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『戦いに束の間の甘い夢を 』
ラサ・ジェネシス(gc2273)

どんな世の中になろうが、四季は繰り返す。

それと同じ事で、バグア達の戦いに身を置く能力者達にもバレンタインはやってくる。

毎年この時期になると浮ついた者、己の現状を嘆く者と2通りの人間に別れる。

戦いに身を置き、いつ命が無くなるか分からない今だからこそ言葉で伝えるべき。

そう思いながら人々は思いと一緒に渡すべき物を選んでいる。

日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを渡して気持ちを伝える――というのが当たり前となっているけれど、

日本以外では性別に関わらず、自分にとって大事な者に気持ちと品物を渡す日になっている国もあるのだという。

ラストホープでは色々な国の人が集まっている。

だから貴方も性別に関わらず、誰かに送ってみては?


視点→ラサ・ジェネシス

「うーん‥‥これで大丈夫かナ?」
 ラサ・ジェネシスは何度も大きな鏡の前で自分の姿を見ながら自分の格好の中でおかしな所がないかを確認している。ちなみに確認は今ので7回目。
 今日の彼女の格好は向日葵のキャスケットに白いワンピース。
「‥‥鵺殿、可愛いって思ってくれるかナ?」
 左手の薬指に輝く指輪を見ながらラサは照れたように呟く。ラサが大事そうに見つめている指輪は向日葵のキャスケットと同じく彼女にとって大事な人から貰った物。
「‥‥フッフッフ‥‥今日は気合を入れてオサレをしたのダ‥‥はっ、もうこんな時間! 急がなくちゃ鵺殿を待たせてしまウ!」
 ラサは時計を見て慌てて部屋から出て、彼女は大事な恋人との待ち合わせ場所まで駆けて行った。
 ちなみに鵺と約束した約束の時間まで一時間以上あるのだが、鵺を待たせてはいけないという彼女の愛の力が感じられた。

「ね、寝不足の時に全力で走ると危険ネ‥‥」
 ぜぇぜぇと息を切らせながらラサは壁に背中を預けながら小さく呟いた。彼女は今日という日が楽しみで仕方なく、昨日の夜はほとんど眠れていなかった。
「‥‥昨日はドキドキして眠れなかったネ‥‥」
 はぁ、とため息を吐きながら鵺が来るのを待つ事にした。バレンタインという時期のせいかやけにカップルの姿が視界に入ってくる。
(‥‥鵺殿、早く来ないかナァ‥‥)
 ちょっとだけ寂しくなって来て、ラサは時計を見るけれどまだ約束の時間までは三十分ほどある。
(ちょっと早く来すぎたかナ?)
 そう思った時、緑色の髪の人物が視界に入ってきて――ラサは驚きで目を丸く見開いた。
「え、え!?」
「あら! アタシの方が早く来て驚かせようと思ったのに‥‥ラサちゃんの方が早かったのね」
「ぬ、鵺‥‥殿?」
 目を瞬かせながら問いかけると「あら、アタシの顔を忘れちゃうなんて酷いわ‥‥」と鵺は大げさに泣き真似をして見せた。
 ラサが驚くのも無理はないだろう。彼女自身、鵺と出会ってから『女の服』を着ている鵺しか見た事がなかった――のだが、その鵺が男物の服を着ていたからだ。普段はおろされている髪の毛も後ろで緩く三つ編みにして、服装も濃紺のシャツの上から黒いジャケットを羽織り、黒いマフラー、どこから見ても男の格好だった。
「な、何があったー!? 鵺殿! 熱でモ!? デートに行ってる場合じゃなイ! 病院に行こウ!」
 おろおろとしているラサに「何気に酷い事言うのねぇ‥‥」と鵺はやや苦笑しながら呟いた。
「折角のデートだからと思って、頑張ったのに‥‥そんなに似合わないかしら?」
「い、いや、そういう意味じゃなくテ! 似合わないとか、ナイですケド!」
 ラサの言葉に「そ? だったら早く行きましょ!」と鵺がラサの手を引っ張る。
「あら? 随分と手が冷たいじゃない! 一体何時から待ってたのよ」
「‥‥さ、さっき来たばかりですヨ?」
「さっき来たばっかりだったら、こんなに手が冷たくなってるわけないでしょ。白状しなさい」
 むに、とラサの頬っぺたを引っ張りながら鵺が問いかけると「い、一時間とちょっとデス」と観念したようにラサは言葉を返した。
「まったく‥‥まずはどこかカフェにでも入りましょ! それで温かい物を飲んだ後にショッピングしましょ」
 鵺はラサの答えを聞かないまま、近くのカフェへと入ったのだった。
「アタシは紅茶。ラサちゃんは何にする?」
「わ、我輩はホットココアで」
「それじゃ、その二つとこのオススメケーキを2つで」
 鵺が注文をし終わると「ふふ、可愛いじゃない♪」と頬杖をつきながらラサに言葉を投げかける。
「あ、アリガトウ、ぬ、鵺殿もか「きゃあ! あのウェイターってばかっこいいわ!」‥‥‥‥」
 ラサが「鵺殿もかっこいい」と言いかけたのだが、鵺は近くを通ったウェイターを見てきゃあきゃあと騒いでいる。
(やっぱりいつもの鵺殿ダ。格好がちょっと違うから戸惑ったけど、うん、これでこそ鵺殿ダ)
 ラサは心の中で呟き、ウェイトレスが持って来たココアを飲み始め、オススメケーキを食べ始めたのだった。
「ここを出たらショッピングしちゃいましょ」
 鵺も紅茶を飲み、ケーキを食べ始めたのだった。

「あら、カーディガンすっごく可愛いわ!」
 カフェを出た後、近くの洋服店に入りラサと鵺は色々な洋服を見ていた。
「あ、この黒いドレス――背の高い鵺殿に似合うカモ!」
 店内に飾られていた黒いドレスを見て、ラサが呟くと「あら、綺麗なドレスね! この隣のピンクのドレスはラサちゃんに似合いそうじゃない?」と黒いドレスの隣に置いてある薄いピンクのドレスを指差しながら鵺が言葉を返した。
「え、そ、そうカナ? 我輩に似合うカナ?」
「勿論。似合うに決まってるじゃない。ドレスに合わせて髪形をポニーテールにしても可愛いんじゃないかしら」
 うふふ、と言いながら鵺は「今度髪の毛のセットをさせてね♪」と言葉を付け足した。
「あっちの店はカジュアル系の店ね。行ってみる?」
 鵺が手を差し出すと、ラサはちょっとだけ照れたようにはにかみながら自分の手を鵺に重ねて別の店へと向かい出した。

「ふぅ、ようやく座れたわね‥‥」
 あれから色々な店を見ていたラサと鵺だったが、洋服を見ている間にお昼の時間になり、どの店も行列が出来てしまって、三十分ほど並んでようやく席に着くことが出来た。
(このカフェ、鵺殿と来たかった所だったカラ、来る事が出来てヨカッタ)
 ラサは微笑みながら心の中で呟く。ちょっと優雅な気分を味わう事が出来るカフェであり、最近は行列で何時間も待つ人がいるらしい。
 もちろん優雅さに合わせてちょっとだけ値段も他のカフェより高いのだが、ラサは鵺と来たかった場所だったので嬉しかった。
「鵺殿」
「んん? どうかした――「はい、あーん」――‥‥」
 ラサは食べていたパフェに乗っていたアイスをスプーンで掬うと、そのままスプーンを鵺へと向けた。
 一方、鵺は予想もしていなかったラサの行動に目を丸くしてちょっとだけ頬を赤くさせながら「あーん」とアイスをぱくりと食べた。
 他の席の客から見れば、どこからどう見てもバカップルにしか見えないだろう。
「はい、あーん」
 鵺もお返しと言わんばかりに食べていたクレープを一口サイズに切って、ラサに差し出す。
 先ほど自分がした行動なのだが、ラサは少しだけ恥ずかしくなってしまい「あ、あーん」と小さな声で呟きながらぱくりと食べたのだった。

 その後、二人はアクセサリーショップなど色々な店を見て回り、気がつけば空はもうオレンジ色に染まっていた。
「やっぱり日が暮れてくると冷え込むわねぇ」
 そう言いながら鵺は自分の首に巻いていたマフラーをラサの首に巻いてあげた。
「一緒に巻きたい所だけど、身長差があるからラサちゃんが吊られちゃうのよね‥‥」
 はぁ、と鵺はため息混じりに呟くと(何だか体の芯が熱くなって来たノダ)と心の中で呟く。
 そして「鵺殿!」と前を歩く鵺をちょっと大きな声で呼び止めた。
「ちょ、ちょっと形が変だケド‥‥受け取ってほしいナ」
 顔を赤くしながらラサが差し出したのは多分ハート型のチョコレート。形はいびつだったけれど、一生懸命作った事が見て取れるチョコレートだった。
「ふふ。ありがとう。ねぇ、今日は楽しかった?」
 鵺が問いかけると「た、楽しかったのダ、またこんな時間が持てたらなーナンテ」とラサは伺うように鵺を見ると「当たり前じゃないの」と満面の笑みで鵺は言葉を返した。
「それじゃ帰りましょ。今度はいつも通りの格好で来る事にするわ‥‥何だか落ち着かなかったのよね、実は」と自分の格好を見て鵺はため息混じりに呟いた。
(我輩の為に、一生懸命してくれたんだナ)
 そう考えるとどうしようもなく嬉しくなり、ラサは鵺と繋ぐ手の力を少しだけ強めたのだった。


END


―― 登場人物 ――

ラサ・ジェネシス/gc2273/15歳/女性/イェーガー

鵺/gz0250/26歳/男性/エキスパート

――――――――――

ラサ・ジェネシス様

こんにちは、水貴透子です。
いつも鵺がお世話になっております!
今回はドリノベにご発注いただき、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥!

今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2011/2/4
Sweet!ときめきドリームノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
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2011年02月07日

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