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『戦いに束の間の甘い夢を 』
諌山詠(gb7651)

どんな世の中になろうが、四季は繰り返す。

それと同じ事で、バグア達の戦いに身を置く能力者達にもバレンタインはやってくる。

毎年この時期になると浮ついた者、己の現状を嘆く者と2通りの人間に別れる。

戦いに身を置き、いつ命が無くなるか分からない今だからこそ言葉で伝えるべき。

そう思いながら人々は思いと一緒に渡すべき物を選んでいる。

日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを渡して気持ちを伝える――というのが当たり前となっているけれど、

日本以外では性別に関わらず、自分にとって大事な者に気持ちと品物を渡す日になっている国もあるのだという。

ラストホープでは色々な国の人が集まっている。

だから貴方も性別に関わらず、誰かに送ってみては?

視点→諌山詠

 ピピピピ‥‥。
(ん‥‥アラーム?)
 諌山詠が少し身じろぎしながら心の中で呟く。
(‥‥それにしては音が小さい、かな? 多分聞き間違いかな‥‥)
まだ完全に覚醒しておらず、いつものように大きな音ではなかった為、詠は聞き間違いだと完結して再び眠りについた。
「さて、頑張ろう」
 再び眠りについた詠を見て、彼の最愛の妻である諌山美雲がほっと安堵したように息を漏らした事、眠ってしまった詠は気づく事が出来なかった。

―ガシャンッ!
「わぁっ!」
「!?」
 何かが床に落ちる派手な音が聞こえ、詠はガバッと勢いよく起き上がる。
「‥‥あれ?」
 隣で寝ているはずの美雲の姿が無い事に気づき、詠はまだ寝ぼけ眼で周りを見渡す。隣は既に冷たくなっており、美雲が起きたのが随分前だと言う事が伺える。
「この子は‥‥良かった、まだ気持ち良さそうに寝てる」
 今の音で子供が起きたか心配になった詠だったが、幸いにもぐっすりと寝ているのか目を覚ました様子はない。
 音のする台所の方へ向かうと、美雲が忙しなく動き回っており、料理をしている事が分かる。
「‥‥美雲さん?」
「えっ!」
 突然、詠から声をかけられた事に驚いたのか、美雲は持っていた包丁を落としそうになったけれど、持ち直して床に包丁を落とす事はなかった。
「ふぅ、危なかった‥‥」
 安心したように美雲が呟き、くるりと詠の方を向いて「おはようございます、詠さん」と笑顔で挨拶をしてくる。
「あ、おはよ――‥‥「さっそくですが、台所には立ち入り禁止!」‥‥え?」
 挨拶をしようとした詠だったが、美雲によって言葉は遮られ、まるで出て行けとでも言わんばかりにぐいぐいと押しやられ、台所から追い出されてしまう。
「こんなに朝早くから料理に取り掛かるなんて‥‥出かける約束とかしてましたっけ?」
 首を傾げながら詠が呟くのだが、答えてくれるはずの美雲は既に料理を再開しているようで詠の疑問は小さく消えていった。
「‥‥というより、朝ご飯‥‥」
 何かの為に美雲が料理をしているのは間違いない。
 しかし、朝ご飯の準備すら忘れているようで、小さく鳴るお腹を押さえながら「‥‥朝ご飯は暫くお預けかな」と苦笑しながら詠が呟いたのだった。
 それから詠は時間を潰すかのように新聞を読んだり、テレビをつけてニュースを見たりとしていたが、こういう時に限って中々時間と言うものは過ぎてくれない。
「あの子はまだ寝ているでしょうかね」
 詠が立ち上がり、再び寝室へと戻ると、ぱちりとまるで詠が来るのを待っていたかのように子供が詠に向かって手を伸ばした。
「おはよう」
 この子も起きたことだし、と詠が再び台所へと向かう。
「美雲さん」
「あ、まだ来ちゃダメ!」
「いえ、その朝ご「もう! 早く出て行って!」はん‥‥」
 詠の言葉はまたもや最後まで言う事が出来ず、台所から追い出されてしまう。
「仕方ないなぁ‥‥パンでも食べた後、この子を散歩にでも連れて行くかな。美雲さん、ちょっとこの子と一緒に外に出てきますね」
 ドア越しに告げると「わかったー!」と元気な声が聞こえてきて、詠は苦笑しながら子供と一緒に外へと出かけたのだった。

「あら、こんにちは。今日はお散歩かしら?」
 家を出て、少し歩いていると話しかけられ、声の方を振り向くと近所で仲良くしている人だった。
「えぇ、今日は天気もいいですからね。こうして娘と一緒に散歩でもと思いまして」
「あら、娘思いのパパねぇ」
 近所の人が子供に話しかけると、子供は恥ずかしそうに詠に顔を埋めてくる。
「ふふ、人見知りかしら? 可愛いわねぇ。せっかくパパとの時間を邪魔しても悪いわね。それじゃ私はここで」
 詠も丁寧に頭を下げながら、子供との散歩を再開し始める。

(随分遅くなってしまったかな‥‥)
 すぐ帰るつもりだったのに、意外と時間を食ってしまい、詠たちが家に帰ったのは二時間近く後のことだった。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
 美雲が出迎えてくれたのだが、その表情からは「寂しかった」という気持ちが読めて、詠は苦笑する。
「詠さん、今日は‥‥その、バレンタインだし、ケーキを作ったの。あとご馳走も‥‥朝ご飯の事を忘れててごめんね」
 美雲が申し訳なさそうに言ってきて「別にいいですよ」と詠は美雲の頭を撫でながら言葉を返す。

「‥‥これは、また‥‥結構な量を」
 リビングに戻り、テーブルの上を見て詠が苦笑する。テーブルの上にはずらりと並べられた数々の料理。
「色々作ってたら、作りすぎちゃったみたいで‥‥」
「嬉しいですよ、それだけ俺のことを考えて作ってくれていたんでしょう?」
 詠に問われて美雲はこくりと首を縦に振る。
「さ、早く食べましょう。せっかくのご馳走なんですから冷めたらもったいないですし」
 子供を抱えたまま、詠が席へとつき、美雲も詠の向かいに座って二人はご馳走を食べ始めた。
「この子にはこれですよー」
 美雲は子供用のご馳走も作っており、それを詠が食べさせるぐもぐと食べ始めた。きっと美味しいと思っているから「早く、次」と急かすように詠の手を叩いているのだろう。
(幸せってこういうのを言うんでしょうね)
「美雲さん、何笑ってるんですか?」
 ふと美雲が笑う表情が見え、詠が問いかけると「内緒」と照れたように笑って美雲が言葉を返す。
(俺と同じ事を思ってくれていたら、嬉しいんですけどね)

「そろそろケーキを食べる?」
 食べ過ぎたお腹が落ち着いた頃、美雲が詠に問いかけてくる。
「そうですね、せっかく美雲さんが作ってくれたんだし‥‥食べたいですね」
 詠の言葉に美雲がぱぁっと表情を輝かせて「ちょっと切ってくる」と台所へと向かった。
「それじゃ、俺はコーヒーでも淹れておきましょうか」
「あ、うん。お願い」
 お腹いっぱいになってこくりこくりと眠っている子供を起こさないように寝かせ、詠がコーヒーの準備を始める。
 暫くすると部屋中にケーキの甘い匂いとコーヒーの良い匂いが充満し始める。
「うん、良い匂いですね、と」
「本当だね」
 コーヒーを淹れ終わった時、美雲が切り分けたケーキを持ってリビングへと帰って来た。
 部屋中の匂いに気がついたのだろうか、眠っていたはずの子供も目が覚めて目をぱちぱちとしている。
「あ、この子が起きちゃった‥‥さすがにチョコレートはまだ早いからお預けなんだよね」
 美雲が苦笑しながら子供を抱き上げ「もうちょっと大きくなってからねー」と声をかけている。
「‥‥美雲さん」
 詠から呼ばれ、美雲が子供をベビーベッドに寝かせてから隣に座ってくる。
「詠さん、何?」
 美雲はかくりと首を傾げながら不思議そうに詠を見ている。
「あーん」
 詠はにっこりと笑顔でフォークに刺したケーキを美雲へと向けた。
「!?」
(はは、驚いてますね)
 心の中で詠が呟くのだが、その声はもちろん美雲には届いていない。
「あ、あーん‥‥」
 美雲は照れながらぱくりとケーキを食べる。
 そして美雲は何かを決意したようにフォークを取ると、ケーキを刺して詠へと向けてくる。
「詠さん、はい‥‥あーん」
「!?」
 今度は詠が驚いたように、顔を赤く染めてぱくりとケーキを食べる。
(‥‥さっきの美雲さんの気持ちが分かったような気がしますね‥‥)
 恐らく、他人が見たらどこのバカップルかと叫びたいくらいだろう。
 それほどまでに今の諌山家には砂糖よりもケーキよりも甘い空気に包まれている。
「‥‥お腹いっぱい食べたら眠くなりませんか?」
 詠が美雲に問いかけると「食べた後にすぐ寝るのはよくないよ」と言葉を返す。確かに美雲が言うことが最もなのだが、襲い掛かってくる睡魔には勝てそうにないのか、詠は困ったように笑うだけだった。
「‥‥仕方ないなぁ」
 美雲はため息混じりに呟き、子供を抱き上げて再び寝室へと向かう。
 数十分後には、親子3人で仲良く眠る姿があったのだが、それを見ているものは誰もいなかったのだった。

END

―― 登場人物 ――

gb5758/諌山美雲/19歳/女性/エレクトロリンカー

gb7651/諌山詠/20歳/男性/ファイター

――――――――――

諌山詠様>

こんにちは、今回執筆させていただきました水貴です。
今回はご発注いただき、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
満足していただける内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/3/8
Sweet!ときめきドリームノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
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2011年03月10日

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