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『戦いに束の間の甘い夢を 』
諌山美雲(gb5758)

どんな世の中になろうが、四季は繰り返す。

それと同じ事で、バグア達の戦いに身を置く能力者達にもバレンタインはやってくる。

毎年この時期になると浮ついた者、己の現状を嘆く者と2通りの人間に別れる。

戦いに身を置き、いつ命が無くなるか分からない今だからこそ言葉で伝えるべき。

そう思いながら人々は思いと一緒に渡すべき物を選んでいる。

日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを渡して気持ちを伝える――というのが当たり前となっているけれど、

日本以外では性別に関わらず、自分にとって大事な者に気持ちと品物を渡す日になっている国もあるのだという。

ラストホープでは色々な国の人が集まっている。

だから貴方も性別に関わらず、誰かに送ってみては?

視点→諌山美雲

 ピピピピ‥‥。
 諌山美雲は携帯電話のアラームで目が覚める。隣で寝ている美雲の最愛の夫・諌山詠と最愛の娘を起こさないようにアラームの音は一番小さなもので設定していた。
(良かった‥‥起きる時に二人を起こしちゃわないか心配だったけど‥‥)
 美雲は隣で寝ている詠と娘を見て、安心したように小さく息を漏らす。
「さて、頑張ろう」
 美雲は大きく伸びをした後、予定していた作業に取り掛かるのだった。

「えーっと‥‥ここは、わぁっ!」
 ――ガシャンッ!
 本を見ながら調理していた美雲は肘がボウルにぶつかってしまい、床へと落としてしまった。
(まだボウルは使ってなかったから良かった…気をつけなくちゃ)
「‥‥美雲さん?」
「えっ!」
 落としてしまったボウルを洗い、再び料理に取り掛かろうとした時に背後から声をかけられてしまい、美雲は驚いて持っていた包丁を落としそうになる。
「ふぅ、危なかった‥‥」
 安心したように美雲が呟き、くるりと詠の方を向いて「おはようございます、詠さん」と笑顔で挨拶をする。
「あ、おはよ――‥‥「さっそくですが、台所には立ち入り禁止!」‥‥え?」
 美雲は詠の言葉を遮り、台所から追い出すようにぐいぐいとリビングの方へと押しやる。
(詠さん、きっと気になるだろうなぁ‥‥でもまだ教えるわけにはいかないし‥‥)
 しかしここで美雲のドジというか天然というか、とにかくそれが発揮されていた。朝ご飯の準備をするという事を忘れている事に、彼女自身気がついていないようだ。
 だからきっとリビングの方でお腹をすかせている詠の姿も気づく事はない。
 しばらく料理をしていると「美雲さん」と自分を呼ぶ声が聞こえ、美雲が振り向くと、そこには子供を抱えた詠の姿があった。
「あ、まだ来ちゃダメ!」
「いえ、その朝ご「もう! 早く出て行って!」はん‥‥」
 詠の言葉はまたもや最後まで言う事が出来ず、台所から追い出されてしまう。
「あれ? 詠さん、今なんか言いかけたような‥‥気のせいか」
「美雲さん、ちょっとこの子と一緒に外に出てきますね」
「わかったー!」
(詠さん、出かけるんだ‥‥よし、帰ってくる前に仕上げちゃおう!)
 腕まくりをしながら美雲は更に料理のスピードをあげて、詠と子供が外から帰ってくるまでに料理を終わらせようと頑張り始めたのだった。

「よしっ」
 あれから料理を作り終え、美雲はケーキのデコレーションをしていた。
(せっかくのバレンタインなんだもん。大好きな詠さんには手作りであげたいよね)
 美雲は心の中で呟き、少し微笑むと可愛らしくデコレーションをしていく。
「あ」
 そこでふと美雲が思い出して、時計を勢いよく見る。
(‥‥あ、朝ご飯‥‥もしかして詠さん、さっきからお腹すいたって言いに来てたんじゃ‥‥)
 少し青ざめる美雲だったが(はっ、あの子もご飯を‥‥いや、それは多分詠さんが食べさせてくれてるはず)と心の中で言葉をつけたし、外に出ている詠に対してかなり申し訳なさを感じてしまう。
「で、でも料理も沢山作ったし‥‥詠さん、許してくれる、よね?」
 少し不安になりながらも美雲はデコレーションを再開し始めたのだった。

「‥‥遅いなぁ」
 料理も作り終え、テーブルに並べ終わっているというのに詠と子供が帰って来ず、美雲は少し寂しい気持ちになっていた。
(‥‥私が追い出した時、詠さんも寂しかったのかな‥‥?)
「ただいまー」
 玄関のドアが開く音と、子供の声が聞こえて「おかえりなさい」と美雲が玄関まで迎えに行く。
 すると詠が苦笑していた。
「詠さん、今日は‥‥その、バレンタインだし、ケーキを作ったの。あとご馳走も‥‥朝ご飯の事を忘れててごめんね」
 美雲が申し訳なさそうに言うと「別にいいですよ」と詠が美雲の頭を撫でながら言葉を返してくる。

「‥‥これは、また‥‥結構な量を」
 リビングに戻り、テーブルの上を見て詠が苦笑する。テーブルの上にはずらりと並べられた数々の料理。
「色々作ってたら、作りすぎちゃったみたいで‥‥」
「嬉しいですよ、それだけ俺のことを考えて作ってくれたんでしょう?」
 詠から問われて美雲はこくりと首を縦に振る。これを作ったら喜んでくれるかな? あ、でもこっちも食べたいかもしれない、そんな思いで作っていたらいつの間にかとんでもない量になっていた。
 だから詠のことを考えて作ったという事には間違いがない。
「さ、早く食べましょう。せっかくのご馳走なんですから冷めたらもったいないですし」
 子供を抱えたまま、詠が席へとつき、美雲も詠の向かいに座って二人はご馳走を食べ始めた。
「この子にはこれですよー」
 美雲は子供用のご馳走も作っており、それを詠が食べさせるともぐもぐと食べ始めた。きっと美味しいと思っているから「早く、次」と急かすように詠の手を叩いているのだろう。
(何か‥‥幸せ、だなぁ)
「美雲さん? 何笑ってるんですか?」
「内緒」
(だって、面と向かって幸せだなんて恥ずかしくていえないよ

「そろそろケーキ食べる?」
 食べ過ぎたお腹が落ち着いた頃、美雲が詠に問いかける。
「そうですね、せっかく美雲さんが作ってくれたんですし‥‥食べたいですね」
 詠の言葉に美雲がぱぁっと表情を輝かせて「ちょっと切ってくる」と台所へと向かう。
「それじゃ、俺はコーヒーでも淹れておきましょうか」
「あ、うん。お願い」
 美雲がケーキを切りながら詠に言葉を返す。暫くするとケーキの甘い匂いとコーヒーの良い匂いが部屋中に充満し始める。
「うん、良い匂いですね、と」
「本当だね」
 コーヒーを淹れ終わった後、美雲が切り分けたケーキを持ってリビングへと帰って来た。
 部屋中の匂いに気がついたのだろうか、眠っていたはずの子供も目が覚めて目をぱちぱちとしている。
「あ、この子が起きちゃった‥‥さすがにチョコレートはまだ早いからお預けなんだよね」
 美雲は苦笑しながら子供を抱き上げ「もうちょっと大きくなってからねー」と声をかけた。
「‥‥美雲さん」
 詠から呼ばれ、美雲が子供をベビーベッドに寝かせてから彼の隣へと座る。
「詠さん、何?」
 かくりと首を傾げながら美雲が問いかけると「あーん」とフォークに刺したケーキを美雲へと向けた。
「!?」
 突然の出来事で美雲は驚いてしまい、ケーキと詠の顔を交互に見ている。
(え、え!? 詠さんって‥‥こういうことをする人だったっけ!?)
 美雲は照れながら「あ、あーん‥‥」とケーキをぱくりと食べる。
(こ、こうなったら私だって‥‥)
 フォークを取り、先ほど自分にしたようにケーキを詠へと向ける。
「詠さん、はい‥‥あーん」
「!?」
 今度は詠が驚いたように、顔を赤く染めてぱくりとケーキを食べる。
(あ、詠さんが赤くなってる‥‥)
 恐らく、他人が見たらどこのバカップルかと叫びたいくらいだろう。
 それほどまでに今の諌山家には砂糖よりもケーキよりも甘い空気に包まれていた。
「‥‥お腹いっぱい食べたら眠くなりませんか?」
 詠が美雲に問いかけると「食べた後にすぐ寝るのはよくないよ」と言葉を返す。確かに美雲が言うことが最もなのだが、襲い掛かってくる睡魔には勝てそうにないのか、詠は困ったように笑うだけだった。
「‥‥仕方ないなぁ」
 美雲はため息混じりに呟き、子供を抱き上げて再び寝室へと向かう。
 数十分後には、親子3人で仲良く眠る姿があったのだが、それを見ているものは誰もいなかったのだった。


END

―― 登場人物 ――

gb5758/諌山美雲/19歳/女性/エレクトロリンカー

gb7651/諌山詠/20歳/男性/ファイター

――――――――――

諌山美雲様>

こんにちは、今回執筆をさせていただきました水貴です。
今回はご発注いただき、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
甘い内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥!

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/3/8
Sweet!ときめきドリームノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
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2011年03月09日

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