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『SnowFestival〜私の旦那は能力者〜 』
シーヴ・王(ga5638)

 私と彼は存在が違う……
 
 守られる側と守る側、待つ方と待たされる方
 
 もし、二人の立場が違ったらどんな風になるのだろう……
 
〜見送る者として〜
『緊急招集、緊急招集。能力者の皆さんは至急UPC本部にまで来てください』
 リネーア・ベリィルンドの声がラストホープの隅々にまで響く。
 大規模作戦発令の召集であり、よいよバグアとの最終決戦へと向かうときだった。
 地上に残ったバグアを倒すために、オーストラリアへとUPCの部隊は展開している。
「じゃあ、いってくるね」
 長身で比較的華奢に見える体に不似合いな大きな爪を装着したライディ・王は振り返りながら妻であるシーヴ・王へと微笑みかけた。
 ペネトレイターと呼ばれる能力者の上位クラス者であるライディは今回も戦いに出向かざるをえない。
 重装備をしている彼の姿を見ても、一般人として待たなければならないシーヴは不安を押さえきれなかった。
「ライディ‥‥無事に帰って来てくれです‥‥帰ったら、言うことがあるですから」
「うん、絶対に帰ってくるよ。約束する」
 悲しそうな瞳で見上げるシーヴを宥めるようにライディはシーヴを抱きしめて、唇を重ねる。
 普段の仕事に出かけるときはシーヴの方からするが、大規模作戦などの大きなときはライディの方からしてくれていた。
 それは、ライディ自身の不安を解消するための『おまじない』かもしれない。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
 ガチャンと玄関のドアを開けてライディは戦場へと旅立った。
 
〜待つ者として〜
 静かなリビングにシーヴは戻ってきて、今朝つかったばかりの妊娠検査薬を見る。
 結果は陽性であり、二人の子供が今、シーヴのお腹の中にいることを指していた。
「なんで、こんな日に‥‥大規模作戦なんでやがるですか」
 シーヴは誰もいないリビングで一人呟く。
 一人で待つ家はとても広く感じ、それなのに息が詰まりそうだ。
 こんなときはTVをつける気にもならない。
 今までだって、ライディが出兵したときはTVをつけたことは無かった。
 ラストホープに来るまでは遠くの戦争だった出来事も、今は身近な人の生死を決めることなのである。
 電話に怯えることだって、数え切れないほどあった。
「ライディ‥‥本当に本当に無事に帰ってきて欲しいです」
 椅子に腰掛け、テーブルに肘をつきながらシーヴは祈りを捧げる。
 一般人の自分にはこれくらいしかできない。
 どうして、能力者でなかったのかとグルグルと悩んで考えたこともあった。
 そんな時、シーヴはリビングから立ち上がって家の中にある収録スタジオへと向かう。
 機械がごちゃごちゃしていて、狭い空間ではあるがここでは一緒にラジオを収録した思い出があった。
 能力者をやりながらでも、ライディはゲリラ放送を続け、その番組にはシーヴもパーソナリティで参加したことがある。
 思い出の詰まったこの部屋にいると、なんだかシーヴの心は落ち着いた。
 収録した放送テープの中からシーヴは適当な一つを選んで再生させる。
『ライディ・王の「Wind Of Hope!」今日も皆さんにこうして放送できることを嬉しく思います。能力者として戦っている中でも、守るべき人との繋がりを忘れずに持っていたいですね‥‥』
 今は遠く離れている愛する人の声を聞けるだけで、シーヴは元気が出てくるような気がした。
 しかし、終わってしまうとまた寂しさが出てしまう為にほぼ一日、スタジオで過ごすことも多い。
 一週間程度のはずだが、シーヴにとっては不安を感じて一年くらいに感じた出兵が終わり、ライディが帰ってきた。
「ただいま、シーヴ」
「‥‥お帰り、なさい‥‥です」
 笑顔で出迎えようとしていたシーヴだったが、寂しさをこらえていた目から涙が溢れてくる。
 駆け寄ってひしっとライディに抱きつくと、その胸に顔を埋めた。
「怪我はねぇですか? 大丈夫ですか? シーヴは‥‥不安で仕方なかったです。能力者じゃなくて、悔しかったです」
「約束しただろ? もう、なかないで。能力者じゃなくても、シーヴは俺と一緒に戦ってるよ?」
 泣きじゃくるシーヴの頭をライディの手が優しく撫でる。
 声だけでなく、久しぶりに触れる暖かさにシーヴの涙は更に溢れだしてきた。
「ところでさ、出かける前にいっていた話すことって何かな?」
「ひっく‥‥えっと、それは‥‥で‥‥やがる‥‥ですね」
 涙を指で拭うとシーヴは少し俯いて頬を赤くする。
 ライディが不思議そうな顔でシーヴの顔を覗いているとポツポツと途切れさせながらシーヴは貯めていたもう一つの思いを口にした。
「赤ちゃんが‥‥できた‥‥です。まだ、病院にはいってねぇ‥‥です、けど‥‥」
「本当に!? やった! 戦争が終わった報告よりもすごく嬉しいよ!」
 シーヴの言葉に両手を挙げて喜ぶライディだったが、今度はシーヴが尋ねる番である。
「戦争が終わったって本当です?」
「うん、今回の戦いで人類はバグアを倒せたんだよ! もう戦わなくっていいんだよ!」
 ぱぁっと顔を輝かせたシーヴをライディはぎゅっと抱きしめて喜んだ。
 暖かい胸の中に抱かれ、シーヴは幸せをかみ締める‥‥。

〜夢から覚めて〜
 ふっとシーヴが目を開けると、そこはベッドの上。
 旦那に抱きしめられている状況は一緒だが、内に眠る力があることをシーヴは感じていた。
「ライディも一緒に戦ってやがるですよ」
 夢の中で言われた言葉をそのままシーヴはライディに返す。
 この暖かさは夢の中でも、現実でも変わらない‥‥。
 傍にいてくれること、それが一番の力なのだとシーヴは思うのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名      / 性別 / 外見年齢 / クラス  】
 ga5638  / シーヴ・王    / 女  / 19 / エースアサルト

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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新年の発注ありがとうございました。
夢落ちの逆転ものということで、こちらも色々と設定を盛り込んで見ましたがいかがでしょうか?

楽しんでいただけたのなら幸いです。

それでは、今年も機会がありましたらよろしくお願いいたします。
SnowF!新春!初夢(ドリーム)ノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2011年01月24日

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