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『戦いに束の間の甘い夢を 』
リリナ(gc2236)

どんな世の中になろうが、四季は繰り返す。

それと同じ事で、バグア達の戦いに身を置く能力者達にもバレンタインはやってくる。

毎年この時期になると浮ついた者、己の現状を嘆く者と2通りの人間に別れる。

戦いに身を置き、いつ命が無くなるか分からない今だからこそ言葉で伝えるべき。

そう思いながら人々は思いと一緒に渡すべき物を選んでいる。

日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを渡して気持ちを伝える――というのが当たり前となっているけれど、

日本以外では性別に関わらず、自分にとって大事な者に気持ちと品物を渡す日になっている国もあるのだという。

ラストホープでは色々な国の人が集まっている。

だから貴方も性別に関わらず、誰かに送ってみては?

視点→リリナ

「明日はレインの誕生日‥‥」
 リリナはぽつりとカレンダーを見ながら呟いた。明日、2月14日はバレンタインデーであると同時にリリナにとって大事な人であるレインウォーカーの誕生日でもあった。
(明日はちゃんとお祝いをしなくちゃ‥‥一緒にチョコを作る約束ですが、大丈夫でしょうか‥‥)
 少しだけ表情を曇らせながらリリナが心の中で呟く。彼女自身、お世辞にも料理が得意な方とは言えず、折角のバレンタイン、折角の誕生日、そんな日に失敗しないかと不安な気持ちもあった。
「でも、一生懸命頑張って作れば‥‥きっと大丈夫、ですよね」
 うん、とリリナは誰に言うでもなく首を縦に振り、明日がやってくるのを楽しみにしていた。

 2月14日――‥‥レインウォーカーの自宅兼ガレージにて二人はチョコを作る為の準備を行っていた。
(レインの為に頑張ってチョコ作りを成功させなくちゃ‥‥)
 ぐ、と小さくリリナは拳を握り締めてチョコ作りへの意欲を見せた。
「予習は万全、問題も無し。さぁ、頑張って行こうかぁ」
「はいっ」
 レインウォーカーの言葉にリリナは元気よく言葉を返すと、二人はチョコ作りを開始し始めたのだった。
「‥‥でも、レシピを見ると難しそうですね、レイン」
 レシピを見たリリナは料理が不得意な自分にとって難しそうな物だと感じて、小さくため息を漏らしてしまう。
「難しい、なんて思っちゃダメだよぉ」
 レインウォーカーの言葉に「え?」とリリナが聞き返すように言葉を返した。
「気持ちを込めれば、必ず成功するさぁ」
「気持ちを込める‥‥ですか」
 リリナの呟きに「そうさぁ」とレインウォーカーは言葉を返す。
(気持ち‥‥あたしのレインに対する気持ちは誰よりもあります、作る前から諦めちゃダメですよね)
 リリナは心の中で呟いた後「頑張ります」とレインウォーカーに言葉を返した。
「それじゃ、作り始めようかぁ」
 それから二人はお互いの大事な相手の為に精一杯の気持ちを込めて作り始める。
「あの、レイン。ここはどうすれば――‥‥ふふっ」
「どうしたんだい?」
(レインったら、ほっぺにチョコがついてる事に気がついてないんですね)
 心の中でリリナが呟き「ほっぺにチョコ、ついてますよ」とレインウォーカーの頬についたチョコを指で取り、それをぺろりと舐める。
「ちょっと甘いかもしれませんね」
「‥‥‥‥」
 リリナがチョコの味を確かめている間、レインウォーカーは硬直しているかのように体を固まらせていた。
「レイン? どうかしたんですか?」
 黙ったままのレインウォーカーを不思議に思い、かくりと首を傾げながらリリナが問いかけるのだが――、その仕草も彼を煽っているという事にリリナはきっと気がついていない。
「何でもないよ」
 レインウォーカーは何故か苦笑しながら言葉を返し、チョコ作りの続きを始める。
「あ、ここはどうすればいいんですか? レインのは綺麗に出来ているんですけど、あたしのは上手く綺麗にならなくて‥‥」
 少し困ったような表情でリリナがレインウォーカーに問いかける。彼のは綺麗な形になっているのだが、リリナのは少しイビツになってしまっており気になるのだろう。
「あぁ、難しく考える必要はないさぁ。ここはこうして――‥‥ほら、こうやれば綺麗になる」
 レインウォーカーが手本を見せながら形を作って見せると「あ、成程。分かりました」とリリナも早速レインウォーカーの手本を真似て形を作る。
「うん、綺麗に出来たねぇ」
 くしゃり、とレインウォーカーに頭を撫でられ、顔を赤くしながら「レインのおかげです」と嬉しそうに言葉を返した。
「形が出来れば、後は冷やして終わりだねぇ」
 レインウォーカーはチョコを冷やす為に冷蔵庫へと入れ「出来上がるまでお茶でも飲んでいようかぁ」とリリナに言葉を投げかけたのだった。

 それから二時間ほどが経過した頃――‥‥。
 出来上がったチョコを冷蔵庫から取り出し、二人はラッピングを始める。直ぐに解かれてしまう包装だったけれど、やっぱりきちんとしたいという気持ちが二人の中にあったからだ。
「ハッピーバレンタイン、リリナ」
 綺麗にラッピングされたチョコをレインウォーカーがリリナに渡す。
「ありがとうございます、レイン」
 渡された箱を大事そうに見つめ、自分のために一生懸命作ってくれた事が嬉しくて、リリナは少しだけ泣いてしまいそうな気持ちになった。
「これはあたしから‥‥ハッピーバレンタインです、ヒース」
 にっこりと満面の笑みでリリナがレインウォーカーにチョコを渡す。彼の本名を知る数少ない人物、それがリリナ。
 だからこそ大事なものを渡す時には普段の名前ではなく、本名を呼んで渡したいとリリナは考えていた。
「なんだか、少し照れくさいねぇ」
 顔を赤くしながらレインウォーカーはぽつりと小さな声で呟いた。
「それともう1つあるんです」
「え?」
 予想していなかったのか、レインウォーカーは目を瞬かせながらリリナを見て呟く。
「花束なんですけど‥‥ミモザアカシア――2月14日の誕生花で、花言葉が『秘密の愛』なんです、それと――‥‥」
 花束をレインウォーカーに渡した後、リリナは顔を赤く染めながら「えっと、その」としどろもどろになって呟く。
(は、恥ずかしいけど――よ、よしっ)
「リリナ?」
 いつまでも言葉の続きを言わないリリナを不思議に思ったのか、レインウォーカーが言葉を投げかけてくる――その瞬間、リリナはレインウォーカーの服をくいっと引っ張り、自分も背伸びをしながらレインウォーカーに触れるだけのキスをした。
「これからも、よろしくお願いしますね」
 えへへ、と言葉を付け足しながらリリナはレインウォーカーへと言葉を投げかけた。
 そしてレインウォーカーはと言えば、何が起きたのか理解出来ていないようにぽかんとした表情の後、一気に茹でタコのように顔を真っ赤にした。
「リリナ――‥‥反則だよぉ」
 レインウォーカーは顔を隠すように口元を手で覆うが、耳まで赤くなっているので、あまりその行動に意味はなかった。
「ずっと、あたしと一緒にいてくれますか?」
「当たり前だよぉ」
 呟いた瞬間、レインウォーカーはリリナを強く抱きしめた。少し苦しいくらいだったけれど、リリナは温かさに幸せを感じて「ふふ」と小さな笑みを漏らした。
「さて、折角チョコをもらったんだし、一緒に食べようかぁ」
「そうですね」
 レインウォーカーの言葉にリリナが答え、二人は椅子に座って先ほど交換したばかりのチョコを開けていく。
「ん」
 レインウォーカーがぱくりと食べ、リリナはその反応にドキドキと意識してしまう。
(美味しく出来ているでしょうか‥‥多分、今までで一番上手く出来たと思うんですけど、それにレインも一緒にいてくれたから、失敗はないと思うんですけど‥‥どうでしょうか)
「美味しいよ、リリナ」
 レインウォーカーが笑顔で「美味しい」と言ってくれた事に対して安心したのか「ほ、本当ですか?」とリリナは目を瞬かせながら言葉を返す。
「うん、本当に美味しいよ。リリナの料理の腕もあがったねぇ」
(良かった、レイン――‥‥ううん、ヒースに喜んでもらえて本当に良かった‥‥!)
「ありがとうございます、ヒース」
 照れたようにリリナは言葉を返し、自分もレインウォーカーからもらったチョコをぱくりと食べる。
「美味しいっ」
「だから言ったろぉ? 気持ちを込めて作れば大丈夫ってねぇ」
 レインウォーカーの言葉に「はい、そうですね」とリリナは言葉を返し、二つ目のチョコを口の中へと放り込む。
「ねぇ、リリナ」
「はい?」
 リリナがレインウォーカーの方を振り向くと同時に、唇に温かい感触が伝わってくる。
「さっきのお返しだよぉ」
「〜〜〜〜!!」
「今日はありがとう、凄く嬉しかったよぉ」
 レインウォーカーがとても幸せそうに微笑んだ為、リリナは怒るタイミングを失い、あたしもです、と言葉を返したのだった。


END

―― 登場人物 ――

gc2524/レインウォーカー/22歳/男性/ペネトレーター

gc2236/リリナ/15歳/女性/ハーモナー

――――――――――

リリナ様>

こんにちは、今回執筆させていただきました水貴です。
今回はご発注いただき、ありがとうございました!
レインウォーカー様と甘い雰囲気のノベルになっていれば良いのですが‥‥。
いかがだったでしょうか?

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/2/13
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2011年02月14日

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