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『雪の降る日に‥‥ 』
雪代 蛍(gb3625)

クリスマス、それは1年の中で恋人達が最も盛り上がる日。
街中もクリスマス一色に染められ、綺麗なネオンが恋人達の甘い雰囲気を更に甘くしていた。
街を歩く人達もクリスマスが近い事で浮足立っているようにも見える。

「明日は雪が降り、ホワイトクリスマスになるでしょう」

天気予報のアナウンサーの言葉が聞こえ、近くにいた少女たちも嬉しそうに言葉をかけあっている。

ホワイトクリスマス、貴方は誰とどんな風に過ごしますか?

視点→雪代・蛍

12月25日、その日は恋人や夫婦にとっては最も大事な日なのかもしれない。
(もう、何でこうなるかなぁ‥‥)
 はぁ、と雪代・蛍は心の中で呟きながら現在の状況を確認してみる。雪代は彼氏である七海 鉄太の為にケーキを作りたくて、友人であり、時には姉や母親のような瑞姫・イェーガーに教わりに来ていた――――‥‥はずだった。
 しかし良く言えば親切で、悪く言えばおせっかいな事に瑞姫は彼女の夫一緒に食事会をしようと言い出して、現在その料理の最中なのだ。
(まぁ、瑞姫の提案は嬉しいし‥‥不満はないんだけど)
 雪代は心の中で呟きながら、ちらりと瑞姫を見たのだった。
「ちょっと鉄太に電話してくる」
 雪代はバッグから携帯電話を取り出して、台所から離れていく。
「もしもし、鉄太? 今日の予定は空いてるって言ってたよね?」
『うん、蛍が一緒に過ごしたいって言ってたから空けてる!』
 電話の向こうから聞こえる鉄太の声に、雪代の表情が少し和らぐ。
「6時になったら、いつもの所で待ち合わせだからね。遅れてきたら許さないんだからね」
『分かった! じゃあ6時に会おうなっ』
 そう言って鉄太は電話を切り、雪代も作業に戻る為、台所へと戻っていった。
「待たせてごめん。6時に待ち合わせだからそれまでに作っちゃわないと‥‥」
 蛍がエプロンをつけながら呟くと「大丈夫、時間はまだいっぱいあるんだし慌てないで作っていこう」と瑞姫が言葉を返す。

 それから最初に2人が作り始めたのはケーキだった。もちろんケーキを作る事が雪代の目的でもあったため、最初に作る事になった。
「‥‥作れるかな‥‥レシピ見る限り、初心者にはちょっと厳しそうなんだけど‥‥」
 ケーキの作り方、という本を見ながら雪代が小さくため息を吐きながら呟く。
(何か専門用語みたいなのばっかりだし‥‥やっぱり手作りケーキって無謀だったのかな)
 雪代が心の中で呟いていると、瑞姫がぽんと肩を叩いてくる。
「‥‥瑞姫?」
「誰だって最初は初めて作る時があるんだよ。難しいから諦める――だったら何で蛍は手作りケーキを作りたかったの? 鉄太の為なんでしょう?」
 瑞姫の言葉に雪代がこくりと頷くと「だったら頑張ろう」と、それぞれケーキを作る為に行動を開始し始めたのだった。

 そして、雪代と瑞姫がケーキを作っている頃――‥‥鉄太は大型のショッピングセンターへと来ていた。理由はもちろん雪代にあげるクリスマスプレゼントを買う為。
「うーん‥‥どうしよう。蛍が何を貰ったら喜ぶかずーっと考えてたけど‥‥全然思い浮かばない、あっ! 新しいロボット! すげぇ、これ発売されたんだ!」
 小さな子供に混じって『新発売』と書かれた特撮ロボットのフィギュアに鉄太は釘づけになる。
「うわぁ、欲しいなぁ‥‥あ、でも駄目駄目。今日は蛍のプレゼントを買うって決めてきたんだし!」
 首を激しく横に振りながら、鉄太は後ろ髪を引かれつつも玩具コーナーから出て『クリスマスプレゼント特集』と書かれたコーナーへと向かって行った。

「えぇっと‥‥あとは、これをすれば完成かな? でもデコレーションとかちょっと不恰好になっちゃったけど、大丈夫かなぁ」
 あれから数時間、瑞姫の教え方も良かったせいか、あまり躓く事なくケーキ作りを終える事が出来た。見た目は確かに店売りのケーキの方が良いのだが、その分、店売りのケーキにはない雪代の愛情や頑張る気持ちがたくさん込められていた。
 そんな雪代の様子を見て、何故か切ない気持ちになり、気が着けば雪代を強く抱きしめていた。
「どっ‥‥どうしたの? いきなり‥‥危ないじゃない‥‥」
 瑞姫が抱き着いた事で、雪代の手元が狂いそうになり、ちょっと怒りながら視線だけを後ろに向けると、真剣な表情の瑞姫の顔が見えて、雪代は何も言えなくなってしまった。
(瑞姫‥‥どうしたんだろう)
 雪代は少し心配になり「‥‥どうしたの?」と再度瑞姫へと問いかける。
「ごめん‥‥なんだか分からないけど、思いが止められない――‥‥暫く抱きしめさせて」
 ぎゅ、と抱きしめる力を少しだけ強くされたが、雪代は嫌な気持ちなどはなく、何も言わずに瑞姫が落ち着くのを待った。
(瑞姫はお腹に子供がいるし‥‥ちょっとだけ情緒不安定になってるのかな?)
 それなら暫く経った頃「ごめんね」と涙を拭いながら瑞姫が離れながら呟く。
「ううん、別に構わないけど‥‥」
 雪代が心配そうな視線を向けている事に気が付いたのか、瑞姫は笑顔を見せながら「さ、続きをやっちゃおう。早くしないと時間が来ちゃうよ」と言葉を返した。
(大丈夫かな‥‥)
 瑞姫の言葉に頷きながらも、心配な気持ちが治まる事はなかった。
 それから、2人はケーキ作りを終え、時計を見ると5時前だった。
(ちょっと早いけど、鉄太を迎えに行こっかな‥‥)
 時計を見ながら雪代はぼんやりと考え「鉄太との待ち合わせ場所に行ってくるね」と瑞姫へと言葉を投げかける。
「え、もう? まだ5時前なのに‥‥? 外は寒いし、時間を合わせていった方がいいんじゃないの?」
 瑞姫が雪代に言葉を返すが「うん、そうなんだけど‥‥」と瑞姫の言う通りにするつもりはなかった。
「分かった、メインディッシュは私が作っておくから」
 瑞姫に「ありがとう!」と雪代が言葉を返すと「行ってらっしゃい」と差し出されたコートとマフラーを持って、雪代は寒い外へと出かけて行ったのだった。
 しかし、玄関の所で「あ、そうだ。これ持って行って」と一対のシルバーリングを瑞姫から渡される。
「あっ‥‥ありがとう‥‥っていいの?」
 シルバーリングと瑞姫を交互に見比べながら雪代が問い掛ける。
「お代は好きな時でいいからさ。それじゃ‥‥行ってきなよ――だけど、帰ってきなよ? 鉄太に食べてもらうんでしょ?」
 ケーキを指差しながら瑞姫が雪代に言葉を投げかけると「うっ‥‥そう、来たか」と雪代は苦笑しながら言葉を返した。
(別に帰ってこないつもりはなかったんだけど、改まって言われるとちょっと恥ずかしいな‥‥)
 赤くなる顔をマフラーで隠しながら、シルバーリングを持って今度こそ出かけたのだった。

(寒いなぁ‥‥やっぱり瑞姫の言う通り、早く来過ぎだったかも‥‥)
 はぁ、と手に息を吐きかけながら雪代は心の中で呟く。現在の時刻は5時40分を少し過ぎた所。まだ鉄太と約束の時間まで20分程ある。
(早く来ないかなぁ‥‥)
 周りを見渡すと、クリスマスという事もあってやけにカップルが目立っていた。
「あれっ!? 蛍? もう来てたのか」
 約束の10分前に鉄太がやってきて「鉄太、遅い! 待たせるなんてどういうつもり!?」と寒さの為か、いつもよりキツい言い方になってしまう。
「ご、ごめん。まさかもう来てるなんて思ってなかったから。俺も約束の時間より早く来たつもりだったんだけどなぁ‥‥」
 しょんぼりとしながら鉄太が言葉を返すと、雪代は鉄太のマフラーをぐいと引っ張ると、強引に鉄太の唇を奪っていた。
「ほ、ほほほほほほほ蛍!?」
「さ、寒かったからよ‥‥」
 慌てる鉄太に蛍は赤い顔を見られないように横を向きながら言葉を返す。
「ご、ごめん‥‥これ、選んでたら思ったより時間かかっちゃっって‥‥」
 可愛らしくラッピングされた物を雪代へと渡す。
「え?」
「今日、クリスマスだろ! 俺、欲しいフィギュアあったけど我慢した! それ、きっと蛍に似合うって思ったから」
「あ、開けてもいい‥‥?」
「もちろん!」
 どきどきしながら雪代が鉄太からのプレゼントを開けると、小さなダイヤがきらきらと輝くネックレスだった。
(だ、ダイヤ‥‥? こういうのって結構高いんじゃ‥‥)
 ネックレスと鉄太を交互に見比べると「傭兵って結構お金もらえるし、それ蛍に絶対似合うって思ったから」と笑いながら言葉を返してきた。
「ありがとう‥‥あと、これはあたしから‥‥」
 そう言いながら雪代は瑞姫から渡されたシルバーリングを鉄太に渡す。
「うわぁ、かっこいい! これ俺にくれんの?!」
「うん、ペアリング、なんだけど‥‥」
 雪代の言葉を聞いて「ありがとうな、蛍」と鉄太は笑って言葉を返す。
「そ、そろそろ行こうか。瑞姫も待ってるだろうし」
 鉄太の手を引きながら、瑞姫の待つ兵舎へと2人で向かい始めたのだった。

「おかえり」
 帰ったのは7時少し前で、テーブルの上にはずらりとごちそうが並べられていた。
「うっわ、すっげぇうまそう!」
 ごちそうを見てはしゃぐ鉄太に「ケーキは蛍が鉄太の為にだって」と瑞姫がこっそりと鉄太に教える。
「わぁ、チョコケーキだ。俺、ケーキはチョコが一番大好きなんだ! ありがとうな、蛍!」
 嬉しそうに言う鉄太を見て、瑞姫が「頑張った甲斐があったね」と雪代にこっそりと話しかける。
「うん、教えてくれてありがとう。瑞姫」
 照れるようにお礼を言う雪代を見て「どういたしまして」と瑞姫が言葉を返す。
 その後、瑞姫の夫の帰りを待ち、思い出になるクリスマスパーティーが開始されたのだった。

END





―― 登場人物 ――

ga9347/瑞姫・イェーガー/23歳/女性/エースアサルト
gc3625/雪代・蛍/14歳/女性/ハーモナー
gz0263/七海 鉄太/18歳/男性/フェンサー

――――――――――
雪代・蛍様>

こんにちは、いつもお世話になっています。
今回はご発注いただき、ありがとうございました。
話の内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました。

2011/12/28
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2011年12月29日

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