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『ドキッ、小人だらけの大運動会! 』
リリィ・セレガーラ(mr0266)
 食欲の秋、読書の秋。
 天高く馬肥ゆる時期であるからして――体重増加が気になるお年頃のうら若き少女にしてみれば、まさにこれぞスポーツの秋、なのである。
「さあやってまいりました、秋季恒例、仮装障害物走のお時間です! 本年度、優勝の栄冠を手にするは果たして!」
 実況担当のアナウンサーが高らかに宣言する。
 見上げるほどの高層ビルが所せましと立ち並ぶ大都市の片隅に、特設コースのスタートラインが設置されていた。
 線の手前で待機する少女がふたり。リリィ・セレガーラとエミリー・ライラックである。
「下着がはみ出ていないか、ちょっと心配ですね」
「うーん、大丈夫だと思うけれど……」
 古式ゆかしいブルマに紺のハイソックスを穿いた少女たちは、お互いに自分では見づらい場所のチェックをしていた。
 なんとも瑞々しく可愛らしい、普通の少女たちの振舞いに他ならないが――彼女たちの周囲には多くの観戦客が集まっていた。
 なぜならこれは普通の女の子の徒競争ではないのだ。その証拠にすらりと伸びた2人の身の丈は、6階建てマンションの中腹ほどまである。――そう、彼女たちは巨人族の少女なのだ。
 本日彼女達が挑戦するのは、仮装障害物走と銘打たれたチキレース。
 『小人さん』の街の一角を封鎖し、彼女達のために仕立てられたコースを2人は途中様々な衣装に着替えながら疾走することになる。
 そうと聞けば、物珍しさに観客も集うというものだろう。
「それでは選手のお二人、前へッ」
 アナウンスに従い、リリィとエミリーは定められた位置につく。彼女たちの周囲をぐるりと取り囲む一般観衆も、その一挙一動を固唾をのんで見つめていた。
「よぉぉぉい」
 ターン、という小気味良い音が、小春日和の青い空にこだました。
 負けてたまるものか。そんな意気さえ感じさせる勢いをつけて、2人はほぼ同時にスタートを切る。

 先んじたのはリリィだった。
「ふふ、お先に失礼しますねっ」
 宣言するやいなや、リリィはエミリーを追い抜き先頭に躍り出る。
「負けません……!」
 しかしエミリーのほうも、置いていかれまいと真剣な表情を見せ、先を行くリリィに食らいついていく。
 封鎖されている片側三車線の広い道を、各々コースに見立てて突き進む。
 やがて快調に飛ばす2人の耳に、実況の声が飛び込んだ。
「おっと、ここで第一の障害っ、歩道橋の登場です!」
 2人の行く手に登場したのはごく一般的な歩道橋だ。青色のペンキで塗りたくられた橋の上には、ちらほらと観客の姿もある。高さは彼女達のへそほどの位置で、飛び越えるには少しだけ高いように思えた。
 身を屈めてくぐることもできそうだが、時間はロスするだろう。ならば彼らごと飛び越えるか。悩んだ末、リリィは大きな体を小さくまるめた。膝を地面に擦りつけるようにして、慎重に歩道橋をくぐり抜ける。
「あらあら、慎重派ですね。……私は勝負に出させてもらいますよっ」
 その様子を見ていたエミリーはにこっと笑みを浮かべると、歩道橋の手前で大きく踏み込み、高く跳躍した。
 彼女が跳び上がる瞬間に生まれた風が観戦に興じる人々を大きく煽ったのだろう、方々から次々と悲鳴が聞こえる。勿論、吹き飛ばされるほどの突風が生じたわけではないが、歩道橋の上の人々は慌てて手すりにしがみついた。
「ふふ、ごめんなさいね。あんまり近づくと危ないですよ、小人さんたちっ」
 リリィが体を起こし体勢を整えるのと、着地したエミリーがふたたび走り出すのは、ほぼ同時だった。
「やりますね」
「ふふ、負けませんからねっ」
 お互いに挑戦的な色を孕む笑みを浮かべ、2人は再び走り出した。
「さあ、ここで第一チェックポイントです! 1回目のお色直し、果たしてどのような衣装にチェンジするのかっ」
 衣装替えはこの障害走の大きなポイントでもあるからして、さすが実況にも熱が入るようだ。
 鼻息荒く中継するアナウンサーの放送コードスレスレな実況に恥じらいながら、チェックポイントに到達した2人は用意されていたミニ丈のメイド服へ着替える。同時にハイソックスを脱ぎ捨て、黒いストッキングをはき直した。
 彼女たちのために着替えコーナーとして、ビルとビルの間にカーテンが張られた。
 その中で早着替えを行う2人だったが――観衆はともかく、たまたまビルの中に残っていた人達からは着替えの模様が丸見えだったとかいう噂も後日まことしやかに囁かれるのであった。
 着替えが完了すると、観客からチェックが入る。早着替え競争においては当然、しっかりと着用できているかも審査されるのだ。

 なんとか審査ゾーンを抜けると、次の障害が発表される。
「続いての関門では、人運びをしてもらいます! できるだけ多くのご主人様を落とさず運んだ方にポイントが与えられますっ」
 沸き上がる歓声。あわよくば彼女達に拾い上げてもらい、皆の注目を集めようとする若者が大挙して押し寄せ、2人のまわりを取り囲む。
「小人さんたちがせっかく名乗りをあげてくれたんですから……ここは皆さん運んで差し上げないとっ」
 エミリーはにこりと微笑みを浮かべ、そう告げると静かに目を閉じた。
 そしてミニスカメイド服を身にまとったまま、更に大きな姿へと返信する。
「あんまり大きくなりすぎても、動きづらいですし……このぐらいが丁度いいですよね?」
 身を屈めてエミリーは、駆けよってくる人々を5名ほど、水を掬い取るように重ねた両の手のひらの上に乗せた。そして身を起こし再び走り始める。
「むっ、私だって!」
 その姿を見ていたリリィも、友に対抗するかのように、彼女と同じ大きさまで身の丈を伸ばした。
 群がり来る男たちの中から同じく5人を掬い上げると、胸の近くへ手のひらを引き寄せ、大事に抱えるようにして運ぶ。
「おーっと、これは羨ましい! 至近距離に夢のような光景が広がっております!」
 これには実況担当も身を乗り出して、興奮気味に叫んだ。
 まかり間違って手のひらからポロリと落とされれば、大怪我しかねない高さではあるが、それを差し引いても役得と言っていいだろう。
 証拠にリリィの手の中に紛れこんだとある男性などは、決死のジャンプで目の前の巨大な谷間に飛び込んでいった。
「ここで埋もれて死ぬなら本望だぁぁぁあー!」
「!? きゃあっ!」
 しかし男は目測を誤った。驚きリリィが一歩引いたのだ。跳躍距離は僅か及ばず、勇者はリリィの胸を僅かにかすめて地上へ落下していった。
「無茶しやがって……」
 男の転落した場所には街路樹。バサッと大きな音をたてる緑の葉。そこに向かって多くの男たちが敬礼するのであった。

「そしてここでお色直し・リターンズだぁっ! 諸君、メイド服は見おさめだが……悲しむのはまだ早い。次はお待ちかねの制服だッ!」
 第二チェックポイント間近で実況が吠えた。観衆の声援は更に大きなものとなり、彼女達の耳に届いた。
「すごい歓声……なんだか恥ずかしい」
 消え入りそうな声で呟くエミリーに、リリィは真剣な表情で言った。
「大丈夫、きっともっと大きくなってしまえば、小人さんたちも変な事は考えないはずっ」
 2人は頷き合い、身体を更に大きく伸ばしていく。手乗りサイズだった人々はさらに小さく、吹けば飛んでしまいそうな大きさにまでなってしまった。
 こうなれば相手の顔は見えない。さほど意識せずに競技に集中できるはずだ。
 黒いストッキングは穿いたまま、2人は靴を脱ぎ捨て再び駆け出した。
 途中、超高層ビルの谷間をすり抜ける際には、道幅が片側2車線となっている個所があり、2人は小さなビルを蹴り飛ばさないようにと忍び足で進む場面もあった。
 慎重に進み過ぎた結果、建物の屋上にスカートをひっかけてしまい、めくれ上がってストッキング越しに太ももが丸見えになるハプニングなども発生したが、めげずに2人は進んでいく。
 最後の競技は車探しだ。湾岸部にある広い駐車場の中から、指定された車種・色のものを広い駐車場から探し当てる――ぶっちゃけ車を使った巨人版百人一首である。
「赤い、スポーツタイプの――」
 担当者が読み上げる条件に適した車を、2人は広い駐車場から探し当ててはつまんでいた。
 とはいえ、もはや彼女達から見れば、人間が爪の先ほどの大きさだ。狙った一台をつまみ上げることもなかなか容易ではない。
 一方は、小人を潰してしまわないよう注意を払いながら尻を下ろしてしゃがみ込み、一方は膝をついて上体を屈めた状態で目当ての車を探している。
「あっ、ありました!」
 隣の車を倒してしまわぬよう、リリィは親指と人差し指を使って慎重に標的をつまみ上げる――しかし、その瞬間。
「その車、私がいただきますっ」
 エミリーの足が、リリィの指先に伸びてきた。踏みつぶしてしまいそうなギリギリのところで、エミリーは足指を曲げて車をぽんと蹴り、跳ね上げた。
 盛大に宙を舞う赤いスポーツカー。放物線を描いてエミリーの手の中にぽろんと飛び込んだ。
「ご免なさいね?」
 余裕の笑みを浮かべるエミリー。リリィは悔しげに友の顔を睨んだ。……と。
「……あ」
 リリィはふと気付いた。こちら側に伸ばされたままのエミリーの足へ、わらわらと這い寄る小さな人間達の姿に。
「最高だー!」
「この美脚に踏まれて死ねるなら本望だー!」
「俺は足よりも谷間がいいぞー!」
 なにやら怪しい小人たちの叫びが聞こえる。気付けば自分の太もも周りにも、男達が黒い群れを作っていた。
 同じく状況を察したらしいエミリーは、リリィを見つめため息を吐いた。2人、顔を見合わせてくすくすと苦笑を浮かべる。
「――まったく……仕方のない小人さんたちですね」


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【mr0266/リリィ・セレガーラ/女性/17歳/禁書実践学専攻】
【mr0250/エミリー・ライラック/両性/17歳/超機械科学】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 秋どさ連動・ライブOMC商品をご発注頂きありがとうございました!
 ライターのクロカミマヤと申します。
 着手が遅くなりまして、すっかり冬めいてきてしまいましたが、
 「スポーツの秋ノベル」ということで、仮装障害走のシチュエーションをお届けさせていただきます。
 ほんのりセクシー要素を交えつつ、コメディということで楽しく描かせていただきました。
 プレイヤーさんのお気に召したようならば幸いです。
■今年は○○の秋ノベル■ -
クロカミマヤ クリエイターズルームへ
学園創世記マギラギ
2011年11月11日

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