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『聖夜に捧ぐ神の愛 』
エルディン・バウアー(ib0066)

 神楽の街なかに、その天儀神教会はある。
 もふらさまと忍犬が出迎えてくれる教会は、金髪の青年が司祭を務めている。
 司祭の名はエルディン・バウアー。アヤカシに苦しめられている人々を助ける事も聖職者の使命であると誓い、開拓者として冒険もこなす求道者である。

●教会のクリスマス
 年の瀬のある日のこと。
「梨佳、どうしたでふ?」
 エルディン教会のもふらさまであるパウロは、教会の入口できょろきょろしていた梨佳を見つけて駆け寄った。
「あ、パウロさんこんにちは〜今日は何かあるんですか?」
「何かでふ? 今日はクリスマスでふよ」
 ジルベリア帝国から天儀に伝わったクリスマスの習慣は今や決して珍しいものではなくなってきたけれど、梨佳には教会に人が集まっている状況と結びつかないらしい。
「クリスマスは教会でミサをするでふ。炊き出しもあるでふよ!」
 まだ難しい顔をしている少女の足元を、パウロは頭で押して聖堂内へ導いた。

 聖堂内では、ちょうどミサが終わったところだ。
 静かに礼拝を終えた司祭エルディンは、信徒達に振り返ると厳かに――否、爽やかに微笑んだ。
 これぞエルディンの得意技、輝く聖職者スマイル。
「おや、梨佳殿。メリークリスマス、ようこそいらっしゃいました」
 パウロに連れられた梨佳を認めたエルディンは優しい笑みを浮かべて迎えた。
 ミサを終え、退出してゆく信徒達の波にもふもふ逆らい移動して、パウロはエルディンの許へ近付いた。
「神父様〜僕は何をすればいいでふか?」
 パウロが首を傾げると、鬣に掛けられた金のロザリオが揺れる。パウロの頭に軽く手を添え、エルディンは言った。
「いい子ですね、来てくれた人にもふられていなさい」
「はいでふ〜 梨佳、庭へ行くでふよ〜」
 いい子のパウロは素直に梨佳を連れて教会の庭へ出た。
 身を切るような寒さにも関わらず温かな空気が満ちている。美味しそうな匂いに鼻をうごめかせば、信徒達が笑顔で迎えてくれた。
 庭では炊き出しが行われていた。信徒達の協力のもと温かなシチューが振舞われるのだ。

●ほほえみ
 信仰は人それぞれの心にあるもので、決して強制されるべきものではない。そうエルディンは思っている。
 だから彼は、誰彼分け隔てなく接するし、クリスマスのミサも慈善活動の炊き出しも、教会に理解と興味を持って貰えたら嬉しいという気持ちで行っている。

 パウロ達の後に続いて現れたエルディンへ、知己の開拓者達が集まって来た。
「エルディンせんせ、お手伝いに来ましたよ〜」
「エルディンおじさま、めりーくりすますですの☆」
 朗らかで元気な子や、ちこっとスカートの裾を摘んで優雅にお辞儀する子。弟子達にエルディンは「頼もしいですね」と微笑を向ける。運んで欲しいものがあるのだと二人を連れて納屋に消えた。
 もこもこふわふわもふもふのパウロが子供達に抱きつかれている。
「パウロさん、人気者ですね〜」
 ペテロさんも可愛いですよと、梨佳は傍らで大人しく伏せているペテロに話しかけた。手の甲を舐められてくすぐったそうに笑った。
 皆の掌には暖かいシチューの器。柔らかな温かもふもふのパウロとペテロは癒し効果抜群で、人々の和やかな笑い声が辺りを満たす。
 クリスマスは特別な日。人々がいつもより優しくなれる日。

「みなさーん、エルディンサンタさんからプレゼントですよ〜」
 納屋から戻って来た開拓者達は、何やら嵩高いものを抱えている。教区内の貧困家庭に配られたそれは、毛布だ。
「もふもーふですの〜☆」
 もふらさまのパウロの毛で作った毛布――つまり、もふもーふ。ワンポイントでパウロの顔が刺繍してあるらしい。
 名付け親は神父様ですかとペテロに問えば、忍犬はただ人懐こく梨佳に擦り寄ってきた。
 エルディンは神々しいばかりの笑みを添えて、弟子達と一緒にもふもーふを配っている――時折、輝き数割増しの聖職者スマイルを投げている相手は妙齢の女性達だ。
 もふもーふ配布がひと段落付いた頃、梨佳は見知った開拓者達に手を振った。
 少女達は一休み、同年代の少女達が集まれば姦しくも華やかになるもので、交互にペテロをもふりつつ、他愛もない話に興じる。
 話題になるのは司祭エルディンの聖職者スマイルの輝きについて。
「エルディンせんせは女性なら誰でもおっけーなんでしょうか」
「何でも、北面のギルドで十八以上上限無しって仰ったそーですよ〜?」
 開拓者ギルドで耳にした噂を、内緒ないしょと梨佳が耳打ちした。
 駄弁っている少女達は十四五歳、どうやらエルディンの守備範囲外のようだ。うら若い乙女達の頭の中に『節操無し』という単語がよぎる。
「エルディンおじさま、もふらさまもかもん、ですの‥‥」
 ねえ? と寄ってきたパウロも交えて、本人不在のままエルディン談義が進んでいると。
「随分な言われようですね」
 苦笑しながら当の神父様が現れた。
 もふら愛は女性に対してとは別のもの、妙齢の女性に聖職者スマイルの輝きが増すのは本能ゆえに致し方ないのです、と納得し難い様子の少女達に語っていると、パウロが彼なりの理解を示した。
「神父様の微笑にはいろんな種類があるでふ〜」
「こらっ、パウロ、私の慈愛に満ちた笑みに変わりはありません」

 エルディン神父の愛は全ての生きとし生けるものに向けられる。
 苦しむ者、悩める者、弱き者、驕りし者――相手の立場に関わらず、等しく分け隔てなく。
 主義の異なる者と争う事はせず、互いの存在を認め合えるよう努めよう。
 必ずや分かり合える日が来ると、エルディンは信じている。神の愛は誰にも同じく与えられるものだから。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ib0066/エルディン・バウアー/男/28/魔術師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご指名ありがとうございました!
天儀の一般人、梨佳がお邪魔させていただいております。
教会のお手伝いをされている開拓者さん方にも見覚えが? 気のせいデスヨ?
SnowF!Xmasドリームノベル -
周利 芽乃香 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2011年01月18日

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