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『サンタさんになろう 』
ラサ・ジェネシス(gc2273)

「孤児院、ですか?」
それは突然言い渡された事だった。
様々な事情で親と一緒に暮らす事が出来ない子供たちにプレゼントを持って行ってあげてほしい、との事。
本当なら、別の人がサンタ役として持っていく筈だったのだが、
急病でいけなくなってしまい、その代役をしてほしいらしい。
「中には気難しい子供もいると思いますけど‥‥お願いできますか?」


視点→ラサ・ジェネシス


「わ、我輩が孤児院に?」
 ラサ・ジェネシスは電話を受けながら少し驚いた口調で相手に言葉を返していた。彼女に来た話は孤児院に行く事になっていたはずの男性が急病でいけなくなってしまった、というものだった。代役を立てようにも孤児院でのパーティーは明日であり、誰も引き受けてくれる人間はいなかった。
「う、うーん‥‥」
 もちろんラサも明日は恋人である鵺の自宅でクリスマスパーティーをする約束をしていたのだけれど‥‥。
(鵺殿と過ごすクリスマス‥‥すごく楽しみにしていたんだけどナ‥‥)
 もちろん急に話が来たわけだから断る事は可能だけど、その場合、ラサが恋人とクリスマスを過ごす為にパーティーを楽しみにしている子供達を見捨てるという事にも繋がり、どうしてもラサには見捨てる事が出来なかった。
「皆が楽しくないト、我々もきっと楽しくナイヨ‥‥明日は鵺殿と一緒に孤児院に向かうのデス」
 ラサの言葉を聞いて、相手も「本当にすみません‥‥すごく助かります!」と何度も感謝の言葉を述べて、電話を切った。
「‥‥さて、鵺殿に電話しなくてハ‥‥」
 ラサは勝手に予定を変えた事で怒られるかもしれない、と不安を募らせながら鵺に電話をした――が、鵺は怒る事もせず、孤児院に行く事を了承してくれた。
 それに電話を切る時「アタシ、子供大好きだし優しいラサちゃんも大好きよ♪」と言われ、ラサが電話を切った後に悶えていたのは言うまでもない。


 そして翌日――。
「鵺殿! 孤児院に確認したらクリスマスツリーが小さいのしかないらしいカラ、これから伐採に行こうと思っているんダガ!」
 朝も早く‥‥いや、夜も明けきらぬうちにラサは再び鵺に電話をして告げた。この言葉に寝ぼけ半分だった鵺は一気に目が覚めてしまう。
「分かったわ。ラサちゃんが子供の事を考えて大きなツリーがいいというのは凄く分かったんだけど、自然の事も考えて今回は諦めましょうね」
 鵺の言葉に「ム‥‥」とラサは言葉に詰まる。
「確かに大きなツリーは子供達も喜ぶでしょうけど、クリスマスが終わった後はツリーを管理するのが大変だと思うの」
 優しく諭され「分かった、我輩諦める‥‥」とラサは鵺に言葉を返した。
(‥‥鵺殿、最近我輩の扱いがうまくなったような気が‥‥)
 首をかくりと傾げながらラサは心の中で呟く。

 そして孤児院のパーティーが始まる少し前にラサと鵺は2人で孤児院へとやって来ていた。
「あら? ラサちゃんがトナカイなの? サンタの服も可愛くて似合うと思うのに」
 トナカイの着ぐるみを着ているラサを見て鵺が残念そうに呟く。
「でも2人でサンタになっちゃうと紛らわしいと思うのデス。それとも鵺殿がトナ「嫌よ」‥‥ですよねー」
 最後まで言わなくてもラサが言いたい事が分かったのか、鵺は言葉の途中で「嫌」と主張した。
 鵺の言葉を聞いて、ラサは苦笑し「これがプレゼントの袋デス」と大きな白い袋を鵺へと渡した。
「お、重いわね‥‥ま、まぁ子供の人数を考えれば色々入ってるんでしょうけど‥‥」
 鵺が袋を重そうに持ち、ラサと鵺は2人で「じゃんじゃーん! サンタさんですヨ!」と広間へと入っていく。
「あんたはトナカイじゃん」
 鋭い突っ込みがラサを襲う。確かに子供の言いう通り、ラサはトナカイなのだから「サンタさんとトナカイさんですヨ!」と自己紹介するべきだったのかもしれない。
「はい、良い子にサンタさんからプレゼントよ♪」
 男の子には鵺が、女の子にはラサがプレゼントを渡していく。ちなみに「アタシ、男の子にプレゼント渡したいわ!」という鵺の我儘で何故か男の子は鵺担当になってしまった。
(わ、我輩‥‥何か敗北感ガ‥‥)
 がっくりと項垂れるラサだったが「項垂れてないでさっさとプレゼントちょうだいよ」と催促する子供の声で我に返り、プレゼントを渡していく。
 素直にプレゼントを受け取る子供もいれば「プレゼントはいらないから、お父さんたちに会いたい‥‥」と泣き始める子供もいた。
「ほ、ほら楽しくお歌でも歌おうヨ!」
 泣きじゃくる子供を必死に宥めて、ラサは子供たちが歌いやすいようにと1人、歌い始める。
(‥‥戦争が終わったら、こんな仕事もイイナァ‥‥もちろん鵺殿も一緒に‥‥って我輩ってば何考えてるノダー!)
 1人で真っ赤になり、首を大きく横に振りながらラサは子供たちと一緒に遊ぶ事を再開した。

 その後、孤児院でのパーティーを終えて2人は最初の予定通り、鵺の自宅へと赴いていた。
「そういえば、鵺殿は1人暮らしなのデスネ」
「えぇ、ちょっと狭い所だし散らかってるから恥ずかしいんだけどねー」
 鵺の言葉にラサは周りを見渡す、鵺は散らかっていると言っていたがモノトーンで整えられた部屋はどちらかと言えば綺麗な部類に入る。
(それに、十分広いと思うのデスガ‥‥)
 鵺の実家と比べれば確かに狭いのだろうが、1人暮らしをするには十分すぎるほどの広さがある家だった。
「そういえば、鵺殿と出会ってから一年カ‥‥これからも一緒にいられると嬉しいな」
 ぽつりと呟いたラサの言葉に「何当たり前の事を言ってくれちゃってるのかしら!」と鵺はラサの頭を軽く小突きながら言葉を返した。
「ねぇ、今日孤児院でラサちゃんを見てて思ったんだけど‥‥あなたって、良い母親になれるんじゃない?」
 鵺の突然すぎる言葉にラサは飲んでいたジュースを思いっきり噴き出す。
「な、ななななな何を‥‥っ!?」
「だって、最初は泣いてた子もラサちゃんのおかげでパーティーを楽しんでたみたいじゃない。あれ見て思ったのよねー」
 うふ、と意味深な笑みを浮かべながらラサをちらりと見る。
「思った‥‥? 何ヲ‥‥?」
「いつでもアタシのお嫁さんに出来るなぁって♪ やっぱり結婚する人は子供好きの人がいいじゃない? アタシも子供は大好きだし♪」
 ふ、とほほ笑みながら鵺はラサの耳元に口を寄せて「いつか、俺が攫ってあげるから楽しみにしてるんだよ?」といつもの冗談めかした声色ではなく、低い声で囁かれる。
 ちなみに、ラサは鵺の言葉を聞いてまるで石にでもなったかのように固まってしまった。
「ご飯食べたら一緒に寝ましょうか♪ 今日は特別寒くなるみたいだからね」
 鵺は晩御飯の準備をしながらラサへと言葉を投げかけ、早くその日が来ればいいナ‥‥と心の中でラサは呟いていたのだった。


END


―― 登場人物 ――

gc2273/ラサ・ジェネシス/16歳/女性/イェーガー

gz0250/鵺/26歳/男性/エキスパート

――――――――――
ラサ・ジェネシス様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回はクリスマスドリームノベルでしたが、
内容の方はいかがだったでしょうか?
ご要望通りに仕上がっていると良いのですが‥‥!

それでは、今回も書かせていただきありがとうございました!

2011/11/24
WF!Xmasドリームノベル -
水貴透子 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2011年11月25日

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