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『●淡心 』
秋姫・フローズン(gc5849)

「わぁ‥‥大きな遊園地、です‥‥」
 歓声を上げつつ秋姫・フローズン(gc5849)が広大な園内を見つめた後、隣の彼へ笑いかけた。
 彼氏も視線を受けて含羞むように微笑み、そっと『秋ちゃん、どのアトラクションに行こうか?』と尋ねてきた。
 夜遅くまで楽しむことができるのだが、この遊園地は、敷地内に宿泊施設も完備されている。察するところ秋姫と恋人は泊りがけでデートにきた、というわけだ。
 様々なアトラクション。珍しいものではないけれど、彼と居ると見慣れたものもなんだか新鮮に映る。
「あ。この‥‥ウォーターライド‥‥楽しそう‥‥です‥‥」
 それじゃあ行こうか? と手を引かれる前に、彼の手を引いて歩く秋姫。普段は控えめな態度なのだが、一緒に入られて嬉しいのだろう。今日は積極的である。
「早く行きましょう‥‥!」
 握り返してきた指の感触。それに頬を赤らめながらも笑顔を見せた秋姫。
「う、うん‥‥」
 そんな彼女に驚きつつも、照れながらその手を握り返す彼氏。
 ウォーターライドで秋姫が水を被らぬようにそっと腕の中に抱き寄せたり、絶叫マシーンに乗って騒いだ後、喉の渇きを潤したり。
 ソフトクリームを二人で食べたりと、仲睦まじく過ごす二人。 

(あ‥‥?)
 そんな微笑ましいカップルの前を横切っていった――秋姫にとっては知らぬ仲ではない女性。

「‥‥ユーディー様‥‥」
 お久しぶりです、と頭を軽く下げた秋姫。その隣の彼も同じように会釈した。
「こんにちは‥‥」
 ユーディーも軽く挨拶を交わしたが、一体彼女はこんなところで何をしていたのだろうか。
 特に話す内容が浮かばなかったのだろう。秋姫とその彼氏を見つめ、それではと去ろうとした彼女を秋姫が引き止める。
「もし‥‥お一人でしたら‥‥ご一緒に‥‥楽しみませんか‥‥?」
 好意的な呼び掛けだったにも関わらず、ユーディーは返答に詰まって秋姫の隣に佇む少年に視線を向けた。
「‥‥二人で遊んでいたのよね‥‥? 邪魔をしては、悪いから」
「そんな‥‥事‥‥お邪魔などでは‥‥ありません‥‥から‥‥」
 彼の方にも異論は無いようでもあるし、秋姫の誘いをこれ以上無碍に断る理由もユーディーにはない。
 では、と頷いたユーディーに、安堵したような笑顔を見せた秋姫。ユーディーにも手を差し出し、きゅっと握ると三人で歩き出す。
「嬉しい‥‥です‥‥」

 その後、アトラクションを数回一緒に楽しんだユーディー。一足先に帰るといった彼女と別れ、彼氏とふたりきりで暫し楽しんだ秋姫は、宿泊先のホテルの露天風呂で‥‥、またしてもユーディーの姿を見ることになった。
「‥‥また、逢ったわね」
 髪を洗い終えたらしいユーディーは、タオルで髪を包みながらそう呟いた。
「はい。でも‥‥また会えて、嬉しいです‥‥」
 隣にやってきた秋姫は、シャワーの湯を出しながら柔らかく微笑んでいる。
 身体を洗っていると、秋姫が背中を流してくれたので――ユーディーも彼女の背中を流してあげた。

「あの。ユーディー様‥‥どうして傭兵に‥‥なったのですか‥‥?」
 湯に浸かりながら、そう控えめに訊いてきた秋姫。ユーディーはちらと視線を向けてから口を開く。
「兄が‥‥いえ。動機はそうじゃない‥‥でも、根本的なことは『復讐』だったから‥‥あんまり、いい話じゃない」
 全ては語りきらないが、秋姫には伝わったようだ。ゆっくりと俯いてから、彼女は『私‥‥』と同じように呟く。
「私が傭兵になったのは‥‥キメラが‥‥許せないから‥‥」
 眉根を寄せて、両親がキメラに、と語る秋姫。そして、彼女も立場は違えど、何かを憎むのは同じだったようだ。
 その辛い記憶と言葉を途切れさせるように、ユーディーは水面を撫でるような動作で湯を掬う。
 ぱしゃ、と軽い水音が風呂場に響いた。

「前は、復讐さえ出来れば‥‥何もいらないと思った‥‥でも、今は。仲間や友人がいる‥‥私もあなたも、黒いものを宿すばかりではない」
 あの哀しみや怒りを忘れたわけではないけれど、新しい出会いによって幸福もあったのだ。
「はい‥‥恋人や‥‥ユーディー様に‥‥出会えたことの感謝を‥‥しています‥‥」
 私もだ、とユーディーは優しい視線を向けた後――すい、と秋姫に近づいた。
「‥‥あの少年と‥‥此処に泊まるの?」
「え?! は、はい‥‥」
「‥‥そう‥‥」
「あ、あの‥‥ユーディー様‥‥?」
 赤面してしどろもどろになりながらも、秋姫は律儀に応じる。
「私、恋とかしたこと無いから。恋人や心境がどういうのとか、よく解らない。でも、大事な人がいるのは少し羨ましい気が‥‥する」
 普段とは違う――こういう場所が少しは人間を素直にさせるのか、何はともあれ珍しいことを言うものだ。ユーディーは感情を吐露する。
「あなたとも少し、仲良くなったと思う。今日は一緒に過ごせて‥‥楽しかった」
「ユーディー様‥‥私も、ユーディー様と仲良くなれて‥‥嬉しい、です‥‥」
 これからも、仲良くしたいです。そう秋姫は言ってから『今度一緒に買物や遊びに行こう』と誘う。
 もちろん、二人で。
 その誘いも有り難いものだったからユーディーは礼を述べて、秋姫を残して浴槽より上がる。
「今度、時間があるときに‥‥一緒に」
 それじゃあと遠ざかっていく彼女を視線で見送り、秋姫は自分の胸にそっと手を当てて。

 仲良くなれたと言ってくれたこと。楽しかったと言ってくれたこと。
 ささいなことかもしれないけれど――お風呂から出たら、彼にも、この気持を分けてあげたい。伝えたい――そう思いながら少しだけ嬉しくなったから、眼を閉じて余韻に浸っていた。
 

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【gc5849 / 秋姫・フローズン / 女性 / 外見年齢24歳 / スナイパー】
【gz0341 / ユーディー / 女性 / 18歳 / イェーガー】

■ライターより

 こんにちは、遅くなってしまって申し訳ございません。藤城とーまです。
 秋姫さんと彼氏さんとご一緒させていただいたユーディーですが、お邪魔ではなかったでしょうかとどきどきヒヤヒヤです。
 秋姫さんの楽しそうな場面が描写できて楽しかったです。
 今回はどうもありがとうございました! また機会がありましたら、よろしくお願い致します。
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CATCH THE SKY 地球SOS
2011年03月29日

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