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『夏の思い出〜お祭〜 』
ラサ・ジェネシス(gc2273)

茹だるような暑い夏の日。
体力も気力も奪いそうな暑い日々が続くけれど、
嫌な事ばかりではない。
「‥‥夏祭り、か」
7月になる前から色んな場所に貼られた『夏祭り』の案内広告。
今日は夏祭りの当日であり、街を歩く人達もどこか浮かれているように見える。
「行ってみようかな」

視点→ラサ・ジェネシス

「はぁー‥‥」
 外は澄み渡るような青空だというのに、それに似つかわしくない盛大なため息を吐いているのはラサ・ジェネシスだった。
(最近、鵺殿が元気なさげで心配ダ‥‥何か我輩に出来る事は無いカナ‥‥)
 彼女の憂いを占めているのは、彼女にとって大事な人でもある鵺のことだった。普段は冗談めかして生きているような彼だが、それでもラサにしか気づけない何かがあるようだった。
「あ‥‥」
 その時、ラサの視界に入ってきたのは『夏祭り』の案内広告だった。
「夏祭り‥‥これは気分転換にドウかな?」
 ラサは「早速電話で聞いてみよう」と言葉を付け足しながら、携帯電話を取り出して鵺に電話をかける。
『もしもし〜?』
「あ、鵺殿‥‥我輩だケド」
 数回のコールで電話に出た鵺だったが、明らかに寝起きのような声だった。
(寝てる所を邪魔してしまったカナ? もう昼過ぎだから起きてると思ったんだケド‥‥)
「あの、鵺殿‥‥寝てる所を邪魔してゴメン」
『あぁ、気にしないでいいのよ〜。もう起きなくちゃいけない時間だし――‥‥って昼過ぎてるわ! 寝すぎも美容に良くないのよねっ! どうしましょう!』
 電話の向こうで慌てている鵺の様子が容易に想像できて、ラサは小さく笑う。
『それで何かあった?』
「あ、特に何もないケド‥‥今日夏祭りがあるみたいデ、鵺殿が暇だったらどうかなぁって思って電話してミタ」
『夏祭り!? 行くわ、絶対に行くわ! りんご飴とか美味しいのよねぇ〜! こうしていられないわ! 早速浴衣を選ばなくちゃ!』
 電話の向こうでばたばたと騒ぐ音が携帯電話越しに聞こえ、ラサは待ち合わせ場所と時間を伝えて電話を切ったのだった。
「‥‥浴衣カ‥‥我輩も浴衣で行こうカナ? 鵺殿も浴衣って言ってタシ‥‥」
 ラサはちらりと視線を移しながら独り言のように呟く。夏祭りに行く機会があったら、と予め買っていた浴衣。鵺が似合うと言っていた向日葵の花が模様としてあしらわれた可愛い浴衣で下駄にも向日葵の飾りがついている。
 その浴衣に鵺から貰った向日葵の帽子を被っていこうとラサは決めていた。
(‥‥鵺殿、喜んでくれるカナ?)
 鵺と夏祭りに行ける事が嬉しく、ラサは準備を始め、気がつけば空も橙色に染まりつつあった。

「よし、まだ鵺殿は来ていないナ」
 いつものようにラサは待ち合わせ時間より早めに来ていた。
(人が多いナァ)
 夏祭りのせいか、開催地である神社付近には多くの人が集まっていて、そのほとんどが浴衣を着ている人ばかりだった。
「やだ、またこんな早くから来てる! たまには遅刻だってしていいのにぃ‥‥」
 聞きなれた声が聞こえ、ラサが振り向くと‥‥髪を結って薄い藍色――浅葱色の浴衣を着た鵺の姿があった。
「向日葵の浴衣ね、凄く似合ってるわ! 帽子も向日葵だし、いつもより可愛いわよ」
 鵺から褒められ、ラサは「あ、アリガトウ、鵺殿も凄く似合ってル」と照れて俯きながら言葉を返したのだった。
「お参りしてから屋台を見て回りましょうか」
 自然に手を差し出され、ラサは照れながらも鵺の手を取って下駄の音を鳴らしながら2人で歩き出す。

「人が多いわねぇ‥‥」
 夏祭りに参加する人が多いせいか、普段はシンとしている境内もお参りする人でごった返していた。
 十数分後、ようやく2人の順番がやってきて、ラサと鵺は賽銭を入れてお参りをする。
(そろそろ一歩進んで鵺殿に頼れるパートナーして認めて欲しいナ‥‥)
 願い事を言っている間、ちらりと鵺を盗み見ると、鵺も何やら真剣な表情で手を合わせていた。
「さっ、お参りも終わった事だし美味しい物でも食べちゃいましょう!」
 お参りしている時とは全く違う表情でラサの手を取って、屋台が並ぶ道へと向かい始める。
(‥‥何か、鵺殿‥‥無理してるように見えるヨ)
 小さくため息を吐きつつ、鵺が話してくれるのを待とうと決めて夏祭りを楽しむ事にした。

「あ、射的があるヨ、鵺殿」
 ラサが指差すと「あら、してみましょうか!」と2人分の料金を払って射的を始める。
「ぬ、鵺殿! 我輩、自分の分は払うヨ!」
「いーからいーから。彼女らしく奢られてなさい」
 ぽん、と頭を叩かれラサはお礼を言った後に射的を行う。
 まだ幼いラサとオカマの鵺とは言え、普段は能力者として活躍している2人――‥‥鵺の場合は活躍という活躍はしてないのだが、それでも能力者という肩書きがある。
「ちょ、ちょっとお客さん! これ以上やられちゃ商売上がったりだよ!」
 次々に景品を取り捲る2人に屋台のおじさんが「頼むから止めてくれ!」と本気で懇願してきてしまい、ラサと鵺は笑いながら射的屋を後にした。
「鵺殿、射的上手なんダネ」
「‥‥そうねぇ、こういう遊びは全般得意よ。祭殺しの鵺ちゃんなんて自分で呼び名を広めたくらいだもの!」
(‥‥自分で広めたのカ‥‥)
「あ! あっちには金魚すくいがあるわ! 行きましょ!」
 鵺が楽しそうに金魚すくいのほうへと向かう。そんな鵺の姿を見てラサも「やっぱり、祭に来て良かったナ」と呟き、鵺の後を追ったのだった。

 色々なゲームを楽しんだ後、祭の時間が終わりに近づき、ラサと鵺は最後の花火を見る為に少し離れた場所へとやってきていた。
「この場所、一番花火が綺麗に見えるんですって。さっき色々買いだめしたし、食べながら花火を見ましょうよ」
 チョコバナナ、りんご飴、やきそばにイカ焼き、この場所に来るまでに色んな食べ物を買っており、2人は食べながら花火があがるのを待っていた。
「あ、あの‥‥鵺殿」
「ん〜?」
「最近、元気がないケド‥‥何か悩み事でもあるんじゃないカナ‥‥?」
 ラサの言葉に少し驚いたのか、食べるのを止めて驚きで丸くなった瞳でラサを見る。
「気のせいならいいんだケド‥‥今日も、途中で無理してる感じだったシ‥‥我輩に出来るのは聞く事だけかもしれないケド、それでも楽になれるかもダシ‥‥」
「参ったなぁ‥‥うま〜く隠してたつもりだったのに、まさかラサちゃんにバレちゃうなんてねぇ」
 苦笑しながら鵺が言葉を返し「今は、まだ言えないわ」と小さな声で呟く。
「エ?」
「今、話しちゃったらラサちゃんに甘えちゃうもの。まだ自分で頑張れるから、まだ甘えるのはやめておくわ」
 でも、と言葉を付け足しながら鵺が空を見上げる。
「どうしても無理になったら、遠慮なくラサちゃんに甘えさせてもらっちゃうからね」
 その時は宜しく、と言葉を付け足し鵺がラサを見て――笑う。
「ちょっと、ラサちゃん。ほっぺたにチョコがついてる。きっとさっきのチョコバナナね」
「え? え、え?」
 ぺろりとチョコがついてたであろう場所をなめながら鵺が「もう、子供ねぇ」と鵺が楽しそうに笑う。
「‥‥‥‥‥‥」
「ん? どうかした?」
 ラサも意を決して、鵺の頬に軽くちゅっとキスをする。
「‥‥っ!?」
「ぬ、鵺殿のほっぺたにもついてたヨ」
 照れながら横を向くラサに「ふふ、本当かしら」と鵺が顔を赤くしながら言葉を返した。
 その直後、大きな音が響き、色とりどりの花火が打ち上げられて、2人は照れた気持ちを隠すかのように花火に集中したのだった。


END



―― 登場人物 ――

gc2273/ラサ・ジェネシス/16歳/女性/イェーガー

gz0250/鵺/26歳/男性/エキスパート

――――――――――
ラサ・ジェネシス様>

こんにちは!
いつもご発注いただきありがとうございます!
激甘バカップル路線&若干シリアス‥‥という事でしたが
いかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていれば嬉しいです。
それと腕のご心配、ありがとうございます。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2011/7/10
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2011年07月11日

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