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『アナスさんはにっこりと 』
アナス・ディアズイ(ib5668)


 チョコレート・ハウスは空の上。
 この中型飛空船は、ちょうど大きな戦いをした後です。仕事は成功で、チョコレート・ハウスの開拓者部隊「ショコラ隊」のメンバーはにこにこ。楽しくわいわい帰途に就いています。
「仕事の後のチョコレートは美味しいよね〜」
 ショコラ隊は女の子が多いので、甘いものについつい手を伸ばしているようですね。会話が弾んでテーブルの真ん中に置かれた山積みの一口チョコレートも次々なくなっていきます。
 そんな中、真紅の礼式用軍装をきりっと着こなし右を向いては真面目な話にうんうん頷き、左を向いてはおバカな話にふふっと目尻を下げる、静かな娘さんがいます。
 白い肌に、すうっと真っ直ぐ長い金髪は、アナス・ディアズイ( ib5668)さん。ぱっちり開いた紫の瞳が印象的で、口元がいつも微笑んでいるような騎士さんです。
「アナスさんは、アーマーで敵の攻撃を遅らせてたんだよね?」
 え? と眉を上げたのは、まさか自分に話題が振られるとは思ってなかったから。
「アナスさんもカッコよかったんですよ」
「きっちり一体を始末してくれたよな」
 右から左から言葉が飛んできて、アナスさんは喋れません。
「あ。チョコなくなっちゃった。‥‥アナスさん、まだ食べてないでしょ?」
「ダメだよ〜。ちゃんと手を伸ばさないと」
 さらに雨あられの言葉に、アナスさんは取り付く島もありません。
「よし。それじゃ、今度のハロウィンでアナスさんのためにたくさんお菓子をもらってあげるからね」
 そうしよう、と盛り上がる一同なのです。
「その時は頑張って食べますね」
 ようやく口を開いたアナスさんは、そう言ってにっこり――。


 そして、ハロウィン。
「トリック‥‥ですかね?」
 展開が速くて申し訳ないですが、アナスさんは外出中、突然目の前に現れた悪魔っ娘にそう言うのです。だって、アナスさんはお菓子を持ってないんですから。
「なによぅ! だったら、今度はあなたがお菓子を求めてさまようがいいわっ!」
 ぽぽん、と悪魔っ娘が消えると、まあ、一体どうしたことでしょう。
 何とアナスさん、理屈は不明ながら、二本足でノシノシ歩く人間サイズの白い猫に姿を変えているではありませんか。まるごとねこまたで変装しているようにも見えなくはありませんが。
「ええと‥‥。とりあえず、街を歩いて『トリック・オア・トリート』と言って回ればいいんですね」
 そんなことをつぶやいてから、何故か被っていた魔女的な三角帽子をくいくいって整えて、猫髭をぴぴんと立ててから歩き出すのです。
「‥‥あれ?」
 おや、いきなりへにゃって猫髭が垂れましたよ?
「私‥‥こんなに太っていたでしょうか?」
 うに、と二重顎を作って我が身に目をやると、どうやらちょっと‥‥いや、結構お腹まわりがアレで俗にいうメタボ体質っぽい猫姿になったようですね。ぽってりまるまる太った感じです。
 その時でした。
「きゃ〜っ! 可愛い〜っ!」
 いきなりの悲鳴に尻尾を立ててびっくりするアナスさん。
 気付けば女性が寄っていて、「『トリック・オア・トリート』よねっ! はっぴーはろうぃん♪」とお菓子を押し付けてきているのです。
「じゃ、猫ちゃんまたね〜」
 思う存分抱きついてもふもふしたようで、女性は幸せそうに手を振り去っていきます。
「あ」
 アナスさんは、左肘に引っ掛けていたお菓子入れのバスケットを見てびっくり。
 いきなりお菓子がいっぱいなのです。
「食べてなくさないと、新たに入りませんね」
 にゃ、とチョコを口にほうって味わうのです。
 そして、よいしょと左手のカボチャのランタンを掲げ直した次の瞬間。
「あれ‥‥」
 軽快に一歩を踏み出したつもりが、なんだかずっしりと重いのです。
 無理もありませんよね。
 もふもふしたら気持ち良さそうな、こんなでぶでぶした猫ちゃんなんですから。
「まあ、いつも重装備ですし」
 そう。
 アナスさんは盾を持って仲間を守りつつ戦う場面が多いので身の重たい移動は慣れっこです。さすが騎士さんですよね。そんなこんなで、ず〜り、ず〜りと前進するのですが‥‥。
「ん?」
 くん、と黒い鼻が上がりましたよ? 猫髭も、ピン。
「‥‥甘いにおい」
 どうやら甘味センサーの感度は抜群のようです。早速その方向へ‥‥ああっ! 速いッ! その重量でどうやったらそんなスピードがでるのでしょうッ! にゃんにゃんとんとんと軽快に夜の街ににゃお〜んしに行くのです。


「はあっ‥‥」
 夜の街に、寂しく肩を落とし歩く男一人。
「一発逆転人生を夢見て苦節ン十年。渡る世間は半か丁か。針の穴でも勝機があれば、行くしかないでしょ糸を通しに‥‥」
 ぶつくさつぶやいているのは、どうやら博打で負けたから。それもこっぴどく負けたようで目がうつろです。こういう風にはなりたくないものですよね。
「しかし、骨の髄までしゃぶっておいてこんなものを貰ってもなぁ」
 男は小袋を取り出し、しみじみと見ます。どうやら粗品の金平糖が入っているようですね。
 ともかく、ここでしゅたっ、と二足立ちする猫ちゃんが登場。
「トリック・オア・トリート!」
 アナスさんです。
 三角帽子を右手で押さえ、にゃにゃんとカボチャランタンを掲げ、ぴしっと決めポーズ。
「んあ、そういやハロウィンか。‥‥だがこの金平糖はやらん。一体今日幾ら負けた挙句にこれを手にしていることか!」
「あら、まあ‥‥」
 必死の形相を見て猫姿のアナスさんもちょっと同情気味です。
 しかし、困ったことにアナスさんはいま、甘味に飢えているのです。
 普段なら諦めましょうが、敏感なお菓子センサーはアナスさんをハロウィンの鬼に変えているのです。簡単には諦めません。
「トリック・オア‥‥」
「いいよなぁ、お前らは。そうやってりゃ何もしなくても甘いモンにありつけんだからよ。‥‥いいか、世の中はそんな甘いもんじゃねぇんだ」
 確かに、先の女性のように何もしなくても自ら甘味を差し出す人ばかりとは限りませんよね。
 が、この一言はアナスさんのハートに火をつけたようです。
 その、刹那でしたッ!
「トリック・オア・トリート、です♪」
「おお‥‥」
 なんと、男の顔は一転晴れやかになり、あんな後生大事にしていた金平糖を差し出したではないですか!
 その、男の目の前では。
 アナスさんが、にゃにゃっ、と右手首をくねっと捻ってから顔の横に持ってきてしゃきーんと胸を張っているではありませんか。
――招き猫。
 そう、ラッキーカムカム。
 アナスさんは白い招き猫ポーズを取っていたのですっ。
「ぱっぴーはろうぃん‥‥」
 雷に打たれたように呆然としていた男は、金平糖を捧げた後にぐぐっと元気を取り戻すのです。
「来た来た来た来た〜ッ! これで明日こそ一発逆転人生〜」
 男はひゃっほう、と元気を取り戻し飛び跳ねながら帰宅するのでした。
 そして、アナスさんはまたくんくん、と黒い鼻を上げたり。甘味センサーが次のお菓子に反応したようです。帰宅する男と交差するように、ぴょんにゃんと軽快に町を渡るのです。

「わあっ。はっぴーはろうぃんですぅ。たくさん食べてね」
「きゃ〜。可愛い〜! おまけでサービスするね♪」
「これも食べて、これも食べて〜」
「ぜ、ぜひウチの店頭に。チョコ一年分で一年契約を‥‥」
 ああ、夜の街に招き猫旋風が吹き荒れてます。
「うふふっ♪」
 どれだけ招き猫ポーズをしたでしょうか。高台の石垣に腰掛けて町明かりを見下ろしつつ戦果の甘味を味わうアナスさんは、とっても幸せそうです。
 ところが。
「ん? ま、またですか?」
 またも、くん、と黒い鼻を上げます。敏感過ぎる甘味センサーは休むことを知りません。
「このままじゃ私、太っちゃいます〜!」
 にゃ〜ん、と空のお月様に被るように大きく跳躍。その悠然とした姿と裏腹な悲鳴が響きますが、何か幸せそうな調子も交じっているようですね。
 ああ、アナスさんの明日はどっち――。


 チョコレート・ハウスは空の上。
 チョコレート交易の飛空船ですが、ショコラ隊のお家でもあります。
「あ。アナスさん、お昼寝してたんですか?」
 はっと気付くと、ショコラ隊の仲間にそんなことを言われていました。
 果たして、夢だったのでしょうか?
「ともかく、おやつの時間だよ」
 そんなこんなで、またみんなが集まります。
 ところが、ちょっと前とは雰囲気が違いますね?
「‥‥そしたら私、ぽてっと太った二足立ちする猫の姿になってたんですよ? そして招き猫の姿をしてたくさんお菓子をもらったんです」
「あの、ちょっと、アナスさん?」
 次々喋って、一口チョコレートに手を伸ばしてはぱくり。
「そういえば、賭け事ですってんてんになったっていう人からは大切そうにしていた金平糖を貰って‥‥。あの人のおかげで、何かコツを掴んだんです」
 さらに言ってから、またチョコをぱくり。周りの仲間も唖然としてます。
「あ‥‥」
 ここで、食堂の扉が閉まり悪く開いちゃいました。
「私が閉じてきます」
 腰も軽く席を立つアナスさん。ぴっちりした真紅の上着に、白くぴっちりしたズボン。カツンと踵の鳴る皮のブーツ姿が改めてすらりとした騎士さんだと見る人に感じさせます。いま、背中を隠す金髪がさらっと流れました。
 おや、ここでふと気付いたように足を止めましたよ?
「開け放しておくのもいいかもしれません」
 くるっと振り向き、にゃんと招き猫の手まねをして悪戯っぽく言うのです。
 そして食堂に、幸運の風が――。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ib5668 / アナス・ディアズイ / 女性 / 16 / 騎士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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アナス様

いつもお世話様になっております。
この度は心が弾むようなアイデアをありがとうございました。折角ですのでチョコレート・ハウスでの依頼の続きのような感じで仕上げたんですよ♪。楽しく書かせていただきました。

諸事情でコメント字数が少なくてスイマセン。
では、また一緒に冒険に行きましょう。
この度はありがとうございました。
PM!ハロウィンノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2011年10月03日

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