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『初詣に行こう 』
エルレーン(gc8086)

毎年の如き、年末年始は色々と慌ただしい。
新年という事もあり、神社などは初詣客でいっぱいだ。

「‥‥なのに、それなのに‥‥何でここには初詣客が来ないんですか!」

巫女姿の少女が拳を高く突き上げて、青い空に向かって大きな声で叫ぶ。

「(男だけど)美人の巫女さん(ちなみに俺)もいるのに! 営業スマイルはそこらの女よりめろめろのキュンってなるはずなのに!」

はぁぁぁぁ、と新年から盛大なため息を吐き、いつ客が来てもいいように境内の掃除を始める。

ちなみに、この神社はそこら中に幽霊が出ると噂が立ったせいで、お客が毎年ぜろなのだ。

「日当たりもいいのに、初詣客の為にがらがらの鐘も買い換えたのに!」

こんな巫女さん(男ですが)がいる神社にあなたは初詣に行きませんか?

視点→エルレーン

「初詣?」
 エルレーンは師匠であるルーガ・バルハザードから「初詣に行こう」と誘われた。
「あぁ、せっかくだから振袖を着て行くのはどうだ?」
「フリソデ? 行く行く! フリソデを着て初詣に行く!」
 あまり振袖という物に縁がなかったエルレーンは着物を着れるという事が嬉しくて、はしゃぎながらルーガに言葉を返した。
 そんなエルレーンの様子をルーガは微笑ましく思ったのか、ふ、と小さく笑みを浮かべていた。
 それから、2人はそれぞれに用意した振袖を着て初詣に行く為、神社へと向かい始めた。

「‥‥めんどくさいなぁ‥‥」
 動きづらそうに歩きながらエルレーンがため息交じりに呟く。
「確かにこの着物というのは動きづらいな‥‥」
 ルーガもエルレーンの言葉に賛同するように、小さくため息を吐く。ルーガはシックな振袖で身を飾っており、エルレーンは薄い桃色の可愛らしい振袖を身に纏っていた。
(初詣に来るのも楽しみだったし、フリソデを着るのも嬉しかったけど‥‥こんなに動きづらい物なんて思わなかった‥‥)
 ふぅ、とエルレーンは息を吐く。動きにくいし、少し窮屈に感じて出来るなら今すぐにでも普段の服装に着替えたいくらいだった。
(でも、ルーガが私の為に選んでくれたフリソデだし‥‥)
 振袖を用意してくれたというルーガの気持ちが嬉しくて、エルレーンは「えへへ‥‥」とルーガに分からないように微笑んだのだった。

「ねぇ、初詣って‥‥こんなに人が少ないものなの?」
 神社に到着して、エルレーンが呟いた言葉がそれだった。
「いや、前にテレビで見た時にはもっと人が多いものだと認識していたんだが‥‥」
 ルーガも首を傾げながらエルレーンに言葉を返す。確かに屋台などは出ていて、初詣の雰囲気は出ているのだが、どうした事か参拝客が全くと言っていいほどいないのだ。
(あ、チョコバナナとかりんご飴もある。あっちにはイカ焼きもあるし、とうもろこしも‥‥あとでルーガにオトシダマをもらって、買って食べよう)
 どれを最初に食べようかなぁ、と考えている時にルーガから手を引かれる。
「あっ」
「ほら、屋台ばかり見ていないで最初は参拝しよう」
(バレてた‥‥)
 屋台を見ていた事がバレ、エルレーンは少し恥ずかしそうに顔を赤く染めながら「‥‥はぁい‥‥」と言葉を返し、参拝をするために境内へと向かい始めたのだった。

(‥‥ルーガ、何か必死で祈ってる――‥‥私も真似してお願いごとをしよう)
 ちらりと隣を見れば、眉間にしわを寄せながら願い事をしているルーガの姿が視界に入ってくる。
(一体何を願えば、あんなに真剣な表情になるんだろう‥‥)
 かくりと首を傾げながらエルレーンは心の中で呟くが、まさかその真剣な表情で願っているのが『良縁』だとはエルレーンも予想していなかった。
「エルレーン、お前は何を願ったんだ?」
「えへへー、ルーガがオトシダマくれますように、って」
 悪戯っぽく微笑みながらエルレーンが言葉を返すと、ピシ、とルーガが表情を固めながら「‥‥オトシダマ、だと?」と低い声で呟く。
「うん! だってオショウガツは、子供はオトシダマっていうお小遣いもらえるんだよね?」
 ちょうだい、と手を差し出しながらエルレーンが言葉を投げかけると「そうだな‥‥くれてやらん事もないが‥‥」と思わせぶりな言葉を呟く。
「何?」
「おみくじでも引くか? 私のよりも良かったら考えてやらん事もないぞ」
 おみじく勝負を持ちかけられ「わかった! 私の方が良かったらオトシダマもらうからね!」とエルレーンは言葉を返し、おみくじ売り場の方まで駆け出した。
 それを見てルーガが「やれやれ、こんな寒い中だというのに元気な事だ」と苦笑しながら呟いていた事をエルレーンは知らない。

「う〜〜〜〜〜ん‥‥これ!」
 あれからエルレーンはおみくじが入っている箱と数十分ほどにらみ合いをしながら、一番下にあったおみくじを手に取り「コレください」と巫女さんに差し出す。
 そしてエルレーンの運勢は――――‥‥中吉と決して悪い物ではなかった。
「ルーガ! 私は中吉だよ!」
「‥‥‥‥分かっている」
 嬉しそうに中吉のおみくじを見せるエルレーンにルーガは心の中で舌打ちをする。
 内心、焦りながら箱の中を漁り「これだ‥‥!」と一枚のおみくじを引く。そして表情は無表情だったが、心の中ではドキドキしながらおみくじを開くと――‥‥。
「ふっ、私は大吉だな」
「えええっ! 中吉だったから絶対勝ったと思ったのに‥‥」
「ふふん! 見てみろ、金が欲しいなどと邪な考えを持つ者には神も味方せん!」
 勝ち誇ったようにエルレーンに言葉を投げかけるルーガだったが、エルレーンは知らない。先ほどの参拝の時、ルーガが『良縁』と何度も神頼みをしていたという事を。
 もし、本当に邪な考えを持つ者に味方しないというルーガの言葉が本当ならば、真っ先に味方してもらえないのはルーガだという事も、彼女自身は気づいていない。
「う、うきゃー! ちちちち違うもん! 今のはレンシュウだもん! 次がホンバンだからね!」
「‥‥おみくじに練習と本番があるのは知らなかったな。そんなに運勢をころころと変えていいのか?」
 呆れたようにルーガが呟くと「‥‥うぅ」とエルレーンが泣きそうな表情でルーガを見てくる。
(せっかくオトシダマもらえるチャンスだったのに‥‥)
 エルレーンが俯きながら心の中で呟く。
「‥‥オトシダマ‥‥」
 恨めしそうに見られ、さすがのルーガも可哀想になってきたのか「仕方ない、屋台で何か買ってやるから、それで満足しろ」とため息交じりに言葉を投げかけた。
「ホント!? わぁい、ルーガ大好き!」
 抱き着きながらエルレーンは「何を食べようかな」と悩み、ルーガの振袖の袖を引っ張りながら「早く行こう!」とせっついた。
「慌てると転ぶぞ」
 呆れたようにため息を吐きながらエルレーンに言葉を投げかけるルーガ。
 だが、その表情はとても優しく心からエルレーンを大事に思っている事が分かる表情だった。

「おじさん! イカ焼き2つととうもろこし2つ! あとねー‥‥」
 あれから屋台で欲しかったものをルーガに強請るエルレーンだったが、既に両手いっぱいに食べ物を抱えていた。
「‥‥‥‥」
 ルーガは無言のまま、エルレーンが買い物をしている姿を見ていた。その表情は『まだ買うのか』と言いたいのがひしひしと伝わってくるようだった――が、エルレーンは気にする様子はなかった。
 ちなみにルーガとエルレーン、2人の両手に抱えられているのはたこ焼き、お好み焼き、綿あめ、りんごあめ、チョコバナナ、クレープ、そして今買ったイカ焼きととうもろこし。
 確かにルーガは屋台で何か買ってやるとエルレーンに言葉を投げかけた――が、ルーガとしては1つか2つくらいを想像しており、まさかここまで買わされる事になるとは夢にも思っていなかったのだろう。
 もちろんエルレーンとしては色々な物を買う事が楽しいというのが本音なのだろうが、尊敬しているルーガと一緒にこうやって楽しく過ごせるという事が一番嬉しい事なのだろう。
 お互いにキメラやバグアと戦う能力者であり、最悪の事態にならない――という保証はない。だからこそ1日1日を大事に、そして楽しく過ごしていきたいとエルレーンは思っていた。
「あ、ルーガ! あっちにも――‥‥」
「そろそろいい加減にしてくれ‥‥新年早々私の財布を空っぽにするつもりか‥‥」
 ため息交じりに呟くルーガに「えへへ‥‥」と誤魔化すようにエルレーンは笑う。
「それじゃ、帰ってから2人で食べようよ」
 エルレーンの言葉に2人は初詣を終えて、自宅へと帰る事にした。
(今日はすっごく楽しかったな‥‥)
 エルレーンは心の中で呟く。
「ねぇ、ルーガ!」
「何だ?」
「今日はありがとう、すっごく楽しかった! 今年もよろしくね!」
 突然の言葉にルーガはきょとんとした表情でエルレーンを見て「‥‥あぁ、今年も宜しくな」と言葉を返したのだった。


END



―― 登場人物 ――

gc8043/ルーガ・バルハザード/28歳/女性/ファイター
gc8086/エルレーン/17歳/女性/エクセレンター

――――――――――
エルレーン様>

こんにちは、こちらでは初めましてですね。
いつもCTSの方ではお世話になっております。
今回は迎春ドリノベにご発注いただき、ありがとうございました。
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていれば嬉しいのですが‥‥。

それでは、今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2012/1/5
WF!迎春ドリームノベル -
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2012年01月05日

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