した霜夜を少し大股で追いかけながら、木の下でエルディンはそれを見上げる。
「ほう。短冊にそのような謂れが? 霜夜君は物知りですねぇ」
「あわわ。せ〜んせっ! 短冊が飛んで行きますっ」
 ぱたぱたと団扇で扇いでいたら、軽く霜夜に怒られた。木の下には短冊が箱に入って置いてあり、筆やペンもある。どうやらここで書いて吊るして良いらしく、木には色取り取りの紙が吊るされ風にそよそよ揺れていた。
「願い事‥‥ですか」
 考えながら木を扇いでいるうちに霜夜は書いてしまったらしい。黄色の短冊を手にして、辺りをきょろきょろ見ていた。
「? どうしました?」
「いえ、踏み台が無いかなぁって」
「あぁ、高い所に吊るしたいのですね。では私の肩に」
「せんせの肩車ですか‥‥? わぁい〜」
 しゃがんだエルディンの肩に、霜夜はひょいと乗った。
「わぁ〜、高いです〜!」
「どのあたりの笹が良いですか?」
 言われて枝の下に着くと、霜夜はしっかりと枝に短冊を括り付けた。霜夜を降ろしてからそれを見上げると。
『エルディン先生に、しっかり者のお嫁さんが来てくれますように』
 と書かれてあった。
「霜夜君‥‥」
 愛弟子の愛情に、ほろりと来るエルディンである。
「せんせは何も書かないんです?」
「あぁ、そうですね。では私も‥‥」
 青色の短冊に、エルディンはさらさらとペンで願い事を書いた。
「『そろそろ素敵な女性が現れて、私も身を固める事が出来ますように』‥‥。せんせならきっと大丈夫なのですっ」
「有難う、霜夜君」
 霜夜の願いが書かれた隣に短冊を吊るし、エルディンは霜夜へと振り返る。
「さぁ。では、キツネーランドを満喫しましょうか」

●承
「あ‥‥プールです♪」
 白い飛び込み台が、真っ先に目に入った。
 霜夜がぱたぱたと近付いていくのを眺めながら、エルディンはプールの近くにある露天へと目を向ける。そこは水着販売所だった。
「せ〜んせっ! 西瓜が浮いてます〜!」
「あぁ、冷やして食べるんですね」
 のんびりと応じながらプールに近付いて、エルディンは目を瞬かせる。
 25m用の長方形型プールの中で、西瓜がぷかぷか浮いていた。もう一度、飛び込み台を見上げる。
「‥‥新たな殺人事件の気配が‥‥」
「えっ!? 本当ですかっ?」
 目を輝かせながら振り返った霜夜に、エルディンは飛び込み台を指差して見せる。
「霜夜君。人があそこから飛び込む際に発生する速度は、どの程度になると思われますか?」
「え‥‥」
 言われて霜夜も見上げた。
「うーん‥‥と‥‥」
 額に皺を寄せて、考えている。
「飛び込み台の高さは10mです」
「‥‥分からないです、せんせぇ〜‥‥」
 助けを求めるような瞳で見上げられ、エルディンは頷いた。
「簡単に言えば、あの西瓜を頭でかち割るくらいの速度は出ますよ」
「おぉ〜。西瓜を割る棒がいらないのですねっ」
「割れるのが西瓜だけであれば良いのですが。つまり、ここに西瓜が浮かんでいるのに飛び込み台があると言う事自体に問題があります。これは立派な殺人予告でしょう」
「何かのおまじないだと思ってましたっ! 係員さんに危険性を説明しないとですね」
 からんころんと走って行った霜夜を見送りながら、エルディンは水着販売コーナーへと歩み寄った。陽射しがきつく、水の反射が眩しい。サングラスでも掛ければ楽になるかと思ったのである。
「う〜ん‥‥。余り色が濃いと、女性の水着の色も全く見えませんからねぇ‥‥」
 聖職者にあるまじき本音を呟きつつ、傍を通り過ぎた水着の女性へと視線を流した瞬間、霜夜の声が聞こえてきた。
「せ〜んせ〜っ」
「あぁ、どうでしたか霜‥‥君。一体それはどう」
「えへ。貰っちゃいましたっ」
 そこには、『2−A 秋霜夜』と胸の辺りに書かれた水着を着ている愛弟子の姿があった。水着は紺。白いゼッケンに書かれた黒文字に、エルディンは眩暈がする。
「知らない人から何でも貰ってはいけませんよ‥‥」
「知らない人じゃないのです!」
 えっへんと威張って見せた霜夜だったが、ふと真面目な顔になってエルディンを見上げた。
「『魔女さん』だったのです。夫婦の一夜の逢瀬である七夕くらい、魔女さん大人しくしてくれるといいんですけど‥‥」
「彼女が‥‥?」
 言われて、エルディンは霜夜がやって来た方角を見つめる。そこは、軽食処も兼ねた休憩所だった。
「あ‥‥せ〜んせ〜?」
「少しだけ西瓜と遊んでいて貰えますか、霜夜君」
 言い残し、素早く建物内へと入る。人はさほど居なかったが、エルディンの鋭い目は、遠くに居るその美貌を捉えた。
「‥‥探しましたよ、『魔女さん』」
「あら‥‥」
 艶やかな黒髪を持つ女性が、声を掛けられ振り返る。エルディンの期待通りの、黒いビキニ姿であった。その上から薄いパーカーを羽織っている。
「お弟子さんのスクール水着姿は、どうだったかしら?」
「女性用水着ならば他にも色々あるような気がしますが、少なくともビキニで無かった事だけは褒めておきたい所です」
「あら、当然でしょう? 年頃の女の子は年頃に相応しい格好をするべきだわ」
 女性は笑った。特に何か企むような笑みではない。
「‥‥それで、飛び込み台と西瓜の関係ですが‥‥」
「もう何度もここに足を運んだ貴方ならご存知でしょうけど‥‥」
 女性は前髪をかき上げて耳に掛けつつ、手に持っていた盆をテーブルへと置いた。朱塗りの盆の上に、湯呑茶碗が1つ乗っている。場の雰囲気には相応しくなかった。
「あの西瓜、生きてますもの」
「!? それは尚更ワケが悪いのでは‥‥」
 いきなりしゃげーと西瓜が口を‥‥いや、どの辺りを口とするかは難しい所だが、とにかく開いている姿を想像する。
「誰かが飛び込むなら、素早く逃げますわよ」
「そ、そうですか‥‥」
「水深は5mありますし、貴方が心配するような事件は起こりませんわ、神父さん」
「私の名はエルディンです。‥‥いつまでも、貴女を『魔女』と呼ぶのも気が引ける。貴女の本当のお名前、教えて貰えますか?」
「『名前』? そこに、意味が?」
「ありますとも。貴女の名前が『魔女』では無い限り」
 一瞬見つめあった2人だったが、すぐに女性はエルディンから目を反らした。
「私がここに居る限り、私に名などありません。でも、貴方が呼びたいならば好きな名前で」
「分かりました。考えておきましょう。どうです、一緒に泳ぎませんか?」
「あら。また、ナンパ?」
 くすりと笑い、女性はエルディンの傍から離れる。そのままプールの方向へと歩き出した。それを追って隣を歩きつつ、エルディンも微笑みかける。
「私は常に、女性の美しさを称える存在です。ところで先ほど‥‥『儀式』があるという話を小耳に挟んだのですが‥‥」
「えぇ。7月7日の夜は、1年の中で最も大切な、『私』の『時間』ですわ」
 言いながら、女性はどこから出したのか水着をエルディンへと渡した。
「浴衣で泳ぐと溺れてしまいますわよ」
「それもそうですね‥‥っと‥‥霜夜君!?」
 男性用水着を受け取り、プールへと目を向けたエルディンが目にしたものは。
「きゃ〜〜っ‥‥」
 ざぶん。
 巨大西瓜の上に腹ばいで乗っていた霜夜が、つるっとプールへと落下する姿だった。
「あははははっ‥‥あ〜、せ〜んせ〜‥‥と、魔女さん‥‥です?」
 水面に顔を出した霜夜は、満面の笑みを浮かべている。だが魔女が隣に居るのを見つけて、真面目な顔になった。
「えぇ。もうすぐ日が暮れる‥‥」
 プールには入らずに空を仰いだ女性を見つめ、エルディンはそっとしゃがんだ。
「‥‥7月7日の夜は、1年の中で最も大切な、『私』の『時間』。だそうです」
「『私の時間』です‥‥?」
 半分沈んでいる西瓜によじよじしようとしていた霜夜の手が、それを聞いて止まる。
「せんせ。7月7日は、織姫と彦星が年に一度会う‥‥夫婦の逢瀬の日、なのです」
「夫婦っ‥‥?!」
 思わず振り向き仰ぐと、女性は魔女らしい笑みを浮かべてそれを見下ろした。
「あの男との逢瀬である事は間違いないわね。お弟子さんが会った‥‥あの『男』よ」
「『悪魔』ですか‥‥」
 心なしか肩を落としたエルディンに、女性はくすりと笑う。
「私達がそんな生温い関係に見えるのかしら‥‥?」
「主導権争いをしているという話でしたね」
「えぇ。今日がその、『決着の日』。年に一度、あの男と会う事が出来る日よ。直接、ね」
「私は‥‥いつでも、女性の味方です。儀式とは聞き捨てならない響きだと思いましたが、何かを犠牲にするような時間なのでしょうか?」
「‥‥『悪魔さん』なら、さっき会ったのです‥‥」
 ぱちゃぱちゃと水面を叩くようにしてその場で泳いでいた霜夜が、プールの縁にしがみついて小さな声で呟いた。
「そう。やはりね」
「でも‥‥。せんせが魔女さんの味方をするなら、あたしも一緒です」
「霜夜君‥‥」
「じゃあ、そろそろ準備をして貰おうかしら。さぁ、プールから上がって」
「え? 私、まだプールに入っていませんが‥‥」
「水着のままで空に昇るのは寒いわ。浴衣を着て」
「えぇっ!? 空に昇るんです?」
「プールに‥‥」
「夜になれば、舟が下りてくるわ」
 タオルと浴衣を霜夜に渡す女性を見ながら、エルディンは多少残念な気持ちでそこに佇んでいた。魔女とプール内できゃっきゃうふふする予定だったのだが。
 そうして、藍色の浴衣姿に着替えてしまった女性を眺めて『これはこれでまぁいいか』と思いつつ、エルディンは霜夜と共に、その時を待った。

●転
 夜空に星が瞬き出すと同時に、空から星の河が降りてきた。
 それは、闇色の空を切り取ったような河だ。その中で無数の星が煌いている。
「うわぁ〜‥‥せ〜んせっ。こっち、こっち見て下さいっ」
「まるで魚のように光が泳いでいますね」
 河は空から何時の間にか流れるように降りてきて、園内に広がった。闇と星に包まれたその世界は、最早遊園地では無い。まだ踝くらいの水嵩である河を歩きながらそっと水を掬うと、確かに液体であるようだった。だが冷たくは無いし手も濡れない。
「不思議‥‥ですねぇ‥‥」
「これに乗って」
 河の真ん中に、笹色の小舟が停まっていた。音も無くひらりと女性が先に飛び乗ったので、エルディンはエスコートする役目を失い内心がっかりする。
 3人を乗せた舟は、一気に河を昇り始めた。どの角度を見渡しても満天の夜空である。大地は最早夜空の一部であり、大河の中に星がうねった。
「‥‥毎年、決着は付かなかったわ‥‥」
 ゆらゆら揺れながら進む小舟の中で、女性はぽつりと呟く。
「あの男は、ここに留まる事が出来なかった。けれども私も、あの男を追い出す事が出来ない。そんな関係が続いてもうどれくらいになるのかしら」
「この場所を造り上げたのは貴女ですか?」
「いいえ。でもあの男がここを支配する事になれば‥‥ただ一日の魂の安息さえも奪われる。恐怖だけが巣食う場所になるでしょう。あの男に渡すわけには行かない」
 女性の横顔を見ながら、エルディンは軽く頷いた。
「もし、貴女が負けたその時は‥‥貴女はどうなるのです?」
「ここを追われて生まれ変わる事になるわね。私も、貴方がたの常識から言えば、生きていないもの」
「そう、ですか‥‥」
 聖職者としては、いつまでも魂が縛られたまま天へと昇れない事を許すわけには行かない。だが、彼女をここから解放すれば、彼女はこの姿を失い旅立ってしまうのだろう。それは喜ばしい事のはずなのだが。
「‥‥この場所が、悪魔の望む恐怖しか生み出さない場所になるのであれば、確かにそれを放置するわけには行きませんね。阻止はします」
 複雑な気持ちでは、ある。エルディンの言葉に女性は微笑んだがすぐに前方へと目を向けた。
 そこに、小高い丘があった。


 黒と金に似た光だけが広がる世界にあって、その姿は浮いて見えた。
「悪魔さん‥‥ですね」
 霜夜が指摘せずとも分かった。真っ先に見えたのは白いシルクハット。次いで白い手袋が闇の中に浮かんでいる。近付くにつれそれが人の姿であり、闇と同化するような黒のタキシード姿である事が分かった。
「‥‥真夏に暑い格好ですね‥‥」
 元々の自分の姿も似たようなものなのに棚に上げて、思わずエルディンが呟く。
「せんせっ! 刀、持ってます‥‥!」
 霜夜の指摘に、エルディンは目を凝らした。空間の中で、何かが光る気配がする。
「勿論。『決闘』ですもの」
 だが女性も立ち上がり、刀を空間の中から抜いた。小舟が近付く中、丘の上の男は笑ったようだ。縁に手を掛けていたエルディンが、とっさに霜夜の体を引こうとした瞬間、多数の何かが小舟目掛けて飛んできた。
「‥‥インプですかっ!?」
「蝙蝠ですっ!」
 とっさに、エルディンは魔法の膜を正面に張ろうとした。だが、蝙蝠はあっさりそれを突き抜けて襲い掛かってくる。霜夜が次々と蝙蝠を叩き蹴り落として行ったが、埒が明かない。
「お弟子さん‥‥しっかり護るのね」
 女性は蝙蝠を斬る事さえしなかった。そのままひらりと飛び上がる。
「勿論です! ですが、私は貴女も‥‥」
「彼女を護る事が、私に対する最大の援助よ」
 言われて霜夜へと振り返ると、蝙蝠は霜夜を取り囲もうとしていた。
「せ〜んせぇーっ」
「霜夜君!」
 闇の中から伸ばされる手を、エルディンは必死で掴む。そのまま蝙蝠は飛び立とうとしていた。
「させません! 彼女は、大切な私の娘‥‥のような子です! 攫わせはしません!」
「‥‥せんせ‥‥」
「しっかりしなさい、霜夜君! 貴方は私の一番弟子! 探偵がこのような所で負けてはなりません!」
 半ば蝙蝠の集団に引きずられながらも、エルディンは片手で印を結んだ。
「邪悪なる僕に、神の鉄槌を!」
 一瞬、暗闇の中に巨大な光が弾けた。それは、周囲の星が集まって爆発したかのような勢いで、小舟に降り注ぐ。
「せんせーっ!」
 蝙蝠が霧散し、夜空の中へと落ちて行く霜夜を追って。
 エルディンも、暗き大河の中へと飛び込んだ。

●結
「‥‥無事、ですか‥‥?」
 覚醒は突然だった。目覚めてすぐに、傍で微笑む弟子の姿を認めて、エルディンは安堵する。
「はい。‥‥有難う御座いました。やっぱりせんせは‥‥頼りになるですね」
「当然ですよ。私は貴女の師なのですから」
 起き上がったそこは、キツネーランドの門の外だった。門は既に閉められ、立て掛けられた笹だけがそよそよと揺れている。
「‥‥彼女、勝てたのでしょうか‥‥」
 夜空を見上げたが、そこには星以外の何者も見出す事は出来なかった。
「きっと‥‥勝てたと、思うです。せんせが、味方したんですから‥‥」
 エルディンの手をきゅっと握り、霜夜も空を見上げた。それへと微笑んで、エルディンはゆっくりと歩き始める。
「そうですね。霜夜君も味方しましたからね。勝てないはずがありません。‥‥それにしても、お腹が空きましたね」
「あ。帰ったら、大きいお握り作りますねっ! 短冊5色お握りとかどうですか?」
「赤と白と黒と黄はいいとして‥‥最後の青の具が何なのかが気になりますね‥‥」
 星が瞬く空の下、師弟は手を繋いでその場を後にした。
 花火一つ上がらない今夜の空は、幾つもの流れ星が空を彩っては消えていく。


 そうして、彼らの7月7日は終わった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

ec0290/エルディン・アトワイト/男/32/神聖騎士
ia0979/秋霜夜/女/13/泰拳士


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつも発注を有難う御座います。少々お待たせ致しました。
少しだけコミカル方向に。エルディン先生の水着姿は都合上書けませんでしたが、惜しい事を致しました。
今回は、お弟子さんのほうが裏の話となっております。出来ましたらこちらを先に読んで頂けますと幸いです。
それではまた、機会が御座いましたら宜しくお願い致します。

ココ夏!サマードリームノベル -
呉羽 クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2010年07月28日

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