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『おてつだいねこ、ふたたび ――ぼすはさいきょうにゃ!―― 』
パラーリア・ゲラー(eb2257)

 ハロウィンには、何かが起こる。
 楽しいこと、嬉しいこと。そして、中にはちょっぴり迷惑なことも。
 そして今、ここキャメロットにある円卓の騎士ボールス・ド・ガニスの屋敷……通称「猫屋敷」に起きている出来事は、その「ちょっぴり迷惑なこと」の範疇に入るのだろう――傍から見れば。
 だって、ねえ。家の使用人達が全て追い出された挙句、可愛いだけで何の役にも立たない「自称おてつだいねこ」達に占拠されるなんて、迷惑以外の何だというのだ。
 だがしかし、屋敷の中に残された無類のネコスキーかつキュート耐性マイナス120%のボールスにとっては、そこはパラダイス。助けを呼ぶ気もないらしい――とりあえず、今のところは。
「ボールス様おひとりなら、それでもよろしいのでしょうが」
 庭先で深い溜息をついたのは、老執事。
「ええ、アルフェン坊っちゃまには、そろそろお乳をあげないと……」
 そわそわと落ち着かないのは、息子アルフェン・ド・ガニスの乳母だ。

「――ふぎゃあぁぁん!」

 ああ、ほら……言ってるそばから泣き出した。
 騎士の中ではイギリス最強の部類に入るとは言え、ボールスは泣く子と猫の前ではまるっきり無力。しかし助けに入りたくても、可愛らしいおてつだいねこが「はいっちゃだめにゃん♪」と言って通してくれない。
 いかに可愛く化けてはいても、あれもれっきとしたデビル。戦いには素人の執事達には追い払うことも難しい。
 さて、どうしたものか――


「こんにちは〜!」
 その時、救いの神が現れた!
「ウォルくんたちがお出かけだから、ちょっとお手伝いにきましたのにゃ……はれれ?」
 うさみみカチューシャとふりふりエプロン、そして手には葱(ただし食用にあらず)を装備したパラーリア・ゲラーは、ことりと首を傾げた。
 なんだかいつもと様子が違う。って言うか、執事や乳母、使用人達の、この期待に満ちた眼差しは何? その前に、なんで皆して外に?
「じいやさんも乳母さんたちも何してるの〜?」
「おお、よくぞ訊いてくだされたっ」
 かくかく、しかじか……ふみゅふみゅ。
「事情はわかったのにゃ。そういうことなら、あたしにまかせといてっ☆」
「おお〜」
 ぱちぱちぱち。沸き上がるどよめきと拍手。
 がんばれ、パラちゃん。猫屋敷の未来はキミの手にかかっているのだ!

「じゃあ、がんばっていくよ〜。おてつだいねこさんたちを何とかしてハロウィンパーティーをしよ〜☆なのにゃ!」
 まずはうさみみのカチューシャをねこみみに替えて。長い尻尾も付けてみる。これで仲間だと思ってくれるかにゃ?
 たまちゃん……じゃなくって、ボールスさんって生活力なさそ〜って思ったから、お手伝いに来てみたけど。まさか、こんな大変なことになってるなんてにゃー。
 急いで買って来たお菓子とお酒を手に、れっつごー。
「こんにちは〜、いたずらしにきました〜♪」
 今日はハロウィンだもん、お菓子をくれなきゃイタズラするのが当たり前。
「おかしなら、あるのにゃ! あげるのにゃ! はいっちゃだめにゃん!」
 玄関で見張りをしていた白黒のぶちねこお手伝いさんが、短い両手を広げて通せんぼ。
 でも、デビルが化けた猫がくれるお菓子って……なんか、あやしい。
「あやしくにゃいのにゃ、おいしいのにゃ」
 お願い、貰って……と、大きな瞳を潤ませ、小首を傾げ、そして顔の前で両の掌、いや、ぷにぷにの肉球を合わせて、とびきりの悩殺ポーズを作るおてつだいねこ。
 でもパラちゃんは、そんな誘惑には負けなかった。負けなかった、けど……あれは、触ってみたい、かも。
「……にくきゅう……」
 ぷにっ。
「にゃんっ」
 ぷにぷにぷにぷに。
「……ぁ、あンっ、……ぃやぁ〜ん……」
 くねくね、ごろごろ。
 肉球をぷにられたおてつだいねこは、床にひっくり返ってクネクネとのたうち回り、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。どうやら、そこが弱点らしい。
 第一関門、あっさり突破。

「さて、たまちゃんたちはどこかにゃ〜」
 ……ん、奥の方から赤ん坊の泣き声が聞こえる。あと、悲鳴ともなんともつかない、なさけない声も。
「う、ぁ、あのっ、そのっ、や……っ」
「ボールスたま?」
 ひょこっ。パラちゃんが顔を出す。
「だれにゃっ!」
 ボールスに……いや、正確には多分アルフェンに迫っていた三毛のおてつだいねこが、くるりと振り向いた。見事なきょぬーをぶるんぶるんさせて。
「おてつだいは、まにあってるにゃ。でていくにゃ!」
 しかしパラちゃんは、すかさずその手を握り締めた。
 ぷにぷに、ふにふに。
「ふ、ふにゃあぁぁ〜〜〜ん」
 くたぁ〜、くねくね、ごろごろ。陥落。
「ね、こうすればイチコロだよっ」
「うわぁ、すごいですパラちゃん! 私など、思いつきもしませんでしたよ」
 尊敬のマナコで見つめる円卓の騎士。さっそく自分もやってみることにしたらしい……ただし、別のおてつだいねこで。
「……いや、だって、あの子は……」
 きょぬー丸出しでのたくるネコは、何と言うか、その……怖い。これ以上見ていると、おっぱい恐怖症になりそうだった。
「じゃ、さっさと皆をくたくたにして、アルフェンちゃんにごはんあげよ〜」
 ぷにっ。
「ふにゃぁん」
 ふにふに。
「ぅにゃ、ぅにゃん」
 もにもにもに。
「ふみゃぁ〜〜〜ん、もっとぉ〜ん」
 ごろごろ、くねくね。かなり気持ち良い、らしい。
「えーと、これで全部かにゃ〜?」
 パラちゃん、あっという間に制圧完了。しかも非暴力。おまけにすっかり懐かれている。
「うにゃ〜ん、にゃんてつぉいのにゃ〜」
「かなわにゃいのにゃ〜ん」
「にゃんでもいうこときくにゃ〜」
 ごろごろ、すりすり。
「じゃあ、家の人達を中に入れてあげてもいいよねっ」
「……うにゅ……ぼすのめいれいにゃら、しかたないにゃ……」
 どうやら、「ぼす」は「ごしゅじんにゃま」よりも格が上らしい。
「でも、いれてあげたら……ごほうび、ほしいにゃん」
 5匹のおてつだいねこが、揃って「おねがい」のポーズ。
「うん、いいよ〜。ごほうびはねぇ、これっ」
 どーん!
 お菓子の山と、お酒……しかもマタタビ入りだ!
「…………っ!!!」
 あくねこさんたち、もう感激で声も出ないらしい。

 暫く後。
 パラちゃんは酔いつぶれて半分正体が出かかったおてつだいねこ達を、裏庭へ引きずって行った。
 きれいに並べて……せぇーの!
 ――すっこぉーーーん!
 見事な葱のフルスウィングで、ねこ達を空の彼方へカッ飛ばす。
「また来年にゃ〜☆」
 ……あくねこさんたちは、おほしさまになりました。
 それでも、来年にはまた平気な顔して戻って来そうな気はするけれど。
「……うわ、すっげぇ!」
 ねこ達の飛んで行った先を満足げに眺めていたパラちゃんの背中から声がかかる。
「あ、ウォルくん、エルくん。おっかえりぃ〜」
 買い物に行っていたウォルフリード・マクファーレンと、エルディン・ド・ガニスだ。
「猫達、退治してくれたんだ? ありがとなっ」
「パラちゃん、すごーい!」
「えへへー」
 ふたりに褒められ感謝され、パラちゃん照れ照れ。
「えっと、じゃあ……皆揃ったし、パーティーしよ〜☆」
 まだ何にも、準備してないけどっ。

 猫屋敷のハロウィンパーティーは、いつもと同じ。屋敷も庭も、全てを解放した無礼講だ。
 広い敷地の中で、見知った者もそうでない者も、ご近所も、たまたま通りかかっただけの人も、皆が好き勝手に食べたり飲んだり、歌ったり踊ったり……
 そんな賑やかな会場の一角で、パラちゃんは膝に抱いたアルフェンをあやしていた。
 お腹もいっぱいになって、ご機嫌で笑っている。
「赤ちゃんかわいいな〜♪」
「でしょう?」
 傍らでボールスが鼻の下を伸ばしていた……おてつだいねこに、必殺のおねがいポーズをされた時と同じように。
「この子を育てると決めた時には、爺にさんざん小言を言われましたけどね。……犬や猫の子じゃないんだからって」
 アルフェンは、捨て子だった。
「その爺も、今では自分の孫も同然に可愛がってくれていますよ」
 どんな形であれ、この子は天からの授かりものだ。
 子供ばかりではなく、親や兄弟も、友も、もう二度と会うことのない人も、犬や猫も……出逢いは全て。
「あっ、あたしも……」
 ごにょごにょ。パラちゃんは何かを呟き、真っ赤になって俯いた。
 さてさて、これは……
「で、でも旦那さまにはいいにくいにゃ。ひっひみつだよぉ」
 ぼふぼふーーーん。

 この可愛い奥さまにも、素敵な出逢いが訪れますように。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【eb2257 / パラーリア・ゲラー / 女性 / 24歳(実年齢24歳) / レンジャー】

【ez0098 / ボールス・ド・ガニス / 男性 / 29歳(実年齢29歳) / 神聖騎士】
【ez1138 / ウォルフリード・マクファーレン / 男性 / 16歳(実年齢16歳) / 神聖騎士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。STANZAです。
パラちゃん、いつでもどこでも葱装備なんですね。流石です(笑

……さて……ほんとに、納品が遅くて申し訳ありません。
エンジンかかるまでが、やたら長くて……。
でも近頃は、だいぶ調子も良くなってきたと思います。
遅いけど、ギリギリで遅刻は回避してるのが何よりの証拠……(げふ
――いや、何の自慢にもなりませんね。ごめんなさい(がくー

それでも、葱はやる気です(←
葱サンタのいないクリスマスなんて、有り得ません(←←

あ、それから……最後の部分ですが、欲しいな〜という希望なのか、それとも既に……ということなのか、ちょっと判断がつきませんでしたので、濁す形にさせて頂きました。
申し訳ありませんが、ご了承いただけると幸いです。

では、ご依頼ありがとうございました。
またご縁がありましたら、よろしくお願い致します。
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Asura Fantasy Online
2010年12月03日

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