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『さざ波の中で一晩中〜リンスガルト編 』
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)


 夏の太陽のきらめいた。
 ざざんと波が白く長く弓形の砂浜に寄せた。
 潮風に揺らめく椰子の木の葉。地面の影もゆらりゆらり。
 ここは南国、尖月島。
 華やかな水着の女性たちが瑞々しい肌をさらしてきゃいきゃいはしゃぐ。
 たくましく日焼けした男性たちが銛と魚篭を手にして砂浜を走る。
 あるいはビーチに寝そべって、木陰でのんびり楽器を爪弾いたり。
 それぞれの休日、それぞれのバカンス。
 遠浅の砂浜は満潮時には三日月形となり、干潮時には半月形となる。
 点在するのは、高床式のコテージ。
 ここは南国、尖月島。
 日常をひととき忘れて、また日常に帰る場所――。


 ふわり、と豊かに波打つ金髪が舞った。
 白いブラウスがひらめき伸ばした腕から抜ける。
「ん‥‥しょ」
 今度は前屈みになって、とん、とんと足を踏みかえ。純白の下着に代わり、今度は真っ白なワンピースの水着――世界が世界なら、「すくぅる水着」と呼ばれる女性モノに足を通し‥‥。
「んんん‥‥」
 もぞもぞと小さく白いお尻を包み、するりと肩の部分を上げ、背中を向けたまま胸の形を整えてから肩紐の部分をぱちん、とそれぞれ両肩に引っ掛ける。
 そしてまた――いや、今度は元気に長い金髪が円弧を描いた。
「よし、これでいいのじゃ」
 振り向いた顔は晴れやか。
 白い頬に、真っ赤な瞳。ちょっと釣り目で高貴な面立ちは、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)(以下、リンス)。胸は薄いが家族愛がいっぱい胸に詰まった、良家のお嬢様である。
 ちなみに、どのあたりがお嬢様であるかというと‥‥。
「やや薄手じゃと思うたが、まあよい」
 自分のスク水姿を改めて見て、そんなことをつぶやく。
 実際、やや透けている。
 本当にいいんですか、リンスさん?
「見られた所でどうという事は無い」
 ことほど左様に純粋無垢である。
 それはそれとして、とん、と軽い足取りで更衣室から出る。‥‥いや、出ようとしたところで足を止めて背中側を振り返った。ううん、ともぞもぞすると、豊かに広がる金髪の下、背中の肩甲骨あたりから黒い小さな翼が出てきた。実は龍の獣人だったりする。
「さて、急がねばの」
 これで準備万端。にこっと微笑も決まって、さて、浜辺へ――。


 ざざん、と波打つ海を前に、一人の少女が両手をおっきく広げて伸びをしていた。とても気持ち良さそうである。
 おっと、リンスが近付いたのに反応したぞ。
「ほらね。やっぱり来て良かったでしょ? リンスちゃん♪」
 くるり、と振り向いたのは、リィムナ・ピサレット(ib5201) 。リンスを海に連れて来た張本人である。太陽を背に、屈託のない笑顔を輝かせている。その眩しさに、リンスは思わず目を細める。
「まあ、の。尖月島なる所、なかなか良い‥‥ん?」
 ここでリンス、ぴたと言葉を止めた。
 リィムナが真顔でじろじろリンスを見ていたのだ。それはもう上から下まで。というか、特に水着に包まれた部分を。
「どうしたのじゃ、一体? しかし、そのような肌も露な水着を‥‥」
「これ?」
 何かおかしいところでも? と回転してみせるリィムナ。
 微妙な胸の膨らみは、妙に幅の細い純白のチューブトップがかろうじて隠している。
 しかし下は‥‥。
 なんと、後ろがTの字。布部分はお尻の双丘を隠すことなく食い込んでいる。
「気持ち良いよ?」
 にまっ、と悪戯っぽい笑み。
「こうして並ぶとおそろいみたいだよね」
 続けてリィムナがそう言ったのは、彼女の肌にはスクール水着の日焼け跡が真っ白に残っているため。白いマイクロビキニを着ているのか白いスクール水着を着ているのか、素っ裸であるのか遠目だとまったく見分けがつかない。
「そ、それはそうじゃが」
 口ごもったリンス。しかし、根本的に違う。
「じゃあ、もっとおそろいに!」
「わわっ!」
 何とリィムナ。リンスの手を取り一気に波打ち際まで走り、ザブーンとダイブ。さらに水の中でリンスの体中を悪戯っぽく撫で撫で擦り擦りとお触りする。
「こ、こらっ」
「わあっ。リンスちゃんすっごい☆」
 ぷはっ、と立ち上がった二人。リィムナが改めてリンスを見ると、さらに透け透け度が上がったようで。そりゃもう、おへそとか鳩尾のくぼんだ部分とか、腰骨のでっぱりとか、もっと恥かしいところの近くとか。
「別に妾はどうとも思わぬが‥‥」
「ふうん、そうなんだ?」
 リンスの言葉に、ちょっと物足りないリィムナ。くるっと回って走り出した。
「こ、こら。どこへ行くのじゃ!」
 ええい、とリンスはリィムナを追うのだった。


 リンスが追いついたのは、岩場だった。
「待つのじゃ。ほら、つかまえ‥‥」
「しっ。‥‥リンスちゃん、こっち」
「ん? 何を見ろと‥‥」
 リンスはリィムナに導かれるまま移動し岩から首を出す。すると、何やらもぞもぞごそごそする影が見える。
 瞬間、リンスは息を飲んだ。
「ん‥‥」
 何とそこには、水着のまま寝そべり抱き合ってキスする男女の姿があった。
「ふぅん。キスって、ああやってするんだね〜」
 我に返ってリンスを見ると、なんとお目目きらきらで興味津々。
「あれは‥‥いかん、覗き見などっ。しかし大胆な接吻じゃ‥‥」
 いつの間にかぎゅってリィムナに抱き寄せられていた。
――長い、長いキス。
 ごくり、と生唾を飲み込んだ音は自分だろうか、それともリンスだろうか。
 やがて、目くるめく時間は終りを告げた。
「ふぅ‥‥」
「ほ、ほら。行くぞ、リィムナ。せっかく海に来たのじゃ。共に遊ぶぞ」
 キスしてた二人が去ってからも、しばらくぼうっとしていたリィムナ。リンスは仕方なく夢見心地のリィムナを連れ、日光浴などを楽しむのだった。

 やがて、夜。
 尖月島には、海岸沿いに高床式の別荘がある。満潮になれば床下から波の音が聞こえる。
 そして、テラスにはお風呂もある。露天で、必要に応じて植木を動かして隠したりあらわにしたり。
「妾は洗髪用の帽子がないと髪が洗えぬ故‥‥」
「じゃ、洗いっこだね〜」
 リンスは恥かしそうに持参した洗髪用帽子を被ったが、後からリィムナに抱き付きわしゃわしゃ体を撫で回された。リィムナは泡だらけで、すぐにリンスも泡に包まれた。
「こ、こら。洗髪からではないのか?」
「いいのいいの、体から〜」
 泡の下で何をやってるのか、リンスは真っ赤でリィムナは幸せそうに頬を上気させてたリ。
 そんな二人の姿に恥じらうに焼けていた空には、やがて夜の闇と静けさが訪れてひそやかに星が瞬くのだった。


 そして、おねむの時間。
 高床式別荘の中で。
「こらっ。裸はいかんのじゃ!」
「暑いし二人きりだし。‥‥それに、子供ぱんつはいてるし」
 お嬢さまとしてリンスが指摘すると、ぱんつ一枚のリンスが本を胸に抱いたままくるっと振り向いてヘーキな顔をする。リンスの方はとっても薄いねぐりじぇ一枚。その薄さは下の肌が透けそうなくらい。リィムナと同じく子どもぱんつをはいている。
「しかしの‥‥」
「じゃあ、これでいいよねっ」
「むわっ!」
 何とリィムナ、薄い掛け布をマントのように羽織ると、そのままリンスにダイブ。どっし〜んと二人抱き合ったまま床に倒れこんだ。
「リンスちゃん?」
 リンスが目を開けると、どアップでリィムナの顔があった。何かをねだるように青い大きな瞳がうるうるしていた。
「お人形みたいに綺麗で、すっごい可愛くて‥‥」
 瞳が、昼間のアレをねだっている。
 リィムナは、リンスのメイドにして恩人でもある女性の、妹。
 長い付き合いだ。言葉がなくても伝わる。
「う。それは‥‥」
 真っ赤になって横を向くリンス。
 これを見て、リィムナはぱあっと明るくなった。
「じゃ、リンスちゃん。ベッドで本を読もう?」
「き、興味はなくはないし、リィムナが相手なら‥‥はっ。そ、そうじゃの」
 つい本音を口にしてしまい動揺するが、健全な展開に我を取り戻す。そういうことならとベッドに移るが‥‥。
「こここここ、これは人情本っ! しかも百合っ!」
「そうだよ? 参考資料〜♪」
 薄い掛け布団を引っ被り、二人肩を寄せて魔法の光の下開いた本を見てリンスは再び動揺した。
「ほらほら、『小鳥のついばみのような優しいキスで私の唇を、顎を、頬を愛してくれるお姉様。私、女の子に生まれて幸せだなって思ったら今度は激しく唇に。やがてそこから‥‥』だって」
「う‥‥。く、口にせずとも良い」
 ちゃんと読んでいる証拠ですよ? リンスさん。それともリィムナさんの朗読に‥‥。
「可愛い。‥‥リンスちゃん、『女の子同士は夢見るような幸福感に包まれる』んだよ?」
 ごそ、とリィムナに押し倒された。どうして逆らえんのじゃ、とは心の隅のつぶやき。それより何より、リィムナの深い瞳に引き寄せられるように小さな顎を上げ、瞳を閉じた。
 そして。
――ん‥‥。
 どちらの、小さな悲鳴だろう。
 いや、歓喜の鼻声であったか。響きが甘い。
 ちゅっ、ちゅっと音がする。小鳥のさえずりのようだ。
 やがて。
「んんんっ!」
 夢見るように閉じていたリンスが目を開く。ごそっ、ごそっと身もよじる。リィムナの接吻が深く激しくなったのだ。
 リンスの、言葉に出来ない、切ない、やるせない思い。
 リィムナはそんな思いを感じ取ったのか、手を伸ばし、リンスの掌と重ねた。
 掌の二つのふくらみが重なりを変えるようにもじもじと動き、やがて指を絡める。それでも掌をすりつけお互いのふくらみを確かめ合うように、手首をよじらせ続ける。そして、体も――。
 長い、長いキス。
 やがて、リンスの鼓動が自分の胸に伝わってきた。そして、甘い重みも。
 それにしても、長い。
「んっ!」
 リンスは自分でも気付かず、体を海老反りにして痙攣した。
 そして、ぐったりと脱力感。
「って大丈夫、リンスちゃん!?」
 心配そうにするリィムナの声が遠くに聞こえる。
「ふにゅう‥‥」
「熱い? 今度は優しくするよ」
 ねぐりじぇを脱がされた感覚、今度は優しく重なるリィムナを感じた。
 優しくリズムを刻む細波の音が床下から響く。
 もう何をされているのかわからないが、寄せる体と、ちゅっちゅっと繰り返される接吻は確かに感じる。
(よく分からぬ)
 思ったのは、リィムナの存在。
 これは果たして恋なのか、友情なのか。
 少なくとも、リィムナの明るく自由奔放なところは時に羨ましくなる。
(じゃが、それでいい)
 吐息。
「やりすぎちゃったかな‥‥?」
 リィムナの心配そうな声。そして、「おやすみなさい」と隣に感じる気配。
(それで、いい)
 遠くなる意識の中で、そう思う。
 短い南国の夜は、大切な思い出を二人に残してようやく静かになるのだった。
 ここは南国、尖月島。
 日常をひととき忘れ、そして日常に帰っていく場所――。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib5184 / リンスガルト・ギーベリ / 女性 / 10歳 / 騎士
ib5201 / リィムナ・ピサレット / 女性 / 10歳 / 魔術師


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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リンスガルト様

 いつもお世話様になっております。
 大変お待たせしました。リィムナさんとのラブでおしゃれなバカンスノベルです。ちっちゃなお二人の、ちっちゃな秘密。でも二人にとっては大きな大きな思い出。そういえばまだリンスさんの「ぬぎぬぎタイム」は書いてなかったよなぁ、ということで序盤で描写させていただきました。リィムナさんに振り回されつつも、その輝きや明るさに惹かれる様子を大切に描かせていただきました。

 なんだかんだで他人思いのリンスさん、また今度、一緒に冒険しましょうね。
 では、何かありましたらリテイクをお願いします。

 この度はありがとうございました。
Midnight!夏色ドリームノベル -
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2011年09月20日

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