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『雪の降る日に‥‥ 』
ロシャーデ・ルーク(gc1391)


クリスマス、それは1年の中で恋人達が最も盛り上がる日。
街中もクリスマス一色に染められ、綺麗なネオンが恋人達の甘い雰囲気を更に甘くしていた。
街を歩く人達もクリスマスが近い事で浮足立っているようにも見える。

「明日は雪が降り、ホワイトクリスマスになるでしょう」

天気予報のアナウンサーの言葉が聞こえ、近くにいた少女たちも嬉しそうに言葉をかけあっている。

ホワイトクリスマス、貴方は誰とどんな風に過ごしますか?

視点→ロシャーデ・ルーク

 恋人たちが一緒に過ごす聖なる日。
 ロシャーデ・ルークとリック・オルコットはオーロラを見る為にアラスカへと来ていた。
「傭兵稼業で色んな所に飛びまわっているけど、流石にアラスカに来た事はなかったよ」
 リックの呟きに「そうね、私も初めて訪れるけど‥‥なかなか寒いわね」とロシャーデは身体を震わせながら言葉を返した。
「とりあえず、ホテルに荷物を置いて温かい物でも飲もう。このまま外にいるとオーロラを見る前に風邪を引きそうだ」
 肩を竦めながら言うリックに「そうね、まずは身体を温めましょう」と言葉を返し、予約していたホテルへと2人で向かい始めた。
(オルコット君と一緒に見るオーロラはきっと素敵なんでしょうね、凄く楽しみ‥‥)
 前を歩くリックの姿を見ながらロシャーデは微笑み、繋ぐ手の力を少しだけ強めた。
「ん? 寒い?」
 力を強めたのを寒かったせいと勘違いしたのか、リックが心配そうに言葉を投げかけてくる。
「ううん、そんなんじゃないわ。心配しなくても大丈夫」
「そう? それならいいけど‥‥」
 本気で心配する態度にロシャーデはまた自然と微笑みが浮かんできていた。
「オルコット君は心配しすぎよ」

 それから、2人はチェックインを済ませてホテルの自室で凍えきった身体を温めていた。
「やっぱり部屋の中は温まるわね」
 ロシャーデは紅茶を飲み「ほぅ」と息を吐きながら呟く。
「コゼット、夜はもっと冷えるからちゃんと厚着をしていかないと駄目だからな」
 リックから告げられた名前にドキリと胸が高鳴るのをロシャーデ‥‥いや、コゼットは感じていた。
 ロシャーデ・ルーク、傭兵稼業をしている時に用いている名前。友人や仲間でさえ、本当の名前である『コゼット・ラ・トゥール』を知っている者は少ない。
(私自身が教えたのだけど、コゼット――その名前を知っているという事は、信頼するに足る証、名前を教えても構わない、本当の名前を呼んでもらいたいと思う人だから‥‥)
 紅茶のカップの暖かさのように、リックから名前を呼ばれるだけでじんわりと胸の中に暖かい何かが流れ込んでくる、コゼットはそんな気がしていた。
「コゼット?」
「あ、な、何でもないわ」
「それならいいけど」
 コゼットはリックの顔を見れずにいたが(きっと、全部わかってるんでしょうね)と心の中で呟き、恥ずかしさで顔が更に熱くなっていった。

 そして、夜は更けて――‥‥2人はしっかりと着こんでからオーロラを見る為に外へと出た。
「流石に冷えるな、防寒装備がないと凍える」
 ぽつりと呟くリックに「そうね、冷たいって言うより痛い感じがするものね」と苦笑しながら言葉を返した。
 風に髪の毛が靡き、首筋に冷たい風が吹き込んできてコゼットは寒さに身を震わせる。
 だが、次の瞬間――リックに強く抱きしめられる。
「え、え? もうこんなところ――‥‥」
 冗談なのかと首を後ろに向け、リックを見ると彼のその表情は冗談ではなく、どこか真剣なものであり、置いていかれそうな子供のようにも見えた。
「オルコット君?」
「何でもない、ちょっと寒くなっただけ」
 冗談っぽく言葉を返してきたリックだったけど、寒くなっただけ、ではない事がコゼットにも見て分かる。
「大丈夫、ずっと一緒よ、何処にもいかない」
 その言葉でリックは安心できたのか、緩く首を縦に振って答えた。

 あれからオーロラを見る場所へと移動した2人。
「コーヒー飲む? ウイスキーもあるけど」
 リックがカップを差し出しながら問いかけてくる。
「ありがとう‥‥暖かい」
 リックはウイスキーの方を飲み、空を見上げる。
「オルコット君は今までにオーロラを見た事は?」
「当然ながら初めて見るよ、ちゃんと見えるか、どんな風に見えるか楽しみだ」
 そう言葉を返しながらリックはまるで子供のようにはしゃいでいるようにも見えた。
(私も楽しみだわ‥‥大切な人と見る幻想的な空がどんな風にこの目に映るのか‥‥)
 コゼットは心の中で呟きながら、リックと同じように空を仰ぐように見上げた。

 その後、2人の視界に映った幻想的なオーロラに感激するという言葉がぴったりだった。空をゆらゆらと流れるように現れるオーロラは幻想的であり、神秘的でもあった。
「え、何?」
 突然リックに身体を抱き寄せられ、コゼットは驚いたようにリックを見る。
「ん? 身体を寄せ合った方が暖かいよ?」
 リックの言葉を聞き(私が寒さで震えてる事、気づいてたんだ)とコゼットは心の中で呟く。
「‥‥ありがとう」
 そっと身を寄せ、リックから伝わってくる暖かさに暫くの間コゼットは浸っていた。

 オーロラを見終わった後、2人はホテルへと戻って来ていた。
「はぁ‥‥綺麗な物だったね。自然って凄い、改めて実感させられたよ」
 部屋に戻ってきた後、リックはベッドに腰掛けながら興奮が治まらないのか言葉を紡いでいた。
(ふふ、可愛いわね)
 コゼットは心の中で呟き「そうね、凄く綺麗だったし幻想的で素敵だったわ」とリックに言葉を返した。
「とりあえずお風呂にでも入って温まりましょう。部屋の中にいるのに温まる気がしないもの」
 コゼットが呟くと「何なら一緒に入る?」と冗談めかしてリックが言葉を返してくる。
「もう、馬鹿‥‥」
 呆れたように言葉を返し、コゼットは着替えとタオルを持って浴室へと向かって行った。
(ふぅ‥‥手足の感覚が戻ってきたかしら。オーロラは綺麗だったけど寒さはやっぱりつらかったかな)
 お湯で手足を温めながら、コゼットは心の中で呟く。
 だが、お風呂の中で温まっていると先ほどオーロラを見ている時に抱き寄せられた感覚が甦ってきて、少しだけ恥ずかしくなってくる。
(でも、いつまでこうしていられるんだろう‥‥)
 コゼットは心の中で呟き、ぽちゃん、とお湯で遊ぶ。
 2人は傭兵、バグアやキメラと戦う能力者。大きな作戦に出かける事もあれば、町などに現れたキメラ退治に赴く事もある。
 恐らくどちらかが傭兵をしている恋人というのは、平穏無事から一番かけ離れているんだろうとコゼットは理解している。
(でも、これから先もオルコット君と一緒にいたい。楽しい事も悲しい事も、色んな事を半分ずつ分け合って感じていたい)
 ぎゅ、と自分の身体を抱きしめながらコゼットは心の中で呟いたのだった。

 コゼットがお風呂から上がり、入れ替わるようにしてリックが浴室へと入っていく。
 そしてコゼットはリックがお風呂に入っている間、窓からぼんやりと外を眺めていた。
(オーロラも綺麗だったけど、ちらちらと見える町の灯りも綺麗‥‥)
「何、見てんの?」
 後ろから抱きしめられ、コゼットの肩にリックは顎を乗せながら問いかけてきた。
「外を見ていたの。オーロラも綺麗だったけど、町の灯りも綺麗なのよ」
 コゼットに促されるようにリックが外を見て「本当だ、綺麗だね」と言葉を返してくる。
「オルコッ――‥‥ん」
 リックの名を呼ぼうとしたが、それは途中で遮られてしまい、コゼットの唇に暖かな温もりは伝わってくる。
 やがてその暖かさは激しさを増し、不慣れなコゼットはその激しさについていくのがせいいっぱいだった。
「‥‥は、ぁ‥‥」
「相変わらず慣れないね」
 くす、と笑いながらリックがコゼットに言葉を投げかける。
「し、仕方ないじゃない‥‥」
 コゼットは息を荒くし、顔を真っ赤にしながら抗議するように呟く。
「もちろん、俺はその方が嬉しいけど――っていうか、先に言っておくね」
「先に‥‥? 何を?」
 リックはコゼットの耳元に口を寄せながら「今夜は寝かさないからね」と小さな声で呟く。
「なっ‥‥」
 コゼットは顔を真っ赤にしながら(好きな人になら、何をされても構わないわ‥‥)と心の中で呟きながら、自分の身体に感じる大好きな人の重みを感じていたのだった。

END






―― 登場人物 ――

ga1391/ロシャーデ・ルーク/女性/22歳/グラップラー

gc4548/リック・オルコット/男性/20歳/ドラグーン

――――――――――
ロシャーデ・ルーク様>

こんにちは&初めまして。
今回はクリスマスドリノベにご発注いただき、ありがとうございました。
内容の方はいかがだったでしょうか?
楽しんでいただける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、今回は書かせていただきありがとうございました。

2011/12/26

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2011年12月26日

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