▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『古都でお忍び?デートなのにゃ☆ 』
西村・千佳(ga4714)


 そうだ、キョート行こう。
 平和な時代のキャッチコピーを何かの弾みで耳にしたのか、それとも旅行代理店の個人ツアーにでも乗っかったのか。
「うに、一度来てみたかったのにゃ☆ 笠原くん、れっつごーなのにゃ」
 ラスト・ホープからの高速艇とシンカンセンを乗り継いで訪れた古都の街に、西村千佳は目を輝かせていた。
 傭兵業の傍ら魔法少女アイドルとして活躍する立場上、帽子を目深に被ってはいたが「オーラ」は隠しきれるものではなく
「あれ、マジカル☆チカじゃない?」
 時折通行人に驚きを提供しながら、軽やかに歩を進める。靴のかかとで石畳の緩い坂を、こつこつと鳴らしながら
 そこから1mほど後ろ。
(やっぱこうやって見ると千佳さんってやっぱかわいいよなぁ‥‥)
 2人分の鞄を持った笠原 陸人がぼんやり歩いていた。半ば強引に連れて来られた故暫くは戸惑っていたが
(なんで僕を誘ってくれたんだろ‥‥鞄持ちかな‥‥まぁそれでもいいや‥‥)
 ものすごく美味しいシチュエーションであることに、ようやく気がついたようである。
「笠原くん、ここにゃ」
 だらだら坂を登りきった千佳が立ち止まり、にっこり笑った。
 そこは昔ながらの町家だった。漆喰の壁に格子戸、虫籠窓に瓦屋根。
「わー、歴史の教科書に載ってるみたいな家‥‥」
「ほら、早く入るにゃ、予約の時間に遅れちゃうにゃ。ごめんくださいにゃー」
「予約?」
 千佳はぽかんとしている陸人の背中を押しながら、戸をあけて中に入る。
 ぱたぱたと音を立てて、奥から作務衣姿の女性が姿を現した。
「おこしやすー。さ。はよこっちへ」
 関西弁で喋りながら、千佳を奥の座敷へと促す。ついでに
「彼氏さんはここで待っとってや、見違えはるでぇ♪」
「か、彼氏? てか見違えるって?」
 破壊力のある謎のヒトコトを、陸人に残して。

 それから暫くの後。
「お待たせにゃ♪」
 再び現れた千佳を見て、陸人は「見違える」の意味を理解していた。
「ち、千佳さん?」
 緋色の着物にだらりの帯、花かんざしに日本髪。いつもの元気な猫耳少女ではなく、艶やかな舞妓が居たのだから。
「どうにゃ? 似合うかにゃ?」
 紅の入った目元が、妙に色っぽい。
「に、似合うますよ‥‥」
 陸人はわかりやすく顔を赤らめて俯いた。
「ほんまよう似合うわ。折角やしそのへん、お散歩してきはったら?」
 店員の言葉に、千佳がぱっと笑顔を輝かせた。
「それはいい考えにゃ♪ 笠原くん、行くのにゃ☆」
 いつもの調子で石畳を駆けようとするが−−。
「うに?」
 慣れない着物の裾をさばけず、転びかけた。
「千佳さんっ」
 咄嗟に手を伸ばして抱きとめる陸人。
「ありがとにゃ」
「や、あの、僕はっ」
 慌てて離れかける腕に、千佳がぎゅっとしがみつく。
「照れなくてもいいにゃ♪ マジカル☆チカ 舞妓バージョンとデートなのにゃ♪」

 町家からすこし歩くと石畳は再びゆるやかに下り始めていた。降りきった先に川と、川沿いに植わった紅葉が見える。
「にゃー、紅葉きれいにゃね〜」
「おこぼ」を鳴らしながら歩く舞妓の肩に、色づいた片がひとひら降る。陸人が手渡してやると、千佳はにこりとした。
「お土産にするにゃ〜♪ あ、あっちも凄そうにゃ!」
 袂に葉をしまい、再び少年の腕に身を寄せる。鼻をくすぐる白粉の匂いと細い項に、彼は何を思っていたのだろうか。
(やっばいなぁ‥‥ドキドキしちゃうじゃないか‥‥)


 午後五時。
 寺の鐘が時を告げる中、束の間の舞妓体験を終えた千佳と陸人は宿にたどり着いていた。といっても、建物に入ったわけではない。
「うわ‥‥すっごいとこですねぇ」
「お屋敷、って感じにゃねー」
 外門から母屋までは、しばしの距離があったのだ。手入れの行き届いた日本庭園の中をしばらく歩き、ようやく到着。
「UPCの傭兵さんどす? 遠いところようおこしやす」
 待ちかねていた宿の女将が、2人を離れの客間へと案内した。どうも今回のツアーチケット、UPCが傭兵向けに用意したもののようだ。
 それはともかく
「すっごいにゃー!」
 通された座敷に、千佳は歓声を上げた。
 広々とした和室。和室から繋がる檜づくりのデッキ。ほんの少しアジアンリゾートの趣を取り入れた庭。そして。
「お風呂にゃー!」
 整えられた庭と、その向こうに見える川を楽しみながら湯につかれる露天風呂が、客を待っていたからだ。
「千佳さん、疲れたでしょ。お風呂先に使ってください。僕は後からで‥‥」
「何言ってるにゃ? 笠原くんと一緒に入るにゃ♪ お背中流してあげるのなのにゃー」
「えええええええええ」
 驚愕のあまり声をあげる青少年。
「お、おちつけ僕! 罠だ! まて、これは孔め‥‥じゃなくてバグアさんの罠だ!」
「にゅ、罠とか失礼にゃねっ」

 かくして数分後。
 檜の風呂イスにタオル1枚で座った陸人は、魔法少女アイドルに背中を流してもらうという幸福に預かっていた。
(ぼ‥‥ぼくこんなにツいてていいのかな‥‥
 生まれたままの姿で、美少女と風呂に入るという極上のシチュエーション。
(ラスト・ホープに帰ったら死亡フラグとかつかないよな‥‥?)
「笠原くんー、かゆいところはないかにゃ?」
 や、もちろん千佳はバスタオルで胸から腿までしっかり包んでいるのだが。
「あ、だ、だいじょうぶですっっ」
「うに、じゃあ今度は僕の背中を流してなのにゃ」
 何気なく言い放つと風呂イスに座り、髪を無造作にたくしあげる。
(わ‥‥うなじ)
 さらに巻いていたバスタオルを、すとんと落とした。
「!!!!」
「にゅ、お願いするにゃ」
 返事はない。
「笠原くん?」
 振り返った千佳がみたものは。
「みゃーー!! 笠原くーん!!」
「ハダカ‥‥ハダカ‥‥振り向けばナイチチ‥‥」
 セクハラ一歩手前のうわ言を呟きつつ、妄想と背中でのぼせ上がった哀れな17歳男子が伸びている様だった‥‥。


 ちょっとしたハプニングを交えつつも露天風呂を楽しんだ2人。
「いいお湯だったにゃーねー」
 浴衣に着替えて部屋に戻ると、食事の用意が整っていた。籠や小鉢の中に、色とりどりの菜が美しく盛り付けられている。
「にゅ、本格的な懐石料理は久しぶりにゃ♪ この季節だと栗や松茸が美味しいのにゃ♪」
 アイドルとしてグルメ番組にも出演経験を持つ千佳は物怖じすることはなかったが
「千佳さん‥‥このぶにょぶにょした紙みたいなのなんですか‥‥」
「湯葉にゃ」
「じゃあこの球根みたいなやつは‥‥」
「百合根っていうにゃ♪」
「あ、このお魚は美味しいですね! 脂の乗ってないうなぎみたいで!」
「それは、鱧(はも)にゃ。気にいったにゃ?」
 根っから庶民の陸人には、未知との遭遇と相成った。
「うん、このハモと、こっちのお肉は好きです」
「猫に小判」を地で行っているような気もするが、まぁよしとしよう。
 鱧の白焼きと丹波牛の陶板焼を幸せそうに頬張る陸人に、千佳が声をかける。
「うに、じゃあ僕のも食べるにゃ♪ 笠原くん、あーんにゃ♪」
「え?」
 伸ばした箸先には、肉。
「千佳さん嫌いなんですか? おいしいのに」
 いや重要なのはそこじゃないだろう少年よ。
「いいからあーんにゃ♪」
「じゃあお言葉に甘えて!」
ミディアムに焼けた肉にぱくりと食らいつくニブチンの17歳。その後
「じゃあ僕もお返し。あーん♪」
「あーんにゃ♪(うに‥‥酢の物はあまり得意じゃないのにゃ‥‥)」
一応トレードは成立したのだが、明らかにフェアではなかったりした。
「みゅ〜、おなかいっぱい♪ 笠原くん、もっかいお風呂入って寝るにゃ〜☆」
「ええええええええ」
 寝る!?
(寝 る で す と !?)


 ‥‥とまあ、青少年の妄想が具現化するわけもなく。
「おやすみにゃー♪」
「お、おやすみなさいですー」
 30センチほどの間隔をあけて敷かれた布団に、2人はそれぞれ潜り込んだのだった。
(まぁ‥‥そうだよな‥‥っていうか僕は何を期待していたんだ‥!)
 冴えた月の光が、窓から差し込む室内。
(‥‥千佳さんといっしょに旅行できるだけで僕は幸せじゃないか‥‥うん‥‥しあわせ)
 昼間の疲れが出てきたのか、強烈な睡魔が陸人を襲う。
(明日は‥‥どこへ‥‥いこうかな)
 遠くで響く虫の声を聞きながら、少年はゆっくりと眠りに落ちていった‥‥。

 それから数時間後。
 所謂「草木も眠る丑三つ時」に。
(‥‥ん? 苦しい‥‥それにあったかい‥‥?)
 陸人は奇妙な息苦しさと温かさで目を醒ました。
「‥‥?」
 寝惚けた頭で半身を起こし、布団をはぐ。
 はたして中には。
「ええええええええ!?」
 浴衣の前あわせを盛大にはだけさせた千佳が入っていた。
「にゅ‥‥笠原くん、さむいにゃよ‥‥」
 驚愕の叫びなどものともせず、陸人の太ももにしがみついて暖をとる千佳。
 確かなぬくもりとほのかな柔らかさに、17歳の中で何かがはじけ‥‥

「にゅ、ここから先はヒミツなのにゃ☆」



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ga4714/西村・千佳/18/女/ビーストマン
gz0290/笠原 陸人/17/男/ドラグーン


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ちかさんこんにちは! クダモノネコです。
キョート旅行に笠原君をお誘いいただきありがとうございました♪
夜中に何があったのかは、千佳さんと笠原君だけのヒミツってことで!
秋のデート、楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも笠原君となかよくしてやってくださいね!
HD!ドリームノベル -
クダモノネコ クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2010年11月22日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.