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『戦いに束の間の甘い夢を 』
雪代 蛍(gb3625)

どんな世の中になろうが、四季は繰り返す。

それと同じ事で、バグア達の戦いに身を置く能力者達にもバレンタインはやってくる。

毎年この時期になると浮ついた者、己の現状を嘆く者と2通りの人間に別れる。

戦いに身を置き、いつ命が無くなるか分からない今だからこそ言葉で伝えるべき。

そう思いながら人々は思いと一緒に渡すべき物を選んでいる。

日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを渡して気持ちを伝える――というのが当たり前となっているけれど、

日本以外では性別に関わらず、自分にとって大事な者に気持ちと品物を渡す日になっている国もあるのだという。

ラストホープでは色々な国の人が集まっている。

だから貴方も性別に関わらず、誰かに送ってみては?

視点→雪代・蛍

「‥‥うーん、どうしよう」
 雪代 蛍は頬杖をつきながら目の前の雑誌をぱらりと捲る。
 もうすぐバレンタイン。蛍は彼氏である七海・鉄太にあげるチョコについて悩んでいた。
 鉄太にあげるのは勿論本命チョコ。だからこそ渡すチョコについて悩んでいるのだ。
「こっちは有名ホテルのチョコ‥‥」
 蛍が読んでいる雑誌に紹介されているのは有名ホテルが出しているョコレート。色とりどりのチョコで、花の形をしたチョコだった。勿論見栄えも良いけれど、値段も別な意味で良いものだった。
「やっぱり、手作りがいいよね。本命なんだし」
 蛍は小さくため息を吐いて、今まで読んでいた雑誌を閉じ、隣に置いてあった別の雑誌を見始める。
 その雑誌はバレンタイン特集でチョコの作り方などが書いてある雑誌で、色々なページに付箋が付けられており、蛍が一生懸命考えていた事が伺えた。
「どんなのを作ろうかな。鉄太の事だから何かアニメのキャラとかの形をしたチョコとか物凄く喜びそう‥‥雰囲気は台無しになるけど」
 苦笑しながら蛍はぱらり、とまたページを捲る。
「‥‥あ」
 ふと、蛍は思いついた事があってページを捲る手が止まる。
(鉄太‥‥他の誰かにチョコとかもらってない、よね‥‥もし、貰ってたら――何か、ヤダな)
 蛍は心の中で呟き「ううん、そんな事ないよね」と首を緩く振って言葉を付け足した。
(鉄太、あたしの喜ぶ事をしてくれるって言ってたし‥‥でも、あたしが喜ぶことって何をしてくれるんだろう)
 一体鉄太が何をしてくれるのか、それを考えただけで蛍の頬が緩んでくる。
 もしかしたらアレかな、それともコレかな、そう考えるだけで自然と嬉しい気持ちになってきたのだ。
「――っと、何してんろあたし‥‥とにかくチョコを作ろうっと」
 ふと鏡に視線が行き、自分の緩んだ表情を見て蛍は少しだけ恥ずかしくなって小さな咳払いをした後、雑誌に再度視線を落とした。
「そうだ、折角だから鉄太をラストホープに呼んでカンパネラ学園でも案内しようかな? 鉄太の制服姿も見てみたいし」
 蛍は独り言のように呟くと、携帯電話を取り出して鉄太へとメールをする。

『2月14日にラストホープに来れる? これたらカンパネラ学園に来て欲しいんだけど』

 簡単なメールだったが、蛍はドキドキしながら送信ボタンを押した。
(鉄太、鈍いからなぁ‥‥もっとストレートにバレンタインの事を言った方が良かったかな?)
 蛍が少し心配になっていると、意外にも鉄太からすぐに返信があり『わかった! 行く!』とだけ返ってきた。
(‥‥絶対、バレンタインの事を忘れてそうな感じなんだけど‥‥)
 はぁ、と小さくため息を吐きながら蛍は鉄太に渡す為のチョコ製作に取り掛かったのだった。


「‥‥ちょっとイビツになっちゃったけど、だ、大丈夫だよね‥‥」
 蛍が作ったのは形が少しだけイビツになってしまったトリュフだった。
(‥‥もっと簡単だと思ってたのに、意外と苦労しちゃったな‥‥)
 チョコを入れた箱をラッピングしながら「鉄太、喜んでくれるかなぁ」と頬を赤く染ながら小さく呟いたのだった。

 そしてバレンタイン当日の2月14日――‥‥。
 待ち合わせ場所にしていたカンパネラ学園の所で蛍は寒さに震えていた。
 今日の事が楽しみで蛍は約束した時間よりも遥かに早く来てしまっていたのだ。
(鉄太、まだかな‥‥)
「あれっ、もしかして俺ってば時間間違えた!?」
 約束の時間よりも20分くらい早い時間で鉄太が慌てたように蛍に駆け寄ってきた。
「遅いよ」
「ご、ごめん‥‥もうちょっと時間に余裕があると思ってたんだけど‥‥」
 しょんぼりとしながら鉄太が謝ると「まだ、約束の時間までは20分くらいあるけどね」と蛍が言葉を返す。
「え? あ、もしかして蛍ってば今日が楽しみで早くに来たとか!?」
 鉄太が満面の笑みで蛍に問いかけると「たまたまに決まってるじゃん」と素っ気無く言葉を返す。
「‥‥そっか。俺は楽しみで夜もあんまり寝れなかったんだけどなぁ」
(‥‥あたしのバカ。素直に『あたしも楽しみだった』って何で言えないかな‥‥)
 自分の素直じゃない性格に嫌気がさして、蛍は鉄太には聞こえないくらいの小さなため息をもらした。
「そ、そうだ。制服を借りれるように頼んでたんだけど折角だから着てみたら?」
 蛍が鉄太に言葉を投げかけると「え、俺も着ていいの!? わーい、着る着る!」と鉄太はしょんぼりした表情から一気に嬉しそうな表情へと変えた。
 それから制服を借り、鉄太が「じゃーん! どう? 俺似合ってる?」とくるくると回りながら蛍に問いかけてくる。行動そのものは小さな子供にしか見えないのだが‥‥。
「‥‥‥‥」
「あれ? 何で何も言ってくんねぇの?」
「‥‥意外と‥‥似合ってる‥‥」
 蛍の言葉に鉄太は嬉しそうに微笑む。最初は制服を着た鉄太をからかってやろうとか考えていた蛍だったのだが、予想外にも似合っていて、蛍は顔が赤くなるのを感じていた。
「あれ? 何か顔が赤くないか?」
「あ、赤くなってないし!」
「えー? でも本当に「違うってば!」‥‥何で怒るんだよぅ」
 先ほどのようにしょんぼりとしながら鉄太が呟き、蛍は二度目の出来事に(またやっちゃった‥‥)と後悔した。
(何であたしは好きな人の前で素直になれないんだろう‥‥あの時だって)
 唇をきゅっと噛みながら蛍は過去の出来事が頭の中に過ぎる。母親に対しての態度、そしてその後に起きた出来事も‥‥。
「あ、そーだ。蛍、これあげる! バレンタイン!」
 思い出したように鉄太がバッグの中から小さな包みを取り出した。ピンク色の袋に入ってリボンがかけられている。
「え? バレンタイン?」
「うん。日本は女の人が男の人にチョコあげる日だろー? でも外国は男から大事な人にあげてもいいんだよって先生から教わった。だから、俺は蛍にあげる」
 にこっと笑いながら鉄太が呟く。
「え、あ‥‥」
 そして蛍はといえば、差し出された包みと鉄太とを交互に見比べながら「あ、ありがと」と包みを手に取る。
「あ、あけてもいいの?」
「うんっ」
 蛍がどきどきしながら包みを開けると――‥‥包みから出てきたのは赤い石がゆらゆらと揺れるイヤリングだった。
「あのな、俺ってば一生懸命選んだんだぞ」
 威張るように呟く鉄太に「鉄太‥‥ありがとう」と少しだけ涙の混じる声で呟いた。
「あ、あたしもチョコを作ったんだ‥‥その、形はイビツだけど一生懸命作ったから」
 蛍がチョコを渡すと、鉄太は「わぁ、ありがとう! 俺大事に食べるからな!」とチョコを受け取りながら大事そうにチョコの入った箱を見つめていた。
「鉄太――‥‥まだまだ先の話になるかもしれないけど、幸せな家族を作ろうね。それと‥‥あたし達の両親より長生きしよう、子供が大きくなるのを見守るの」
 それが出来なかったあたし達の両親の代わりに、と蛍は言葉を付け足す。
「いっぱい思い出作ろう。きっと、喜んでくれると思うから」
 蛍の言葉に「うんっ、でも幸せな家族は作りたいけど」と鉄太が言葉を止め、蛍をまっすぐ見ながら「蛍と一緒にいる今も俺はすっごく幸せだぞ」と言葉を付け足した。
「――え‥‥」
 不意打ち、とはまさにこの事を言うのだろう。予想もしていなかった言葉を言われ、蛍は顔が真っ赤に染まる。
「あは、また顔が赤くなったー」
「な、なってないから!」
 ぷいっと横を向く蛍だったけれど、その表情は幸せそうなものだった。


END

―― 登場人物 ――

gb3625/雪代 蛍/12歳/女性/ハーモナー

gz0263/七海・鉄太/18歳/男性/フェンサー

――――――――――

雪代 蛍様>
こんにちは、今回執筆させていただきました水貴です。
いつも鉄太がお世話になっております。
今回はバレンタインノベルのご発注をありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていると良いのですが‥‥!

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/2/11
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2011年02月14日

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