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『●避暑地へようこそ 』
リリィ・セレガーラ(mr0266)

 知人からいただいた招待券。二枚あったのでと、仲良しのリリィ(リリィ・セレガーラ)から誘われて、
 エミリー(エミリー・ライラック)は夏の海へとやってきたのだった。

 海辺のホテルとはいえ、近くには住宅や、小人サイズのホテルなども立ち並んでいる。
 学園の規則では身長を一定の大きさに縮めて行動しなければならないが、ホテルに入るまでその必要はない。
 二人がこのホテルに興味を持ったのも、券を貰ったからだとか、海辺に豪華なホテルがあるから、というだけではなかった。
『巨人用の宿泊施設がある』というところも、彼女たちの行動を後押しした一つ。
 日ごろの疲れを癒し、楽しい思い出にもなるようにと期待を込めて――ここへやってきたというわけだ。
 本来の大きさよりは小さくしているのだが‥‥それでも、小人たちの建てたホテルよりも大きな彼女たちは、足元に気をつけながらゆっくりと目的地へと進む。
 特にリリィはヒールの高いストラップサンダルも履いているため、余計に注意していた。
 つま先をそーっと上げては、そーっと下ろす。ストッキングから見える足指は、その都度ぴくりと動く。
 道路に視線を落とせば、彼女たちの掌よりも小さく、此方を見上げている小人さん達と眼があった。
 避暑地という場所柄、巨人族が珍しいわけではないが、それでもやはり見ると改めて色々な物が大きいなと思うようだ。
 特に足元にいた小人さんは、まじまじと高いヒール部分を見あげていた。
 薄手のパンティストッキングを穿いているとはいえ、年頃の女性。思わず、スカートの中を覗かれないかと不安になり、空いている手でバッとスカートを押さえたリリィ。
(パンティストッキング、薄手だったから‥‥もしかしたら見られてしまったでしょうか‥‥)
 と、恥ずかしがるリリィだったのだが――エミリーは口には出さないまでも『私たちの大きさからくる迫力に圧倒されて、覗くどころではないと思うのですが‥‥』と小首を傾げている。
 事実、小人さんにとっては彼女たちが巨大すぎるので思わず見てしまっているのであり――いや、中にはそういった邪な願望を持つ者もいたかもしれなかったのだが、
 幸か不幸か、スカートを押さえた時の風で軽く吹き飛ばされていった小人さんが数人。と、建物の窓ガラスが少し揺れた程度。幸いにして何も怪我は無い。
 目当てのホテルはどこかな、と視線を走らせるまでもなく、エミリーがそれらしき大きな建物を指す。
「他の建物よりも大きい建物がありますね。あれが私たちの泊まれる大きさのホテルだと思います」
 確かに、彼女たちの膝より小さいくらいの建物群より数十倍、いや、数百倍大きくそびえ立っている白い建物がある。
 私たちの泊まれるホテルがあるなんて素晴らしい、と口調に熱と嬉しさがこもるエミリー。
 彼女たち――といっても、エミリーは両性なのだが、外見は全くの女性であるが故問題ない。走りだしたいのを堪えつつ、二人はやや急ぎ足でそのホテルを目指したのだった。

●大きさとサービスには自信があります

「いらっしゃいませ。ようこそ、当ホテルへお越しくださいました」
 ぺこりと頭を下げるフロントの小人さん。そうすると、彼女たちからはますます小さく見える。
 進んできたところよりやや高台にあるこのホテルは、学園と同じく10mサイズのものになっているので、リリィとエミリーはそのサイズにまで体を縮めて入ったのだ。
 二人から券を受け取ると、手続きの間ロビーの椅子に通されて、冷たいお茶を頂いていた。勿論、椅子もお茶も2人にちょうどいいサイズにしてある。
「綺麗なホテルですね〜‥‥」
 お茶も美味しいですし、とエミリーが目を細めつつホテルのパンフレットを見ている。
「お部屋も全室から海が見えるそうで、素敵ですね‥‥ベッドも大きそう!」
 リリィも隣から覗きこんで、部屋のイメージ写真を見ながら『自分たちの泊まる部屋はどんなものだろう?』と期待に胸を膨らませている。
 しばらくすると『お待たせいたしました』と彼女たちと同じ巨人族の従業員がやってきて、彼女たちの荷物を丁寧に持ち上げ、お部屋に案内すると先導してくれた。

「わぁー‥‥!!」
 部屋に着くや否や、どちらとも思わず感嘆の声をあげた二人。
 白い内装、インテリアは木の温もり溢れるもので統一されていて、安らぎを与えてくれる。
 大きく取られた窓からは、見渡す限りの――水平線があった。この水平線を見せるために高台へと作ってある。
 青と白の織りなす眺めに歓声を上げ続ける彼女たちに微笑みながら、ごゆっくりおくつろぎくださいといい残し、従業員は去っていく。
 開放的な気分にご満悦の二人は、夕食までにホテル内を見て回ったりして楽しんだが、
「明日はあの海に行って、楽しみましょう。深いところなら元の大きさに戻っても平気ですし」
「小人さん達がさぞ驚くでしょうけれど‥‥ふふっ、楽しそう!」
 夕食が終わると、大きさにも余裕のあるベッドに寝そべりながら明日の予定などを語り合い、夜遅くまで色々な事を話しては笑い合っていた。


「あ、おはようございます」
 翌日、リリィが目を覚ますと‥‥既に起きて支度を整えていたエミリーが笑顔で挨拶してくる。
 寝たのは確かに遅かったのだが、翌日の事を楽しみにし過ぎたのか、朝早くに目が覚めたのだという。
 もうすぐ朝食だそうですよ、とエミリーに促されて、むくむくと起き上って軽くベッドを直すリリィ。洗顔や身だしなみを整えに洗面所へと向かっていった。

●海!

 朝食を終え、ホテルを一歩出て海水浴場のほうを向く二人。
 ちなみに道は広く、朝もそこそこ早いので小人さん達は歩いていない‥‥というよりも、誰一人として海岸までの道を歩いているものは居ない。
「‥‥ふふ」
 二人は嬉しそうに顔を見合わせると、60mほどの大きさになって、遮るものが何もない道を駆けだす。
 小人さん達には少々長い距離であるこの道も、実際の大きさ近くまで戻った二人には数歩でいける距離だ。海にぐんぐん近づいて、サンダルが砂を踏む。
 店は巨人専用の店なのだろうか? 大きくなった彼女たちよりは小さいが、小人さんにとっては極めて巨大な店が目に留まる。
【ビーチパラソル貸します】と書かれているそこへ近づいて、一番大きなビーチパラソルを貸してほしいとお願いすると、店のご主人は特大サイズのを貸してくれた。
 
 それを砂浜に苦心して突き刺し(大きいので場所を選ぶ必要もあった)、その下に、シートを敷いてころりと横になるエミリーとリリィ。

(もしや、小人さん達にご迷惑かけているのでは‥‥?)
 エミリーは両性という事もあり、何処の世界でも珍しがられてしまうので‥‥それ故に『慣れた』といういい方は少し違うが、心配になったエミリーがきょろきょろと周囲を伺う。
 大きいのはいつもの事なので、リリィも今更人目を気にしていないようだったし、そもそも小人さん達は嫌な顔もしておらず、眼があったリリィに数人が笑いかけて手を振る。
 そんな状態なので、エミリーの杞憂は露と消え、同じく心から楽しむためグッと伸びをする。
「癒されますねー‥‥」
 リリィが間延びする声で言えば、同じくエミリーからも『全くですねー‥‥』と返ってくる。
 空の青と海の蒼が綺麗に分かれている。静かなさざ波の音も彼女たちの心に清涼感を運んでくれた。
 楽しそうに水辺で遊ぶ人々。
 しばらくその景色と音を楽しんだ後、すっくとリリィが立ちあがる。
「このままも楽しいですけど、折角ですし待ちわびた海に入りましょう!」
 エミリーに手を差し出して、海に入ろうと誘った。
 小人さんの間をそっと進む二人。彼女たちの小指でさえ、小人さんにとってはバスくらいの大きさがあるのだ。
 魅力的である豊満な胸も、小高い山のようにそびえて、お尻も丘のように‥‥見えたに相違ない。大きさの違いから、色気という視点で見られにくいのが残念なところであろう。
 その足指が水に触れ、指先からひんやりとした心地よさが伝わって、エミリーは嬉しそうに微笑む。
 小人さんには深いところでも、彼女たちにとってはなんでもない。どんどんと沖を目指して進んでいった。
 深い所へと進みながら、元の身長にゆっくりと近づけていって、丁度良いあたりのところで立ち止まると砂浜を振り返る。
「流石に、小人さんはっきり見えませんね」
 いるにはいるのだが、もともと小さい小人さん。点のようにしか見えない。あちらからはしっかり見えているのだろうと思いながら、リリィは軽く手を振ってからエミリーへと向き直った。
「海って、大きいですよね。私たちにとっても‥‥この瞬間、尚更に思います」
「‥‥はい。全てを包んでくれる、大きな存在ですね」
 透き通る蒼と、最高の心地よさ。
 誰にも邪魔されず、誰にも気兼ねなくはしゃげる場所に来た二人は、海水をかけ合ったり、泳いだりして夏の一日を満喫したのである。


 ちなみに、その頃。早朝に地震があったとか無かったとか小人さん達が慌てていたが――それは彼女たちの耳には入らない事だった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【mr0266 / リリィ・セレガーラ / 女性 / 17歳 / 禁書実践学専攻】
【mr0250 / エミリー・ライラック / 両性 / 17歳 / 超機械科学】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 はじめまして、「ココ夏!サマードリームノベル」ご発注ありがとうございます。
 遅くなってしまって申し訳ございません。藤城 とーまと申します。
 リリィさんとエミリーさんの大きさと、小人さん達の描写を前半少々織り交ぜて書いてみました。
 とても楽しく描かせていただきました。お二人に、もっと楽しんでいただけたらとても嬉しいです。
 素晴らしい機会をありがとうございました!
ココ夏!サマードリームノベル -
藤城とーま クリエイターズルームへ
学園創世記マギラギ
2010年09月07日

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