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『朋友浜茶屋へようこそ♪ 』
からす(ia6525)


 とある土地の草原。
 南国の海岸線を騎馬隊が行く。
 崖の上から見る夏の海は青く広く、同じく青い空には真っ白な入道雲。
 日差しは強いが、駆ける馬とともに受ける潮風が肌に心地よい。
「まあ深影(ミカゲ)を遊ばせる事ができたし、弓仲間もいるし丁度いい休暇になった」
 からす(ia6525)がぼそりと言う。朋友の霊騎「深影」に跨り‥‥もとい、海側に両足をそろえてお嬢さま座りしてずずずとお茶を飲んでいる。黒装束に、頭の左右で束ねまとめた長い黒髪。その中にあって一際目立つ赤い瞳が優しく煙った。
 ドカッ、ドカッと深影は信頼する主人を乗せて走る。黒い馬体に赤い瞳の霊騎は、からすが好んで手に入れた。穏やかで自然に身を任せるところのある主人を深影も気に入ったのだろう、からすに忠実である。
「‥‥喜んでいる、か?」
 ふふ、と微笑するからす。
 座っていると分かる。
 深影の足取りに楽しげなリズムが交じっていることを。
 そして、何かに気付いたように瞳を見開くからす。
「琴音(コトネ)に浮舟(ウキフネ)、招雷鈴(シャオレイリン)や詩弩(シド)、峨嶺(ガレイ)とも遊んでやらねばな」
 口にしたのはそれぞれ人妖、もふらさま、管狐、迅鷹、ジライヤである。そして、今乗っている霊騎の深影。あわせて六種六体。開拓者でも有数の朋友持ちである。
 その大所帯で出掛けるという。
 にぎやかな夏の休日の始まりである――。


 数日後もジリジリと夏模様。
 観光ビーチは暑さから逃れつつ楽しもうとする人々でいっぱい。
 そんな中、真っ白で大きなもふらさまが歩く。
『浜で、あります。夏の浜に、人々が戯れているであります』
 船員帽子を被ったからすの朋友、浮舟だ。
「機嫌良く口ずさむのはいいが、売り子としてどうか?」
 からすが静かに突っ込んだ。ここは確かに「いらっしゃい」だろう。
『でも、「海に遊びに行く」と浮舟は聞いたであります』
 くるっ、と振り返って主張する浮舟。
 その先にからすがいた。
 浮舟、砂ぞりを引いていた。そこへからすが乗り込み、持ち込んだ七輪で串に刺したイカを焼いている。
「ただ遊ぶのもつまらないだろう。それに、労働は健康にいい」
『健康にいいでありますか』
 納得する浮舟。
 それはそれとしてからす、一体何をしているのか。
 と、ここで大きな鳥の影が過った。
 見上げると迅鷹の詩弩が黒い四つの翼を広げたままついーっと滑空していた。カラスのような外観だがカラスではない。加えて、賢い。尻尾に横断幕をつけられると、主人の言いつけどおり、人々に見せ付けるように飛んでいる。
「へえっ。『浜茶屋カゴノトリ』本日開店か〜」
 見上げた誰かが文面を読んでその気になっている。
 一方のからす。
「はい、ありがとう。タレをこぼさぬようにね。‥‥よし、そろそろ戻ってみよう」
 男の子にイカ焼きを売ったところで、自ら開店した浜茶屋が心配になったようだ。
 店の名前は、「カゴノトリ」。カゴのイメージは開け放たれており、出るも入るも留まるも自由。そんな店だ。
 さく、と砂ぞりから立ち上がった。
 小さく幼い体つきに、穢れを知らない瑞々しい肌。黒いビキニは上が胸元をリボンで止める肩紐なしのチューブトップ。下はざっくり両側がえぐれたハイレグ。
 いま、手をかざしてまぶしそうに陽の光を遮る。脇の下からのラインが純真無垢な様子を強調している
 若干内股で砂浜に立つ姿に、周りの男たちはまぶしそうな視線を送るのだった。


 さて、浜茶屋・カゴノトリ。
 戸板を並べただけの簡易な屋根の下で、金髪赤眼の人妖・琴音が汗をかいていた。ご〜りご〜りと氷削機を回している。
「調子はどう?」
『大変‥‥』
 暑い中、商売繁盛ではある様子。ちっちゃな琴音は白いワンピドレスに麦藁帽子を被ってうんしょうんしょとご〜りご〜り。とにかく忙しい。それでも、戻ってきたからすを労おうと新たにかき氷を削っている。
「氷食べて休憩しようか」
 からすが言うと、ぽてりと何もない空間から管狐が落ちてきた。金色赤眼の招雷鈴(以下、シャオ)だ。普段なら着地ぐらいするのだが‥‥。
『暑イ‥‥なんかクレ‥‥』
「そういえば暑いのは苦手だったな。これを食べるといい」
『オオ‥‥』
 シャオ、鼻先をかき氷に突っ込んでガツガツむさぼり始めたッ!
『ウオォ‥‥』
 先の歓喜の響きはどこに行ったか、今度は苦悶の響きに。頭がキーンとなっているようで、短い両前足で小さな額を押さえぴくぴくしている。 基本はツッコミのハズだが、ノリがいいのでこういうこともままある。
「因果応報‥‥」
 からすは熱い茶を、ずずず。
『‥‥もう少し優しい舌触りにしたら食べやすいかも』
 何やら書物を出してきた琴音。氷削器に創意工夫を加えるようで。
「それじゃ琴音、任せたよ」
 休憩の終わったからすは、また浮舟を連れて行商に。
 その時であった!


「きゃああああ〜っ!」
 布を裂くような女性の悲鳴が響いた。
 どよ、と浜全体がそちらに目をやる。
 そこには、いやんとしゃがみこむ年頃の娘の姿があった。
 丸める背中に、ビキニのトップがない。
「すまない、俺に悪気はないんだ。悪いのはみ〜んな、女性水着の紐の結び目なんだ。俺はそんな気はないんだが、紐が俺に『優しく外して☆』と誘惑してるんだ〜っ!」
 ぽい、といましゃがみこんだ娘から剥ぎ取った水着を空高く捨てる男。投げたブラのカップがおっきいのは余談で、ぽろりした時はさぞかし揺れたであろうことは余計な解説だ。それはそれとしてこの男、どうやら水着の紐を解くプロの変態らしい。この間にも、「きゃ〜っ」とまた新たな犠牲者が。
 そして、これを眺めるからす。
「健康的な光景だなぁ」
 あの、からすさん? 無表情に見詰めてボケかましてる場合じゃないですよ。アナタ、開拓者でしょ? 何とかしたほうがいいんじゃないですか?
『周りの男たちはどうして前屈みでありますか?』
「健康的だから」
 浮舟の素朴な疑問にぼそりと答えるからす。あの変態が捕まらないのは、周りの男が前を気にして胸を張って出て行けないからでもある。男とは事ほど左様に純情初心な存在なのである。
「んじゃ行こうか」
『了解であります』
 おおっ。からすさんがその気になった! 砂ぞりを置いて降りてきた迅鷹の詩弩に留守番を言い伝えてから、現場に向かう。
 しかしこの時、だけがあのような事態になると予想したろうかッ!


「おおい、クラゲが大量発生したぞ!」
「きゃ〜っ! 沖に鮫がいる〜っ!」
 ざざざ、と皆が海から上がる中、人波に逆らいからすが浮舟を連れて歩く。
 その先に、プロの変態。
 この突如降ってわいた騒ぎで、もうだれもこの男を止めようとしない。というか、海で災難、この男も災難。ということで、とにかく逃げた者勝ち。
 ここで、からすに気付く変態男。一目見ただけで表情が変わった。
 からすの胸の前。
 揺れるおっきな黒いリボンに気付いたのだ。もちろん、からすの水着のリボンは彼に『優しく外して☆』などとは言ってないが、ふわふわ揺れる様子が変態にはそう聞こえるのだろう。歩み寄る。
 からすと変態男の距離が急速に狭まる。
「そろそろ止まりなさい」
 からすの警告。
 当然、変態に聞こえるはずもなく。なぜなら水着のリボンが揺れているから。
 変態男、やる気満々。
 そして、変態の手が伸ばされた。
「うへへ‥‥」
 ああ、からすの水着のリボンに指先が届く!
 ここで、からすが一言ッ!
「峨嶺」
 瞬間、どろんと巨大な赤色のジライヤがからすの隣に登場。
 しかしッ、変態はそちらを見向きもしない。なぜなら彼は水着の結び目フェチであり、蝦蟇フェチではないのだから!
『んじゃ、ワシが代表して‥‥』
 からすの目配せに、どすこい張り手。
「胸の結び目サイコー!」
 哀れ、変態は誰も居ない海にきりもみで飛んでいく。
 ここで、心配でついてきた迅鷹の詩弩も黒く大きな羽根を散らしながら舞い降りてきた。
 一件落着。
『報酬は?』
「汗がにじむほど暑いのだ、かき氷が良い」
 くるりと振り向き浜茶屋に帰るからす。どよ、と周りがざわめくが、そんなの関係ない。

 そして、カゴノトリ。
『ぐおお‥‥』
 かき氷をガツガツやった峨嶺、やっぱりキーン。ついでにシャオもまた、キーン。
「かき氷の醍醐味さね」
 やっぱりお茶を飲んでるからすがすまし顔。
『おかしいな、改造して鳥の羽のように繊細な舌触りのかき氷になったはずなのに‥‥』
 人妖・琴音が首を捻る。食べやすい分、そうなりやすいのだがそこに気付かない。
 と、ここで周りがにぎやかなのに気付くからす。
「なんか注目されてる。‥‥店の宣伝でもしておこう」
 がたり、と立ち上がる。琴音が羽毛の舌触りなかき氷を手渡す。
「きみもいかがか?」
『鳥の羽の舌触りです‥‥』
 右手でかき氷を持ち、左手を腰にやる。琴音も商品解説の声を張る。
「おお‥‥」
 集まるだけ集まった男どもがどよめく。
 それもそのはず。
 からすの胸に水着のトップはなく、大きな黒い羽根が四枚、ぴとっと汗でくっついて大切な部分を隠しているだけの魅惑的な姿だったのだから。
 変態、やることをやっているあたりプロである。
「まあ、よいさ」
 からすも動じない娘である。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ia6525 / からす / 女 / 12 / 弓術師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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からす様

いつもお世話様になっております。
朋友わらわら、にぎやかな夏休みをお届けします。折角なので、瀬川の最近の依頼にからめて霊騎にも登場してもらってます。やっぱり一緒がいいですよね。
ラスト、大幅アレンジが入ってます。何かありましたらリテイクしてください。

では、からす様のさらなる活躍を楽しみにしてますね。
Midnight!夏色ドリームノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2011年08月29日

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