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『戦いに束の間の甘い夢を 』
レインウォーカー(gc2524)

どんな世の中になろうが、四季は繰り返す。

それと同じ事で、バグア達の戦いに身を置く能力者達にもバレンタインはやってくる。

毎年この時期になると浮ついた者、己の現状を嘆く者と2通りの人間に別れる。

戦いに身を置き、いつ命が無くなるか分からない今だからこそ言葉で伝えるべき。

そう思いながら人々は思いと一緒に渡すべき物を選んでいる。

日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを渡して気持ちを伝える――というのが当たり前となっているけれど、

日本以外では性別に関わらず、自分にとって大事な者に気持ちと品物を渡す日になっている国もあるのだという。

ラストホープでは色々な国の人が集まっている。

だから貴方も性別に関わらず、誰かに送ってみては?

視点→レインウォーカー

「明日はボクの誕生日かぁ」
 レインウォーカーはポツリと小さな声で呟く。明日、2月14日は世間で言うバレンタインデーであると同時に彼自身の誕生日でもあった。
(明日はリリナと一緒にチョコ作りか‥‥ふふ、こんな嬉しい誕生日は初めてだぁ)
 レインウォーカーは心の中で呟き、明日の事を考えるだけで表情が緩んでいくのが分かる。
「早く明日にならないかなぁ」
 レインウォーカーは愛する人と過ごす明日が待ち遠しくて仕方が無かった。

 2月14日――‥‥レインウォーカーの自宅兼ガレージにて二人はチョコを作る為の準備を行っていた。
 予め、レインウォーカーはチョコの作り方を徹底的に研究しており、絶対にチョコ作りを成功させようと考えていた。
(おチビさんも意欲満点って所かなぁ)
 レインウォーカーは隣を見ると、小さく握り拳を作ってチョコ作りへの意欲を見せているリリナの姿が視界に入ってきて、リリナに分からないくらい小さく笑みを漏らした。
「予習は万全、問題も無し。さぁ、頑張って行こうかぁ」
 レインウォーカーが呟くと「はいっ」とリリナが元気よく言葉を返し、チョコ作りを開始し始めたのだった。
「‥‥でも、レシピを見ると難しそうですね、レイン」
 レシピを見ながらリリナが小さくため息を漏らす。
「難しい、なんて思っちゃダメだよぉ」
「え?」
 レインウォーカーの言葉に、リリナはきょとんとしたような表情で言葉を返してきた。
「気持ちを込めれば、必ず成功するさぁ」
「気持ちを込める‥‥ですか」
 リリナの呟きに「そうさぁ」とレインウォーカーは言葉を返す。
(たとえ、失敗したとしてもおチビさん――‥‥リリナがボクの為に作ってくれるんだ、不味いはずがないさぁ)
 レインウォーカーは薄く笑みながら心の中で呟く。
「頑張ります」
「それじゃ、作り始めようかぁ」
 それから二人はお互いの大事な相手の為に精一杯の気持ちを込めて作り始める。
「あの、レイン。ここはどうすれば――‥‥ふふっ」
 突然、リリナの笑う声が聞こえ「どうしたんだい?」と目を瞬かせながらレインウォーカーが問いかける。
「ほっぺにチョコ、ついてますよ」
 リリナはレインウォーカーの頬についていたチョコを指で取り、それをそのままぺろりと舐めた。
「!?」
「ちょっと、甘いかもしれませんね」
(‥‥これは狙ってやってるんだろうかぁ。いや、おチビさんに限ってそれは無いだろうし‥‥無意識かぁ、可愛いけど男心を擽り過ぎだよぉ、リリナ)
「レイン? どうかしたんですか?」
 リリナはかくりと首を傾げながらレインウォーカーに言葉を投げかけてくる。
 きっと黙ったままの彼を不思議に思ったのだろう。
(ここまで無意識でやられると、本当に無意識なのか疑いたくなるねぇ)
 苦笑しながら「何でもないよ」と言葉を返す。
「あ、ここはどうすればいいんですか? レインのは綺麗に出来ているんですけど、あたしのは上手く綺麗にならなくて‥‥」
 リリナがちょっと困った表情でレインウォーカーに言葉を投げかける。確かに見てみればちょっと形がイビツになってしまっている。
「あぁ、難しく考える必要はないさぁ。ここはこうして――‥‥ほら、こうやれば綺麗になる」
 手本を見せながらレインウォーカーはリリナに説明をしてやると「あ、成程。分かりました」と呟き、手本を真似るようにしてリリナも形を作り始める。
「うん、綺麗に出来たねぇ」
 くしゃり、とリリナの頭を撫でてやるとリリナは嬉しそうに「レインのおかげです」と言葉を返した。
「形が出来れば、後は冷やして終わりだねぇ」
 レインウォーカーはチョコを冷やす為に冷蔵庫へと入れ「出来上がるまでお茶でも飲んでいようかぁ」とリリナに言葉を投げかけたのだった。

 それから二時間ほどが経過した頃――‥‥。
 出来上がったチョコを冷蔵庫から取り出し、二人はラッピングを始める。直ぐに解かれてしまう包装だったけれど、やっぱりきちんとしたいという気持ちが二人の中にあったからだ。
「ハッピーバレンタイン、リリナ」
 綺麗にラッピングしたチョコをリリナへと渡すと、彼女は嬉しそうに受け取りながら「ありがとうございます、レイン」と大事そうに箱を見つめていた。
「これはあたしから‥‥ハッピーバレンタインです、ヒース」
 リリナも綺麗にラッピングしたチョコをレインウォーカーに渡す。今日はじめて自分の本名を呼ばれ、レインウォーカーは少しだけ照れくさい気持ちになった。
「なんだか、少し照れくさいねぇ」
 顔を赤くしながらレインウォーカーが呟く。
「それともう1つあるんです」
 リリナの言葉に「え?」とレインウォーカーが目を瞬かせながら呟く。
「花束なんですけど‥‥ミモザアカシア――2月14日の誕生花で、花言葉が『秘密の愛』なんです、それと――‥‥」
 リリナはレインウォーカーに花束を渡した後、顔を赤く染めながら「えっと、その」としどろもどろに呟く。
「リリナ?」
 どうしたんだろう、とレインウォーカーが思った瞬間――服をくいっと引っ張り、リリナは背伸びをしながら、触れるだけの優しいキスをレインウォーカーに送った。
「これからも、よろしくお願いしますね」
 真っ赤な顔のまま、リリナは「えへへ」と笑いながらレインウォーカーに言葉を投げかけてきた。
 当のレインウォーカーといえば、一瞬の出来事で一体何が起きたのか分からず、頭の中を整理して先ほどの出来事を思い返し、一気に恥ずかしさがこみ上げてきて顔を真っ赤にする。
「リリナ――‥‥反則だよぉ」
 口元を手で覆い、真っ赤な顔を見られないようにとするけれど耳まで赤くなっており、顔を隠しているその行動にあまり意味はなかった。
「ずっと、あたしと一緒にいてくれますか?」
 リリナの問いに「当たり前だよぉ」とレインウォーカーは呟き、リリナを強く抱きしめる。
「さて、折角チョコをもらったんだし、一緒に食べようかぁ」
 レインウォーカーが呟くと「そうですね」と言葉を返し、椅子に座った後で先ほど交換したばかりのチョコを開けていく。
「ん」
 食べながら、ちらりとリリナの方を見ると、レインウォーカーの反応が気になって仕方ないのか、ジッと見ているのが分かる。
(僕の反応が気になって仕方がないって所だねぇ‥‥そんなに心配しなくてもいいのにねぇ)
 苦笑しながら「美味しいよ、リリナ」と告げると「ほ、本当ですか?」とリリナは嬉しそうに言葉を返してきた。
「うん、本当に美味しいよ。リリナの料理の腕もあがったねぇ」
「ありがとうございます、ヒース」
 成功していた事に安心したのか、リリナはレインウォーカーから渡されたチョコをぱくりと食べ「美味しいっ」と笑顔で呟いた。
「だから言ったろぉ? 気持ちを込めて作れば大丈夫ってねぇ」
 レインウォーカーの言葉に「はい、そうですね」とリリナも言葉を返し、二つ目のチョコを口の中へと放り込む。
(今まで何回も誕生日はやってきたけど、こんなに幸せなのは――‥‥こんなに嬉しい誕生日は初めてだぁ)
 ふふ、とレインウォーカーも薄く微笑みながら二つ目のチョコを口の中へと入れる。
(きっとこのチョコは世界中のどんなチョコよりも甘くて美味しいんだろうねぇ)
「ねぇ、リリナ」
「はい?」
 リリナがレインウォーカーの方を振り向くと同時に、唇に温かい感触が伝わってくる。
「さっきのお返しだよぉ」
「〜〜〜〜!!」
「今日はありがとう、凄く嬉しかったよぉ」
 レインウォーカーがとても幸せそうに微笑んだ為、リリナは怒るタイミングを失い、あたしもです、と言葉を返したのだった。


END


―― 登場人物 ――

gc2524/レインウォーカー/22歳/男性/ペネトレーター

gc2236/リリナ/15歳/女性/ハーモナー

――――――――――

レインウォーカー様>

こんにちは、今回執筆させていただきました水貴です。
今回はご発注いただき、ありがとうございました!
リリナ様との描写でしたが、甘い雰囲気になっていれば良いのですがっ。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/2/13
Sweet!ときめきドリームノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
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2011年02月14日

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