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『雪の降る日に‥‥ 』
白虎(ga9191)

クリスマス、それは1年の中で恋人達が最も盛り上がる日。
街中もクリスマス一色に染められ、綺麗なネオンが恋人達の甘い雰囲気を更に甘くしていた。
街を歩く人達もクリスマスが近い事で浮足立っているようにも見える。

「明日は雪が降り、ホワイトクリスマスになるでしょう」

天気予報のアナウンサーの言葉が聞こえ、近くにいた少女たちも嬉しそうに言葉をかけあっている。

ホワイトクリスマス、貴方は誰とどんな風に過ごしますか?

視点→白虎

 12月25日、この日は恋人たちとしっ闘士が盛り上がる日。

「キリーお姉ちゃん、今日は遊園地に行かにゃ「寒いから嫌」‥‥‥‥」
 白虎は勇気を振り絞って、もう一度言おう――白虎はしっと団総帥でありながら(←ここ重要)勇気を振り絞ってキルメリア・シュプールをクリスマスデートに誘った。
 しかし白虎のお誘いの言葉は最後まで紡がれる事はなく『寒いから嫌』と何とも悲しい断り方をされてしまった。
 ツー、ツー、と寂しい音が電話から響き渡り「キリーお姉ちゃああああんっ!」と携帯電話を壊すような勢いで再度電話を掛けた。
「何? マジで寒いんだけど大した用件じゃないなら切「遊園地に行こうよ! お願いだから行こうよ! お願い!」‥‥‥‥情けない男ね、あんた」
 あまりにも必死で白虎が頼む為、キリーは「仕方ないから付き合ってあげるわよ」とため息交じりに呟いたのだった。
 この時は白虎も予想していなかっただろう。折角のクリスマスデートなのに、とある人物と鉢合わせてしまうという事に‥‥。


「‥‥気のせいかにゃ‥‥待ち合わせ時間を1時間ほど過ぎてるような気がするんだが」
 遊園地の門の所で白虎はガタガタブルブルと寒さに震えながら呟く。ちなみに正確に言うと現在キリーは1時間56分42秒の遅刻である。むしろこれはもう『一時間ほど』ではなく『二時間近く』と表現した方が正しい。
 しかし、待ちぼうけを食らっている白虎にそんな可哀想な事を誰が言えるだろうか、いや、言える筈がない――‥‥多分。
「あれ? 何か見知った顔が門の所でガクブルってる」
 聞き覚えのある声が耳に入ってきて、白虎はギギギ‥‥と後ろを振り向く。するとそこには神崎・子虎と弓亜・優乃の姿があった。
「き、貴様ー! 何をしてるか! 今日はしっ闘士の日なんだぞ! そ、それを桃色するなんて邪道だにゃ!」
 ぎゃあぎゃあと白虎が騒いでいると「うるさいわよ! 他の人間に迷惑でしょうが!」とキリーが持っていたバッグ(ちなみにカド)で白虎を殴る。頭を押さえて痛がる白虎を見て、神崎と弓亜は憐みを込めた苦笑しかする事が出来なかった。
「で、でもさ‥‥もしかして、白虎くん――‥‥デート? デート?」
 明らかにからかいを含んだ声色で神崎が問い掛けてきて「ち、違うにゃ! り、リア充を粛清に来ただけなのにゃ!」と何とも苦しい言い訳を白虎が叫ぶ。
 本音では(何でこうなったのにゃー!)と叫びたいが、しっと団総帥としての建前がある為、叫ぶ事は出来ない。
「ふぅーん?」
 神崎が意味深な笑みを浮かべながら白虎に視線を向ける。
「それじゃ、一緒に遊びましょう? ね?」
「何ー!」
 突然の弓亜の提案に白虎が驚く。恐らくキリーに断られて以来の驚きであろう。
(な、何でこんな事になるのにゃ! これじゃキリーお姉ちゃんと一緒に遊ぶというボクの計画が台無しではないかー!)
 僕とキリーお姉ちゃんの邪魔をしないで! と叫べればそれが一番良いのだろう。しかし『しっと団総帥(非リア充団体)』――もう一度言おう。しっと団総帥(非リア充団体、だけど総帥は桃色なんです)としてはそれを叫ぶわけにはいかないのだ。
「うん、それがいいと思うよ。それとも何か問題でもあるのかなぁ? 白虎くん?」
 にっ、と神崎が微笑みながら白虎へ言葉を投げかける。
(く、くそー‥‥あの顔はすべてを知って邪魔してやろうという顔かー! よし、それならボクだって邪魔してやるのにゃ! リア充粛清にゃー!)
 心の中で己を奮い立たせ「い「さっさとしなさいよ。寒いのよ、このドヘタレが!」ぐぐぐぐぐ‥‥」と一文字しか話していない所でキリーによって殴られ、言葉を遮られる。
 ちなみに寒いので、叩かれた時の痛みも更に痛く感じてしまう。
 そして、何故かWデートをする事になった4人は遊園地の中へと入っていったのだった。


「キリーお姉ちゃん! 飲み物買ってきたにゃ「何で冷たいのよ! 温かい飲み物買ってきなさいよ、この役立たず!」ぎゃふん!」
 ばしーん、と強く叩かれる白虎。その隣では神崎と弓亜が桃色オーラを振りまいている。
「き、貴様らー! しっと団総帥の前で桃色とは良い度胸だ! ボクはこんな扱いなのに何でそっちばかり桃色オーラなのにゃー!」
 さらりと後半部分には本音が漏れている。
「とりあえずお昼の12時過ぎになったら、ここに集まってお昼ご飯は一緒に食べない?」
 弓亜の提案はまさに天の助けとも呼べるものだった。
「そうだね、そうしようか♪」
 神崎も言葉を返し、弓亜の手を引いてそのまま自由行動を開始し始めたのだった。

 神崎たちと別れ、白虎はこれから自分の行動をどうするべきか悩んでいた。
(しっと団総帥としては2人の邪魔をしに行くべきだと分かってるのにゃ‥‥し、か、し! ボクとしてはキリーお姉ちゃんと一緒に普通のデートもしたいのにゃ! あぁ、ボクは一体どうすればいいのにゃー!)
 頭を抱えてぐるぐると悩んでいると「馬鹿虎、何悩んでんのよ」とキリーがアイスを差し出してくる。
(こ、これは‥‥恋人たちの定番! あーん!?)
 どきどきしながらキリーとアイスを交互に見比べる。
「‥‥遅い! この馬鹿!」
 しかし悩みすぎたせいか、キリーからのアイスは顔面に『あーん』されてしまう。
「あああああああああ、冷たいのにゃ! 何かベタベタするのにゃ! こんなベタベタいらないのにゃあああああ!」
 必死に叫び顔を拭く白虎、しかし洋服で拭いてしまったため、ベタベタ感が半端ない。
(何なのにゃ、この扱いは一体何なのにゃ! そして顔が冷たい! 洋服もアイスで濡れ寒いのにゃああああ‥‥)
 踏んだり蹴ったり、悪い事に関して至れり尽くせりで白虎は本気で泣きたくなる。
「ほら、コーヒーカップにでも行くわよ」
 キリーから手を差し出され、白虎はドキドキしながら「にゃー」と手を差し出した途端――途端に激痛が走る。
「痛い! ゴムぱっちん痛い!」
「あははははは、馬鹿ね。本当はこっちにしようか悩んだんだけどね」
 そう言いながらキリーは逆の手を見せる。手のひらには画鋲が仕込まれており、ゴムぱっちんと同じくらい痛いだろう。いや、血が出る為こちらの方が痛いかもしれない。
(な、なんて恐ろしい奴なのにゃ‥‥流石はキリーお姉ちゃん‥‥)
 ずきずきと痛む手を抑えながらキリーを見ていると「さっさとコーヒーカップに行くわよ」と今度は悪戯も何もなく、手を繋いでコーヒーカップへと向かい始めたのだった。
 最初にコーヒーカップに乗り、悪乗りして回転しすぎた白虎はキリーによってリアル回転をさせられて目を回し、ジェットコースターに乗れば、事故で手が当たった事を恨まれ、下りた途端に飛び蹴りを食らい、お化け屋敷に入り、悪戯心からキリーを驚かせれば、白虎が「きゃー!」と叫ぶくらいに何度も殴られ、お化け役のスタッフに助けられる。
 これを普通のデートと白虎が呼ぶのなら、もはや哀れとしか言いようがない。
「そろそろお昼ね。今から集合場所に向かえばちょうどくらいでしょ――って何してんのよ、ノロマね」
 よろよろとキリーの後ろをついていくのは「何があった!」と問いたくなるくらいに衰弱した白虎の姿だった。


「な、何があったのかな‥‥白虎くん」
 恐る恐る神崎が白虎に問い掛けると「‥‥色々あったのにゃ、そう、色々‥‥」ともう色んな意味で神崎と弓亜は白虎が残念な人に見えた。
「とりあえずご飯でも食べようか。夜はパレードもあるし、イルミネーションも凄く綺麗らしいよ」
 話を誤魔化すかのように神崎が近くにあったレストランへと入っていき、白虎、キリー、弓亜も神崎の後ろについていく事にした。
(ちくしょう。こんな時には何も聞いてくれないのかにゃー!)
 弱った体と心で白虎は心の中で叫ぶ――が叫んだのが心の中なので誰にもその叫びが届く事はなかった。

「はい、優乃さん♪ あーん♪」
 神崎がハンバーグをフォークに刺して弓亜に差し出す。
「こ、子虎くん‥‥ちょっと恥ずかしいよ――でも、ありがとう」
 差し出されたハンバーグをぱくりと食べながら弓亜が言葉を返す。
「‥‥‥‥」
 目の前で繰り広げられる桃色きゃっきゃウフフを見せつけられ、白虎はもう爆発寸前である。
 それは『しっと団総帥』としてであり、決して自分が『あーん♪』を体験できないからではない、多分。
「き、キリーお姉ちゃん‥‥」
「はい、白虎――あーん☆」
 キリーが天使の笑顔で神崎のようにフォークに刺して白虎へと差し出す。
(天はボクを見捨ててはいなかったのにゃー!)
 白虎は嬉しさのあまり、勢いよくがぶりと食いつく――しかし数秒後に「ぎゃあああああ!」とのた打ち回りながら床を転がる事になってしまう。
「‥‥き、キリーちゃん。それってトウガラシよね‥‥?」
 弓亜が問い掛けると「あ、そうなの? キリー知らなかったぁ☆」と明らかに知っていた事を伺わせる口調だった。
(な、何でボクだけこんな扱いなのにゃ‥‥飯くらい大人しく食ってろにゃー!)
 水をがぶがぶと飲み、それでもひりひりと痛む口を押えながら、白虎が心の中で叫ぶ。

 お昼ご飯を食べた後、再び自由行動へとなる。先ほどと違うのはこのまま合流する事はなく、それぞれ解散するという事。
(も、もう一体ボクの存在意味がわからなくなってきたのにゃ‥‥)
 水流ジェットコースターからは落とされかけ(危険です、良い子は真似しちゃ駄目ですよ)、ミラーハウスでは鏡に頭をぶつけられ、それはもう酷い有様としか言いようがなかった。
「白虎、これからパレードだってー。もうそんなに時間が経ってたのね、全然気が付かなかったわ」
(ボクにとっては、長い長い長すぎる時間だったけどにゃー!)
 実際に口にしていえば、何倍にもして返される為、白虎は心の中で反撃をする。
「わぁ、綺麗‥‥」
 パレードを見ながら、キリーが目を輝かせる。たとえどんなに悪魔であろうが魔王であろうが、綺麗なものは好きなようだ。
「白虎」
「はっ、何なのにゃ!」
 名前を呼ばれ、さっと身構える白虎だったが今日最大の不意打ちを受けたのかもしれない。
「今日は楽しかったわ、ありがとう」
 普段の意地悪な笑顔ではなく、天使の振りをしている笑顔でもなく、キリー本来の笑顔で礼を言われ、白虎は一瞬だけぽかんとしてしまう。
(何という事にゃ‥‥あんなに酷い扱いを受けたにも関わらず、今の笑顔で全部帳消しに出来るのにゃー)
 でれでれとだらしない顔で白虎は心の中で呟き、再びパレードに視線を向けたのだった。


END


―― 登場人物 ――

ga0513/神崎・子虎/15歳/男性/ダークファイター
ga9191/白虎/10歳/男性/ビーストマン
ga0708/弓亜・優乃/18歳/女性/ファイター
gz0278/キルメリア・シュプール/13歳/女性/サイエンティスト

――――――――――
白虎様>

こんにちは&いつもお世話になっております。
今回は【辛い時々甘い】というご指定でしたが、
内容の方はいかがだったでしょうか?
辛いというか、激辛になっているような所が多々ありますが‥‥
気に入っていただける内容に仕上がっていれば嬉しいです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました。


2011/12/27
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2011年12月28日

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