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『豪快チェンジ! 戦うサンタ☆紫狼 』
村雨 紫狼(ia9073)


 釣瓶落としに暮れた神楽の町を行く開拓者がいた。
『マスター、すっかり暗くなりましたですっ』
 その男の足元で顔を上げたのは、朋友である土偶のミーアである。土偶と言ってもそんじょそこらの土偶とは違い、情熱を込め女性型にすることを優先して造形しているので非常にスタイリッシュである。
「まー、冬だしなー」
 ミーアを見返し村雨 紫狼(ia9073)がすっかり緩みきった顔で答えた。今日はギルドで依頼を物色し万商店で支給品を受け取るなどしっかり開拓者として働いたのだ。ゆるゆるな感じで何が悪い。
『銭湯、楽しみなのです〜』
「こけて溺れないようになー」
 これかから行く銭湯を思い浮かべ、きゃるんと脇を締めて両拳を胸の前で合わせるミーア。海なら沈んでしまうことを知っている紫狼は軽く注意してやるのだが。
『あ、マスター。広場に誰かいるですっ』
 ミーアの視線を紫狼が追うと、白髪に白い髭を豊かに蓄えた大柄な老人がいた。と、こちらの視線に気付いたようで、手招きをするではないか。
「ワシはもう、『暮レ暮レ団』と戦う気力も体力もなくなってしもうた。ここで会ったも何かの縁。アンタに、子どもたちへの希望を託す」
「じいさん、あんた……」
 寂しそうな老人の視線に胸を打たれた紫狼は真顔をする。ふっ、と老人の顔に笑みが浮かんだ。
「この変身リングを装着すれば、理由も使命も分かろう。……あんたの、その小さな女の子を見る優しい目つきに、ワシは賭けた。もう、暮レ暮レ団は迫っておる。では、よろしくの」
 それだけ言って老人は消えた。
 はっとした紫狼の右手の平には、一対の小さな指輪があった。飾り気はないが、共にサンタクロースと刻印されている。
『マスター、何かが近付いて来てるですっ』
「何?」
 ばっ、と世界観無視なすたじゃんを翻し振り向く紫狼。その先には、二本の触手で二足歩行をする人物大のタコの集団が迫ってきていた。
「一体あいつらは……。ぐおっ」
『マスター』
 いきなり膝をつく紫狼。ミーアは心配して声を掛けるのだった。
「……サンタだ」
 紫狼は力強く顔を上げるとそれだけ言った。
 いや、テンション高く飛び跳ねたぞッ!


「いよっしゃあー! これで合法的に幼女たんたちの深夜お宅訪問できますYO☆」
『マ、マスター?』
 状況がわからずぐるぐる目を回しているミーア。すると突然、ぽんと紫狼の頭上右手に白い天使のような小さい紫狼の映像が浮かび上がった。
「あー……。失敗、サンタマジ人選大失敗」
 やれやれと頭を左右に振りそんなことを言う天使紫狼。すると、ぽんと紫狼の頭上左手に黒い悪魔のような小さい紫狼の映像が浮かび上がった。
「ィエース性夜……げふげふ。聖夜は純真無垢な幼女たちにふさわすいいいっ!! まー俺ショタちゃうがなー。ついでにプレゼントってやんよ!!」
 問題発言を高らかに口にしてびしりと親指立てた右手を突き出している。
 どうやら紫狼の良心と暗黒面が映像化したらしいのだが、ちょっと待て。
『マスター、暗黒面と同じポーズして同じセリフ喋ってるです……』
「おっと。それどころじゃないって、ミーア。暮レ暮レ団が迫ってる。とにかく逃げるぞ。……おおおおおっ。来い、サンタハリケーン!」
 紫狼が叫ぶと、亜空間からトナカイ二頭立てのソリが現れた。白い大きな袋もある。
「さあ、とにかく走り回るぜっ!」
 ミーアと乗り込み早速出発させる紫狼。暮レ暮レ団のタコ怪人どもの触手が直前で急発進した。
「ひゃっ、はーっ!」
 ソリは駆ける。
 しゃんしゃん鈴の音を響かせて。
 しかし、何でも欲しがる暮レ暮レ団は街のそこら中に隠れていたらしく、長屋の影などから突然現れ紫狼に襲い掛かる。
「こいつら暮レ暮レ団は、あのじいさん、サンタクロースがチビッ子に配るはずのプレゼントを狙ってやがんだ。とにかく、プレゼントのつまった白い大きな袋を守りつつ反撃するぜっ」
 紫狼、絶妙な手綱捌きで行く手を阻む暮レ暮レ団をソリやトナカイで轢いている。
『それはいいのですがマスター、仲睦まじく手をつないで歩いたり抱き合ってたりする恋人たちを激しく轢いてるです〜』
「いーんだよ! 街にはびこるリア充どもはトナカイでなぎ倒しだっ! まさにレッドクリスマス〜」
 ああ、紫狼。ついでに本当に恋人同士も轢きまくっているようで、このあたりはもう私怨としかいいようがない。ついでに返り血を浴びた姿は文字通り以下略っ!
 そして、防火広場でついにソリを止めた。
「出てきたな、親玉め」
 目の前には、大柄なタコ怪人が今までの小柄なタコ怪人数匹を引き連れ立ち塞がっていた。そして、紫狼の背後にも小柄な暮レ暮レ団が追いついてきた。包囲されてしまったぞ。どうする、紫狼。
『どうしますです、マスター』
「うろたえるな、ミーア。……変身リングで豪快チェンジ!! サーンタクロ―――ス!!!」
 静かな聖夜に響く変身の雄叫び。
 ばばっ、と右拳と左拳を交互に袈裟に突き上げた。両中指に装着していた変身リングが輝き、いま、紫狼の目の前に聖なる「X」字を残光で描き上げる。
 その輝きは閃光となり、光の影の中で紫狼の姿が変わったではないかッ!
「ふ、派手に行くぜ!!」
 まばゆいばかりの光が収まると、すたじゃんじーぱん姿の紫狼が真っ赤なサンタスーツになっていた。悪の親玉をびしりと指差している。ついでにドグーロイドのミーアもミニスカサンタ姿で横に控える。
「ヤレッ!」
「暮レ暮レッ!」
 ボスタコが部下に指示する。これに敢然と立ち向かう紫狼。
「おおおっ!」 
 鉄拳で砕く紫狼。縦の殺陣。
「愛と正義と真実とがっ!」
 パンチ力(りょく)のキックで叩く紫狼。横の殺陣。
「町と幼女の平和を守るっ!」
 そして拳を固めて響け、紫狼。勝ち誇り雄叫びを上げるぞッ!
「オノレッ!」
 残ったボスタコがかかって来た。紫狼は鎖を取り出し背を向ける。どうする気だ?
「そんなにこれが欲しいならくれてやるよっ」
 なんと、サンタの白い袋に鎖をつけ、サンタハンマーとしてブン投げた。
「袋の中の夢の重さを舐めんなよ」
 ところが!


――ガシッ!
 おおっ。
 ボスタコは腰をどっしり落としてサンタハンマーを受け止めたではないか。
 たちまち、両者が手にした鎖の引き合いになる。
「くっ。ミーア」
『はーい。ミニスカに合わせてライムグリーンの縞パンなのですう♪』
 呼ぶ紫狼の声にミーアが動いた。真っ赤な衣装でハイジャンプするとくるくる回って土偶キックをどぐぅ、と身動きできない敵に叩き込んだ。無駄に光をまとっているものだから、しっかりはだけたスカートの裾から目にもまぶしい健康的な色の横縞下着がちらりん☆してたり。
「グオッ」
「うむ、ミニスカサンタコスにパンチラ必須うううっ。……ミーアっ」
『はいなのですっ』
 きらりん☆とイイ顔をして世界の常識を強調した後、一気に距離を詰める紫狼。助走をつけて今、踏み切った。そして着地したばかりのミーアももう一度ちらりん☆しながら跳躍した。
「トドメだ、サンタ―――ダブルキック!」
 横と縦からのキックに、ついにボスタコは瘴気と消えた。
「ふっ。合法的な幼女たんたちの深夜お宅訪問を邪魔する奴らはこうなるのだ」
『どっちが悪だかわからないです〜』
 勝ち誇る紫狼。これで安心して不法侵……もとい、贈り物ができると夜の街に消えるのだった。

 さて、多くのチビッ子宅を訪れた紫狼。
 もちろん、ろりぃ隊☆のコクリ・コクル(iz0150)(11歳)の寝室も訪れた。
「ここがコクリたんの部屋か〜」
 きょろ、と周りを見た紫狼は寂しそうな顔をした。身一つで神楽の都に来たコクリに、所持品は少ない。
「奮発してやんZE」
「ん……」
 こと、と大きなプレゼントの箱を置いたところで、ボブでさらさらな髪が動きコクリが寝返りを打った。目を閉じたままの、小さな寝息を立てる顔がこちらを向いた。
「可愛い顔しやがって」
 つん、と頬を指先でそっとつつくと、「ううん」とか口をむにゃむにゃして反応した。まったくの無防備な顔は、いつもとはまた違う無垢な感じがある。
「ミーア、これだよ。俺たちが守らなくちゃならねぇのは」
『やってることは犯罪一歩手前なのですが、マスターかっこいいのです〜』
 珍しく真顔の紫狼にミーアは感動するのだった。というか、町のカップル轢いたのは完全に犯罪ですよ?


「はっ!」
 ここで、紫狼は目を覚ましていた。額から塗れた手拭いがずり落ちる。
『マスター、目が覚めましたですか。銭湯でのぼせて倒れて、ミーア心配したです〜』
「そうか。夢か……」
 惜しかったな、などと思いつつそのまま眠りに落ちるのだった。

 翌朝。
 珈琲茶屋・南那亭にて。
「よー、マヨたん。おはよう」
「あ。紫狼さんとミーアちゃん、おはようございます。いらっしゃいませ〜」
 南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)が出迎えられ早速席に着き珈琲を頼む。
「いや〜。昨晩、いい夢見てな〜」
「ふふっ。紫狼さんはいつも楽しそうに話しますよね〜。……あらっ、コクリちゃんいらっしゃい」
 気分良く夢の話をしようとした紫狼。そこへ、コクリが入店してきた。
『わあっ。コクリさん綺麗なのです〜』
「ありがと。サンタって人から贈られて来たんだよ☆」
 照れながらスカートの裾をもじもじと弄ってるコクリの姿は、ホワイトチョコをイメージした落ち着いたレース刺繍のセミロングドレス姿だった。社交界に出ても恥かしくないフォーマルスタイルは身体にピッタリと密着しているが、布地の色合いの清潔感に背徳な印象はない。
 これを見た紫狼は「あ」と間の抜けたような表情をしていたが、すぐににやりと不敵な笑みをした。
 いつか、彼がコクリのためにデザインした服と一緒だから。
 いや、それだけではない。
「コクリたん。とっても似合ってるZEっ!」
 びしりと、夢の中のサンタの時のようにぴしりと指差す紫狼に、コクリは真っ赤になって照れて「ありがとう、紫狼さん」とお礼の言葉を口にするのだった。
 もちろん、夢の中で奮発したコクリへのプレゼントと同じものでもある。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ia9073/村雨 紫狼/男/27/サムライ
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士
iz0135/深夜真世/女/18/弓術師

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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村雨 紫狼 様

 いつもお世話様になっております。「YOU好きにヤッちゃいなYO☆」の一言を添えたご依頼、ありがとうございました。結果、リア充に八つ当たりをしつつもちゃんと敵を倒すという幾分真面目な内容になってしまいましたが、楽しく描かせていただきました。古いネタもありますが、楽しく読めるのではないかと。

 お気に召されることを願いつつ、紫狼さんのさらなる活躍を楽しみにしつつ。
 この度はありがとうございました。
WF!Xmasドリームノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2011年12月05日

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