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『雪の降る日に‥‥ 』
瑞姫・イェーガー(ga9347)


クリスマス、それは1年の中で恋人達が最も盛り上がる日。
街中もクリスマス一色に染められ、綺麗なネオンが恋人達の甘い雰囲気を更に甘くしていた。
街を歩く人達もクリスマスが近い事で浮足立っているようにも見える。

「明日は雪が降り、ホワイトクリスマスになるでしょう」

天気予報のアナウンサーの言葉が聞こえ、近くにいた少女たちも嬉しそうに言葉をかけあっている。

ホワイトクリスマス、貴方は誰とどんな風に過ごしますか?

視点→瑞姫・イェーガー

 12月25日、その日は恋人や夫婦にとっては最も大事な日なのかもしれない。
「‥‥‥‥はぁ」
 隣からは妹のようで娘のようでもある雪代・蛍の盛大なため息が聞こえる――が、瑞姫・イェーガーは聞こえない振りをしていた。
 最初、雪代は彼氏である七海 鉄太に手作りケーキを食べさせたいと瑞姫に相談してきて、一緒に作ろうという話になった。
 しかし、せっかくのクリスマスなのだから自分の夫とあわせて皆でご飯を食べれば楽しいだろうという思い、雪代に「皆で食事会をしようよ」と誘った。
 その時の雪代の表情を言葉で表すならば『小さな親切、大きなお世話だよ』と言いたかったに違いない。
「ちょっと鉄太に電話してくる」
 雪代はバッグから携帯電話を取り出して、台所から離れていく。その様子を見て、瑞姫は微笑ましそうに雪代の背中を見ていた。
(初々しいなぁ‥‥私と彼もあんな時期があったっけ)
 ふふ、と瑞姫は心の中で呟き、今はここにいない大好きな人を想う。
「もしもし、鉄太? 今日は予定は空いてるって言ってたよね? 6時になったらいつもの所で待ち合わせだからね。遅れてきたら許さないんだからね」
 廊下から聞こえる雪代の声に「ふふ」と瑞姫はお腹を撫でながら(いつか蛍も母親になるんだろうなぁ)と心の中で呟いていた。
「待たせてごめん。6時に待ち合わせだからそれまでに作っちゃわないと‥‥」
「大丈夫、時間はまだいっぱいあるんだし慌てないで作っていこう」
 エプロンをつけながら呟く雪代に瑞姫が言葉を返すと、雪代は首を縦に振って答えてきた。

 それから最初に2人が作り始めたのはケーキだった。もちろんケーキを作る事が雪代の目的でもあったため、最初に作る事になった。
「‥‥作れるかな‥‥レシピ見る限り、初心者にはちょっと厳しそうなんだけど‥‥」
 不安そうに雪代は『ケーキの作り方』という本を見ながらため息混じりに呟いている。
(きっと無謀だったとか諦めようとか考えてるんだろうなぁ)
 苦笑しながら瑞姫は雪代を安心させるように肩をぽんと優しく叩く。
「瑞姫?」
「誰だって最初は初めて作る時があるんだよ。難しいから諦める――だったら何で蛍は手作りケーキを作りたかったの? 鉄太の為なんでしょう?」
 こくりと雪代が首を縦に振って答える。
「だったら頑張ろう」
 瑞姫の励ましに落ちかけた気分が再浮上してきて、雪代は鉄太の為にケーキを作る意欲を見せ始めたのだった。

「えぇっと‥‥あとは、これをすれば完成かな? でもデコレーションとかちょっと不恰好になっちゃったけど、大丈夫かなぁ」
 あれから数時間、瑞姫の教え方も良かったせいか、あまり躓く事なくケーキ作りを終える事が出来た。見た目は確かに店売りのケーキの方が良いのだが、その分、店売りのケーキにはない雪代の愛情や頑張る気持ちがたくさん込められていた。
(母親って‥‥こんな気持ちなのかな)
 そんな雪代の様子を見て、何故か切ない気持ちになり、瑞姫は気が着けば雪代を強く抱きしめていた。
「どっ‥‥どうしたの? いきなり‥‥危ないじゃない‥‥」
 瑞姫が抱き着いた事で、雪代の手元が狂いそうになり、ちょっと怒りながら視線だけを後ろに向けると、真剣な表情の瑞姫の顔が見えて、雪代は何も言えなくなってしまった。
「‥‥どうしたの?」
 雪代は心配そうな表情をして、瑞姫へと問いかけてくる。
「ごめん‥‥なんだか分からないけど、思いが止められない――‥‥暫く抱きしめさせて」
 ぎゅ、と抱きしめる力を少し強めるが、雪代は嫌がる素振りは見せなかった。
 それなら暫く経った頃「ごめんね」と涙を拭いながら瑞姫が離れながら呟く。
「ううん、別に構わないけど‥‥」
 それから、2人はケーキ作りを終え、時計を見ると5時前だった。
「鉄太との待ち合わせ場所に行ってくるね」
 時計を見ていた雪代がぽつりと呟き、瑞姫は驚きで目を丸く見開く。彼女が驚くのも無理はない。まだ時間は5時前であり、雪代と鉄太が約束しているには6時だったはずだからだ。
「え、もう? まだ5時前なのに‥‥? 外は寒いし、時間を合わせていった方がいいんじゃないの?」
 心配そうに瑞姫が言葉を投げかけると「うん、そうなんだけど‥‥」と、大人しく待つつもりはないらしい。
(まぁ、クリスマスだから無理はないかもしれないね‥‥蛍も大好きな鉄太に早く会いたいだろうし‥‥)
 苦笑しながら瑞姫は「分かった、メインディッシュは私が作っておくから」と雪代にコートをマフラーを渡して見送る事にした。
「ありがとう!」
「行ってらっしゃい」
 差し出したコートとマフラーを受け取りながら雪代は嬉しそうに出かけていく。
 しかし、玄関の所で「あ、そうだ。これ持って行って」と一対のシルバーリングを瑞姫から渡される。
「あっ‥‥ありがとう‥‥っていいの?」
 シルバーリングと瑞姫を交互に見比べながら雪代が問い掛けてくる。
「お代は好きな時でいいからさ。それじゃ‥‥行ってきなよ――だけど、帰ってきなよ? 鉄太に食べてもらうんでしょ?」
 ケーキを指差しながら瑞姫が雪代に言葉を投げかけると「うっ‥‥そう、来たか」と雪代は苦笑しながら言葉を返した。
 雪代は赤くなった顔をマフラーで隠しながら、今度こそ出かけて行った。
「行ったか、それじゃ‥‥メインディッシュを作ろうっと」
 ふぅ、と小さくため息を吐いて2人が帰ってくるまでにメインディッシュを作り終えようと台所へと戻っていく。
(‥‥何か、さっきまで蛍と2人でいたせいか、寂しく感じちゃうな‥‥)
 シンと静まり返る台所で料理をしながら瑞姫が心の中で呟く。
 そして、お腹の中に確かに息づいている小さな命の事を考え「来年は私も彼も親になるんだ‥‥」としみじみ呟いた。
 瑞姫自身、自分が『母親』になれるのか、不安に思う事が幾度もあった。だけどそのたびに1人ではなく、彼がいたからこそ乗り越える事が出来て、彼と一緒に親になる事を頑張ろうと考える事が出来た。
(まだ、彼には言ってないけど、私は『したい事』が出来たんだよね‥‥生まれてくる子供に料理とシルバーアクセサリーの作り方を教えて、一緒にやっていきたい)
 押しつけにならなければいいんだけど、と小さな声で呟き「早く、生まれておいで‥‥お父さんもお母さんも待ってるから」とお腹を撫でながら優しく微笑んだのだった。
「あ、帰ってきたかな‥‥おかえり」
「おかえり」
 帰ったのは7時少し前で、テーブルの上にはずらりとごちそうが並べられていた。
「うっわ、すっげぇうまそう!」
 ごちそうを見てはしゃぐ鉄太に「ケーキは蛍が鉄太の為にだって」と瑞姫がこっそりと鉄太に教える。
「わぁ、チョコケーキだ。俺、ケーキはチョコが一番大好きなんだ! ありがとうな、蛍!」
 嬉しそうに言う鉄太を見て、瑞姫が「頑張った甲斐があったね」と雪代にこっそりと話しかける。
「うん、教えてくれてありがとう。瑞姫」
 照れるようにお礼を言う雪代を見て「どういたしまして」と瑞姫が言葉を返す。
 その後、瑞姫の夫の帰りを待ち、思い出になるクリスマスパーティーが開始されたのだった。


END




―― 登場人物 ――

ga9347/瑞姫・イェーガー/23歳/女性/エースアサルト
gc3625/雪城・蛍/14歳/女性/ハーモナー
gz0263/七海 鉄太/18歳/男性/フェンサー

――――――――――
瑞姫・イェーガー様>

こんにちは。
今回はご発注いただき、ありがとうございました。
話の内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました。

2011/12/28
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2011年12月29日

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