▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『夏の思い出〜ボン・ダンス〜 』
風閂(ga8357)

 香月・那智が店主を務める謎の店『幽玄堂』。

 謎の店『幽玄堂』は店主となるべき人間、客を自らの意思で選ぶ。
 客と呼ぶに相応しいのは、夏の思い出浸っている人物。
 今日もまたどこからか、客の訪れと同時にどこからともなく店が姿を現す。
 訪れた客に、那智は客にとって思い出が詰まった品を手渡す。
 それは日記帳だったり、アルバムだったり、宝箱だったり。
 手にした客は、それを見た途端、忘れられない出来事を思い出すのだった。

 客はどんな出来事を思い出すのだろうか。

●来店
 沖縄県読谷村出身の傭兵、風閂は依頼を終えた帰りに何かに引き寄せられたかのように幽玄堂を訪れた。
「いらっしゃいませ、お客様。お待ちしていましたよ」
 入るなり那智に出迎えられ、自分が来ることを予測していたのかと驚くが、それを悟られてはいけないと冷静を装う。
「この店は、立ち寄った客に対してそう言うのか?」
「いえ、そういうわけではありませんが、あなたが来ることはわかっていましたので。私はこの店の店主、香月・那智です」
 こやつ、バグアの手先か? と訝しげな目で風閂に、那智は穏やかな笑みを浮かべて「外は暑かったでしょう、冷たいお飲み物はいかがですか」と緑茶を勧める。
 純真無垢な幼子のような微笑、疑うことを知らないかのような真っ直ぐな瞳を良くみると、そうではないようだと警戒心を解き差し出された緑茶を一口。
 緑茶を飲み干し、礼を言って帰ろうとしたが、立ち寄った手前、手ぶらで帰るのは悪いと何か買って帰ることに。
 とりあえず……と店内の商品を物色しようとしたところ、那智が5センチほどの右手で「おいでおいで」している大きさの三毛猫のキーホルダーを差し出し「お探し物はこの招き猫のキーホルダーでしょうか」と訊ねた。
「何故、俺がこれを探していると思った」
「さあ、どうしてでしょう? これは、とある盆踊り会場の露店で売っていたものですが、お客様にとっては何か特別な思い入れがあるようですね」
「俺がここに来ることだけでなく、そのキーホルダーのことまでお見通しとはな……。照れ臭いが、緑茶を馳走になった礼として話すとするか」

●初恋
 古風で生真面目、恋愛に疎い彼にとってはその時の思い出は気恥ずかしいものだったが、話すと言ったからにはそうは言っていられない。
 招き猫のキーホルダーを手渡した相手、ULT所属オペレーターのシェリル・クレメンスと出会ったのは3年前の8月。
 カリフォルニア州で行われたボン・ダンス(盆踊り)に出現したキメラ退治に関わり、その際に護衛を兼ねたシェリルエスコートを誰がするかを男性傭兵達はじゃんけんで決めた。
「お、俺がするのか?」
 じゃんけんに負けた風閂がエスコートすることになったのだが、彼は女性との付き合いは皆無だった。
 シェリルエスコートと会場警護を同時にこなせるか不安だったが、決まったからには責任持って行うことに。
「シェリル殿は……こういう祭は初めてなのか……?」
 何か話を、と緊張しつつ、ようやく話しかけることができた。
「あたしの故郷には、こういった楽しいお祭りがないので初めてです。あなたの故郷にはあるんですか?」
「盆踊りとは少し違うが、俺の故郷にもこういった祭りはある」
 ぎこちない雰囲気ではあったが、シェリルと少し離れて歩きながら警護を兼ねた露店巡りをすることに。
 しばらく露店を歩いていると、シェリルが招き猫のキーホルダーを見て買おうかどうか悩んでいた。
「あの、これください」
 どうやら、買うことに決めたようだ。
 女子に買わせるわけにはいかぬ、と風閂は「これは俺が買おう」と露店の親父に代金を手渡す。
「これが欲しかったのだろう? シェリル殿」
「いいんですか?」
 女性にプレゼントをするのは祖母、母親以外では初めてなので赤くなった顔をそらし、ぶっきらぼうに手渡す。
(まずい、怒っているのだろうか……)
 黙っているので怒らせたかと思ったが、照れながら「ありがとうございます……」とお礼を言ってくれたので安心した。

●恋心
「今思えば、俺はこの一見でシェリル殿のことが好きになったのだろうな」
 招き猫のキーホルダーを手にし、出会ってから3年以上過ぎたのだなとしみじみ。
 綺麗な金の長い髪、青い瞳、屈託のない笑顔、素直な気持ち。これがシェリルを好きになった理由なのかもしれない。
「失礼なことをお聞きしますが、その後、彼女とお付き合いしているのですか?」
 那智にそう聞かれ、シェリルのことを好きになったのは良いが、未だに告白していないと正直に答えた。
「あの時の出会いから3年過ぎたが、勇気を出して彼女に告白はできておらぬ。バグアやキメラとの戦いでいつ死ぬかわからぬ傭兵の自分とオペレーターで一般人の彼女とうまくやっていけるのだろうかと思うと不安でな。那智殿だったらどうするのだ? それでも……彼女に思いを告げるのか?」
 逆に質問されたので「そうですね……」と少し考え込む。
「私でしたら、立場は違えど、好きになったら駄目でもともとという考えで思いを打ち明けるでしょうね。自分のことを知ってもらいたいですし」
「そうか……。自分の思いは打ち明けるべきだな」
 シェリルと出会った後も数々の依頼に関わったが、彼女と直接関わったのはボン・ダンスの一件だけだった。
(今度、直にシェリル殿に会ったとしたら、俺の思いを打ち明けてみるか)
 現代に生きる武士な風閂のこと。一度決めたら、必ずシェリルに告白するだろう。
「那智殿、これをいただけぬか? 彼女と同じものを持っていたいのでな」
「どうぞ。これはあなたのためにお選びした商品ですから」
「すまぬな。告白の助言、感謝致す。では」
 招き猫の代金を支払うと幽玄堂を後にし、外に出ると同時に空を仰ぎ、いつかはシェリルと故郷の青い空を見たいと思う風閂だった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ga8357 / 風閂 / 男 / 29 / ダークファイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
風閂様、はじめまして。ライターの氷邑 凍矢です。
このたびはMidnight!夏色ドリームノベルのご発注、ありがとうございました。

3年も思い続けている風閂様は一途な方ですね。
那智の言葉を信じ、ボン・ダンス依頼で出会ったシェリル嬢に思いを伝えられることを信じております。
夏はそろそろ終わりですが、思い出の夏はまだ続きそうですね。
イメージと違う点等がございましたら、ご遠慮なくリテイク願います。

では、これにて失礼致します。

氷邑 凍矢 拝
Midnight!夏色ドリームノベル -
氷邑 凍矢 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2011年08月31日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.