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『水無月の祝福〜思い出のあの場所にいこう〜 』
イスル・イェーガー(gb0925)

 あれから10年が過ぎていた
 
 子供も生まれ、町工場を運営して安定した収入も入るようになった
 
 一人は傭兵として世界を飛び回ってもいるため、心の距離が離れているようなきもする
 
 納期に追われ、子供の世話におわれ、時折ディスプレイ越しに連絡をくれる夫との会話に癒される
 
 そんな毎日を、ボクは送っていた
 
 
〜現実〜

「ゴメン納期ぎりぎりでさぁ、この間の参観日行けなくて」
「うんうん、仕方ないよ。母さんがお仕事がんばっているのわかっているからさ」
 徹夜明けで痛む頭を抑える瑞姫・イェーガーは笑顔で朝食を用意してくれる息子に感謝する。
 小学校に入って家事もいくつか手伝ってくれているため、小さな、町工場を運営する瑞姫にとっては自慢の息子だ。
「イスルからメールだ」
 携帯電話を眺めると、取引先などと混ざって大切な人の名前があった。
「父さんから? また仕事で無事だったとかそういう話だよね」
「その通り、いつもと同じ無事ですって報告だよ」
 朝食を並べて、興味なさ下に席へとつく息子に瑞姫は寂しそうな顔をする。
(「親として愛情を注げているのかな……もっと、イスルのいいところ説明できたらな」)
「「いただきます」」
 二人だけの朝食を食べつつ、瑞姫はため息を漏らした。
 息子はイスルに対して他所他所しさがある。
 あまり帰ってこないこともあるが、定時連絡も素っ気無いことが多いために悪いイメージがついてしまっていた。
 本当はとても優しくていい奴なのだと瑞姫は伝えたいのだがじっくり話している時間が中々なかった。
「母さんも徹夜仕事だったり、納期調整とか大変なんでしょ? せっかくの日曜なんだからゆっくり休まないとだめだよ」
 日に日に上手になっていく息子の料理の腕に感心しつつも、瑞姫はどっちが親なのか分からない現状が瑞姫の心に重くのしかかってくる。
 今日は日曜日で、窓から覗く景色は青空が広がりいい天気だ。
 仕事も休みだけど自分は朝食を済ませたら、息子の言うとおりに寝てしまう。
 どこかに遊びにつれていってやるといったことさて、あまりできていなかった。
「愛情は注げてるとは思う。ただ……親としてはどうなのかは、判らないよなぁ」
 瑞姫が寝にいこうと立ち上がったとき、玄関のチャイムがなる。
「はーい、お前は食事の片付け頼んだよ」
 ぼりぼりと頭をかきながら、瑞姫が玄関の扉をあけると、そこには意外な人物がいた。
「ただいま、瑞姫」
 瑞姫の目の前にいたのは帰ってこないだろうとずっと思っていた旦那のイスルだった。
 年齢は瑞姫の方が上なのだが、落ち着いた雰囲気に高い背などもあってイスルの方が年上に見えるくらい10年で変わっている。
「ごめんよ、帰るって連絡を入れなくて……。今日は、一つ行きたいところがあるんだ」
「急に帰ってきていきなり何なんだよ。イスルっ」
 思わず涙をこぼして瑞姫はイスルへと抱きついた。
 本当は子供がどうというよりも、自分が寂しかったのだと、このとき瑞姫は気づく。
 そして、イスルと息子がアイコンタクトをしていたことにはまったく気づかなかった。

〜久しぶりの故郷へ〜
「行きたかった場所って、ラストホープのことかよ」
「うん……」
 生まれたところは別でも思い出がたくさんある場所は故郷といわれることが多い。
 瑞姫とイスルにとって、出会いのきっかけともなったラストホープはそんな場所だった。
 近未来的だと思っていた建物群も復興が進んだ世界に追い抜かれて古臭ささえ感じる。
 それがまた懐かしく、嬉しい姿でもあった。
「ここがお母さん達が住んでいたところ……ラストホープだよ」
「教科書で見たことあるけど、本物ははじめてだ」
 息子は写真などでしか見ることの無かった景色に驚きを隠せず、キョロキョロとしている。
 今日は折角の遠出ということもあり、息子の祖父であり技術者の瑞姫の父親も一緒だった。
「じゃあ、軽く回ってみようか……父さんが案内するよ」
「今日は任せるよ。正直意外すぎたし」
 イスルにエスコートを任せて瑞姫は息子と父親を連れ立ってラストホープをめぐっていく。
「ここが僕と母さんが前に住んでいた能力者用の兵舎だよ」
 街中にでるとはじめに案内されたのは兵舎だった。
 今でもまばらにすんでいる人達に挨拶をしたり、自分の知り合いに子供の紹介をしたりして、瑞姫は久しぶりに10年前に戻ったような錯覚さえ起こす
「あの頃は‥‥まだ色々悩んでいて手探りで、暴走しちゃうことが多かった気もするな」
 息子達を案内するイスルをみながら、瑞姫は自分やイスルの10年前の姿を思い返していた。
「じゃあ、次はUPC本部にいこうか。父さんの仕事を請けている場所を案内するよ」
 イスルはずいぶんと頼もしくなっている。
 姿だけでなく、戦場を渡り歩く傭兵活動によって心も飛躍的に成長を遂げていたのだ。
 しばらくすると、掲示板に仕事の内容が張り出されそれを選ぶ能力者達の姿がある。
 ここでもイスルと瑞姫は古い友人達に挨拶をし、息子達にいつもとは違った一面を見せることができた。
「懐かしいな、あいつも子供ができてるし、結婚したのも結構増えたんだ」
「そうだね……10年って本当に長いよね」
 感慨深げに瑞姫がいうと、イスルも頷いて答える。
 子供ができて、大きくなったこともあるがお互いの道を進むことにもなってこうしてじかに一緒にいる時間が少なくなった。
 そんな二人の様子をみていた息子と瑞姫の父は目を合わせ頷きあう。
「じゃあ、僕はおじいちゃんとこの後は動くよ」
「あとは若いものどうしゆっくりするといい」
 意味深な笑みを浮かべた瑞姫の父は息子を連れてチューブトレインの駅へと向かった。
「良いよ。おじいちゃんと行ってきなよこんなトコ滅多にこれないからね」
「気をつけて……といっても、ここはそんなに心配するところでもないかな」
 二人は見送り、再び歩きだす。
 一歩進むごとにあの頃へと戻っていくような感覚を抱きながら……。

〜記念日を二人で〜
 再び兵舎に戻ってきた二人はかつて一緒に暮らしていた部屋へと入る。
 今はイスルの休憩室代わりに使われている部屋だった。
「ったく、イスルったら成長しても可愛いんだからさ」
 部屋に入ると瑞姫はイスルへと抱きつく。
 子供の母親としてではなく、イスルの妻として今度はイスルの体の温もりを求めたかったのだ。
「そうかな? ……お互い変わらないのかもしれないよ。何時までもね……」
 瑞姫の抱擁に答えるようにイスルも瑞姫を抱きとめる。
 背伸びをした瑞姫がイスルの唇に自分を唇を重ねだすと、離れている間に燻っていた互いの思いが弾けた。
 ソファーへと二人は倒れこみ、お互いのすべてを求め合い、愛しあう。
 子供も親も、現在の状況もすべてを遮断した懐かしい部屋で二人は一つになった。
 気が付けば、夕日が窓から差込み、頬にチクリと刺さる日差しで瑞姫は目を覚ます。
「今日は何の日だったか覚えてる?」
 眠気まなこな瑞姫にイスルは尋ねるが瑞姫は久しぶりに感じる気だるさに頭が回らなかった。
「結婚記念日だよ。だから、ここに来たかったんだ」
「そっか……工場のことばかりでそんなことすっかり忘れていたよ。たまには家族三人で過ごせれば良いのに」
「中々機会が作れなくてね……でも、きっともう少ししたらもっと出来る様になるよ」
「期待してるよ、お父さん」
 きゅっと甘えるように瑞姫はイスルへと抱きつく。
 もうすぐ現実に戻るとしても、今この瞬間をもっと味わっていたかった。
「じゃあ、もう少しだけね」
 イスルは瑞姫の気持ちを思い頭をそっとなでる。
 今日という日は結婚記念日というだけでなく、瑞姫にとってもっと大切な日となった。
 

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【認証番号 /   PC名   / 性別 / 外見年齢 /  クラス  】
 ga9347  / 瑞姫・イェーガー/ 女  /  23  /エースアサルト
 gb0925  /イスル・イェーガー/ 男  /  18  /イェーガー



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度は発注ありがとうございました。
橘真斗です。

10年後の話ということで、色々と話を膨らませつつ書かせていただきました。
いかがでしたでしょうか?
平和というのは特に退屈なものなのだなと書きながらシミジミ感じたしだいです。

それでは次なる運命が交錯する日まで、ごきげんよう。
水無月・祝福のドリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2011年07月26日

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