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『あなたとの結婚生活 』
雪代 蛍(gb3625)

結婚――‥‥。
それは人生の中で一つの終着点であり、出発点でもある儀式。
他人同士が誓い合って、これから先の人生を共にする事。
「そういえば‥‥結婚、したんだよね」
ふとした時に思い出す結婚式のこと。
色んな事があって、あの人と夫婦になって‥‥。
「幸せだなぁ‥‥」

視点→雪代 蛍

 大きな鏡の前で雪代 蛍は自分の姿を見る。純白のドレスに身を包む自分の姿は何だか見慣れる事が出来なくて、恥ずかしいやらくすぐったいやら、蛍をそんな気持ちにさせていた。
「あの戦いの中にいた時は、ウェディングドレスを着る日が来るなんて‥‥思ってもなかったかも」
 そっと鏡に手を寄せながら蛍は小さな声で呟く。
 今日は七海・鉄太と蛍の結婚式。色々な事があったけれど、今日という日を迎えることが出来て蛍は嬉しさか、それとも恥ずかしさなのか頬を赤く染めていた。
「蛍、準備は出来たか? もう皆待ってる――‥‥」
 ばたばたと騒がしい足音をさせて、花嫁の控え室に入ってきたのは新郎である鉄太。
「え?」
 蛍が部屋に備え付けられている時計を見ると、もうすぐで式が始まる時間に迫っていた。
「あ、ごめん‥‥もうこんな時間なんだ、皆を待たせちゃってるよね‥‥鉄太?」
 部屋に入ってきてから何も言わない鉄太を不思議に思いながら蛍が問いかけると、鉄太はぼそぼそと俯きながら何かを言っている。
「‥‥鉄太? 声が小さくて聞こえないよ、何て言ったの?」
「‥‥いや、だから‥‥あのな‥‥」
「‥‥?」
 歯切れ悪く言う鉄太に「もう何なのよ」とため息混じりに蛍が言葉を返す。
「‥‥‥‥蛍の、ドレス姿――‥‥すっげぇ綺麗」
 顔を真っ赤にしながら言う鉄太に「え?」と蛍は目を丸くしながら目を瞬かせる。
(て、鉄太がそんな事言ってくれるなんて思わなかった)
 予想外の言葉に蛍も顔を真っ赤にしながら「あ、ありがとう」と消えてしまいそうなくらい小さな声でお礼を言う。
「ん! そろそろ行こう! 先生達も待ってるし」
 鉄太は蛍の手をしっかりと握り締め、会場の方へと向かう。結婚式とは言っても、今回2人が選んだのは派手なものではなく、親しい人だけを呼んだ質素な式。
(そういえば、さっき自分の姿を見てた時に思ったけど‥‥あたし、お母さんにそっくりだった。今日まで気にした事なかったけど‥‥でも、お母さんに祝福されてる感じがして嬉しいな)
 蛍は心の中で呟きながら、隣の鉄太をちらりと伺うように見る。最初に出会った時は外見だけが大人で中身はまったくの子供。色んな事で手を焼かされたりもしたけど、今日という日を迎えてみれば良い思い出になりつつある。
(そういえば‥‥)
 鉄太の顔を見ながら蛍はふと思う。
(鉄太って、こんなに凛々しい顔をしてたっけ?)
 何をするにしても子供っぽかった鉄太も、今では立派な大人。最初は守ることが多かったのに、今では守られることの方が多くて、蛍は不思議な感じがした。
「蛍? 何笑ってんの?」
「‥‥鉄太が、かっこよく見えたから」
「えっ!?」
「ちょ、ちょっとだけだけどね!」
 蛍は照れたようにふいっと視線を逸らしながら「早く行こう」と歩き始める。

 それから大好きな人達に囲まれながら、式は恙無く進んでいき、誓いの言葉の前に蛍が歌う事になっていた。
(今日からあたしは、雪代 蛍じゃなくて‥‥七海 蛍になるんだ)
 蛍にとって『雪代』は両親との思い出が沢山詰まったものでもあり、結婚する事が決まった時、苗字を変えるべきか悩んでいた。
 だけど、悩んで悩んで悩みぬいて、蛍は『七海』になる事を選んだ。
(天国のお父さん、お母さん‥‥あたし、幸せになってみせるから‥‥絶対、ぜーったいに幸せになるから!!)
 蛍は両親へ誓うように心の中で呟き、両親の為、今まで自分達を見守ってくれた鉄太の先生、そして先生が大事にしている妹、そして共に戦いぬいた親友とも戦友とも呼べる仲間達の前で心をこめて歌い始めた。
 蛍が歌っている間、会場はシンと静まり返っており、誰もが蛍の歌に聞き入っていた。
「‥‥ありがとうございました」
 歌い終わった後、蛍は丁寧に頭を下げる――それと同時に拍手が沸き起こり、蛍は少しだけ泣きそうになっていた。
 そして誓いの言葉――‥‥。
「あなたは七海鉄太を夫とし、生涯愛しぬくことを誓いますか?」
 神父の言葉に蛍は迷う事なく「誓います」と答え、鉄太も同じく「誓います」と答えた。
「それでは誓いのキスを――‥‥」
(これから、新しい生活が始まるんだ‥‥ふふ、鉄太ってば緊張してる、けど凛々しい)
 蛍はそっと目を閉じ、胸の中に沸き起こる鉄太への愛しさをかみ締めていると――‥‥。

「‥‥‥‥‥‥ほぇ?」
 ぱちりと目が覚め、視界に入ってきたのは見慣れた天井。
「‥‥もしかして、夢?」
 顔を真っ赤にしながら小さく呟き、蛍は鉄太との結婚式の夢を見たという恥ずかしさと良い所だったのに、という残念な気持ちがあった。
 その話を友人に話すと「何、ノロけ?」と逆に蛍がからかわれてしまう始末。
「ノロけじゃないってば‥‥もう、からかわないでよ‥‥あたしだって恥ずかしいんだから‥‥」
 更に顔を赤くしながら蛍は友人へと言葉を返した。
(だけど‥‥いつか、あるんだよね。鉄太――‥‥)
 確かに今のままじゃ経済力不安定だけど、蛍は心の中で言葉をつけたし、まだ来ない未来、だけど確実にあるであろう未来を楽しみにしていた。


END


―― 登場人物 ――

gb3625/雪代 蛍/13歳/女性/ハーモナー

gz0263/七海 鉄太/18歳/男性/フェンサー

――――――――――

雪代 蛍様>

こんにちは、いつもお世話になっています。
今回はドリノベにご発注いただきありがとうございました!
甘め、という事でしたがいかがでしたでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていれば嬉しいのですが‥‥!

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2011/6/23
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2011年06月23日

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