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『豪華絢爛!猛者たちの真剣勝負〜勝ち残れ これが男の生き様よ! 』
ガイ3547)&(登場しない)

抜けるような蒼い空を揺さぶる歓声と熱狂が熱く激しく燃え上がる。
各地で行われた格闘大会を勝ち抜いた真なる猛者を集め、最強の猛者を決定すると銘打った大格闘大会。
その名も『燃えよ闘魂!天下無双・漢(おとこ)闘技祭』が今、まさに幕開けた。

隙間なく埋め尽くされた観客の盛り上がりが否応なくガイの気を高ぶらせる。
が、それは周囲にいる猛者たちも同じこと。
闘技場の脇に作られた控えの間で始まりを告げる審判の声に耳を傾けながら、ある者は闘気をみなぎらせ、ある者は腕を鳴らし、ある者は沈黙を保つ。
誰もが闘いを待ちわびてるのは確かだが、ガイはその人の多さが気になった。
一対一を常とする試合の控え室にしては数が多すぎる。
事前に説明がなかったわけではないが、主催者側からは『集った猛者の実力を測るために最高の組み合わせを提供する』のみで後は何一つ分からない。
だが、あのオーナーならば悪いようにはしないだろうとも思う。
元闘士である彼がどんな仕掛けを思いついたのかが気になるところだった。
「さぁ、『天下無双・漢(おとこ)闘技祭』注目の一戦を始めることと致しましょう!闘いは常に一対一。しかぁし、これだけの猛者が揃う中、それはどうかと思いませんか?」
主審の意味ありまくりな台詞に観客のみならず闘士達にも少なからずざわめきが起こる。
それを満足そうに聞き取りながら、主審はマイクを片手に拳を突き上げ、あらん限りの声で絶叫した。
「強きものが戦ってこその『燃えよ闘魂!天下無双・漢(おとこ)闘技祭』!ちまちまやってたら張り合いがない!!より強き相手と戦ってこそ闘士の道。今回は複数の選手が一同に戦う『バトルロイヤル』!!ただ一人の強者となるまで存分にぶつかり合え!!」
その瞬間、大気が鳴動した。
観客のみならず固唾を呑んで見守っていた闘士たちも粋な計らいに歓喜の咆哮を上げる。
誰もが戦ってみたい相手ばかり。だが試合が一対一ではお預けをくらうこともしばしばだ。
しかし一堂に会して戦うというのであれば、それは最高の闘いになる上、これ以上ない修行になる。
さすがオーナー、とガイは胸の内で喝采を送りながら、武者震いに打ち震えた。

闘技盤上に居並ぶのはいずれも各大会の上位入賞を果たした闘士のみ―その中にガイの姿もあった。
互いに火花を散らし、牽制する姿はこれから始まる闘いの激しさを予感させる。
「血肉沸き踊る最強勝ち残り『バトルロイヤル』!!果たして勝ち残るのは誰だ!」
主審の絶叫が轟くと共に闘技盤に揃った闘士たちは唸りを上げ、ぶつかり合う。
入り乱れる闘士たちの技の応酬を掻い潜り、ガイは軽いフットワークで最初の相手に向かって『全力の一撃』を繰り出す。
魔法と棒術を操り、他者の攻撃を避けて反撃に転じようとした男は死角から瞬時に間合いに踏み込んできたガイに気付くのが遅れ、場外の遥か先―闘技場の壁にまで吹っ飛ぶ。
華麗な瞬殺ぶりに会場の熱狂が盛り上がるが、その隙を見逃さす銃器使いが切り込んできた大剣使いの攻撃を避け、ガイの背に銃撃を浴びせた。
激しい猛攻に一瞬ガイは身を屈め、勢いを付けながら背後へ避けるしか術がない。
が、相対していた大剣使いはわずかに緩んだ銃器使いの攻撃に笑みを浮かべて盤上に大剣を振り落とす。
渾身の力を込めて放たれた強烈な一撃は闘技盤の石盤をクレーター状に破壊し、舞い上がった破片が容赦のないつぶての雨となってガイと銃器使いに襲い掛かる。
「やるな!だが甘いっ」
楽しげに喉を鳴らすとガイは瞬時に高めた気を爆発させ、つぶては氷のように蒸発して掻き消える。
対する銃器使いは大型の銃を空間から取り出すと、迷うことなく撃つ。銃口から放たれた青白い光は半円の盾と化し、すべてのつぶてを弾き返す。
悔しげに舌をうち、大剣使いは銃器使いからガイへと標的を代え、絶え間ない斬撃を繰り出して反撃の糸口を与えない。
流れるように無駄のない攻撃に感心しながらもガイはその全てを紙一重で避け、ひたすら逃げに徹する。
苛立って無理な反撃をすれば、たちまち追い詰められることは分かりきっていた。
なによりも無傷で両者の動きを見据えている銃器使いがわずかな隙を見逃すはずがない。
接近戦を得意とするガイや大剣使いに比べ、中遠距離まで攻撃を可能とする彼の間合いは広い。
こうして戦っていても、容赦なく攻撃をしてくるので大剣使いもガイも専念できなかった。
しかしそれが『バトルロイヤル』最大の長所。
実際の戦闘も敵味方が入り乱れて戦う乱戦になることも多々ある。
冷静かつ慎重に行動しながらも、時として大胆な反撃をして勝つ―それが生き残る条件。
数多くの戦いを切り抜けてきたガイにもそれは良く分かっていた。
そして、ここで勝ってこそ真の強者と言えよう。
―だからこその『バトルロイヤル』。負けるわけにはいかん!
胸の内で小さく呟くと、ガイは防御一辺倒のステップから一気に速度を上げ、大剣使いが剣を振りかぶるよりも早く懐に飛び込む。
身体を仰け反り、間合いを取ろうとする大剣使いに数発の銃弾が浴びせられる。
反射的に剣を盾にして銃弾を防いだ瞬間、鋼鉄にまで高められたガイの拳が唸りを上げて猛攻をかけた。
みぞおちに数発、ガイの拳がめり込み―大剣使いは苦しげにのたうち、闘技盤の上に沈む。
「さすがガイ……だが、接近戦ができなきゃ俺の敵じゃないね!!」
小さく口笛を吹いて、銃器使いは空間から新たな大型銃器を呼び出し―雨のように絶え間なく攻撃を浴びせた。
身をかがめてそれらを避けるが、その激しさにバランスを崩し、思わず闘技盤に片手をつく。
ガイの真横に回りこむように動きながら、次々と新たな銃器を呼び出して断続的に猛攻をかける銃器使い。
体勢を整えるよりも先に回避を選んだガイは盤上を転がるようにして逃げ回る。
その素早さに銃器使いは辟易し、両手持ちの大型銃器―バズーカ砲を呼び、ガイに銃口を向けた。
頭から一回転して、片膝を立てた体勢に持ち込んだガイはバズーカが打ち込まれると同時に思い切り良く地面を蹴って、背後に飛ぶ。
盛大な土ぼこりを上げてガイが今しがた間でいた盤上に大穴を開けた銃器使いはわずかばかり悔しげにバズーカを場外に放り出し、両手に大型の銃を構えて高速の速さで打ち続ける。
炎のような弾幕にさすがのガイも防戦一方と化す。

会場からは悲鳴に近い絶叫が絶えず沸き上がり、一対一となった『バトルロイヤル』の顛末を見守る。
両者の一歩も引かぬ気迫がひしひしと伝わり、それが緊張を限りなく高めていく。
「なかなか派手な試合だったな……が、決着をつけさせてもらうぜ!」
「それはどうかな!勝つのは俺だっ!!」
不敵な笑みを浮かべるガイに銃器使いはさらなる攻撃をかける。
怒涛の攻撃であるにも関わらず、ガイは笑みを崩さず、その弾幕を中へと突入した。
勝ちを確信し、銃撃を続ける銃器使いだったが無数に降り注ぐ銃弾の雨をものともせずに突っ込んでくるガイに顔色を変え、なりふりかわず撃ち続ける。
対するガイは平常心を失った相手に苦笑し、一撃を加えんと拳を繰り出す。
確かに銃弾の数は凄まじい数だが、その一つ一つはさほど威力はない。気を高めて防御に回せば、致命的なダメージには至らなかった。
リーチの長い銃器使いにとって至近距離まで踏み込んできたガイの攻撃を避けるのは容易でなく、繰り出された無数の拳をまともに腹へと喰らって空高く吹っ飛ばされる。
つかさず闘技盤を蹴り、銃器使いよりも高く飛んだガイはその身体を掴み、格闘技の一つ・パイルドライバーを決める。
完全に決められ、逃げることもできない銃器使いは勢い良く闘技盤上に叩きつけられると同時に激しい爆音が轟く。
沸き起こる土煙が闘技場を包み、会場中から静かなざわめきが広がっていく。
ふいに大きな黒い影が煙の中から場外に向かって投げ出され、ついでゆっくりとした足取りでがっしりとした大柄の肉体が現れた。
「勝者ぁぁぁっぁぁぁぁぁあっ、ガイィィィィィィィ!!」
高々と突き上げられた拳に主審の大音声が木霊した。
天も割れよとばかりの観客の歓声にガイは応じながら、場外に倒れ伏す闘士たちに小さく微笑んだ。
誰が勝ち残ってもおかしくない闘いの祭典―『バトルロイヤル』に相応しい『派手』で『迫力』のある闘いになったことに満足する。
何より、これだけの実力者たちと入り乱れた闘いを演じれたことが誇らしかった。
覚めやらぬ会場の熱気に再び応じながら、ガイは次なる闘いに向けて静かなる闘志をたぎらせるのだった。

FIN
PCシチュエーションノベル(シングル) -
緒方 智 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2010年08月17日

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