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『よし、京都へ行こう〜サマー・アウトサイド・ストーリー〜 』
錦織・長郎(ga8268)

 世界のどこへ行っても
 
 それは大抵仕事がらみであり
 
 日本の古都である京都も例外ではない
 
 ただ、今回は仕事ではないが『遊び』というわけでもないのが難しいところだね
 
〜五山の送り火を見ながら‥‥〜
(「諜報活動が生き甲斐ではあるが、気の抜けた時くらいは一緒に過ごしたいものだね」)
 ブランド物の浴衣に身を包み、駒下駄を鳴らして錦織・長郎は隣を歩く正倉院命を見下ろす。
 見た目だけでいえば一回り近く年の差があり、背丈も40cmほど違う彼女は一緒に過ごす度に愛しい存在になっていった。
 彼女から、祭りついでに両親へ挨拶をしてくれといわれたときは驚きもしたが、彼女からも自分を認めてもらっているようで嬉しくもある。
「どうかしはりましたか?」
 顔を見られて気になったのか命が首を傾けながら長郎の顔を見上げてきた。
 吸い込まれるような黒い瞳を持つ彼女とは遊びだったはずなのだが‥‥人生は分からない。
「いや、頂上に行くまでに夜店で何か買っていかないかね? まだ時間はあるだろうし‥‥」
「そうどすなぁ‥‥けれど、ええ場所は早い者勝ちやさかい。あまりゆっくりはできへんよ?」
 扇子で口元を隠しながら命は微笑む。
「では、手早く行くとしよう」
 命の空いた手を握ると長郎は出店の通りへ彼女を連れ込んだ。
 そっと握り返された手の温もりに彼女に見られないよう頬を緩ませるとまずは簪を売っている店の前で止まる。
「ここは食べ物屋ではありまへんで?」
「そうだね‥‥でも、ここで買いたいものがあるのだよ。君に贈るものがね?」
 長郎は売り物の中から似合いそうな簪を一本買って、自らが髪にさして贈る。
「えろう、サービスしてくれはりまして‥‥うれしおすなぁ」
 恥ずかしいのか扇子で顔を隠して命は長郎を見上げた。
 頬が染まっているか分からないため、真意は見えないが喜んでもらえたのなら上等だろう。
「ツマミを買うてかへんと。関西に来たんなら、粉物ははずしたらあきまへんで?」
 命は扇子で顔を軽く仰ぎつつ、売っている店を探した。
 
 お好み焼きと焼きそば、そしてビールを買った二人は船岡山公園頂上へと辿りつく。
 命がいうように始まってもいないのに人がごった返していて空いている場所を探すのも大変だった。
「あそこに丁度ベンチが空いているようだね。ラッキーだったかな」
 長郎は足元に気をつけると共にはぐれないように手を繋いで二人はベンチへと腰掛ける。
「たまにはチープなこういうのもええやろ?」
「オツな物というのかな? 悪くない気分だよ」
 日本の縁日の風物詩ともいえるメニューを口にすると、祭りに来た気分になった。
「そっちのお好み焼きも美味しそうやね?」
 長郎がお好み焼きを食べていると、焼きそばを食べている命が手元のお好み焼きを物欲しそうに眺めてくる。
「では、半分ずつにでもするかね?」
「ねだったみたいであれやけど、ありがとうな?」
 命の笑顔に長郎が答えていると20時きっかり送り火が始まった。
 まずは大文字山の『大文字』が宵闇に浮かび、拍手が起こる。
 10分後には西山の妙と東山の法が浮かぶ「松ヶ崎妙法」が見えた。
 暗い山の上にうっすらとした赤からはっきりした黄色い色になって文字が浮かぶ光景は美しい。
「綺麗だね」
「実家に帰ってなかったもんやからほんまに久しぶりやわぁ」
 二人は寄り添いながら火が灯り輝く様子を眺め続けていた。
 さらに5分後は船山と呼ばれる山に浮かぶ「舟形万灯籠」が姿を見せる。
 帆掛け舟のような形がくっきりと闇の中で輝きだした。
「こんなに綺麗なものを見ながらビールを味わえるのは贅沢なものだね」
 半分に分けてもらった焼きそばを口にしながら、長郎は喧騒の中からでも見える光景にビールを飲んで楽しむ。
「ほら、次のが見えますえ?」
 命が指差した方へ長郎が目を回せば左の払いが長い「左大文字」が見えた。
 さらに5分後には最後の鳥居形の送り火「鳥居形松明」が夜に浮かぶ。
 五つの文字や絵がそろうと一層ギャラリーは盛り上がった。
「久しぶりやったけど、変わりまへんな‥‥けれど、大切な人と一緒やと見て感じますなぁ」
 命は長郎に少しもたれかかりながら火が消えるまでずっと眺める。
(「さて、これからが正念場という奴だろうね‥‥公認のお墨付きがもらえればいいか」)
 軽く肩を抱き寄せて、長郎は命の両親への挨拶に想いを馳せるのだった。

〜真打登場?〜
 祭りの後、二人は命の実家を訪れた。
 古くは京都の公家からの家柄でもある命の実家は立派な門のある家である。
 長い廊下と共に手入れの行き届いた庭を通り過ぎて、客間の和室へ長郎は案内された。
 正座をして命の隣に座ると命の両親が対面に同じように座る。
「うちの良い人どすぇ」
 命は隣に座る長郎を両親に紹介した。
 長らく実家に帰っていなくて、久しぶりの挨拶が恋人の紹介というのは両親も少し驚きはしたが母親がお茶を用意してくれたので場が氷つくということは無かった。
「娘さんのことに関しては責任を持つつもりです。このような紹介ではありますが、宜しくお願いします」
 嫌味ったらしい口調の長郎とは違い、敬語を使って話す彼の目は真剣であり、指を突いて深く礼をする姿は決まっていた。
(「あない緊張しはって‥‥珍しいものが見れましたわ」)
 口にはあえて出さずに命は長郎の挨拶を微笑ましく見る。
 その後は父親も肩の力を抜いて、晩酌ついでに馴れ初めなどを長郎や命に聞き出した。
 ラストホープでの暮らしのことや、長郎の仕事のことなど‥‥。
 両親の質問攻めから解放され、風呂を借りた後、二人は奥座敷に用意された布団で一夜を明かした。
 
〜朝の誓いを君に〜
 翌朝、早い時間に長郎は目を覚ました。
 奥座敷は朝の日差しが差し込んでいるものの、ひんやりして涼しい。
「まさか、その日のうちに紹介されるとは予想外だったね。そして、イケル口だというのもね」
 昨夜に起きたことを思い返しながら長郎は部屋を見回した。
 見慣れない部屋だが、落ち着いた気分になれるのは隣で寝ている命がいるからだろう。
「可愛いものだね‥‥ああまで言ったのだから、大切にしてやらないとね」
 黒い艶やかな髪と共に頬を長郎がそっと撫でた。
 白い肌を撫でられると擽ったそうにして命が目を覚ます。
「あら、おはようございます。目覚めはええでっしゃろか?」
 薄い寝巻き姿の命が目を少しこすりながら体を起こした。
「そうだね。昨日に比べれば十分いいよ」
 少しだけ緊張していた昨日に比べれば、今日は清清しい。
 気持ちにも整理を付けれたことで、昨日までの自分とは違う気分に長郎はなっていた。
 体を起こし、眠そうにしている命を長郎はぐいっと引き寄せて抱きしめる。
 心臓の鼓動を近くで感じ、温もりさえ互いの衣類越しに感じあった。
「昨日は両親の前ではいえなかったが‥‥改めて言おう、命が好きで大切に想っているよ」
 命の顔を見る長郎の顔は普段あまり見られない優しさが浮かんでいる。
「うれしおすなぁ」
 はっきりと言葉で伝えられて命も優しい笑顔を浮かべて長郎の顔を見つめた。
 涙を流して命は喜び、自らも長郎を抱きしめ返す。
 長郎が命の涙をそっと指で拭うと顔を近づけ唇を重ねた。
 窓から差し込んだ朝日を浴びる二人の影は一つの影となり伸びる。
 一つの区切りを終えて新しい一日が始まろうとしていた。
 

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 外見年齢 / クラス 】
 ga8268  /錦織・長郎/ 男  / 33   /スナイパー
 gb3579  /正倉院命 / 女  / 22   /スナイパー

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ノベルでははじめまして、発注ありがとうございます。
橘真斗です。

土日を挟んでしまったために遅くなって申し訳ありません。
二人の新たな出発みたいなものをイメージしつつ仕上げてみましたがいかがだったでしょうか?

それでは手短ですが挨拶はこの辺で。
次回の発注の機会がございましたらそのときは宜しくお願いします。

次なる運命が交錯する時までごきげんよう。
ココ夏!サマードリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2010年09月13日

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