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『クリスマスもお忍びデートなのにゃ★ミ 』
西村・千佳(ga4714)



 クリスマス・イヴの16時。
 ラスト・ホープの外れにあるコンサートホール。そこに近いチューブトレインの駅は、親子連れでごった返していた。
 子どもたちの多くは頭に猫耳のついたカチューシャを飾り、手にカラフルなパンフレットをしっかりと抱きしめている。
 そう、彼らは皆、ファミリー向けのミュージカル・ライヴを堪能した観客であり、帰宅を急いでいるのであった。
 ホームからあふれんばかりの乗客を乗せるべく、チューブトレインがゆっくりと滑りこんで来る。
「さ、これに乗るよ」
「パパ、マジカル☆チカ、すっごく可愛かったねえ! また見に来ようね!」
 幸せな笑顔たちは、静かに開いた自動ドアの向こうへと吸い込まれていった。

 一方そのころ、コンサートホールの舞台裏では、スタッフが慌ただしく後片付けに追われていた。
「お疲れ様チカちゃん! このあと年末に2回公演があるけど、頑張ろうね!」
「うに、もちろんにゃ♪」
 ある時は傭兵、ある時は魔法少女アイドル。
 多忙を極める西村・千佳も楽屋で化粧を落とし、スポーツドリンクのストローを口に含んでいる。
「チカちゃん、この後打ち上げの予定があるけれど、もちろん出席だよね? 主役がいないとシマらないしぃ」
 ファンからのプレゼントを整理しながら、女性マネージャーがフランクな口調で話しかける。
 問われた千佳は一瞬目を泳がせ、もじもじとし、
「にゅ‥‥ごめんにゃ‥‥今日はちょっと‥‥予定が」
 言いにくそうに、答えを返した。
「えー、マジでぇ? ‥‥って、ああ、そうか」
 マネージャーは一瞬大声を上げたが、壁掛けのカレンダーを見て納得したように頷いた。
「ふふ、クリスマス・イヴだもんねえ。マジカル☆チカも普通の女の子ってわけか」
「そ、そんなんじゃないにゃ‥‥」
「いいのいいの、私が無粋だったわ。打ち上げは欠席ってことで伝えとく。ただし!」
 彼女はそこで言葉を切り、千佳の顔を覗き込む。
「チカちゃんはアイドルなんだからね? そこの自覚だけはお忘れなきよう。この時期は週刊誌がうろうろしているから、よーく気をつけてね!」
「だ、だからそんなんじゃにゃいってば‥‥!」
 『商品』に対して用心深いマネージャーに、千佳は真顔で否定してみせた。もっとも頭の隅では
(うに‥‥ホントにそんなんじゃ‥‥ないとはいえないかもにゃ?)
 嘘をついている自覚も、持ちあわせてはいたのだが。


 クリスマス・イヴの18時。
 ラスト・ホープはすっかり夜の帳に包まれていた。イルミネーションがあちこちで煌き、島全体が華やかな雰囲気に彩られている。
 それは日中、魔法少女アイドルのコンサートが行われたホール周辺も例外ではなく
「‥‥わー‥‥キレイだなぁ」
 笠原 陸人はチューブトレインの駅入り口に設置されたツリーを見上げて、感嘆の声を上げていた。
 つい2時間ほど前は乗車客でごった返していた改札も切符売り場も、今は閑散としている。
 と、そこで。
「笠原くん、お待たせにゃ♪」
 ぽんと肩を叩かれ、陸人は振り返った。
 大きめのキャスケットに顔の半分を隠すサングラスを身に付けた少女が、周囲をうかがっている。
「こんな格好でごめんなさいにゃ」
 少しだけずらしたサングラスの影から、赤い瞳が見えた。
「あ、僕こそ、お疲れなのに迎えに行けなくてすみませんっ、千佳さん」
 陸人にとって目の前の少女は、傭兵仲間であり先輩である。
 が、彼女がトップアイドルであることはもちろん知っていた。
 そのアイドルが、主演のライヴをこなした後、自分をイヴの夜に誘ってくれたことも。
「にゃふふ♪ 気にしなくていいにゃ♪ さ、行くにゃ♪」
 千佳は陸人のよく知る「傭兵」の顔になって笑った。切符売り場まで走り、革手袋をはめた手で招く。
「切符、買うにゃよー♪」
「あ、はーい」

 チューブトレインで数駅を飛び越え、降りた駅もまた、光に包まれていた。
 繁華街からはやや離れた駅だったが、改札口を出てすぐ伸びる大通りの両脇の並木には沢山の電飾が花を咲かせている。
「わーー‥‥すごい」
「何気に穴場なのにゃ♪ こっちにゃ」
 千佳は慣れた様子で横断歩道を渡り、振り向いて陸人を呼んだ。行き交う人の目が気になるのか、50cm以上近づこうとはしなかったが、不案内な同行者がはぐれないように、時折立ち止まる。
「千佳さん、何処行くんですか? このへんってラスト・ホープでも割にコーキュージュータクガイって言うか、そういうとこですよね?」
「うに? そんなこともないにゃよ。兵舎とたいして変わらないにゃ」
 大通りの信号を曲がり細い道に入り、ゆるやかな上り坂を暫く歩くと右側に出てきたマンション。
「ついたにゃ」
「え?」
 千佳はオートロックのガラスドアを慣れた手つきで開き、再び陸人を手招きした。
「え、千佳さん、ここって」
「‥‥僕のプライベートスタジオ兼隠れ家にゃ♪ 他の傭兵さんやマスコミさんには、内緒にゃよ♪」
「‥‥な」
 なんですとおおおおおお!!
 予想だにしなかった展開に、思わず叫びかけた陸人だったが、そこは何とか飲み込み押しとどまり
「じゃ、じゃあお邪魔します‥‥」
 千佳のあとに付いて、ガラスドアをくぐった。
「にゅ、陸人君。じゅうたんだからって靴は脱がなくていいのにゃ」


 そんなこんなでトップアイドルのプライベート・ルームにお邪魔してしまった陸人は、ダイニング・チェアに腰かけて周囲をきょろきょろと見回していた。
 大きな窓を彩るのは、可愛らしい柄のカーテン。薄いレース越しに宝石を散りばめたようなラスト・ホープの夜景が透けて見える。壁の色は薄いアンティークピンクで、飾り棚の上には沢山のぬいぐるみが行儀よく座っていた。その横のコルクボードには、ファンからの贈り物らしき手紙やカードが、センスよくピンナップされている。
(千佳さんって‥‥すっごいなぁ‥‥)
 そして部屋の主はフリルのついたエプロンを身に付け、リビングルームに隣接したキッチンで、何やら甲斐甲斐しく動いていた。
 ケトルが沸騰する音、電子レンジの軽快な音などをひとしきり響かせ
「お待たせにゃ♪ と、いっても昨日作ったのを、あたため直したんだけどにゃ‥‥」
 得意げに、一方でややきまり悪そうに、陸人の前に料理を並べ始める。
 こんがり焼けた鶏のローストとピラフのワンディッシュ、、クリスマスカラーのサラダ、湯気を立てるコーンポタージュ。
「うわすっごい! これ千佳さんが?」
「ちょっと頑張ってみたにゃ」
 陸人は千佳の顔と料理を交互になんども見返した。そして何度目かに
「‥‥あー、なるほど。頑張ったってそういうことなんですね‥‥」
 絆創膏が貼られた手に、ようやく気がつく。
「千佳さんは、アイドルなんだから、怪我なんかしちゃダメです」
「すぐ治るにゃ♪ ‥‥と、おなかすいてるところ悪いけど、ちょっとだけ待っててにゃ」
「え?」
 照れを隠すように、ぱたぱたと隣室に走り去る千佳。
 数分後。
「おまたせにゃ♪」
「!!」
 再び目の前に現れた千佳に、陸人は息を飲んだ。
 そこにいたのは、彼がよく知る傭兵の先輩でも、テレビや雑誌で見かけるマジカル☆チカでもなく。
 金髪を高い位置でアップにし、黒いベルベットのドレスを身に付けた大人びた一人の、女性だったのだ。
「外では見せて上げられなかったから、部屋の中でくらいはにゃ?」
「は、はい‥‥ありがとうございます」
 大きくあいたドレスの襟ぐりのせいか、陸人は少し赤面していた。
 千佳はかまわず冷蔵庫からボトルを取り出すと、後輩の斜め向かいに座る。
「にゅふふ、フランスからお取り寄せしたワイン風ぶどうのジュースにゃ」
 フルボトルの赤ワインにしか見えないそれを、手際よくワイングラスに注いだ。
「陸人君、メリークリスマスなのにゃ☆」
「メリークリスマスです、千佳さん。今年一年、ありがとうございましたっ」
「まだあと少し残ってるのにゃよ♪」
 どちらからともなく交わす笑みの後
「乾杯」
 グラスが軽い音を立てた。
「わー、千佳さんこのチキン、中に何かハンバーグみたいなのが入ってる!」
「レバーとひき肉で作ったパテを詰めてあるにゃ、お仕事で食べたお料理を思い出しながら作ったにゃよ」
「あ、このサラダに入ってる草、ちょっとモサモサするけどいい匂いで美味しいー!」
「‥‥それはバジルっていうハーブにゃ。陸人君、外では草って言わないほうがいいにゃ」
「千佳さん! このポタージュめっちゃ美味いです!! 僕が毎朝お湯入れて食べてるやつとは全然違う!!」
「とうもろこしを裏ごしして作ったにゃ」
 いや待て少年。チキンとサラダに対する感想はともかく、インスタントと比べるのはなんぼなんでも失礼だろう。
 しかし千佳は怒るでもなく
「おかわり、あるにゃよ?」
 ものすごい勢いで皿を片付けてゆく陸人を機嫌よく眺めるのであった。
「んー、もう食べられないー。お腹いっぱい、僕、しあわせー」


 クリスマス・イヴの22時。
 2人は食器を洗い終え、ソファに移動してのDVD鑑賞タイムを楽しんでいた。
 クリスマスをテーマにした古い映画が大きな液晶ディスプレイに映し出されている。
 大勢のサンタが来たるべきクリスマスに備えるため、ブートキャンプをこなすコメディだ。
「何かUPCの訓練に似たものがありますねえ」
「にゃはは、そうかもしれないにゃ」
 笑いながらの時間は瞬く間に過ぎ、感動のクライマックス。続いてエンディングのスタッフロールが流れ始める。
「あ、そうだ千佳さん」
 実は映画の間じゅうタイミングを狙っていたらしい陸人が、さりげなさを装って鞄を探った。
 小さな箱を取り出し、流れる文字の羅列に目を向けたまま、千佳の掌にぽんと乗せる。
「サ、サンタさんからですっ」
「にゃ! ありがとにゃ! ‥‥じゃあ僕からも」
 千佳が陸人に渡したのは、一抱えもある大きな包みだった。
「何だろう、開けていいですか?」
「もちろんにゃ。僕もあけるにゃ」
 プレゼントは贈る側も、貰う側も嬉しい。
 お互いそれを感じつつ、それぞれ受け取った包みを開ける。
 陸人が千佳に贈ったのは、猫の飾りがついた銀細工の小物入れ。そして千佳が贈ったのは──。
「ちゃんと服装にも気を配らないとだめにゃよ?」
 いつもカンパネラの制服かジャージか、さもなければ量販店のフリースを着ている陸人を慮ったのだろう。
 傭兵たちの間で人気があるブランドのジャケットだった。
 真新しいジャケットに袖を通し、照れくさそうに頭を掻く陸人。
「あ、ありがとうございますっ。似合うようにならないとなー僕!」
「ん、その意気にゃ。僕もこれ、使わせてもらうにゃね」
 小物入れを手の中に収めたまま、千佳は柔らかく笑んだ。
「ところで陸人君、今日はお泊りしていくにゃよね?」
「な、何を言ってるんですか千佳さんっ。千佳さんはアイドルなんだからもうちょっとジチョーしなきゃダメですよっ」
「うに、でも、チューブトレインの最終便はもう間に合わないにゃ。‥‥歩いて帰るなら止めないけど‥‥」
 ついと千佳が、窓の外に目をやった。白い花が地上の宝石に向けて、降り始めている。
「お、お世話になります‥‥」
 自重を説いたのと同じ口で、一夜の宿を申し出る少年。
 あふんと欠伸をしながら、千佳は鷹揚に頷いた。
「お安い御用にゃ。んじゃ、そろそろ寝ようかにゃ?」
「ええええええええ」
 寝る!?
(寝 る で す と !?)

 サンタクロースは、寝ている子のところにしかやってこないと言うが。
(駄目だ‥‥目が冴えてきた‥‥)
 背中に千佳の体温と寝息を感じながら、陸人は眠れぬ夜を過ごしていた。
 ソファか床を借りるはずが、何故か魔法少女アイドルの寝床にいるのは、どうしたご褒美か。
 否、手だしできないという意味では罰ゲームというほうが正確かもしれない。
「うにゅ‥‥陸人くん‥‥」
 安らかな寝息を立てていた千佳が可愛らしい寝言とともに、身体を摺り寄せてくる。
「だああああああああッ!!!」
 真夜中の静寂を少年の叫び声が破った。
「こ、こんな危険なところ(理性の維持という意味で)で寝ていられるか! 僕は床で寝るっ!!」
 密室ミステリー漫画で犯人に殺される人的な台詞とともに、ベッドから脱出する陸人。
 彼がどんな風に翌朝を迎えたかは、千佳だけが知ることになる秘密である。

「うに、とっても素敵なクリスマスだったにゃ♪」



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ga4714/西村・千佳/18/女/ビーストマン
gz0290/笠原 陸人/17/男/ドラグーン


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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千佳ちゃんこんにちはです! クダモノネコです。
クリスマスデートに笠原くんを誘ってくれて、どうもありがとうございました。
手料理までいただけるとは、笠原くんはシアワセモノです!
これからも仲良くしてやって下さいね。


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2010年12月27日

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