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『Blue Horizon 』
ロジー・ビィ(ga1031)


 夜遅くまで鳴き交わされる、虫たちの逢瀬。
 一夏の想いも、彼らには一生の想いとなり、消え逝く。
 儚くも、その一鳴きのために。

 ゆらり、ゆらりと陽炎が踊りだす。
 一足遅れて、風が吹いた。
 夕闇の景色に溶け込んで、何かが飛び回る。
 誰に咎められる事無く、するりと中へ。

 月もない夜には、何が蠢いているのだろう。
 確かめようか、あの人と一緒に。

       ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 陽が沈みかけていた。
 空に一部群青が、地上には橙が広がる頃。
 そっと目を瞑る。
 両手を広げると、今にも星が降り注いできそうだ。
 そして、その肩をそっと抱きしめてくれる‥‥。
 そんな、夢を見た。


       *+*+*+*+*+*+*+*+*+*


「‥‥綺麗」
 ロジーは波打ち際で素足を浸しながら遠くの空を見つめていた。
 海と空の境界線は、濃紺に一筋の線を作り、鮮やかな緋色が二つの世界へと広がっていた。
 水を掻き揚げるように歩くと、突いた先で柔らかな弾力が待っている。
「‥‥綺麗ですね」
 肩越しに耳へと届いたのは、隣を歩くカノンの声。
 まだ伸びているのか、少し距離が遠くなったのを感じた。
 繋いだ手は、自分の熱が伝わっているため暖かい。

 昼の暑い日差しが残した熱で、まだまだ気温は高い。
 そっと上を見上げるとすぐ視線に気付いたのか、静かに微笑を返してくれる。
 ズキリ、何故か胸が痛んだ。
 いつからだろうか、この思いを抱き始めたのは。
 日頃合える時間が少なくなるたびに、この痛みは一層強くなり、自分を打ち付けてくる。


       前よりも、近くにいるのに。
       前よりも、痛みが広がっていく。


 白いワンピースに、白い帽子。手に持った白いサンダル。
 いつも、この白に身を包まれていた。
 だけど‥‥。
 自分の心の中は、白いんだろうか‥‥。

 いつまでも消えない、この暑さ。
 これは、自分の中のカノンへの思いと同じ。
 そう考えると、何故か愛おしいものへと変化していく。

 季節のように‥‥。
 春が来て、夏が来る。
 やがて秋に捕らわれ、冬のように‥‥。
 一年の移り変わりが、自分の恋心のようで。
 何故か、視界が少し歪んでいく。




 取り巻く水温が、少し下がった。
 先程まで歩いていた二人も、今は腰を落ち着けていた。
 足が浸る程度に波が寄せ返す。
 腰掛けた岩は、昼に溜め込んだ熱を今は無くし、石本来の冷たさを甦らせつつあった。
 ロジーは、カノンのようだと思った。

 外から働きかけると、それなりに答えてくれるのに。
 本来の自分へと戻る時も速く、それは変わることの無い彼自身の心。
 自分の熱が、彼へと伝わるけれど。
 彼自身の熱が、内側から外へと出ることは‥‥無いように。
 こっそりと吐いた息は、どこへとたどり着くことなく消える。

 抱いた感情を持て余しつつ、そんな感情を持った自分に驚いてみたり。
 自分の想いだけでは成就しない、この不安定さに悲しんだり。
 でも、おかげで気付いたことも多かったと感じていた。

 ―― カノン‥‥。

 傍にいれる喜びが湧き上がってくる。
 手に届く距離。
 彼は、遠くで交わる空と海の濃紺に吸い込まれるように視線を移していた。
 澄んだ緑から発する、熱い視線に気付くことなく。
 紅と緑が交わることは‥‥。



 ―― 気付いて‥‥。こっちを見て!!



 押し殺している胸の想いが、張り裂けそうなほど訴える。
 辛さを押し隠した笑顔は、夜風に触れて今にも崩れてしまいそうだった。
 同時に、気付いて欲しくない。そのままでいて欲しいという思いが重なり。
 隠してくれる夜の闇に、そっと感謝をする。




「風が出てきましたね。‥‥帰りましょうか」
 爽やかに振り返るカノンの言葉に、ロジーは頷けずにいた。
 不思議そうに様子を伺うも、長い銀色の髪がそれを拒む。
「えっと‥‥」
 戸惑う彼に、ロジーは無言で抱きついた。
「え? ろ、ロジーさん!?」
 びくりとする身体も、その上からそっと押さえ込んで。
 胸元で小さく呟いた。
「‥‥少し、だけ‥‥」
 頭上から届いたのは、軽く吐き出された息と‥‥背中へと回った少し温かい腕の感触だった。



       *+*+*+*+*+*+*+*+*+*


  星たちがきらめき始め、月がうっすらと笑っている。
  並ぶ彼らは、空と海に別れ対になって。
  映し出された自分へと、引き込まれるようにより一層輝く。
  流れ落ちる煌きたちが、そっと下を見る。
  重なり合う影。
  月は、その影に夏の祝福の夢を、降らせた。

   再び、この逢瀬が出来るように‥‥。
   夏の、短い夜の中で。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ga1031 / ロジー・ビィ / 女 / 22 / ファイター】
【gz0095 / カノン・ダンピール /男 / 18 / NPC:一般人】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度は発注ありがとうございました。
 いつも大変お世話になっております。
 そしてお待たせいたしまして、申し訳ございません。

 幻想的に。それは時刻が定まらない、あの神秘的とも言える景色が当てはまるのかなぁと思い。
 その曖昧な、色と色が織り成す空間が描けたらと思いました。
 が、うん。描き切れてないと思います、すみません。

 いったい、いつになったら進展することが出来るんでしょうね!とか思いつつ、今回もまたこのお預け感満載が好きだったりします。

 それでは、またお会いすることを願いまして。

 雨龍 一
ココ夏!サマードリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2010年10月18日

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