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『Dream World【小野坂源太郎☆正義の超覚醒筋肉伝説】 』
小野坂源太郎(gb6063)


 初夢に乗せるのは、新たな希望と、仄かな感情と。
 今年はどんな夢を見るのだろう――?

 その日、小野坂源太郎は新たな力を手に入れた。
 いつものように目を覚まし、いつものように依頼に出た。そしていつものように覚醒した――はずだった。
「なんだぁ、こりゃ――!?」


 これからわしは、バグアの一基地を一掃する。
 新たなる力「超覚醒」さえあれば、それくらい朝飯前――いや、メシは一応食ってきたが。
 とにかく、それくらい簡単なことなのだ。
 これからわしは、伝説を作り上げる。
 このポージングパンツと生身ひとつで、「小野坂源太郎☆正義の超覚醒筋肉伝説」をこの地球に、そしてバグア本星にまで轟かせてやるのだ。
 待っていろよ、バグア。
 待っていろよ、全銀河の住民達――!

 源太郎は心の中に文章を連ねてみる。あとで手記を書くつもりかどうかは定かではないが、とにかくそんな自伝的なものを連ねずにはいられないくらい、気持ちは高揚していた。
 高まる鼓動、躍動する筋肉。大胸筋が勝手にぴくぴくするのは武者震いでは決してない。これから起こる出来事と、超覚醒の喜びに打ち震えているのだ。
「ふんぬっ!」
 勝手に動く大胸筋を押さえつけるように、自らもポージングの上で大胸筋を意図的に動かす。今日もいいリズムだ。心臓の鼓動もそれに合わせ始める。
 建造物のガラスに映る姿を確認すれば、今日も全身の筋肉が美しい。ポージングも完璧で、ヒゲの艶もいい。深紅のポージングパンツはこの日のために新調したもので、若干きつい感じがするがそれが却って身を引き締めるようで心地よかった。
 きゅっと臀部を締めてみれば、自然と背筋が伸びる。いい。非常にいい。
 ポージングパンツと同じ深紅のリストバンドも、鉢巻きも、やはり今日のために新調した。使い慣れたものも捨てがたかったが、何せ今日は記念すべき日だ。伝説を残す日だ。新たな気持ちで臨みたかった。だがしかし、使い慣れたパンツやリストバンド、鉢巻き達を置き去りにしているわけではない。実は新しい鉢巻きに巻き込んでいるのだ。やや強引に、ではあるが。これまで苦楽を共にしたのだから、伝説を作る瞬間にも立ち会ってもらいたい。
 本音を言えば、この戦いで破損してしまうのが怖いのだ。なぜなら超覚醒はあらゆる危険を孕むのだから。新たなパンツ達は特注であり、超覚醒の衝撃にも耐えることのできる素材でできている。
「では、始めようではないか!」
 源太郎は大きく息を吐くと、両腕を身体の前でぶつけてポージング――モスト・マスキュラー。そして超覚醒を開始した。


「どぉぉおりゃあああぁぁぁぁっ!!」
 源太郎が、吠えた。
 タロスを背後から抱え込んでジャイアントスイングを決めると、そのまま回転の勢いを保ったままゴーレム部隊へと突っ込んでいく。両腕を広げ、ぐるんぐるんと大回転を続けながら。
 遠心力なのかなんなのか、まあ細かいことはどうだっていい。とにかく回転の力が加わった源太郎の手刀は鋭く、触れるゴーレムを片っ端から切り裂いていく。超覚醒した源太郎はこれくらいの回転では目が回ったりしない。ゴーレム達を全て切り裂くまでその回転は続く。
 ここで解説を入れなければならないだろう。
 なぜ源太郎が生身でバグアの機体を薙ぎ倒しているのか。
 話せば長くなるのだが、要は超覚醒によるものなのだ。
 この超覚醒というものは本人の潜在能力を限界を超えて引き出す上に、覚醒時の姿の制限が大幅に取っ払われるという、そりゃもうトンデモ大覚醒であり、源太郎のために発現したといってもいいエミタの恩恵かもしれない。などともっともらしいことを書いてみるが、実際のメカニズムは不明だったりする。
 源太郎は筋肉が膨れあがり、ただでさえ巨体だというのに、五メートルほどまでに巨大化している。敵機に比べると若干サイズは劣るが、しかしそのパワーも比例して強大なものとなっているため、そんじょそこらのワーム群は目じゃないのだ。もしかしたらゾディアックやゼオン・ジハイド達のパワーや機体をも軽く凌ぐかもしれない。
 そんなわけで、源太郎は大ハッスルしながら敵機をぶちこわし続けていた。もちろん、基地そのものの破壊も忘れない。うずたかく積み上げたゴーレムの残骸を駆け上がり、地上二十メートルの位置からダイブ。
 そのまま拳を突き出して敵基地の屋上をぶち破り、最上階の床をぶち破り、階下の床もぶち破り、ひたすらぶち破って突き抜けて拳を唸らせて地下室までめりこんで、ようやく最下層に到達して拳が地に埋まったところで、「ふぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」と腹の底から気合いを入れた唸り声を上げて拳を引き抜けば、その衝撃で基地の全ては崩壊し、源太郎を中心に半径十メートルほどのクレーターができあがる。
 崩壊した基地の瓦礫は源太郎の闘気で舞い上がり、竜巻となって周囲の建造物を巻き込み、果ては上空に援軍としてきたHWやタロス達をも巻き込んで塵にしてしまう。その衝撃を辛うじて回避したタロスがプロトン砲を放つが、しかし。
「かあああああああああああああああああああっつっっっっ!!!」
 源太郎のこれまでの七十三年分の人生経験の全てが詰まりに詰まった喝により、その攻撃は瞬時にして消滅してしまった。
「くそ……っ、いくら巨大化しているとは言え、相手はたったひとり、しかも生身のムキムキマッチョなパンツじーさんではないかっ! 何を手こずっているんだ!」
 基地の司令官と思しきヨリシロが叫ぶ。
「ムキムキマッチョなパンツじーさん……だとぅ?」
 源太郎は司令官を睨み据えた。ちなみにこの司令官、源太郎からは数百メートル離れた位置でティターンの中から指示を出している。ちょっとだけ、逃げ腰。
 そんな距離があるにも関わらず聞こえるとは、超覚醒恐るべし。
 まあそれはおいといて。
 源太郎、ティターンを睨み据えたまま、ぴくりとも動かない。その隙にとワーム群が一斉攻撃をしかけるが、源太郎はそれら全てをその美しい筋肉で受け止めて弾き返し、ワーム群は弾き返された攻撃を食らって戦闘不能に陥っていく。
「わしは……確かにムキムキマッチョだ。パンツだ。しかしそれのどこが悪い。己の肉体で勝負をして何が悪い。そのような機体に包まれた貴様に何がわかる」
 源太郎の血管と筋肉がぴくぴく動き始めた。
「お、おのれ……っ!! こうなったらこの私自らが出る!」
 司令官は激高し、ティターンの照準を源太郎に合わせた。
「筋肉こそが正義、筋肉こそがパワー、そしてそれを持つわしこそが宇宙最強……っ!」
 眼前に迫るティターン。しかし源太郎はそこから一歩も動かない。両脚を開き、地をぐっと踏みしめ、利き腕の拳を握りしめる。
 そして呼吸を一瞬だけ止め――。
「わしの筋肉全ての力を込めた、鉄拳制裁を受けるがいい――!」
 ず、ごーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!
 源太郎の拳が、ティターンの横っ面をぶち抜いた。
 べきょべきょと嫌な音を立てて崩れゆくティターン、そして中から這いずり出てくる司令官。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ぼくがわるかったです、ゆるしてください」
 司令官はひょろっとした神経質そうな男で、鼻水を垂らしながら源太郎の足下で土下座しまくっていた。これが本当にバグアか。ヨリシロか。そう思わずにはいられないくらい情けない状態だが、源太郎のパワーの前では司令官本人も何が何やらわからない状態なのだろう。
「貴様はこのまましかるべき機関に引き渡す。逃げようとは考えるなよ」
 源太郎はそのへんに落ちていた鉄パイプで司令官をぐるぐる巻きにした。巨大化している状態で細かな作業をやってのけるあたり、意外と器用なのかもしれない。
 司令官が捕らえられたことで、基地にいるヨリシロや強化人間達は全て投降し、ワーム群も撤退を始めた。それと入れ替わるように、人類側のKV達が空から陸から次々に現れる。どうやら基地の様子を見に来たようだ。
「……案ずるではないぞ。このわしが全て終わらせてやったからな!」
 源太郎の言葉に、KVのパイロット達は息を呑む、
「さあ、次はどの基地へ行こうか」
 そう言いながら、源太郎はKV達へと向けてダブルバイセップス・フロントに限りなく近いガッツポーズを決めた。
 やや汗ばんだ上腕二頭筋が陽光を浴びて煌めく。深紅のポージングパンツは若干汚れてしまったが、それがこの戦いの勝利を物語るかのようだ。

 そして、源太郎の伝説はここから始まる――。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【gb6063 / 小野坂源太郎 / 男性 / 73歳 / ファイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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■小野坂源太郎様
お世話になっております、そして初めまして。佐伯ますみです。
「SnowF! 新春! 初夢(ドリーム)ノベル」、お届けいたします。
今回、初めて書かせていただきますので、リプレイや作戦卓などを何度も確認してイメージを固め、書かせていただきました。
最初から最後まで、指が勝手に動いてしまったノベルです。楽しくて仕方がありませんでした。
最後の締めとなる攻撃はやはり鉄拳制裁ではないでしょうか。勝手にそう思ってしまっております。生身と筋肉の素晴らしさ、拳で物語る漢のロマン……など、など。
個人的に小野坂様のようなキャラクター設定が好きなことと、ご発注いただいた内容も当方の好きな方向性だったこともあり、かなり好きなように書いてしまいました……。
PC様の口調などもそうですが、もしイメージと違う等ありましたら、遠慮無くリテイク申請してくださると幸いです。

この度はご注文くださり、誠にありがとうございました。
とても楽しく書かせていただきました……!
インフルエンザも猛威を振るい始めますので、お体くれぐれもご自愛くださいませ。
2011年 1月某日 佐伯ますみ
SnowF!新春!初夢(ドリーム)ノベル -
佐伯ますみ クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2011年01月26日

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