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『【KMC】カメル決戦(共通パートB) 』
水雲 紫(gb0709)&御坂 美緒(ga0466)&白鐘剣一郎(ga0184)&リヒト・グラオベン(ga2826)&レティ・クリムゾン(ga8679)

●とある時・とある場所にて
 そこにはかつて村があり、多くの人々が慎ましいながらも喜怒哀楽を織り交ぜて平和な生活を営む土地だった。
 だがある日襲ってきたキメラの大群により村は全滅。今は荒野に点々と残された廃屋がその名残を留めているに過ぎない。
 そんな廃村の外れにぽつんと建てられた墓石の前に、水雲 紫(gb0709)は独り静かに佇んでいた。
(あれから、もう何年経つのでしょうね……?)
 その当時、彼女は能力者として村を守る立場にあった。
 まだ能力者が出現して間もない時代である。村人の中には、紫自身をキメラと同類の「バケモノ」として疎んじる者も少なくなかった。
(それでも私は幸せだった……「貴方」がいてくれたから)
 キメラ群の襲撃を受けた日、村を守るため単身立ち向かった紫は瀕死の重傷を負い、右目を失った。
 村は滅び、彼女は心身に深い傷を刻まれ――。
(そして「貴方」を喪った。体の傷はいつか癒えても……これだけは二度と元には戻らぬ現実……)
 やがて墓前に軽く合掌すると、紫は小声で囁いた。
「でもごめんなさい、もう少し待っていて下さいね。そちらに行く前に……まだやり残したことがあるから」

●2011年5月・ウェタル島〜SIVA駐屯基地
 事前にアポを取っていたこともあり、基地を訪れたリヒト・グラオベン(ga2826)はさほど待たされることもなく司令官オフィスへと案内された。
「やあ、久しぶり。九州以来かな?」
 デスクに座り何かの書類に目を通していたラザロ(gz0183)が顔を上げ、ニヤリと笑う。
「……で、今日は何の用だ?」
「5日後に決行されるカメル本土のバグア軍基地強襲作戦……俺も傭兵として参加します。当日はプリネア軍の空母『サラスワティ』から出撃する予定です」
「ああ、そうかい。今回はSIVAとUPCの合同作戦だ。よろしく頼むよ」
「その件で伺ったのですが……」
 まずは公的な用事から済まそうと、リヒトは手にしたカバンから一通の封書を取り出した。
「決行の直前、現地での調整のため最後の作戦会議をサラスワティ艦上で開くことになりました。艦長にしてプリネア王女、ラクスミ・ファラーム(gz0031)殿下からの親書をお預かりしてきました」
「ふうん?」
 手渡された封筒を開け、ラザロはラクスミからの親書にざっと目を通した。
「王女様自らのお誘いとは光栄だが……あいにく俺は忙しい。代わりに高瀬・誠(gz0021)を行かせよう。何か要請があればあの坊やに伝えといてくれ」
 素っ気ない返答である。
「まあそれでも構いませんが……」
 リヒトは受付嬢が出したコーヒーを一口啜り、おもむろに話題を変えた。
「ときに、NDFの現リーダー……マグダレーナ(gz0316)は白人の少女だそうですね?」
「らしいな」
「以前に九州で聞いた話……ラザロの娘さんは、そのマグダレーナではないですか?」
 一瞬、サングラス越しにラザロの目がギラリと光った。
「……高瀬から聞いたのか?」
「いいえ、俺の勝手な推測です。カメルという国はラザロにとってあまり良い思い出のない場所のはず……それをあえて前線司令官に志願したのは、何か個人的に思い入れがあるのかと勘ぐっただけです」
「なるほど……リヒト、あんたなかなか鋭いよ」
 ラザロは苦笑しつつ煙草に火を点けた。
「確かにフロレス島で撮影されたあの強化人間の娘には、昔行方知れずになった娘の面影がある。もっともこれは俺の主観であって確証があるわけでもないがね」
「こうは思いませんか? たとえ彼女がバグアに洗脳されていたとしても、実の父親が直接呼びかければ、何か違った反応を示すのではないかと」
「それは……難しいんじゃないかねぇ?」
 なぜかラザロは視線を逸らし、やや気まずそうにいった。
「最後に別れたのは10年前、あの子は7つだよ? いま会ったって、向こうが俺の顔や声なんざ憶えちゃいないだろ」
(……?)
 ふいにリヒトは直感した。ラザロがまだ何かを隠していると。
「マグダレーナが実の娘らしい」という言葉に嘘はないようだが、その背後にまた別の――そして彼自身に不都合な――真実が存在しているのではないか?
(まあいいでしょう。これ以上追及しても話しはしないでしょうし)
 ラザロの思惑がどうあれ、既に「彼女」の狂気を受け止め、戦士として討つ覚悟はできている。
「分かりました。何にせよ、いま優先されるべきは作戦の成功です。この件はここだけの話としましょう」
「そうしてくれると有り難いね」
「では、俺はこれで……帰りがけに誠と少し話したいのですが、いいですか?」
「構わんよ。いまはハンガーで機体の整備でもやってるんじゃないか?」

 リヒトがエレベーターを降りると、ハンガー内に駐機したディアブロの傍らで、高瀬・誠(gz0021)がSIVA傭兵の中島・茜に機体メンテのアドバイスをしてやっていた。
「ほら、ここオイル漏れしてるだろ?」
「あれぇ?」
「ダメだよ、KVの点検を整備士任せにしちゃ。定期的に自分の目でチェックしてやらないと」
「うひゃぁ〜……面倒だなぁ」
「ははは。いつの間にか立場逆転ですね」
「あ、リヒトさん!」
 世話になった傭兵の顔を見るなり、誠と茜は声を上げ、嬉しげに駆け寄って来た。
「茜も今回の作戦に参加するのですか?」
「うん。人手不足ってことで、九州から呼び出されちゃってさ」
 勝ち気そうな少女が頭を掻きながら苦笑する。
「……でも誠がいるとは思わなかったぜ。こいつ急に生意気になっちゃってよ〜。年下のくせに」
「歳は下でも傭兵の経験は誠の方が長いですよ。この機会に色々と教わっておくことですね」
「は〜い。ってことでよろしく頼むぜ、高瀬センパイ♪」
「調子いいなぁ……」
 ひとしきり茜の近況など聞きながら歓談した後、リヒトは誠を呼び出し、ハンガーの隅に移動すると2人きりで話し始めた。
「軍を辞めたと聞きましたが?」
「ええ。またULTに傭兵登録しましたけど……今回の作戦を終えたら、とりあえず日本に帰るつもりです。父と母の面倒も見なくちゃなりませんし」
「そうですか。寂しくなりますが、ご両親の為とあれば仕方ありませんね」
 そして話題は先頃北極圏で実施された大規模作戦の件へと移った。
 グリーンランドにおける戦果として、人類側はバグア強化人間についてより踏み込んだ情報を得ることができたのだ。
「どうやら、エミタ鉱石の使用により元の人間に戻すことが可能なようです。これなら真弓も……」
「その話は僕も聞きました。でも真弓の場合、もう時間がないんです……エメリッヒ中佐によれば、体の衰弱が進んで……あとひと月保つかどうか……」
 少年は唇を噛んで俯いた。
「カメルに強化人間改造施設があるかどうかは判りません。でも定期的なメンテ装置か、最低でも僕らにとっての超機械にあたる治療装置ならあるはずです」
「なるほど……バグア側にしても、ヨリシロや強化人間が負傷する度オーストラリアに運ぶのは非効率ですからね」
 ちなみにSIVAは首尾良く強化人間関連施設やデータを確保した場合、条件付きで未来研に提供することを表明している。
 その条件とは「今回の戦果から何らかの新技術が発見された場合、それらをSIVAが特許申請する権利」であった。

●空母「サラスワティ」艦橋〜作戦会議室
 会議室には今回の作戦にサラスワティ艦載機搭乗員として参加する計10名の傭兵たちの他、プリネア海軍士官マリア・クールマ(gz0092)、同じく偵察機パイロットの李兄妹、SIVA側代表として参加した誠の姿もあった。
 最後に艦長ラクスミ、副長シンハ中佐、そしてラクスミの兄でプリネア艦隊司令官・皇太子クリシュナが入室し、出撃を前にした最後のブリーフィングが始まる。
 最新のカメル国内情勢、カメル首都近郊に位置するバグア軍基地強襲の作戦概要などについて一通り説明した後、ラクスミは改めて告げた。
「実は今回の作戦、UPC本部からはバグア基地制圧の他、もう1つ依頼が入っておる――『現カメル・バグア軍司令官、ハリ・アジフ(gz0304)の確実なる殲滅』とのことじゃ」
(まさに天佑……!)
 アジフの名を聞いた紫は隻眼を細め、両の拳を固く握りしめた。
 大規模作戦「己丑北伐」で片腕を切り落としたものの、あと一歩のところで取り逃した不倶戴天の敵。
 UPC本部の意向がどうあれ「奴」を仕留める決意を固めていたが、こうして正式な殲滅指令が下された以上、いざというとき仲間の傭兵たちに迷惑をかける心配もなくなった。
(今度こそ、奴の息の根を――)
「どうかしたか、水雲さん?」
 ただならぬ紫の気配に気づいた隣席のレティ・クリムゾン(ga8679)が振り向いて尋ねる。
「いえ何でも……大事の前でつい緊張してしまったようです。ふふ、まだまだ未熟者ですね」
 と、表向きはいつもの飄々とした態度で紫は微苦笑した。
「ひょっとして、アジフのことを考えていたか?」
「お分かりですか?」
「ああ。私も奴だけは絶対に許せん」
 かつて依頼でカメル領内セルベルク基地を強襲した際、基地の地下に監禁されていた子供たちの悲惨な姿がレティの脳裏に蘇る。
 カメル国内でバグア軍が進めていた「NDF計画」の正体は、戦災や犯罪被害で心に傷を負った孤児たちを集め、彼らの深層心理にさらなる「恐怖」のイメージを与え続けるというおぞましい人体実験だった。
 多くの子供はそこで精神が破綻する。だが数百人に1人は「恐怖」を自らの内に取り込み、自ら死への恐れを制御し他者の殺害を躊躇なく実行できる「完全な兵士」として生まれ変わるという。特に脳機能が成長段階にある十代前半の子供たちが狙われた――というのがEAIS(UPC東アジア軍情報部)の推測である。
 実験を生き延びた子供たちは強化人間に改造されNDF(ネオ・デビル・フォース)として実戦経験を積んだ後、いずれはバグアのヨリシロに変えられるのだろう。
 まさに鬼畜の所業としか言い様がない。
 レティもまた、カメル関連依頼を通して知ったアジフの非道に怒りを覚えて今回の作戦に参加した1人であった。
「たとえカメルを解放しても、奴を逃がせば……また世界のどこかでNDF計画が継続され、罪もない子供たちが犠牲になる。それだけは何としても阻止しないとな」
「……同感です」
 レティの言葉に、紫も呟くように答えて頷いた。

 会議終了後、白鐘剣一郎(ga0184)はラクスミの前に歩み寄り、改めて挨拶した。
「お久しぶりです、殿下」
「おお、白鐘殿か。ラスト・ホープの奥方と娘御はお元気かな?」
「ええ。おかげさまで」
 剣一郎は表情を和らげ、パイロットスーツの胸ポケットに肌身離さず持ち歩く写真を取り出した。
 そこにはL・Hで医師として働く愛妻ナタリア・白鐘(gz0012)が、去年生まれたばかりの赤ん坊を胸に抱いて微笑む姿が映っていた。
「ふふふ。これでそなたも無闇に命を落とせぬ立場になったのう」
「ご心配なく。命を粗末にすることも、命を惜しんで戦いの手を抜くこともありませんから」
 王女の前で背筋を伸ばし、剣一郎は決然として述べる。
「この一戦を以って決着をつけます。だから信じていて下さい、我々の勝利を」
「うむ。この作戦を以て本艦は第一線から退役するが、最後の戦闘をその方らのような勇士たちと共に戦えることを心より誇りに思うぞ」
 まだ水中用KVも存在せず、海戦においては人類がバグア軍に手も足もでなかった頃、初のKV対応空母を率いてL・Hに来航し、ただ1隻の「義勇軍」として傭兵たちと共に戦い続けてきた少女艦長は感慨深げに剣一郎の手を握りしめた。

 その傍らでは、御坂 美緒(ga0466)がやや思い詰めた表情でクリシュナの前に進み出ていた。
 顔を赤らめ一瞬口ごもるが、
(この機を逃したらずっと言い出せない気がするです……頑張れ私!)
 大きく深呼吸してから、プリネア皇太子に向かって口を開く。
「決着が着いたら、正式に申し込みたい事が……」
「何かな? 重要な用向きなら今でも構わぬが」
「いえあの……今は、タイミング的とか色々と不味いのです」
「……ふむ。あい分かった」
 クリシュナは頷き、美緒の華奢な両肩にそっと手を置いた。
「ならば帰還後にゆっくり話を聞こう……そのためには、まず無事に帰ってきてもらわねばな。……武運を祈る」
「おお、そうじゃ! 皆が無事に戻ったら、ぜひ祝勝会を催さねば」
 横からラクスミが口を挟む。
「祝勝会か……殿下、そのときは艦の厨房を貸して頂けますか?」
 話を耳にしてレティが申し出た。
「どうするのじゃ?」
「ピザ作りには少々自信があります。手製の特大ピザでみんなを労いたいと」
「それは楽しみじゃ。厨房は好きに使ってよいぞ」
 ラクスミも大いに乗り気で、早速艦内電話で材料の手配を命じた。

 紫は部屋を出ようとする誠を呼び止めた。
「戦場でもご一緒するかもしれませんね。その時はよろしく」
「あ、はい! こちらこそ」
「真弓さんの為にも足掻いて下さいね。托された想い、無駄にしないように」
「もちろん、そのつもりです。もうダメだと諦めかけていたけど……やっと見つけた最後の希望ですから」
 そのために正規軍情報部員の職もなげうち、一介の傭兵としてSIVAの依頼に参加した少年を、紫はじっと見つめた。
「貴方に、夢を見ていたのかも知れない。少し、似てたから。あの人に」
「……え?」
「さて……亡者代表として、引導を渡しにいかなければ」
「あの――」
「さよなら。生きてたら、また会いましょう」
 何かいいかけた誠に軽く頭を下げ、紫は会議室を後にして足早にKV格納庫へと向かう。
(私の趨勢はこの一戦にあり……悔い無きように参りましょう)

●出撃
 ゴゴゴゴ――……
 飛行甲板から李兄妹搭乗の斉天大聖2機が相次いで発進する反動が、サラスワティを揺るがせ艦内格納庫へも響いてくる。
「先行の偵察隊が発進したか……いよいよだな」
 片翼を黒く塗装したディアブロ「Pixie」のコクピット内で、レティは愛機のコンソール板を愛おしげに撫でた。
 相次ぐ新型KVの登場で後発機体に道を譲った感もあるディアブロだが、レティにとって強化とカスタマイズを重ねたPixieは今でも絶対の信頼を寄せる第一線KVだ。
「今回も頼むぞPixie……なあに、おまえと一緒ならNDFも怖くはない」

 同じ格納庫内では、パイロットスーツに着替えた美緒がプリネア水兵の互助組織「福利厚生組合」の組合員たちに囲まれていた。
「組合長! バレンタインのチョコありがとうございましたーっ!」
「ううっ。どうぞご無事で……」
 最後の戦闘航海とあって、中には感極まって涙ぐむ者までいる。
「私のことなら心配いらないですよ♪」
 水兵達を前に、美緒はヒマワリのように笑う。
「それより、勝ったら皆でセーラー服パーティーですよ!」
 高らかに宣言した。
「そ、それは水兵服の方じゃなく……」
「もも、もしかして、ラクスミ殿下やマリア少尉も……?」
「もちろんなのです♪」
 ウオォーーッ!!
 むくつけき男どもの歓声が格納庫に響き渡った。
『わらわもかーっ!?』
 どこかでラクスミの悲鳴が聞こえたような気もするが、多分空耳だろう。

 やがて飛行甲板上に翼を並べていた傭兵KV部隊の第1陣が出撃。格納庫で待機していた第2陣の傭兵たちにもいよいよ出撃命令が下る。
 剣一郎はシュテルン・G「流星皇」に搭乗したままKV用エレベーターで飛行甲板上へと昇った。
 南洋の強い陽射しに一瞬目を細めるが、すぐに操縦桿を握り直し、
「ペガサス1、『流星皇』出るぞ!」
 垂直離陸で上空へと舞い上がった。

●決戦の幕開け
 カメル首都近郊のバグア軍基地上空は、既にチェラル・ウィリン(gz0027)軍曹率いる正規軍KV部隊によってほぼ制圧されていた。
 先行した友軍KVが砲撃型ワームの対空プロトン砲をかいくぐり強硬着陸を果たしたのに続き、流星皇以下5機のKVも次々と着陸、陸戦形態へと変形。
「奴は……?」
 紫のシュテルン・G「携香女」は襲いかかる大型キメラをガトリング砲で薙ぎ払いつつ、ひたすらアジフ搭乗機を捜し求めた。
 目の前に立ちはだかったゴーレムは機鎌サロメで一刀の下に切り伏せる。
(サロメ……そういえば、あの子のHWも同じ名前でしたね)
 紫の脳裏に、とある強化人間の少女の面影が過ぎった。
 己丑北伐の戦場から救い出しながら、結局は最期を看取ってやることしかできなかった結麻・メイ(gz0120)。
 メイの魂がこの戦闘をどう思って見ているかは分からないが――。
(それでも、これが私にできるせめてもの手向けの花……!)
 一切の迷いを振り払い、彼女は新たな標的を狙って銃撃のトリガーを引いた。

「敵の主力はゴーレムと大型キメラ……切り札のNDFはまだ出てこないのか?」
 剣一郎は練力温存のため機体スキル使用は自重し、通常兵装と流星皇の機動力をフルに活かしてバグアの基地守備隊を蹴散らした。
 その一方で、僚機の連携が乱れぬようチェックすることも怠らない。
「レティ、水雲の機体がだいぶ突出しているようだ。彼女が孤立しないようサポートを頼む」
「了解!」
 Pixieが滑るように前方に出るや、スラスターライフルで携香女を援護射撃。
 結果的にレティと紫のペアが斬り込み役となる形で、傭兵部隊はバグア基地のさらに奥深くへと侵攻していく。
 その時、僅かに遅れて降下してきたSIVAのKV部隊が後方から追いつく形で合流した。目的は違えど共闘の合意が為されているので、傭兵たちにとっては心強い援軍といえる。
 リヒトのディアブロ「グリトニル」は誠のシュテルンとその場でバディを組んで戦闘を続行した。
「もう貴方は一人前の傭兵です。背後の守りは任せましたよ!」
「はい、リヒトさん!」
 過去の依頼では専ら誠を庇護する立場のリヒトであったが、今回は信頼する相棒として背中を預け、自らは魔刃を振るって血路を切り啓いていく。

 天使のエンブレムを掲げたウーフー2に搭乗した美緒はジャミング収束装置や煙幕銃、砲撃兵器で僚機を援護する一方、レーダーで周囲の索敵にあたっていたが、そのさなか、上空で首都方面の警戒を担当していた李・海狼の斉天大聖からNDFのタロス7機の接近を告げられた。
「NDF!? 皆さん、本命が来たですよ!」
 僚機への通信が終わるか終わらないかのうちに、今度は上空の正規軍KV部隊から緊急通信。
『チェラルから地上班の友軍機へ! オーストラリア方面から敵の増援部隊が来たっ! 1機がこちらの迎撃を突破して地上に向かったよ――気を付けて!』

「1機だけ……?」
 流星皇のサブアイカメラからバグア指揮官専用機「ティターン」が降下してくる様子を見つめ、剣一郎は敵の意図を訝しんだ。
 だが次の瞬間、強制割り込み通信によりモニターに現れた男の顔に目を見張る。
「シモン(gz0121)……生きていたのか!?」
『久しぶりだな、傭兵ども。また会えて嬉しいぞ』

 時を同じくして、前衛に立つ紫とレティはコクピット越しにバグア基地の地下から出現する2機のタロスを目撃していた。
「青い機体はNDF。そして灰色の方は――」
「ハリ・アジフ……間違いないな」
「所詮奴は臆病な番犬。主が帰って来たので、逃げるに逃げられなくなった……というところでしょうね」
 紫の唇に、侮蔑と憐憫の入り交じった薄い笑みが浮かぶ。

 それがシモンの指示なのか、首都方面から低空侵入してきたNDFのタロス部隊はティターンではなくアジフのエース機タロスの上空まで移動すると、そこで円を描きつつ降下してきた。
「……了解した。そうしよう」
 友軍の傭兵部隊と短い交信を終えた剣一郎が、改めて僚機に通信を送る。
「シモンのティターンは別動の友軍部隊が対応することになった。俺たちは、当初の作戦どおりNDFとアジフを討つ。さぁ、ここからが本番だ!」

 その言葉どおり、カメル解放を賭けた最後の戦いが、今その幕を開けようとしていた。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
対馬正治 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2011年06月07日

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