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『星降る夜のデート 』
ケイ・リヒャルト(ga0598)

 久しぶりに二人で出かける。

 日本の縁日は私にとって初めての経験。
 
 隣にいる人が愛する人であれば尚のこと。
 
 霊が帰ってくるなんてミステリアスな雰囲気を精一杯楽しめたらいいな。
 
〜真夏の夜に〜
「ミハイルの浴衣姿なんて初めて! ミハイルは浴衣も似合うのね」
「派手目なのは苦手なので、普段のスーツと変わらない色合いだけれどね? ケイが気に入ってくれたのならよかったかな」
 ケイ・リヒャルトが薔薇が刺繍されたレース付の浴衣でミハイル・チーグルスキの腕に抱きつき見上げる。
 そんな愛らしいケイをミハイルは眼鏡の無い優しい瞳で見下ろしていた。
 ミハイルが探してくれた日本の縁日は川原が近くにある小さな村のものである。
 子供達がはしゃぎ、中央の櫓の上では大人が太鼓を叩いて祭囃子を盛り上げていた。
「今日はサプライズもあるからね。まずはゆっくり楽しむとしよう」
 ケイの手を繋いだミハイルはそっとまばらに人のいる縁日へと連れ出す。
「みてみて、ミハイル。射的よ」
 屋台の一つにケイの視線が釘付けになった。
 スナイパーという能力者のクラスであり、リボルバーを家に飾るほど銃好きなケイにとって心惹かれるものがある。
「一つやっていこうか。勝負はしないけれどね、私のほうが不利すぎるよ」
 苦笑をしながらミハイルがケイと自分の分の料金を支払い、コルク銃を構えた。
 小さな人形やらお菓子などが的として立っている。
 ミハイルが的の中心を狙って撃つが倒れようとはしなかった。
「だめね、ミハイル。こういうのはね。倒れやすいポイントを狙うのよ‥‥たとえば重心が下にあるなら逆に上の動きやすいところを狙ったりね?」
 次にケイが両手を挙げたランナーの描かれたお菓子の箱を上の辺りを狙って撃つ。
 一発だけだがバランスを崩したお菓子はコロンと転がって倒れた。
「ほらね? こういうのは得意なのよ」
 にっこりと笑ってケイは次の弾を込める。
「さすがだね‥‥少しくらいはいいところを見せたいと思うのは男の性(さが)かな‥‥」
 苦笑を浮かべながらミハイルも次の弾を込めて撃った。
 結果はいうまでも無くケイの圧勝で決着がつく。
 両手に景品を抱えてケイは楽しそうだった。
「店主はかわいそうだが、ルールはルールだからね」
 ウィンクをしながらミハイルはケイの肩に手を乗せて身を寄せて次の出店にいく。
「あ、ミハイル! あれは何? 」
 金魚すくいを見つけたケイが指をさして尋ねてきた。
「あれは金魚すくいというものだよ」
「金魚すくい? ああ、あの中から金魚を助けるのね!」
 何か勘違いをしているケイは興味深げに眺めだす。
「こちらも遊ぼうか? 助けた金魚はもって帰れるんだよ」
 ふふふとミハイルは笑いつつケイと共に金魚『救い』をはじめるのだった。
 
〜ヤーパンマジック〜
 遊んだ後は食事である。
 縁日の出店はジャンクフードの集まりでもあるが、長く愛されているソウルフードでもある。
「ねぇ、ミハイル。綿飴って不思議ね。キャンディとは思えないわ。こっちのリンゴ飴も不思議な感じ」
 独日クウォーターのケイであったが、日本の縁日は初めてであり物珍しい食べ物に興味と共に味を堪能していた。
 こうしていれば年頃の少女そのものである。
 日々、傭兵として世界中を飛び回り戦いに明け暮れている分、こうした平和を楽しむ機会がよりいとしいものとなっているようだ。
「こうした祭りもいいものだろう? ヤーパンの人々は暖かい」
 ミハイルが食べやすいようにと併設されたベンチにケイを促して座りこんだ。
 彼はロシア人であるためか、日本のことをヤーパンと呼んでいる。
「ミハイルは何を食べているの?」
「私は焼きそばかな? この素朴な味が結構好みでね?」
 箸を器用に使ってミハイルは焼きそばをすすった。
 ナイフとフォークで食事をするミハイルを見慣れているケイにとって和服でそんな食べ方をするミハイル姿は微笑ましく映る。
「ふふ、箸も上手なのね」
「昔の知り合いにね。日本人がいたものだから、ここでの作法はなれたものだよ」
「そうなのね‥‥知り合いというのはやっぱり女性かしら?」
 ペットボトルの麦茶を飲んでいたミハイルが一瞬むせる。
 図星だったようだ。
「やれやれ、ケイにはかなわないね。古い友人さ‥‥」
「別に怒ったりはしないわよ。私は今の貴方が好きだもの‥‥傍にいたいほど愛しているから‥‥」
 苦笑するミハイルにケイか首を僅かに傾げてミハイルへと寄り添う。
 年の離れたこの二人は年齢や出身を越えた繋がりで結ばれていた。
「じゃあ、そういうことでこれ食べてみて。はい、あーん、熱いから気をつけてね?」
 どういうことなのかとミハイルが突っ込みを入れる前にケイはほかほかのたこ焼きを爪楊枝にさして差し出す。
「デビルボールといわれているあれかね? ふむ‥‥中々に美味しいものだね」
 ふぅふぅと息を吹きかけてからミハイルはたこ焼きを頬張った。
 口の中でとろりとした小麦の生地が広がり、ゆだったタコがぷりぷりの身を下の上で躍らせている。
「ヤーパンマジックだ」
 縁日のソウルフードは不思議な味わいでミハイルを魅了していった。
 
〜流れる夜空の下で〜
 屋台での食事も済ませると二人は静かな川原へと場所を移す。
 白い砂利の中に二人は佇み、キスをしたりしたあとケイはしゃがみこんで手を河の水につけた。
 夏の暑さを忘れるような冷たい感触が手の先から体に染み込んでくるような気がする。
「静かね‥‥でも、こうしていられる時間が在るって幸せなことね」
 救い上げた金魚を持ちながらケイが微笑んだ。
 すると、一瞬、河に光が過ぎる。
 一つだったものが、二つ、三つと増えていった。
「これがサプライズだよ」
 流星を隣で見ながらミハイルはケイの肩を抱き寄せる。
「とっても素敵な贈り物ね‥‥」
 ミハイルと腕を組んで夜空を見上げてケイはさらに笑顔を輝かせた。
 青い星空に流れる星達にケイは圧倒されていたが、ミハイルはそんなケイを見下ろしながら話を始める。
「流れ星は隕石は命が燃え尽きる炎の輝きともいえる。綺麗ではあるが、無くなってもしまうだから刹那的だね」
「そうなのね‥‥命の輝きが綺麗なのは人間も流れ星も一緒なのかも‥‥」
 流れてゆくペルセウス流星群を眺めてケイはミハイルの話に呟きを返した。
「私達も戦争の中でその命を輝かせている。いつか消えてしまうとしても、そのときも一緒にいられたらと思うよ」
「もちろんよ‥‥でも今はこの広い空の下、ミハイルに出逢えたことに感謝するわ‥‥」
 ケイが答えるとミハイルは身をかがめながら、恋人のおでこに唇と触れさせる。
 結婚はしてなく、年も離れている二人だが、間にあるのは確かな愛だった。
「おでこでもいいけど、キスをするなら唇がいいわ」
 屈みこんだミハイルの首に手を回したケイは背を伸ばしてミハイルの唇を奪う。
 二人の影が月あかりの下で重なりあった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名       / 性別 / 外見年齢 / クラス  】
 ga0598  /ケイ・リヒャルト   / 女  / 18   /スナイパー
 ga4629  /ミハイル・チーグルスキ/ 男  / 44   /ビーストマン

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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はじめまして、発注ありがとうございます。
橘真斗です。
かなりの年齢差カップルでしたが、愛し合っているプレイングが微笑ましかったです。
実際にあった流星群とかね合わせましたので、雰囲気を少しでも感じていただければと思います。

それでは次なる運命が交錯するまで、ごきげんよう。
ココ夏!サマードリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2010年09月06日

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