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『―― あなたとの結婚生活 ―― 』
ラサ・ジェネシス(gc2273)

結婚――‥‥。
それは人生の中で一つの終着点であり、出発点でもある儀式。
他人同士が誓い合って、これから先の人生を共にする事。
「そういえば‥‥結婚、したんだよね」
ふとした時に思い出す結婚式のこと。
色んな事があって、あの人と夫婦になって‥‥。
「幸せだなぁ‥‥」

視点→ラサ・ジェネシス

「うーん‥‥何か割りのいい依頼はないかナ?」
 ラサは本部内を見渡し、小さくため息を吐きながら呟いた。
「‥‥んん?」
 その時、ラサの目に飛び込んできたのは一つの依頼――というよりは手伝ってくれる人を募集しています的な内容だったのだけれど。
「‥‥ウェディングモデルの、募集‥‥ダト?」
 漫画的な描写があるならば、きっと今現在の彼女の背景には『ゴゴゴゴ』とい効果音がついている事だろう。
「これは我輩が受ける。何人たりとも邪魔する事は許さん!!」
 頭の中で何かが弾けたようにラサは「ふ、ふふふ‥‥」と妖しい笑みを浮かべながら呟き、依頼書をがっしりと掴む――むしろ握りつぶしてしまうほどの勢いがあった。
「待っててネ――ッ! 鵺殿――ッ!」
 はははははは、と豪快に笑いながらラサは依頼書を持って鵺の所へと駆けて行く。
「‥‥何があったんだろう」
 本部内にいた能力者達は、ラサの行動に首を傾げて訝しげに呟いたのだった。

「ウェディングモデルの仕事?」
 鵺の元へと行き、ラサが持ってきた依頼書を鵺に見せながら「これやろう!」とやや興奮気味に言う。
「ウェディング‥‥純白のドレス、隣にはイケメンが――‥‥!」
 一人妄想に入る鵺を見て(ぬ、鵺殿‥‥そこに我輩いない!)と嘆きたくなったが、これくらいで参っていては鵺の彼女は務まらないと思い、ぐっと堪える。
「でもラサちゃんとの将来の為にはタキシードを着なくちゃいけないわよねぇ」
 ぽつりと呟かれた鵺の言葉に、ラサはさっきまでのショックなど吹き飛び「け、結婚は年齢的にまだ無理だけど、予行練習ダー、レッツゴー鵺殿!」と鵺の腕を引っ張る。
「うふ、張り切ってるのねぇ。この仕事は明日みたいだし、どこかで待ち合わせて一緒に行きましょうか」
 二人は待ち合わせ場所、待ち合わせ時間を決め、一緒にウェディングモデルの仕事に行く約束を取り付けたのだった。
(よし、仕事という名目だけどデートの約束を取り付けたぞ。頑張った我輩!)
 ラサは心の中で自分を褒めながら、自宅へと戻ってクローゼットから色々な服を引っ張り出し、頭をフル回転させて明日の服装を決め始めるのだった。

 そして約束の日――‥‥。
 ラサは鵺から貰った帽子、指輪を身につけて約束の時間より三十分も前にやってきていた。
「あら? まだ約束の時間じゃないわよね?」
 ラサが到着してから数分後、驚きで目を丸くしている鵺が待ち合わせ場所へとやってきた。
「こんなに早くから待ってなくても良かったのに‥‥」
「ぬ、鵺殿だって早く来てるヨ」
「そりゃあ、ねぇ‥‥? いくらオカマだと言っても彼女を待たせるわけないじゃない」
「我輩だって、鵺殿を待たせたくなかったカラ‥‥」
 他の人間から見れば、どこからどう見てもただのバカップルにしか見えない会話をして、二人の空気だけを桃色に染めている。
「アタシ達って意外と似た者同士よねぇ。ま、いいわ――早く仕事を終わらせちゃいましょ。アタシ的にはキメラと戦うより、こういう仕事の方が嬉しいわぁ」
 鵺が当然とでも言うようにラサに手を差し出し「え?」とラサが目を瞬かせて、鵺と差し出された手を交互に見る。
「今日は休日だし、人も多いじゃない? 迷子になると困るでしょ」
 そう言う鵺だけれど、ちょっとだけ頬が赤いのはきっと気のせいではないだろう。
「ウン‥‥」
 ラサはちょっと照れながら、だけど嬉しそうに差し出された手に自分の手を乗せて結婚式場へとゆっくりと向かい始める。

「うわぁ‥‥きれいだナァ‥‥」
 結婚式場へとやってきた二人は早速ウェディングモデルの仕事に取り掛かり始めた。
「こちらから好きなドレスを選んで下さいね」
 係員が二人を控え室に案内して、丁寧にモデルの説明を始めた。
「え? 好きなドレスを?」
「はい、ここに用意されているドレスは全てウェディングモデル用のドレスですから。サイズも幅広く揃えていますので、自分に合うサイズを着てくださいね」
 それだけ説明すると係員は丁寧に頭を下げて、控え室から出て行った。
「好きなドレスを着ていいみたいだし、ラサちゃんが気にいったドレスを着てみたら?」
 鵺が真っ白なウェディングドレスを見ながらラサに言葉を投げかける。
「う、ウン‥‥あ、このドレスって鵺殿に似合いそうだナァ」
 綺麗なウェディングドレスを見ながら、ラサがポツリと呟く。
「そ、そぉ?」
「うん、鵺殿も着てみればいいと我輩は思ウ」
 ラサに勧められ、鵺もまんざらではない様子でウェディングドレスを持って試着室へと向かう。
(ふ、デジカメを持ってきた我輩に抜かりはない‥‥!)
 きらん、と目を輝かせながらラサはバッグの中からデジカメを取り出す。
 それから、ラサは鵺に色んなドレスを着てもらい、そのたびに鵺のドレス姿をカメラへと納めていく。
「そろそろちゃんと着ないといけないわね。係りの人も結構待たせてるし‥‥」
 気がつけば、既に控え室に入って一時間が経過しようとしている。
(そうだ、これは仕事だったんダ‥‥我輩も着るドレスを選ばなくちゃ)
 ラサはデジカメをバッグの中へ入れて、自分が着るドレスを選び始める――のだが、いまいち自分に合うドレスがどれなのか分からなかった。
「どれを着ようカナ‥‥どのドレスも綺麗だし、我輩に似合うドレスってどれだろウ?」
 うーん、と唸りながらラサは鵺をちらりと見ると既にタキシードに着替えている鵺の姿があった。
(やっぱり鵺殿、背が高いからタキシードも似合うナァ‥‥もちろんドレスも似合ってたケド)
「あら、まだ選んでないの? さっき係りの人が着て撮影を始めてもいいですかって言ってたわよ?」
「うぅ‥‥どれを着ようか迷ってしまって‥‥」
 ラサが申し訳なさそうに呟くと「ちょっと待ってて」と鵺がその場から離れていく。
「‥‥鵺殿?」
 鵺が向かった先はウェディングドレスとティアラなどが置かれている場所。
「はい、これ」
「え?」
 手渡されたのは裾がふわっとした白いドレスと可愛らしいティアラ。
「さっき、アタシがドレスを着てたでしょう? その時に可愛いなぁって見つけてたドレスとティアラ。きっとラサちゃんに似合うわ。まだ決まってないなら、それを着てみたらどうかしら」
(鵺殿が‥‥我輩のために選んでくれたドレス――鵺殿が、我輩のために‥‥!)
 ラサは心の中で何度も『鵺殿が我輩のために』という言葉を繰り返しながら「我輩、このドレスを着る」と言葉を返し、ドレスとティアラを受け取って着替える為に試着室へと向かう。
 その後、撮影は滞ることなく無事に終わり、仕事を終えた二人は公園で橙色に染まっていく空を見ていた。
「あ、そうダ‥‥クッキー焼いてきたよ! 良かったら食べてネ!」
 朝早く起きて作ったクッキーを渡すと「ありがとう、せっかくだから家に帰ってからゆっくり食べる事にするわね」と鵺は嬉しそうにクッキーを受け取った。
「よし、せっかくだから晩御飯を食べに行きましょうか。この前、美味しいパスタの店を見つけてラサちゃんと一緒に行こうって決めてたのよ」
 鵺はラサの手を握り締めながら歩き出す。
「次にドレスを着る時は、本番だわね」
「え? 鵺殿、何か言っタ?」
「んーん、何も? 今日は仕事とは言え楽しかったわね。今度、また遊びに行きましょ」
「ウン、我輩も楽しかったし、また遊ぼう!」
 まだ結婚は出来ない二人だけど、きっと将来的には――‥‥。
 手を繋いで歩く二人の顔が赤いのはきっと夕日のせいだけじゃない事を、二人はそれぞれ気がつくことはなかった。

END


―― 登場人物 ――

gc2273/ラサ・ジェネシス/15歳/女性/イェーガー

gz0250/鵺/26歳/男性/エキスパート

――――――――――

ラサ・ジェネシス様>
こんにちは、いつもお世話になっております。
今回執筆させていただいた水貴透子です。
この夏最高のバカップルで、という事でしたが‥‥
ご、ご希望通りの内容になっているでしょうか‥‥!
私的には激甘にしたつもりなのですがっ。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/6/4
水無月・祝福のドリームノベル -
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2011年06月06日

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