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『学園寮管理部・クリスマスパーティ開催! 』
ヨグ=ニグラス(gb1949)



 12月も中旬を過ぎ、カンパネラ学園はテスト休みに入っていた。
 このあと数日の登校期間を経て、すぐ後ろには冬休みが控えている。
 いわば、エアポケットのような穏やかな時間。
 大勢の生徒で賑やかな校舎にも人影はなく、静まり返っていた。
 とはいえ、無人かといえばそうでもないようで‥‥。
 
 文化部棟の一角にある学園寮管理部室。
「もうすぐ冬休みだな、ヨグはどっか行くのか?」
「んと、そうですねぇ。家族でまったりとか、そんな感じです。シルバーさんは?」
 部員と思しき2人の男子生徒が、ドアノブに手をかけていた。
「考え中。今までは大概テキサスに帰ってたんだが、ラスト・ホープはラスト・ホープで面白ぇしなあ」
「そなんですよね。本部に美味しい依頼でたら、すぐ入れるってのも捨てがたい、かなと」
 一人は黒髪の小柄な少年、ヨグ・ニグラス。もう一人は銀髪に赤褐色の肌を持つシルバーラッシュである。
「おーう」
「こんにちはですー」
 2人は他愛ない雑談を交わしながら、部室の扉を開けた。備え付けのロッカーや事務机の他、壁一面に段ボールや何やらが積み上げられ雑然としてはいたが、彼らにとっては居心地のよいたまり場であったのだ。
 そのたまり場を。
「あ、シルバーさんにヨグ君っ」
 同じく部員である斑鳩 南雲が上機嫌でデコレーションしていた。具体的に言うならば、金銀のモールを壁に貼り付けていたのである。
「2人とも寒かっただろう、ストーブの前が空いているぞ」
 さらにもう一人、学園寮管理部の長である鯨井レムに至っては、小さなツリーに電飾を巻きつけて光らせていた。
 段ボール要塞の中で輝くモールとツリーと電飾。華やかというかなんというか。
「何やってんだ?」
「クリスマスの飾り付けだ。見てわからないか?」
「いや、その前に片付けが先じゃね? 今年は断捨離ってのが流行りらしーぞ」
「うるさいっ、まず気分だ気分!」
「んと、レム姉様、これ何ですかー」
 小バトルを勃発させそうな部長と筆頭にストップをかけるように、ヨグが壁際に並んだ2つの段ボールを指さした。
 それぞれマジックで「男子寮」「女子寮」と記されている。
「開けちゃおー」
 ガムテープの封をめくると
「わぁ!」
 中にはクリスマスツリー用のオーナメントが沢山入っていた。
「ああ、それは寮の共用部に飾るツリー用だってー」
 南雲が振り返って微笑む。
「ヨグ君、シルバーさん、樅の木はもう届いてるから、男子寮の飾り付けお願いっ」
「めんどくせえなあ」
 不精々々を装いつつ、妙に軽やかなフットワークでシルバーが箱を抱え上げた。なんだかんだ言ってお祭り大好きなアメリカ人、クリスマスで血が騒がなきゃ嘘である。
「よろしくっ♪」
「頼んだ」
「まー任せとけって。空き箱は寮の物置につっこんどいて構わないな? んじゃ一仕事するか、ヨグ」
 箱を抱えたまま、足で扉を開けるシルバーとヨグの背中に
「ああ、それとは別に。次の週末に管理部でクリスマスパーティをしようと考えている」
 ツリーを飾る手を休めたレムが、付け加えた。
「おう、いいんじゃね?」
「僕も賛成です、姉様」
 ふたつ返事で答える2人に、さらに続ける。
「都合がつくようなら、陸人も誘いたいと思っている。生徒会事務部はすぐそこだから、寮に戻るついでに聞いてきて貰えないか」
「ん、お安い御用‥‥」
「んと、それ、僕が行きます! シルバーさんはそれ持って、先に寮に帰っててっ」
 頷きかけたシルバーに、ヨグが割って入った。さらに
「へ?」
「南雲さんも一緒に行くですっ」
「え、ちょっと待ってよヨグ君っ」
「ではっ、お先にですっ」
 おっとりした彼には珍しく、強引なペースで南雲まで引っ張って、部室を出ていってしまったのだ。
 後には、ぽかんとした顔の部長と筆頭が残った。
「何だヨグの奴」
「さあな、何か思うところがあるのだろう」
 しかし、特に怒るでも追求するでもなく。
「ではぼくも帰って、女子寮の飾り付けをするとしよう」
 レムは「女子寮」用の段ボールを抱え、シルバーと一緒に部室を出た。
 扉に鍵をかけ、見上げた空は薄い鉛色。雪が今にも、降り出しそうだ。
「ふふ、クリスマスというのはワクワクするな。サンタクロースはもう、枕元には来てくれないが」
「違いねェ」
「週末のパーティが楽しみだ。部費の範囲内だから豪華には出来ないが、そこは雰囲気を工夫して‥‥」
 チェックのマフラーに顔をうずめて考えるそぶりを見せるレムに、シルバーは鼻で笑った。
「あァ? 貧乏くせーこと言うなよ。俺サマに任せときな、部長殿」
 オーナメントの箱を抱えたまま、寮とは反対側にすたすたと歩き始める。
「シルバー、何処へ行くんだ?」
「ちとヤボ用。先帰ってな」
 みるみる小さくなる背中を見ながら、レムは少し頬をふくらませた。
「まったく‥‥ヨグも南雲も、シルバーまで‥‥」
 纏まりがないじゃないか、纏まりが。


 学園寮管理部室から少し離れた一角にある、生徒会事務部室。
 部屋の真中には、会議用の長テーブルと、パイプ椅子がいくつかあるだけ。
 そんな殺風景な中で。
「管理部のクリスマスパーティ?」
 雑用係の笠原 陸人は、訪れたヨグと南雲に紅茶を出し、自分も口に含んでいた。
「ぜひぜひ混ぜてくださいっ♪ 火気の使用申請なんかは僕が代行しますよ、その方が早いし」
 もたらされた誘いがよほど嬉しいのか、頬は緩みっぱなし。
「ん、よかったです。それとですねっ」
「陸人君に、協力してほしいことがあって」
 素直な反応に、ヨグと南雲は顔を見合わせて笑んだ。
「実は、クリスマスイヴはレムちゃんの、クリスマスはシルバーさんのお誕生日なんだよねっ」
「ホントですか!?」
「ん、本当。だからサプライズパーティをやろうと思うのです。陸人さんも手伝って」
 もちろん陸人が、断るはずもない。
「僕に出来ることなら、何でもっ」
「よし! じゃあ前もって、サプライズプレゼントなんかを用意しちゃおう!」
 すかさず南雲が、鞄から手帳を取り出して広げる。3人は頭をつき合わせて、相談を開始した。
「学園の終業式はこの日ですよね‥‥じゃあこのあたりから、こっそり仕込みを始めましょう」
「んと、ケーキ。クリスマスのと、お誕生日2つあったほうが、いいかな」
「ヨグ君、レムちゃん用と、シルバーさん用と、クリスマスケーキ。3つ要るんじゃない?」
「南雲さん、それはちょっと多すぎる気が‥‥」
 3人寄れば文殊の知恵と昔の人は言ったそうだが、なかなかどうして、まとまらない。
 と、そこに。
「おう、邪魔すんぞー」
 勢い良く扉が開き、北風と一緒に新たな客が訪れた。
 オーナメントの詰まった段ボールを抱えたシルバーラッシュ、その人である。
「わわっシルバー先輩っ」
「シルバーさん。寮に帰ったんじゃなかったんだ?」
 南雲も慌てて手帳を閉じ、事無きを装うが、どう見てもあからさまに怪しい。
「ンだよ人の顔見て大声出しやがって、感じ悪ィな。なんかやるなら俺も混ぜろよ」
 とはいえそこで、口を割ることは誰もせず。
「や、そ、そんなんじゃないんですっ、いこっ、ヨグ君!」
「ん、陸人さん、またねっ」
 先客2人はばたばたと立ち上がり、部室から出て行った。
 あとに残ったのは、ここでもまたぽかんとするシルバーと、ほっと胸をなで下ろす陸人。
「何だあいつら、さっきからどーもおかしいんだよな」
「な、何がですか? クリスマス会のお話をしにきてくれただけですよ? あ、お誘いありがとうございます! 僕、すっごく嬉しいです!」
 喜びを表す後輩に、シルバーは訪れた目的を思い出した。
「おぅ、そのことで俺も笠原に用があって来たんだわ」
 首を傾げる陸人に、こそっと耳打ちする。
「笠原、いつぞやのビアガーデン時に出てきた『カンパネラ搾り』。アレ調達出来ねえか? 学内で酒ってわけには行かねーが、やっぱ雰囲気はあったほうがイイだろ?」
 ちなみにカンパネラ搾りとは、アルコールフリーの、見た目ビールな飲み物である。アルコール代用というよりもシャンメリーに近い位置づけだ。
 陸人はしばし考え、小さく頷いた。
「科学部に相談したら、新たに瓶詰めしてくれるかも。ちょっと頼んでみますね」
「頼りにしてるぜ、生徒会役員サン」
「‥‥や、役員じゃありませんっ」


 さてその頃の、カンパネラ学園女子寮。
 人気のないエントランスで、レムがツリーにオーナメントを飾っていた。
 ガラスを中心にした大人っぽい構成のそれは、本物の樅の木にとてもよく似合っている。
「‥‥さて、こんなものだろう。寮生や来客の目を、楽しませてくれるとよいのだが」
 少し引いたところから全体を眺め、出来栄えに満足気に頷くレム。身長150cmの彼女よりやや高い程度の小さな木ではあったが、入ってきた者の目を惹くには、十分な存在感だ。
「と、部室の飾りが少し残っているな‥‥」
 断捨離を導入したいが、基本属性はどちらかといえば「もったいない」「まだ使える」の彼女。
 すかさずガラス用のスノー・デコレーション・スプレーを窓に吹きつけて、即興で雪景色を描いた。
「ふむ、悪くない。‥‥ん」
 僅かに曇った窓の外、ちらちらと白い花が舞い降りてきている。
「‥‥雪か」
 しばし作業の手を止め、見惚れて立ち尽くす管理部長。
「今年は皆でホワイトクリスマスが、楽しめるかな」
 つぶやく声が、エントランスに小さく響いた。




 計画の持ち上がりから、約1週間。そう、クリスマスイヴ。
 ある場所では厳かに、あるところでは華やかに。
 街がいつもと違うキラキラに包まれ、サンタクロースがよい子の枕元に立つ、特別な日。
 ここ、カンパネラ学園男子寮のエントランスにも、サンタクロースとトナカイが降臨していた。
 みかん箱を改造したソリを引くトナカイは陸人。着ぐるみに角と鼻をつけた雑用係は恥ずかしそうに、みかん箱から伸びた紐を握り締めている。
「‥‥シルバー先輩、ほんとにやるんですか」
 箱の中には、白い袋が鎮座していたが、中にプレゼントが入っている様子はない。
「って言うか、サンタとトナカイなのに、プレゼント貰いに行くって一体‥‥」
「あァ? 『こまけえことはいいんだよ』って諺知らねーの笠原」
 横に立つサンタコスのシルバーは、陸人の不安を一蹴するように笑った。
 サンタクロースといえば温和なおじいさんが定番なのに、彼が身に纏うと違う雰囲気なのは、若さ故だろうか。それとも何故装着したしと突っ込みたくなる、サングラスのせいだろうか。
「この手のコスは誰に対してもそこそこウケがいいからな。他の部や寮部屋回って、余ってる食材貰ってくるのにゃ都合がいいってもんよ。行くぜ!」
 みかん箱の中に忍ばせておいたミュージックプレイヤーのボタンをオン。
 かくしてサンタとトナカイは、クリスマスソングとともに、寮生の部屋へと向けて出発した。
 階段を上り、廊下を超えて、ドアがたくさん並ぶフロアに到達する。
「まずは1年生からだな」
 ルームプレートで住人の学年を確かめたサンタは、ものすごい勢いでドアをノックし始めた。
「おーぅ! サンタクロースだー! 居るんだろー!?」
「わ、分かりました、今開けますっ」
 ドアの向こうから戸惑った声がし、1年生がそーっと顔を出す。
「トリックオアトリィィィィト!!! と、違った、メリクリ!!」
「ヒィィィィィィ、ヤンキー!」
「誰がヤンキーだよ!」
 ある意味様式美的やりとりの隙間から、トナカイが声をかける。
「メ、メリクリですー。文化部のレクリエーションに使うので、余ってるお菓子とかあればいただけませんか‥‥」
「ああ、そういうこと‥‥」
 なんとか事情を理解した1年生は、ポテトチップスをみかん箱に入れてくれた。いい奴だ。
「シルバー先輩、ハロウィンじゃないんですから」
「悪ィ悪ィ混ざっちまった。しかしこのペースだとなかなか集まんねーな。もうちょっと強引にいかねえか?」
 謝りつつもサンタは、貰ったプレゼントの量にやや不満があるようだ。
「駄目です。レム先輩に叱られますから」
「へーへー」
 頭の硬いトナカイに舌打ちしつつ、時計を眺める。
「んじゃ、質より量だ。とばしていくぜ!!」

 それから30分後。
 みかん箱いっぱいにお菓子や飲み物をゲットしたサンタとトナカイは、男子寮を後にしていた。
「さ、あとは食堂に行くぜ」
「‥‥食堂のおばちゃんには、この手は通用しないと思うけどなぁ」
「や、俺だってそこまで無謀じゃねえよ。ターキー頼んどいたんだ、業務用の奴をな」
 サンタの根回しの良さに、トナカイはぱあっと顔を輝かせる。
「じゃあ僕は事務部に寄ってカンパネラ搾り出して、このお菓子と一緒に管理部にお邪魔してますねっ」
「おぅ、了解」
 短い会話の後、軽く手を振り。
「またあとでー」
 サンタは学生食堂へ、トナカイは文化部棟へと向かうのであった。


 同じころ、学生寮管理部の部室では、レムと南雲とヨグがパーティの準備に勤しんでいた。
 手狭ではあったが、中央の長机にかけられた赤と緑のテーブルクロスのせいか、いつもとは雰囲気が異なって見える。
 窓にはスノースプレーで雪のデコレーション、事務机の上には小さなクリスマスツリー。そして
「何だコレは‥‥」
 壁には何故かチラシの裏で作られた、サンタクロースの切り絵と輪飾りが揺れている。
「んと、陸人さんが頑張って作ってました。リサイクルだとかエコだとかいって」
「‥‥」
「レムちゃん、そのままにしておいてあげようよ」
「‥‥ああ」
 稚拙なそれからそっと目をそらし、レムは壁から離れた。
「あれも陸人が作ったのか?」
 彼女が次に指で示したのは、天井から下がる大きなくす玉。ヨグが何食わぬ顔で、さらりと答えた。
「いえ、レム姉様。あれは僕と南雲さんが作ったクリスマスジャンボくす玉クラッカーです。決してサプライズではな‥‥」
「サプライズ?」
「な、なんでもないよっ。あとでみんなでパーンってやろう! パーンって!!」
 利発に見えて、やや天然。うっかり喋りかけたヨグの口を、あわてて南雲が抑えた。
(ふがが。南雲さん、ありがとなのです。あとでキャベツプリンご馳走するですよっ)
(もーうヨグ君ったらびっくりしたよ! あ、キャベツプリンはいらないから!)
 一見じゃれ合いに見える2人のやりとりに、レムは小さく笑い
「それは楽しみだ。ん、そろそろ鍋をセッティングするか」
 部室の片隅の流しに、カセットコンロを取りに戻る。
「姉様、手伝います」
「あ、レムちゃん、私もー」
 後を追った2人は、それぞれ鍋とケーキをテーブルに運んだ。
 さらにヨグ謹製のキャロットプリン、南雲の手作りクッキーが盛られたバスケットが続く。
「ふむ、なかなかに華やかじゃないか」
「ヨグ君のプリン、相変わらずおいしそうだねっ♪」
「エヘヘです。キャベツプr」
「いや、それは食べないってば」
「そういえば、シルバーと陸人はどうした?」
 レムが口にしたのとほぼ同時に
「メリクリィィィィィィィ!!!!!!」
 部室の扉が豪快に開き、ターキーの乗った皿を持ったサンタと、みかん箱を引っ張ったトナカイが現れた。
「ターキーとつまみと飲み物の到着だぜ!!」
「シルバーさん陸人さん、本格的ですねぇ、うわ、お菓子、いっぱい」
 ヨグがみかん箱の中身を見て歓声を上げる。
「どうしたんだこのスナック類は?」
「あァ? 寮の連中の善意っつーか好意。と、鍋いい具合に出来てんじゃね? ケーキも美味そうだなオイ」
 レムにターキーを押し付け、サンタは鍋の蓋を開けた。片手で手袋とヒゲをむしりとり、ケーキのホイップクリームを掬おうと指を伸ばす。
 が、すんでのところで
「あっ駄目ですよっシルバーさん、まずは乾杯ですっ」
 南雲がその手を軽く叩き、ケーキを防御。
「へーへー」
 シルバーは肩をすくめ、パイプ椅子に座った。
「はい皆さん、カンパネラ搾りっ♪」
 トナカイの鼻と手袋を外した陸人が、テーブルにカンパネラ搾りの瓶を2本置く。残りを冷蔵庫にしまい、コップを5つ持って自席にとって返し
「じゃあ乾杯しましょー」
 皆のグラスに、順番についで回った。
「ありがとう陸人。では乾杯といこうか」
 グラスを手にとったレムを、南雲が慌てて止める。
「あっ、待って待ってレムちゃん! やっぱここは景気よくクラッカーといこうよ!!」
 指さしたのは、天井からぶら下がる手作りくす玉だ。
「うんうん、クリスマスジャンボくす玉クラッカーです」
 ヨグがくす玉から伸びる紐を、レムとシルバーそれぞれに手渡す。
「ンだよこれ‥‥まぁいい、引っ張りゃいーんだな。いくぞ鯨井」
「了解だ。1,2,3‥‥!」
 パンッ!!
 乾いた音とともに、くす玉が炸裂した。
 色とりどりのテープと共に、「ハッピーバースデー」の垂れ幕が降りてくる。
「な!?」
「うお?」
 状況を飲み込めないシルバーとレムに、さらにたくさんの紙吹雪が降り注いだ。
 いつの間に手にしていたのか、ヨグと南雲と陸人がクラッカーを鳴らし、満面の笑みを2人に向けている。
「レムちゃん、シルバーさんお誕生日おめでとうっ!」
「んと、ハッピーバースデーなのです」
「おめでとうございます!」
 運びだされてきた新たなケーキ──お誕生日おめでとうのプレートが2枚ひしめいている──を見て、2人、なんとか把握。
「きみたち‥‥」
 照れと嬉しさとこみ上げる涙をないまぜにした表情で、主役は暫く立ち尽くしていた。
「はい、レムちゃんとシルバーさんにプレゼント!」
 南雲が透明なセロファンで包まれたプレゼントを、誕生日を迎える2人に手渡した。
 レム宛の包みには鯨のオブジェが、シルバー宛のそれには、黒いチョーカーが透けて見える。
「そうか‥‥サプライズとはこのことか‥‥」
「ケッ、見事に引っかかったな俺としたことが。‥‥まあなんだその‥‥サンキュな」
 もぞもぞとつぶ焼きながら、席に座る2人。頬は緩み、笑みを隠そうとはしない。
 と、レムが鞄をごそごそと探った。
「ささやかだけど、ぼくからも皆にプレゼントを用意した。気に入ってくれると嬉しいが」
 クリスマス柄の包みの下から出てきたのは、手編みの手袋だった。甲の部分にくまの顔が編みこまれた、凝ったデザインだ。
「わーかわいい! レム先輩の手編みなんて僕感激ですっ」
「んと、レム姉様。どうしてくま柄なんですか?」
「ヨグ、いい質問だ。柄は悩んだが、やはりここはくましかないと思ってな」
「えへへ、インカムと並んで管理部のお揃いアイテムだねー! しかもレムちゃんの手作りなんて最高!」
「喜んでくれて嬉しいよ、南雲」
 部員たちの喜ぶ顔をひとしきり眺めた後、レムは別の包みを取り出し、シルバーの手に乗せた。
「あン?」
「シルバー、君も二十歳になるんだから、もう少し落ち着きをだな」
 黒と銀の包装紙に包まれたプレゼントの、中身は伺えない。
「‥‥あんがとな」
 礼とともに品物をポケットに収めるシルバー。その様子を目ざとく見つけた南雲が、声を上げた。
「えーシルバーさん、レムちゃんからプレゼント貰っといて自分はあげないってどうなのー? レムちゃんかわいそー」
「あ、いいんだ南雲、ぼくはそんなつもりで‥‥」
 慌てて取り繕うレムの横顔を見て、さすがのシルバーもしまったという顔をする。
(プレゼント…だと…? まあちょっと待て。落ち着け俺。よく考えるんだ)
 数秒瞑目し、彼のあみ出した秘策は。
「笠原、紙とペン貸せ」
「あ、はいっ」
「…っとこれで良いだろ。『お手伝い券』だ!」
 余白に星とトナカイらしき謎生物をちりばめた手書きの券を、レムの手にぽんと乗せる。
「‥‥あ、ありがとうシルバー、有意義に使わせてもらうよ」
 予想外の展開に、レムは驚きながらもぎこちなく笑った。
(この券‥‥例えば大掃除なんかでも使えるんだろうか?)


 そんなこんなで和やかに(?)幕を開けた学生寮管理部のクリスマスパーティ。
「さあ皆、鍋がいい具合だ。白菜は葉先が煮えているから、そこから取ってくれ。肉団子は1人2個煮えている。ああそれからもち巾着は、食べたことを申告して欲しい、溶けてしまうと大変なんだ‥‥」
 自分が食べるよりも、部員たちにいい状態の鍋を食べさせようと仕切りまくるレム。
「アメリカじゃあローストビーフやターキーを切るのは父親の役目なんだ。俺んちの親父、切るのヘタでよー。いっつも姉貴とどっちが大きい肉取るかで喧嘩したわ。まぁたいがい姉貴が勝ったけどな‥‥」
 昔話を交えつつ、鮮やかな手つきでターキーを切り分け、5つの皿にサーブするシルバー。
「っておい斑鳩、もうターキーお代わりしてんのかよ。あんまり食うとケーキ食えなくなるぜ」
「ん、デザートは別腹だから大丈夫っ♪ シルバーさんこのターキーさいこー! レムちゃんのお鍋もおいしー!」
 片手にターキー、片手に鍋の椀を握り締め、順調に迅速に咀嚼していく南雲。
「キャロットプリンもどうぞなのです。あ、キャベツプリンも」
 南雲の前に手作りプリンを2種類切り分けて置くヨグ。
「あ、陸人くんこれ交換して♪」
「え?」
 否応もなくキャロットプリンをキャベツプリンに強制トレードされてしまった陸人。
「うぅ‥‥すごく‥‥すごくモサモサしてます‥‥青虫気分です‥‥」
 それでもなんとか完食した頃、もはやクリスマスケーキは、南雲のお腹の中におさまってしまっていた。
(いいんだ‥‥今日はレム先輩にプレゼントも貰えたし‥‥斑鳩さんが満腹でシアワセなら、僕それでいいんだ‥‥)

「よし、だいぶ腹も落ち着いたし、皆でババ抜きやろうぜ。負けた奴は罰ゲームな」
 ざっと片付けたテーブルの上に、シルバーがトランプを配り始めた。
 説明不要のゲーム、皆淡々と手札に目をやり、ペアになったカードを捨ててゆく。
 全く顔色を変えないレム、おそらくはババが手元にないのだろう、リラックスした表情のヨグと南雲と陸人、そして
「ぬおっ‥‥」
 実に分かりやすく、シルバーは眉をしかめている。
「じゃあ、僕からひいていこうか」
 レムがすっと手を伸ばし、シルバーのカードを引いた。
「よっしゃあ!」
 途端ぱあっと明るくなる筆頭の表情に、部長がため息をつく。
「何だろう‥‥ぼくが思っていたより、きみは単純な男のようだな」
「んと、推理も何も、あったもんじゃないのです」
 レムのカードを引くのはヨグ。
「んー、難しいのは私も苦手かなあ」
「僕もー」
 ヨグのカードを南雲が、南雲のカードを陸人が引き
「笠原てめえ! しれっとババ押し付けんじゃねえよ!!!」
 再び回ってきたジョーカーに、シルバーは絶叫したのであった。
「ぼ、僕は何も‥‥」
「見苦しいぞシルバー。さて罰ゲームのドリンクだが‥‥ヨグ」
 レムが死刑執行人の如く、ヨグに指示を出す。
「はい、レム姉様。フェアプレイ精神で、大嫌いなセロリもジュースにしてきましたっ」
「ヨグてめえ!」
「あ、お鍋の残りの春菊と食べるラー油もシェイクしちゃおうか」
「斑鳩てめええ!」
「いい考えだ南雲、エコだエコ」
「鯨井てめええええ!!!」
 かくして合成された、スペシャル罰ゲーム・ドリンク。
「シ、シルバー先輩、一口でいいと思うんです‥‥」
「うっせえ! 面白ェこうなりゃヤケだ、全部飲んで見せてやるよ」
 紙コップになみなみと注がれたそれを、シルバーは一気に呷る。
 数秒の間を置いて──。
「────ッ!!!!!」
 聖夜の静寂を引き裂く絶叫が、シルバーの口から迸った。
 竜の翼さながらのダッシュで、管理部筆頭は椅子を蹴り、部室を出て行く。
 向かう先は水飲み場だろうか。
「さ、シルバーが復活するまでに片付けをして、お茶でも入れなおそう」
「はーい、レム姉様」
「レムちゃん、私と陸人君で、このゴミを集積場に出してくるねー」
 部室の扉がぱたんと開き、南雲と陸人がゴミ捨て場へと駆けて行った。
 窓の内側では、レムとヨグが、テーブルの後片付けをしている様が見える。
 シルバーの姿はうかがい知れないが、どこかで水をしこたま飲んでいるのだろう。
 ロマンチックとは無縁の、賑やかなクリスマスパーティは、もうしばらく続きそうだ。

「こう言うのも、ぼく達らしくていいじゃないか?」



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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gb1949/ヨグ=ニグラス/14/男/ハイドラグーン
gb2666/鯨井レム/18/女/ハイドラグーン
gb1998/シルバーラッシュ/19/男/ドラグーン
gb2816/斑鳩・南雲/18/女/ハイドラグーン

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ジスウセイゲーン襲来ィ!(がく)
管理部の皆様、ご発注ありがとうございました!
SnowF!Xmasドリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2011年01月07日

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