▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『Enchanted 』
ロジー・ビィ(ga1031)

 白が揺れる。
 ふわり、ふわりと。
 闇夜に、白が揺れる。
 羽音はしない。
 ふわりと飛んで、くすりと笑んだ。

*+*+

 窓の外は、既に夕暮れ。
 そっと視線を城下へと移すと、街の灯りが見え始めていた。
 涼しさが目立ち始めるこの季節では、橙色の街燈がほんのり暖かく感じる。
 石畳の道が照らされ、今頃帰路へと辿る人たちが増え始める頃合だろうか。
 カノンは、そっとため息をついた。
 自分が行くことのない城下へと、思いを馳せる。
 今の時期は、いったい何が出回っているのだろうか。
 いったいどんな音楽が町に溢れているのだろうか。

 ……時たま会えるあの人たちは、いったいどんなことを楽しむのだろうか、と。

 季節感覚は、この城に仕えるものたちの暖かい行為によって齎されていた。
 城内を飾る花々、洋服、そして数々の料理たちによって。
 しかし、一歩も出ることを彼には許されていなかった。




 軽やかに靴が鳴る。
 ヒールの踵が、石畳にキスをする。
 揺れる白は、闇の中で踊る。
 ふわりと香る、甘さだけを残して。



 蝋燭の灯りが、室内を照らした。
 この城では、未だに電気を用いない。
 石の間にかけられたタペストリーが、暖まった空気で揺れた。
 暖炉の中では火が燻っている。
 少し離れた椅子へと腰掛けていたカノンは、持ち込まれた蝋燭の灯りの下で、厚い皮の本を捲る。
 蝋燭は、ランタンに入れられていた。
 小さく開いた口から、小さな炎がぼんやりと照らす。
 薄明かりの中、いつしか睡魔に誘い込まれ……。


 大きな窓は、ベランダへと続いている。
 部屋との仕切りの大きなガラス戸は今は大きく開け放たれ、白いレースと厚いカーテンが遮っていた。
 室内からの音は無い。
 静かな時間だけが、過ぎ去っていく。
 ゆらりと揺れたのは、風なのか。それとも……。
 レースよりも、濃い白が揺れ動いた。


 椅子に横たわる、黒髪の青年に視線を降ろす。
 その後ろに、そっと寄り添って髪を梳きそうになる手を掴んで止めた。
 彼が胸に抱えた、分厚い本を取り除き、そっと耳元で彼女は囁いた。
「TREAK or TREAT」


 一年前を夢に思い浮かべる。
 あの時間を。

 見知った、だけど見違える場所。
 たくさんの人に囲まれて、穏やかな夢心地の時間。
 広がるドレス。
 薔薇が舞う。
 暖かな灯りが燈された、舞台で。
 南瓜達が、笑い声を上げ照らす。
 流れる曲が、ささやかな幸せを運ぶ。
 優しい眼差しが、降ってくる。
 独り締めの時間。
 許された、至福の刻。


 優しい声に揺り起こされ、カノンは目覚めた。
 呼び起こしたのは……。
 視線が、合わさる。
 ふわりと笑うロジーは、いつもと違って。
 手を伸ばしたら、ふわりと消える幻に想えた。
 躊躇って、視線だけを絡める。
 伸びてきた腕は、白くしなやかに首へと絡まった。
 近づいたのは、薔薇の香り。
 甘い声が、耳を擽る。
 そう、目覚めたときと同じ声で、魔法がかけられる。
「TREAK or TREAT?」
 戸惑う彼に、暖かな感触を。


 甘い視線と共に、かけられた魔法が動き始める。


 髪が結い上げられた天使の、白い首すじが眩しくて。
 思わず目を瞑ってしまう。
 手を牽かれ、訳も解らず歩き出す。
 足元を見つめると、ゆっくりと外へと導かれ。
 軟らかい感触に目蓋を上げると、そこには蝋燭の灯りで照らされた庭だった。
 強く握られる手。
 見つめると、懐かしい場所へと案内される。


 机の上にはナイフと南瓜。
 夢に出てきた、ジャック・オ・ランタン。
 たくさんの表情で、彼らを見守る。
 誘われるまま、彼も作り出す。
 懐かしい、あの日のように。
 不器用な彼を、彼女は微笑んでみて。
 恥ずかしくて目を逸らすと、温かな腕で包まれる。
 甘い、薔薇の香りに包まれながら。
 刳りだされた南瓜が、幸せ色に広がる。
 その優しさが心地よくて、思わず留まりたくなって。
 ただ、思い出した誓いが、現実へと呼び覚ます。


 魔法が、綻びだした。


 離れる黒を、銀は哀しげに見守る。
 今宵の魔法も、ここで切れるのかと。
 魔法が途切れないように、そっと強く自分の手を握る。
 せめて、あと少しの時間は……。
 今宵だけは、このままでと。

*+*+

 月が笑った。
 まだ、時間はあるよと。
 星達が、輝きを強める。
 煌めきと共に流れ出した音楽。
 柔らかな金属音。
 オルゴールのような優しい音が、耳へと届いた。

 そっと、腕が曳かれた。
 視線を上げると、哀しい微笑。
 音楽が、耳に届く。
 瞳が、告げる。
 そっと、手を合わせる。
 歩き出す、石畳を。
 踵が、キスをする音で踊りだす。
 微笑が、嬉しさへと変わる。
 それが消えないよう、そっと留める魔法を落とす。

 回り始める、薔薇の中で。
 白と黒が相俟って、赤く花開く。
 橙の灯りに照らされながら。
 緩やかに軌跡を描いて。
 不思議な刻。
 魔法の刻。


「TREAK or TREAT?」
 魔法にかけられて。
 魔女の悪戯か、天使の微笑みか。
 暫し夢に、彼と彼女は酔い踊る。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ga1031 / ロジー・ビィ / 女 / 22 / ファイター】
【gz0095 / カノン・ダンピール /男 / 18 / NPC:一般人】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 この度は発注ありがとうございました。
 いつも大変お世話になっております。
 そしてお待たせいたしまして、申し訳ございません。

 趣向を変えて。
 カノン視線で、とありましたが、このような形でお届けさせていただきました。
 曖昧な、どちらとも付かない、だけど視点は……と。
 ハロウィンの時間は、魔法の時間。暫し現実との狭間の時間、楽しんで頂けたらと思います。
 『Enchanted』魅せられたのは誰なのか。いつまでも、解けない魔法の中に居たいものです。

 それでは、またお会いすることを願いまして。

 雨龍 一
HD!ドリームノベル -
雨龍 一 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2010年11月25日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.